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7の扉 グロッシュラー
依ると豆の木
しおりを挟む「私は最近思うんだが。」
依るが再び抱いた私を下ろして、私達はまた敷物の上に落ち着いた。
イストリアが入れてくれてるのは例の如くハーブティーだ。
落ち着く様な、柔らかい香りと少しの甘さが鼻をくすぐる。
ここのハーブ達は本当にイキイキとしているので、とてもいい匂いがするの。
農薬使ってたり、安く作られているのと違って、その本来の種がイキイキと育っているのが見ていて分かるし、香りも味もいい。
依るは案の定、まだ飲まずに匂いを嗅いでた。
私は勿論、流石にお茶まで飲まないから匂いを楽しんでただけだけどね。
そうしてイストリアは、さっきの続きを話し始めた。
依るがお茶を飲んで、落ち着くのを待って、だ。
「君があの、木を、枝を、伸ばした様に。「まじない」の強さ、それは「想い」の「純度」によると思ってる。大抵は深く考えないんだ、皆。生まれつき、それで、力は持って生まれ、変わらないと、思っている。君は、どうだった?」
どう、と言われても。
チラリと依るを見ると、意外と真剣に考え込んでる。
私達の世界には勿論、まじないは無いとされているし超能力とか、長年生きてるけどそれは見た事無いわ。
不思議な事は、起こるけれど。
100年以上生きた私の持論で言えば、「力」を持つのは神羅万象、自然、である事が多いと思う。
あとは長く生きた?在る?モノとか。
場所、もあるけどそれは自然の中に入るかしらね?
私はおかしな猫だけれど、別に私が何か力を持ってて、依るみたいにここに来てもまじないを使える訳じゃあない。
まぁ少しおかしな猫、という部分では元の世界でもここでも、そう変わらないわね。
もしかしたら人は、昔は力を持ってたかもしれない。その、安倍晴明とかその辺り?
もう、うんと、昔よ。
でも今は。
世の中はモノとコトで溢れて本当のことなんて何なのか、よく分からなくなっているし自然も減った。
力あるものが力を失い、何か別のモノに取って代わられている、それが現代。
私は、昔の方が好きだったけど。
不便では、あった。
現代では生きられる筈なのに、昔だったから死んだ人も沢山いる。
でも、その、代わりに。
失ったものは、多過ぎた。
取り戻せるかは、わからない。
でも、イストリアの言う事って、「このこと」じゃないかと、思う。
今はもう、ダサいとか、言われてあまり残ってない、もの。
「純粋に努力すること」とか「一筋に思うこと」とか。
自然のもの、一筋のもの、なにか純粋にただそこに存在するもの、とか。
現代ではもうあまり残っていないであろう、人が入れない場所や残っている自然、遺跡や神の場所として在った、場など。
なんか、上手く言えないけど。
まぁ、要するに依るみたいなやつは「ダサい」とか「冗談通じない」とか、言われる事も多いってことよ。
この子はしのぶちゃんがいたのも、大きかったかもね。あの子も、我が道行くタイプだから。
みんなが、周りの目を気にして。
言いたいことを言わず、とりあえず合わせて。
その点はラピスなんか、似てたけどね。
だから、依るはヤキモキして首突っ込んでたんだろうけど。
つまんないのよ。
陰でぐちぐち言う奴多いし。
ちょっと言い返されたら、もう頭にきちゃって話にならない奴も、多い。
なんだろね、みんながイエスと言わなきゃ敵なのかって話じゃない?
ああ、なんだか私の愚痴っぽくなってきたわね…………。
でも、古来人の愚痴を聞く事が多かった私としては、「じゃあ好きなようにやれば?」って思う事ばかりだった。
特に、ここ50年くらい。いや、80年かな…。
まぁそこはいいけど。
だから、私にとっては。
イストリアの話は、至極当然の、内容だった。
依るは目を丸くしたり、照れたりしてたけど。
まぁこんだけ真っ直ぐなやつも今時中々いないからね。
飼い猫が保証するわ、うん。
そうして私があーだこーだと考えていると、やっと考えが纏まったのか依るが話し始めた。
ポツリ、ポツリと、考えを纏めながら話している感じだ。
「どう、思うかって言うと。どう、でしょうね?」
「私はここに来てから。「何も」、してないんですけど。ただ、人の話を聞いてアドバイスしたり、お手伝いしたり、勝手に首突っ込んだりして。」
「たまには怒られて…………。フフッ。」
なんか、笑ってるけど。
大丈夫かしら。
「その、途中でこの子達が手伝ってくれる様になって。あ、イストリアさんにはまだ見せてないですよね?これが、私を手伝ってくれるみんなです。あまり知っている人はいないけどウイントフークさんは勿論知ってます。普段は隠す様、言われてますから。」
案の定、イストリアも食い付いて、この後の依るの話を聞けるのか心配だわ。
でも、依るが一応じっと待ってた。
ウイントフークよりは、マシな観察の仕方だったからかもね。
そうしてイストリアが腕を離してから、また話し始めた。
「多分、私の力なんて微々たるものなんですよ。あるのかな??この子達が、何しろ凄い、石らしいですから。あの、モンセラットさんもお墨付きですよ。知ってます………よね、はい。」
オタク同士の繋がり、ハンパないわね。
「だから、力がどうこう、っていうのはどうなんだろうな??私としては、「想像力」かな?と思ってたんですけど。妄想は得意なんで。」
変な所で胸を張り出したこの子に、イストリアはなんかウケてたけど、やっぱりこう言った。
「まじないの力は、本来人なら誰でも持つものだ。気付くか、気が付かないか。それはあるかも知れん。それに、上手く使えない者も、多い。なんでもアレやこれや思い込む奴が多いからな。」
「私も、他人よりは力は強い方だが「こんなものかな」と、決めてしまっていたんだな。やはり、君が木を伸ばすのを見て、そう思ったよ。君はアレだな、加減を知らんな。ハハッ!」
「そうなんです、この子は力が強いというよりかは常識が無いんです。「いい意味で。」」
皮肉を込めて言っておいたけど、なんか照れてるわ。
オカシイな?
「あの、木は。ラピスの森の長老達の枝なのだろう?それならいい木になるだろう。アレはなぁ…………、多分だけれど「上」に迄、届いているのではないかと思う。帰りに彼と、確認してから帰った方がいい。もしかしたら、騒ぎになるかもしれんからな。」
「えっ。ここ、見つかったりしませんか?」
「大丈夫。そう、ヤワじゃないよ。それに、アレは島の両端、崖の下から這い上がっているだろうよ。追おうにも、飛ぶ事でも出来なきゃ、難しいだろうよ。」
ふぅん?
まぁ気焔が飛べる事はみんな、知らないから大丈夫か。
依るは一人、とっても楽しそうだけど、あの子気焔が迎えにくるって事、分かってるのかしら。
「その問題」は、何一つ、解決してないんだけど。
スッキリは、したかも知れないけどね。
「さあ、今日はどうする?彼は、いつ頃迎えに来るかな?」
ププッ、固まってるわ。
ま、忘れてたんでしょうけど。
気焔はどこまでアリバイ工作したかなぁ?
礼拝は、一日おきでもいいから…………うん?そうすると今日出てないから、やっぱり明日は出なきゃいけないわよね?
なんかウェストファリア辺りに手を回してるといいけど…………。
ないか…………姫様関連だしね。
「依る、何しろ明日の礼拝は出なきゃいけないわ。とりあえず、相談の続き、したら?」
そういや、なんで木を植えてたんだっけ??
最初相談してたよね??
頭の中には?が沢山浮かんでいたけど。
とりあえず、再びの恋愛相談が始まって私はまた欠伸が出ていた。
うん、今度こそ…………。
ちょっと、寝かせて…………。
そうして次に目が覚めた時は、既にいつもの出窓だった。
うん?
あの二人は?
どこ行ったんだろ?
とりあえず、穏便に仲直りして欲しいわよね。
そう、目立たない様に。
うん。
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