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7の扉 グロッシュラー
私のヤキモチ
しおりを挟むあの後散々喋り倒して、結局夕飯を食べてから解散した私達。
後半は大体くだらない話をしていたんだけど。
別れ際にトリルがもう一度私の目をしっかり見て言ったのだ。
きっと、心の中にはまだモヤモヤがあるのが判ったのかもしれない。
珍しく鋭い、トリルの言葉はこうだった。
「大丈夫です。ラガシュはヨルの望まない事は絶対に、しませんから。」
その言葉をふと、思い出した。
確かに、それは私も思うし、解る。
「解るんだけど、分かってないんだよなぁ………頭?心?が………。なんだろ、これ………。」
例の如く、お風呂でルシアの石鹸をムクムクと泡立てて。
贅沢な泡を、堪能しているのだけど。
「うーーーーーーーん………?」
左腕を洗うのが三回目だという事に気が付いて、もう泡を流す。
憶えて、無いけど。
多分、全部洗った筈だ。
ボーっとしているのは分かるので、慎重に湯船に入り無意識なのかマスカットグリーンの石を手に取る。
ピンクって、気分じゃ無い。
もくもくと雲が出てくるのを見て、心なしか固い、気がする雲。
多分、そんな事ないんだろうけど。
「まさか………。」
ここまで、とは。
ブクブクとお湯に沈み、目だけを動かし雲を見る。
少し水色が多い雲の中に若草色を見つけて、嬉しくなる。
良かった、全てがブルーな訳じゃ、ない。
無意識に明るい部分を探していた自分にまた少し「………。」となったけど、もう、開き直る事にした。
「だって。」
「嫌なものは、イヤなんだ。」
うん。
私はそれを、ここで言うのは許されている。
私だけの、空間だし?
トリルにも、ラガシュにも、悪気はないのだ。
それも、解る。
「ただ。………………嫌なものは、嫌な、だけ。」
「もう、嫌になっちゃう………。」
「独占欲」と、いうもの。
それ自体は、知っている。
言葉の意味も。
なんとなくの、感情も。
それに、シャットで私は既に「私だけが、いい」みたいな事を言っているのだ。
その時はまだ、無意識下の独占欲。
それが今回、表に出て。
多分、彼に「想い」が通じて。
「私の石」、だと。
何度も、思ったし、言ってるし、そう、だったのだ。
別に今だって、話を聞いただけで「誰かの石」になった訳でも、ない。
「それなのに?」
冷たい、銀色だけが降り注ぐ星。
もくもくと大きくなったマスカットグリーンの雲は、水色と紫の部分が多くいつもよりも大人な色合いだ。
お湯は、温かいけれど。
なんだか心は、冬なのだ。
「こーゆー時は、どしたらいいんだろ…?」
そう呟きながらも、のぼせる前に上がる事にする。
うん、まだ、大丈夫。
ちゃんと自分で、出来てる。
言い聞かせている時点でそこそこヤバい事に気が付いていない私は、ゆっくりと身体を拭き、着替え、もう一度髪を拭く。
「エローラさんよ………。」
ネグリジェを見て呟きながら、化粧水の小瓶を手に取る。
「少なくなってきた、ね。」
景気づけに、イストリアの所にでも行こうか。
そう、思いながら頬をしっかり両手で抑えた。
「遅かったな?」
落ち着いてから、出たつもりだった。
月明かりに浮かぶ金色が目に入った瞬間、そんなものは何の役にも立たなかった事を思い知る。
拭き布を「バン」とテーブルに置くと、顔を見ない様にして足早に寝室へ入った。
駄目だ。
駄目。
大丈夫。 大丈夫なのに?
何が? 駄目なの?
大丈夫、大丈夫、落ち着いて。
感情のコントロールが出来ていないのが自分でも判る。
でも、止まらない。
止めたくない。
ああ。
部屋の中に風が吹いてる気がするけど、それを見る事もせず風に身を任せていた。
顔を手で、覆っているけれど金色の光が近づいて来るのが分かる。
でも。
今は、駄目。
嫌。
どうする?
私の安全な場所へ………。
気が付くと、風が止んでいた。
「「わからなくも、ないが」」
「………………。」
「「仕方の無い。少し、預かろうか?」」
「うん。少しだけ。お願い。」
「「良かろう。」」
そうして私は、少しだけ、「私」を交代した。
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