透明の「扉」を開けて

美黎

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7の扉 グロッシュラー

男達の相談・ラジオ電話

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ある日のラジオ電話。

始めは全く光に気が付かなかった。
いや、目には入っていたが本を読んで考えていたから無視していた事になるのか?
まぁそれはいい。

とにかくあの番号はグロッシュラーからのボタンだ。
前回は祭祀でどでかい扉を出して石が爆けた話、その前は旧い神殿で歌ったら何故だかいい石が出来た話。

さて、今回はどんな話か。
聞きたいような聞きたくないような。

持っていた本を置き、カップのお茶を飲むと冷たさに喉が鳴る。
まぁいつも温かいのは始めの一口だけだからな…。


催促する様に点滅するボタンを押すと、怒った様な第一声が耳に飛び込んできた。


「遅い。」

「なんだよ。解ってるだろう?」

「…………。」
「ああ、この前池の話をしただろう?」

おい。突然割り込んできて突然脈絡のない話をするな?

そう言ったならばきっと「それはお互い様」というレシフェの顔が浮かぶ。
古巣に帰ったアイツは少し楽しそうに聞こえるのは俺だけか。

適当な相槌を打ちながら、話の続きを促す。

「この前融通してもらったのは、ネイア用の、石なんだが。ウイントフークは知ってたか?ネイアの石が、人質だったって。」

「いいや?気にした事は無かった。」
「ああ………そういう事ね。はい。」

どういう事だ。

「で。うちの姫さんだけど。案の定、ネイアに石を作ればいいとさ。まぁそれで味方になるなら悪くはないと思う。だが…。」

「どこまで、話すかなんだよな。信用できる奴も、いるにはいるが、できない者も多い。」

口を挟んできたのはベイルートだ。


俺は、本当にベイルートが石?虫?になって、グロッシュラーへくっ付いて行って良かったと思う。
レシフェはいつもあの二人と一緒な訳じゃない。
気焔は、まぁ、アレだ。
本人からの証言も…………アレだ。

大人の話。
それを俺にする、伝える、役目が必要なんだ。

あの二人じゃ、ちょっと、な。


そんな俺の心情を知ってか知らずか、ベイルートは的確な報告をしてくる。

「とりあえず、ウェストファリアはいいだろう、ラガシュも大丈夫、あれはもうしもべになった、その系列でウェストファリアを抑えてるから白は大丈夫だ。」

「まぁ青は関係が深そうだからそれもいいとして。でもラレードは面倒そうだから却下。」

「とりあえずこの辺には、「石を創れる」ことは言うしかないと思うんだが、どうだ?」

「まあ、そうだろうな。配るにしても、説明がつかない。ウェストファリアは必須だしな。」

「そうなんだ。まあ理由も正直、彼が考えるのが一番いいと思う。他のネイアには、やはり保留か。」

「それがいい。「石を創れる」なんて、だからな。」


本当は「最高」と言ってやりたい所だが。

あまりにも、危険過ぎる。


今迄の歴史、この世界の均衡。

全ては「石」が起点になっている。

多分、その筈だ。何を調べても。
何処の、扉へ行っても。


「石」の所為で平和が保たれ

「石」の所為で争いが起きるのだ。


「言える訳がない。」

「解っている。」

俺の呟きに急に返事を返したのは、金色のヤツだ。
言いたい事は、嫌と言う程解るだろうが。

「油断するなよ?んだ。」

「ああ。」

まだ、向こうに動きは無いと聞いている。
どこまで、それが保つか。

「ニセモノ」の青の少女。

未だ、帰らない銀の家の面々。

不安要素は多い。


そして一番の不安の原因、ヨル本人からは全くラジオ電話は使わないくせに手紙が来た。
しかも大体が子供達の事、それに「風を起こして、巻き込みます!」という不安な一文。

ただ「巻き込む」という部分には、賛成だ。
何しろ、最終的にデヴァイへ行く事はきっと、あいつの決定事項なのだろう。
それなら、味方は多いに越した事はない。

それに、グロッシュラーはある意味デヴァイの縮図だ。
練習にもってこいだし、ウェストファリアの様に味方にすると大きい奴もいる。

そう言えば。

「ミストラスは、どうした?」

ヨルをお茶に連れ出すという荒技に出た所までは、聞いている。
祭祀後は、騒ぐかと思ったがいつも通りらしい。
逆に、怪しいんだが。

「俺は知らんな。ベイルートは?」

「ああ、俺も気になっていた。しかし………動きは無い、無いんだが。」

「何だよ。」

「多分、あいつはで満足したのかも、しれない。ヨルを引き込みたかった、というのは確実だと思う。しかし、あいつも石は吸収されてないから自分の力にかなり、溜まった筈なんだ。それで満足したのか、或いは………。」

「…………………。」


何となく、ベイルートの言いたい事は分かる。

多分。

俺も、考えなかったワケじゃ、ない。

だが、しかし。

金の石、そして「あいつ」もいる。

そんな事には、ならぬと思いたいが。


顔を合わせている訳ではないが、全員が顔を見合わせて黙る、という様な雰囲気。


「ま、その為に「味方」を沢山作るんだろ?とりあえずやろうぜ。」

「「ああ。」」

いつもの様子でレシフェが言う。
やるしかないのは、確かなのだ。

「じゃあ理由はウェストファリアに任せよう。石は、創る。ヨルは子供達にも創りたいと言ってたが大丈夫だと思うか?」

「お前は子供達にだけ創れない理由をあいつに説明出来るか?」

「…………やめとく。」

「そういう事だ。ネイアは、とりあえず自分達に石が出来るなんて思ってもないだろう。それだけでかなりこっちに付く筈だ。「特別な理由」でも、ない限りな。そこ迄気にすまいよ。」


「光は、どうする。」

急に金色が口を挟む。
光?何の事だ?

「あー、そうだな。」

「どうした?」

「ああ、ヨルが祈ったり、歌ったりすると。光が飛ぶんだよ。最初なんて、旧い神殿からあっちの神殿、島の反対側迄飛んだんだぜ?信じられないよな??」

「ふぅん?」

石を創る時光が飛ぶとバレやすいな?
光?何故?
何処に飛ぶんだ?飛んで、どう、なる?

幾つか気になる事を質問すると、理由が判った気がする。現場で見られないのが惜しいな。


「じゃあ創る時は気焔を連れて行け。それで大丈夫だろう。」

「気焔?何故だ?」
「なるほど。」

を言うのは、酷か。

「気焔は「あっち」の護りだ。その、関係じゃないか?」

我ながら上手い言い訳。

レシフェとベイルートは素直に納得したようだ。
まさか本人まで、思ってはいまいな??

「解っている。」

遠くの俺の思考を読んだかの様に、返事をしてくるあいつが、少し怖くなったところでそろそろ時間だろう。


「じゃあくれぐれもヘマはするな。」

「あーい。」
「分かった。」
「…解っている。」


プツリと途切れた音がして、ドサリとソファーへ沈み込んだ。

何故だか、立って話していた事に今、気が付いた。
思いの外緊張して話していたのだろうか。


「ま、出来る準備はしておくか…………。」

ぐるりと部屋を見渡して、これから必要になりそうなものにアタリを付ける。


あの屑石を纏めて…………。
「聞こえないやつ」とやらも送った方がいいか。
ヨル用の石もいるか?
もう、要らないのか?それはそれで寂しいものだな…………。



そんな事を思いながら、つい先日ハーシェルと話石で話した事を思い出した。
「ヨルは元気だろうか」と言っていたのだ。

それを聞いて、ハーシェルには手紙を出していない事が分かった。

「しまった!」

それだけ言っておけばよかった‥。

まぁ触らぬ神になんとやら、知らぬふりをしておこう。


それっきりヨルからの手紙の事は忘れ、積まれた本の上に置きっぱなしになっていた。


次のハーシェルが訪問する時、迄は。








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