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7の扉 グロッシュラー

雪の日の朝

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う……………ん

心地良い、ふわふわとした感覚。

暖かい温もりに、いつもの金色の匂い。

夢だ。

いい夢。

そろそろ雪も降りそうだし、ここらで癒されたいと思ってたから丁度いいなぁ………。




一応祝詞もでいい事になったし、その他の準備は白い魔法使い達がやってくれてる。

レシフェも「心配するな。」って言ってたし、レナも来るし…………。
ちょっとそれは、楽しみ。


でも結局。

「美しいもの」が、なぁ………。


何を、思い浮かべようか。

「ラピスの空」とかでもいいけど。
こう、多色のなんて言うかうーん?
私のワンピース?
オーロラだし?

でもやっぱり………なんか………こう…。

なんだろうな。
何か私の中にある、美しいもの。
それを想像しようとしても、もっと、もっと綺麗なものがある筈だと、私自身が納得してくれない感じがする。

何故?
何か…………何か、新しい、綺麗な、もの。



最近一番、綺麗だと思ったもの………?


…………?




えっ。


まさか、…………いやいや………でもな。


いや、でもな。

うん。

バレるよね…………。うん。

貴石の、館でも見に行こうか………。
確かあれは七色くらいあったような………?







でも。
そう。

そうなの。

今。今現在、私が一番美しいと思っている、もの。


キャーーー無理無理!
どうしよ??!祭祀で出ちゃったら、どうしよ!?バレバレよ??
やだ!無理無理!

えーーー、でも、なんか、なんかなんか、限りなく…………。


出そう。


ああ、どうしよう…………。





いつもの、髪を撫でられる感覚。

気持ち良くて、そのまま身を委ねる。

ねぇ?
きっと、きっと今祈ったら、出ちゃうよ?

金色の、光が。

どうしよう。

みんなの、顔が見える様にお願いはしたけれど。
どうだろうな?
ちゃんと、沢山の、其々みんなの、色に出来るかな?


私はクテシフォンに祭祀の並び順を聞いた時に、色はバラバラにして出来るだけ池を囲み、みんなが中央を向く様にお願いした。
やはり始めは家の順で並べる予定だったクテシフォンは、少し渋っていたけれど「今回の実験の趣旨」と言ってゴリ押してもらう事にしたのだ。

私は大体、ロウワと貴石の色を覚えれば良かったので並び順の色については楽だった。
貴石だけ、名前と顔が一致しないが並ぶ色順は決めているので多分大丈夫だと思う。

ちゃんと、グラデーションにしてもらった。

それでも灰色と黄色が圧倒的なここグロッシュラーで、色持ちはそう多くない。
固まらない様、散らしてもらって万遍なく光が降りる様に。

出来るだけ、その人と同じ色の光をそこに、降る様にしたいのだ。

まぁ、多少違うくらいはいいだろう。

だって、今迄は皆、同じだったのだから。


最後の仕上げとしてみんなの色を覚えたお陰で今、私の頭の中はカラフルだ。

でも字面で覚えているので、やはり具体的な「美しいもの」が欲しいと思うのは仕方がない。





あの、金の髪。

暗闇の中でも燃える、金の瞳。

薄い靄の様な金色から橙、赤く、紅く燃えるあの焔の煌めき。


ああ、いけない。
また思い出してしまった。

私は、あの金色に囚われてしまったのだろうか。


そう、こんな、正に。

フワリと、チクチクした、金髪。




少し、心配そうな瞳が私を見ている。

どうしたの?
何が心配?
ああ、ラガシュの事だろうか。
大丈夫、それは………まぁ、解決した。

あとは………?
光の事?

でも。
護って、くれるのでしょう?

チカラが流れ込んでから、前よりもより一層近くなった気がする、私達。


でも。
やはり心配にはなるのだろう。

「フフッ」

夢の中でも心配しているなんて、本当に。

「ああ、なんて………。」

なんと、言うのだろうか。
この、感情は。



夢の中だからと躊躇いなく彼の首に腕を回し、チカラを伝える。

大丈夫。
きっと、成功する。




「待て。………こら。」

なに?駄目なの?もう、要らないの?

しょんぼりした私に、少し躊躇いながら言う金の瞳。


「外は、雪だ。今日だぞ?」

「えっ?!」


なに?!現実????ウソ!

えっ、えーーーーっ??




頬を抑えて悶えている私を他所に、ベッドから出て窓の外を見に行く気焔。

確かに、感覚としては早朝だが外は明るく、白い。
慌てて私も出窓へ向かい、朝のしっぽを踏んづけた。

「もう!何やってんのよ!」
「ご、めん!でも、見て!!凄い!私こんなに雪降ってるの、見るの初めて!」

「吾輩、もう行くぞ?忙しくなる。気を付けろ。ベイルート後は頼む。」
「分かった。任せろ。」

「ほら、依る!もう窓は終わりよ。すぐにきっとシリーが来るわ。」
「あ、そうか………。」

「そうかじゃないわよ………大丈夫かしらね、この子は………。」

ため息を吐く朝、私は着替えの支度を始め気焔はもう消えた。
きっと既に廊下はバタバタしている筈だ。
扉からではなく直接何処かへ飛んだのだろう。

もしかしたら廊下で、シリーと会うとまずい。
今日はその方がいいよね…。


そんな事をつらつら考えつつも藍に頼んで髪をやってもらい、着替えをする。


レナは何時頃来るだろうか。
多分、早いよね…………。
シリーが来て、レナが来て、みんなの所に行って………。


今日は朝の祭祀はない。雪が降ったら、その日は無いと前もって通知されているのだ。
この位、降っていたらもう今日で決定だろう。
朝から全員が、バタバタしている筈だ。

隙間時間で朝食を食べ、私はきっと外へ行かなくてはならない。


「ううっ、寒そう~。」

窓の外は粉雪が舞って、とても綺麗だが酷く寒そうである。
まだ、積もってはいないのが幸いか。

しかしこの位降っていたらもう、時間の問題である。


私は雪が降るともっと暗くなるものかと思っていたが、外は存外明るかった。


「風花…………。」

寒そうだけど、思ったよりも灰色の世界に舞う小さな白い雪は綺麗だ。

雪のせいでより、白く見える灰色の世界は雲との境目が分からなくて全てが空の雲に、包まれている様に見える。


「ほら、シリーが来たわよ。」

「はぁい。」


朝の声に外を見るのを切り上げ、急いでダイニングへ向かう扉を開けた。



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