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7の扉 グロッシュラー
姫様なのか 依るなのか
しおりを挟む暗い。
誰?私を呼ぶのは。
寝かせておいて。
もう、あの人はいない。
私の
何だっけ?
でも、もう居ないの。
戻ってしまった。
彼の、きっと、本来の場所に。
あれは夢だったの?
「信じろ」って
「それが「チカラ」になる」って
言ったのに。
嘘つき。
うん?
でも、嘘付かないよね?
そう、「言わない事」は多いけど「嘘は付かない」んだ。
そうだ。
どうして?
どうして私は一人でここにいる?
真っ暗で、見えない。
でも?どうする?
きっと、迎えに来る。
待っていよう。
うん?私から行った方が、いいかな?
でも「真っ直ぐ」行きたいけど、見えないな。
じゃあ
待っていよう。
彼が
そうだ。
「私の金の石」
気焔。
彼が迎えに来るまで、ちゃんと待っていようっと。
色々忙しいから、考え事しながら待ってようかな………
うん…なんか目が覚めてきた………
てか、ここどこ……………
「「やあ。青の子。」」
え?こんな所に青の本?石?………誰?
「「我は「其方」。同じであり違う事もあり。」」
うん?
「「お前は「混じりもの」という事。まだ残る懐かしい気配よ。お前は何を望む?」」
え?「懐かしい気配」?
知らないけど………誰?これ?
でも…………
「望むもの」は決まってるよ。
「私の金の石」の元へ帰ること
それだけ。
私が何に変わっても
此処が何処で
何時だとしても
私が欲しいもの、戻りたい処は一つ
そう 決めた
そう、世界は要らないけれど
欲しいものは 一つだけ
「「何だ。「彼奴」より余程真理。」」
「「あいわかった。しかし向うがやや。少し待て。可笑しなものが観られるぞ。」」
?
待つの?分かった。
待ってる。ずっと。
「「そう、我も同じく。」」
「ちょっとぉ!何やったのよ!ここんとこ、よく出てるから気を付けないと!」
「…………。」
「あ、コイツ今役立たずだから。」
「その様だな。」
「で?どうすんの?姫様は?」
「今さっき、池を見に行った。一応、神殿から出るなとは言ったがどうだか………。」
「まぁ池は面白そうだからいいかもしれないけど………そんなに長くは持たないでしょう?どうする?何て言ってたって?」
「どっかで寝てるとか言ってた。なんか、こいつが姫様の方にぐらっと来て……。」
「阿保。違うわ…。」
「いや、お前、この状況でそれ言われても説得力ゼロだからな?な?」
「…………。」
何だか萎れてるけど。
どうしたのかしら。何が、あった?
とりあえず聞いてみなきゃ始まらないわね………。
ちゃんと喋るか、分かんないけど。
「ねぇ。何があったの?それを教えてくれないと
、依るを取り戻せない。」
私の言葉を聞く金色の石の唇は固く結ばれてる。
あの口から、どんな言葉を吐いて、私の依るを苛めたのかしら。けしからん。
まぁ、そこまで酷い事じゃあ、ないと思うんだけどね?
でもねぇ…………「あっち」が出ちゃってるからなぁ…。
ベイルートがテーブルの上をぐるぐるして、私が気焔の足元を回って。
話が始まるのを待っていたんだけど、まぁ一向に始まらないのよね。分かってたけど。
最終的にレシフェに小突かれて、金の石は話し始めた。
どうして、依るが姫様になっちゃったのかを。
「依るが、歌うとまた光が飛んで吾輩が燃えた。」
「すると急に姫様が出た。吾輩は姫のものだと。言う。そのまま直ぐに依るへ戻ったのだが。」
「「「だが??」」」
「いや。すまぬ。少し、躊躇してしまったのだ。依るの手を取る事を。」
それを聞くと、私達はみんなダンマリだった。
些細な事かも知れない。
どの程度、手を出して、それをどんな雰囲気で取らなかったのかは分からない。
でも。
多分、あの子にはそれで充分だった筈だ。
あの、ウイントフークの家で気焔が「あの瞳」を見せてから。
この、神だか石だか、人以外の者たちとの「違い」を思い知ってから、暫く。
やっと、多分あの子自身が「「自分」を必要としてくれている」と思えるようになった筈なのに。
ずっと、依るが「姫様の方が大事なんだ」と思っているのは分かってた。
だからきっと、あの子は自分の気持ちに蓋をしてた。あの、金の石に惚れたって、どうしようもないんだって。自分の気持ちの行き場は、何処にも無いんだって。
それが、やっと、やっと何故だかこの世界に来て空の上で、歌う事を思い出して、自分を開放する事を覚えたのに。
あの子の、まだ開いた事のない心の扉。
そう、何時でもオープンなあの子にも未だ開いていない扉はあった。
それが、「恋の扉」。
あーあ。
閉じてるね、多分。
どうやったら、また、開く?
どうやったら、また、戻って来る?
「でもそれは、あんたにしか出来ないわよ。そこのアンポンタン。」
「…………。」
「出来る?」
「やるしか無かろう。」
「まぁね………。」
やるしかないのはその通りなんだけど、何だか追いやった本人に言われるとねぇ。
なんだかねぇ。
多分、今は姫様優勢な訳。
それを、依る優勢にする。
どうやって、やる?
声を掛けただけで戻って来るとは、思えない。
じっと、金の瞳を見る。
私の言いたい事が解るのだろう、気まずそうに目を逸らした、金の石。
ふぅん?
それなりに、やる気はあるみたいね?
お手並拝見と行きましょうか。
まぁ、とりあえずはキッスの一つや二つ、ぶちかましてやれば………余計に帰ってこなかったりして。ププッ。
いやいや、愉しむのはその位にして、と。
そっぽを向いている金の石を見ながら窓の外を確認する。
ここから裏の池は見えないけれど、姫様がウロウロしてないかチェックだ。
「どうする?」
「何しろ外より中の方がいいだろう。どうやって連れてくる?」
「そうね…まぁ私が行くのが一番マシかしら。」
レシフェと顔を見合わせて、部屋の面々を検分する。
えーと。
張本人の項垂れてる金色の石が一人。
玉虫色の虫が一人。(一人か?)
この世界のお守り役だけど依るに気のある男、一人。
猫、一匹。
おかしいな。
何故私が一番マシなのかしら………。
それかギリギリレシフェね………。
「じゃあ、行ってくる。とりあえずここに連れて来るようにするから、一応、二人にしてあげましょ。それでいいわね?」
男達を見回す。
レシフェが何だか不満そうだけど、今回ばかりは気焔以外は無理。それにしてもこの人、まだ諦めてないのかしら。依るの事。
まぁ、私はどちらかと言えば気焔派だけどね。
流石にここまで一緒にやってきて、私も一応この子の事応援してるし。
でも今回のヘマはやっちゃった感、あるけどね………。
とりあえず、本人にきっちり精算してもらいましょう。
男達をおいて裏の池まで走って行く。
まさか、神殿の外には行かないと思うけどそれは分からない。私が一番マシだとは思うけど、私の言う事を聞いてくれるかも、分からない。
何しろ、姫様は未知の存在だ。
あの人なら、少しは性格も知ってるかもしれないけど。
あの、今回は傍観を決め込んでる「あの人」ね。
流石にあっちに頼む訳にも行かないしなぁ。
実は、チラッと脳裏に過ぎらなかった訳じゃ、ない。何しろ、姫様はあっちの管轄だ。
こっちじゃないのよ。そうなの。
更に、落ち込んでるあの子に追い討ちを掛けるような事は出来ない。
「依るを諦める」とか言われても困るし。まぁ言わないとは思うんだけど。でもわざわざ落ち込むような事はしなくていいしね。
しっかし、私には荷が重いわぁ………。
ブツブツ言ってたら裏の池まではすぐだった。
いた…………。
私に気が付いている姫様は、池の辺に佇んだままじっとこっちを見ている。
うん?姫様だよね?
依るじゃないよね??
足元迄行って座ると、徐ろに口を開いた。
「「待ちわびたぞ?」」
あれ?ウェルカムモード?
「はい。準備が出来ましたので、どうぞ。」
何の準備なのか、何を待っていたのか分からないけど、姫様がついてきてくれるならそれでいい。
少し後ろを振り返りながら、またオルガンの部屋に戻る。
みんなもう、捌けたわよね??
二人きりじゃないと多分、あの子は素直に話さなそうだし。
回廊を抜け、太陽が描かれた踊り場を下り、小さな扉が見える。
私は少し、ゆっくりめに、振り返りつつ、歩いて行った。
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