透明の「扉」を開けて

美黎

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7の扉 グロッシュラー

雪の祭祀 可能性の扉

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その光景は正に、この世界の誰も見た事のない景色だと、目に入った瞬間私は確信した。


「この世のものとは思えない、美しい光」

正に、そのものだ。



目を瞑っていたので、光が降りたのか正確には判らないが、多分オーロラが変換されたのではないだろうか。

雲の隙間、青から放たれるその光は私が想像した光よりも遥かに美しくて、やはり「自然」に勝てるものはないのだなぁと馬鹿みたいに、感動していた。


白い空に散らばる微かに残る、光のカケラ。
その間を縫って色とりどりの光が、降っていた。


その、光は白から金、黄、黄緑から水色、青、赤、紫、紺から灰青、濃灰迄もっと、言い表せない程の多色の、光。
何色、とも言い表せない、複雑な其々の、色。

言葉ではとても表現出来ない、その曖昧でいてしかし繊細な色合いを目に焼き付けようと、私の視線は忙しかった。

薄く、濃く、細く、太く。

降りる濃さや量も、様々だ。



ああ、私が想像する範囲よりも、もっときっと、其々の持つ色を、きちんと映し出してくれたんだ。

のお陰だ。


何となくそう、思ったのだけれどきっと、そうなのだろう。多分、「人」では表現できない程の、複雑な色合いと、色の数。
それはやはり、人以外のものの干渉を感じずには、いられなかった。

人間は、複雑だ。
其々がいい面、悪い面沢山の色を持っていてそれはまたその時々で変わり、そして変わらない芯の色も、持っているだろう。
そして、変わるのが「人」なのだ。
変わったっていい。変わらない、人なんていない。だから、面白いんだ。


みんなに降り注ぐ光を見て、本当にそう、思う。
ぐるりと見渡して、各々の光を受け取る様を、眺めていた。




降り注ぐ光に、既に全員が自分に降りる光を手のひら、身体に写し、じっと見ている。
はしゃぐ子供達、確かめるように色を見る、大人達。



それを確認すると、私は再び気持ちを落ち着ける。


さて。
扉を開こうか。

私の、最後の仕事だ。


「可能性の扉を開く」

これを、やり遂げなくては。


もう、少し開いているものも、いる。

しかし、まだ心に渦巻く沢山の気持ちが、そこかしこに浮かんでいるのも、判る。
彷徨う、想いが行き場無く浮かんでいるのだ。
納める場所を、開かねば。


みんな、入れちゃえよ。

要らないものは。扉に、ポイだ。


そうして。

好きなものを、取り出して?



声が、聞こえる。

「「どこに?」」

「勿論、そらに。」


あの人が手伝ってくれる。
みんなも。


また、大きな扉をつくる為に目を閉じる。


大きな、おおきな、扉だ。



全員分、入るように。

全員分、好きなものを、取り出せる、大きな扉。


いつもの様に、石に願い、チカラを込め、目の前で手を、動かす。
具現化と言えば、宙だけど今日ばかりは、みんな。
チカラを、貸して?



私が創る、私の、可能性の扉。

それは、扉だけれど、其々の自分の、中に在るものを開く、見つける為の、鍵だ。



さあ、ここだ。
其々の色の所から、好きなものを出して?

願ったものが、まるで降って来るかの様に、「そら」に創るから。
何でもいい。
小さなものでも。
扉より、大きくても。
具体的でも、抽象的でも。

少しでも、そのカケラが
あるのなら、きっと見つかるから。


   「そら」を、見上げて?







「上!上見て!!」

「すごい!」


始めにに気が付いたのは、子供達だった。


「うわっ。」
「なんだ?あれは!」
「見ろ!」

大人は煩いなぁ。
ちゃんと、何か受け取った?取り出した?


そう思いつつ、私も目を開けた。


「う、わ。」

自分でも、思わず声が出る。


空に、浮かんでいたのは巨大なオーロラ色の、扉、だった。








その扉からは何か、フワフワしたものが出たり、入ったりしている。

きっとそんなに近くはないのだけれど、その大きさから近くにある様に見える、巨大な扉。
オーロラ色をした半透明の扉は、しっかりと私の好きなアンティーク仕様の重厚な扉で、繊細な彫刻までしっかりと、見えるものだった。

大きく開いたその扉から出たり、入ったりしているのは其々に降りた光の靄だ。


多分、私の思った通りのものだとすれば要らないマイナス思考はあの扉に吸収されて、代わりに欲しいものが降りている筈だ。


みんな、其々希望通りのものが降りるといいけど。


そう思いつつ、辺りの様子を観察していた。




何処からも、歓声が上がっていて力が何時もより沢山、降りたのだと分かる。
光はきっと降りきっていて、薄靄に包まれている人、もう消えてしまった人、薄く光が残るもの、色々な人がいる。


ああ、ナザレは青だね………シュレジエンは紺だし、あの辺は青系多いな。
シリーもだし。やっぱりラピスだから青いのかな。ちょっと嬉しいよね………。

ウェストファリアは灰白だ……流石白い魔法使い。
ダーダネルスは銀灰だし、あの辺カッコいいな。


あの人、誰だろう。
きっとデヴァイの人だろう箇所で金黄色が見える。

デヴァイにも色、あるね………。あっ、いた!
紫の人!

紫は貴石の人だ。遠くてあまりよく判らないが、綺麗な女の人に見える。


ふむふむ。みんな、いい感じだよ………。
もう、大体大丈夫かな?
あの扉って、閉じるのかな??


靄の出入りが落ち着いてきた。
みんなに、可能性は降りただろうか。
何かを啓く事は、出来ただろうか。


ぐるりとまた、辺りを見渡す。
順に視線を送った先に一際光る、金色が見える。

眩しくて、人の姿は判らないのだけれど勿論それが誰のものかは見なくても分かる。

自分の中にも同じ、金があるのが分かって少し共鳴している気すら、した。


まずいまずい………。
光が出ちゃう………。


私が自分の内部にワタワタしていると、一瞬ザワリと何かが動いた。






なに?

急に空間が異質なものに支配されたのが、判る。


さっき迄は自分が支配していた、その祭祀の場が何かに塗り替えられたのが判るのだ。

その場の空気が横滑りした様な感覚と共に、奪われた主導権。その、大きな気配は上空から来ている。


多分、だ………。


視線の先にあるのは、オーロラの扉。

もう、靄の出入りは終わったその扉の中に、何か違うものが出るのか、出ないのか、のが分かる。


悪いものではない。
しかし、その場を支配する、圧倒的な「何か」。
抗う術は無いと思わせるその存在からの圧に、身体が固まる。



周囲はまだ、興奮の騒めきの中だ。


まだ、殆どの人は気が付いていない変化に、始めに反応したのは何人かの、男たちだった。














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