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7の扉 グロッシュラー
姫様と枝
しおりを挟むそういや、気になってた。
イストリアは普段、何処から食材を調達しているんだろうと。
イストリアが敷物を広げ、姫様を座らせる。
私は少しウロウロしていたけど、「朝の分もあるよ。」と言われて戻ったわ。
猫のご飯なんて、あるのかしら?
なんか食べるモノないか、探しに行こうと思ってたけど。
助かった、と敷物に上がるとそこには美味しそうだけど全体的に緑色の食事が並んで、いた。
ベジタリアン??
「どうぞ?味は、保証する。」
そう言ったイストリアの前に並んでいたのは、パンっぽい丸いものに挟まれ緑のペーストが入ったサンドイッチ、何かフルーツっぽいもの、多分あとは野菜のマリネね。
うん、なんだろ。
でもめっちゃ身体には、良さそう。
姫様はじっと見ていたけど、イストリアに勧められると一つ手に取ってパクリと食べた。
「「うん。」」
「おお、食べれたか。良かった。」
え。
どういう意味だろ。
そう、思いつつ私もイストリアが用意してくれていた、その丸いパンっぽいものを貰う。
「これも食べれると思うよ。」
そう言って挟んである中身だけの、緑のモノもくれた。
なんだろうな…。
匂いは、ハーブだ。
でも多分、私の為にそう香りのキツくないものを使ってくれてるのが分かる。
依る曰くこっちだと名前が違う筈だけど、ホーステールっぽい匂い。馴染みのある匂いに少し安心して少し舐めてみたら、美味しい。
うん?ちゃんと塩気もある。
パンっぽい方も、全くクセのない味で私は好きな味だった。
小麦じゃないだろうけど、何かの粉で焼いたろうそのパンは素っ気ない味がいい感じでこの世界にピッタリだ。
ベジタリアンではないのかもしれないけど、きっとここにある食材で思いっきり、楽しんでる感じ。イストリアらしい、お弁当だ。
まあ私は肉とか食べなくてもいいから、ここもなかなか居心地いいわね。
あの、湖で魚が獲れたら最高なんだけど。
姫様はイストリアに言われるまま、サンドイッチ、マリネ、フルーツまで無事食べ終わって一休みだ。
敷物に足を伸ばして座り、畑を眺めている光景はとても、不思議。
なんだか、この世のものでは無いみたいだ。
「この、景色が似合うね。」
誰にともなく言ったイストリアの言葉に、頷く。
食べ物は、全部ここで作ってるのかとか、訊きたかったけど何だかもう面倒くさくなっちゃった。
少しだけ風がそよぐ、この空間。
暑くもなく寒くもない、心地良い気温。
お腹は、いっぱい。
眠くなるな、という方が、無理よ…………。
まぁ訊きたい事は後でまた依るが訊くでしょ、と思いつつウトウトしていた。
「で?どうしてこうなったんだい?」
「私も自分で、どうしたらいいのか解らなくて。逃げちゃったんです。」
うん?依る…?
「でも、別に気焔が何かした訳でも無いし。言うなれば、誰も、何もしてないんですよ。それなのに、私だけ、私一人がこうやって、ヤキモチを焼いて…………。もう、どうしていいか解んなくて。解決法が見つからないんです。だって、誰も、悪く無いんだもん。」
「そうだね。だからって、君の気持ちにフタをする事も、良いとは思わないよ。だって君は、いつだって正直に、生きないと駄目だ。今日また、そう感じたよ。身の内に、「あの人」がいてはストレスは溜めない方が、いい。」
「はい。それはなんか、分かります。」
「うん。でもとりあえずは彼に、言ってみたら?彼は普通の男と違うだろうから、どうするかは、分からないけど。きっと、君が落ち着く様に取り計らってはくれるだろうよ。きっと、君が隠れてショックを受けているかも、知れないよ?」
「…………そう、ですよね。もう、私自分の事ばっかりで…………。」
「ハハッ。君は確か、14だか、15だろう?当たり前さ。良いんだよ、大人じゃなくて。そうして、今のうちに色々、思っている事を全部出して解決して行くんだ。大人になると、逆に言えない事も、ある。失敗するのもいいし、彼となら怖くないだろう?君達は…………そう、だな。それもまた、ね。」
「…………やっぱり、ずっと一緒には居られないと、思いますか?」
「そうさね。どうだろうか。でもね?この、世界同士のものだって。誰だって、何処だって、先の事は分からないんだよ。その時、その時に最善を選んで進んで行くしか、ない。それは今までもそうだったろう?同じだよ。全部。」
「ずっと、一緒にいたいと。思い続けているならば、それは可能だろうよ。君達なら、な。」
「イストリアさんにそう、言ってもらえると心強いです。」
「でも多分、うちのあの子もその辺は考えてるんじゃないかな?多分、彼の気持ちも解っているだろう。最終的に、君らが別々になる未来はきっと、あの子も望まないだろう。」
「………だと、いいなぁ。お二人がいれば百人力です。」
「まぁ出来るだけ尽力はするよ。きっと、君達のゴールはまだ遠いし、道のりも険しい。だが、易しい山など登って何が楽しいのか。どんな山も、攻略してこそ、だな。」
「フフ。」
「じゃあそろそろやろうか?きっと、いいストレス解消になる。」
「確かに。間違いないですね。」
それっきり、声が止んだ。
私はウトウトしていたんだけど、途中から話の内容がガッツリ頭に入ってきて寝れなくなっちゃったわ。
あの、二人が。
一緒にいると、決めたみたいだけど。
でもだって、あれは「別のもの」。
依るが、最初に心配していた様に。
姫様のものでもあるけれど、あれは。
石、なのだ。
「うーーーーーーーん。」
私も何か、できないかは探してるけどね…。
少し、落ち込んだかも、しれない。
だけど、いつだって。
私を元気付けるのも、心配させるのも、あの子だ。
しかし、その直後私を一等、驚かせるのもあの子だ、という事を思い知る事に、なるのだった。
思わず、変な声が出た。
「うえっ?!」
さあ、元気を出そう、あの二人はどこ行った、と顔を上げた私の目に飛び込んできたのは。
「物語が、違くない?!?」
ジャックと豆の木みたいに、天空まで伸びたおっきな、木だった。
しかも、なんで?どうして?と思って辺りを見渡した私の目に飛び込んできたのはもう一本の、巨大なというか、長~い木。
その、空まで届く大きな木がこの空間のあっちとこっち、両脇?両端?にそびえ立って、いた。
依るも、イストリアも姿が見えない。
でも、きっとどちらかの木の所にいるのだろう。
直感で、そう思った。
だって。
絶対。
アレは、依るの仕業だからだ。
「ちょっとぉぉ…………。どっちよ…………?」
正直、一方へ行って辿り着いて、そこにいなかった時の、また反対側へ行く労力………。
嫌だ‥。
帰ってこないかなぁ。
そう思ってちょっと、ゴロゴロしていた。
うん、だって。面倒なんだもん。
そんな私の耳が聴き慣れた声をキャッチする。
なんか、言ってるセリフとやってる事が、合ってないけど。
「朝~!!大変!めっちゃ、大きくなっちゃった!ウケる!!まずいかもしんない!」
声は、明るく笑っている。
それなら、まぁいいんだけど。
スッキリ、したのかしらね??
とりあえず、叫んでないでここへ来てから話しなさいな…。
そうして立ち上がり、遠くから走ってくる依るを見つけた。
それにしてもいつ、戻ったのかしら??
イストリアに相談、したかったのかしらね?
それとも姫様が交代してくれた…?
結局、姫様も依るが可愛いのかな…。
どうなんだろ?
そんな私の疑問は、依るの突撃によって何処かへ飛んで行って、しまった。
うん、分かってたけど。
分かってたけど、潰れるわよ?
突っ込んで来られたら。
抱き上げられ、抱かれたまま指をさす依るの話を聞き始める。
うん、落ち着きなさいよ…。
そうしてイストリアがお茶の支度を始めたのを見て、ホッとした私はとりあえず依るの腕から、ヒョイとすり抜けたのだった。
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