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5の扉 ラピスグラウンド
その日の朝
しおりを挟む「ねぇ、朝。運命の人ってさ、いるのかな…………。」
あら。
あらあらあら?
この子から、こんな質問が聞けるなんて?
生きてて良かったわ…。泣きそう…主に、気焔が。
この子がそんな事を考えているのも、きっと今日マデイラのお店に行ったからね。ま、私は殆ど寝てたけど、楽しかったようで何より。女の子の話は100年経っても変わらず、長いから。眠くなるのは仕方が無い事よね?
それでまたどうして、懐かしい言葉「運命の人」なんて出てきたのかしら…?そんな話、してた?
「なんかね、エローラと「運命の人探し隊」を結成してたんだけど…」
え?その話、まだ生きてたの?そっちのがビックリよ??
「シャルムの話になった時、やっぱり条件とかも必要なんだなって。ピピピって来るだけじゃ、駄目なんだなって。」
なに可愛い事言ってるのかしら。「ピピピ」ですって。流行らせようかしら?
いやいや、本人は真剣だから。初恋を茶化しちゃ、駄目。一生引きずるから。駄目駄目。
「それで?」
「うーん。なんかよく分かんないんだけど。……だから、運命ってなんなんだろうなって。」
「ふぅん?」
きっと、エローラが、条件で選んだように見えてるのかしらね?あながち間違いじゃ無いけど、あの子は後継ぎだしね?でもね………
「依る。それでも、もしかしたらエローラはウィールでシャルムに出会わない可能性だってあるわよね?一年遅れて、入って来るとか。」
「…………そうだね?」
「それに、きっと同じタイミングで入学しても依るがいなかったら、エローラはシャルムを「いい」と思ってなかったかもね?」
「え?どうして?」
フフ。不思議そうな顔してる。
それが、この子の不思議な所なんだけど。いつの間にか、みんなを巻き込んで結局みんな依るの仲間になる。そして、縁は繋がっていくのよね………。
「だって例年は殆ど顔を合わせないこともある、って最初にあの白猫が言ってたでしょう?」
「あ、そうか………でも?」
「みんなの仲を繋いだのは、勿論みんなだけど、依るがいたからよ。」
「そう?…………そうなの?」
「ま、そういう事にしておいて?なんならエローラに聴いてご覧なさいな?多分、そう、言うわよ。」
なんだか腑に落ちてない顔だけど、そうなんだから仕方が無いわね。
「縁」ってのは不思議なもので、繋げようと思っても全く繋がらなかったり、かと言って切ろうと思っても切れない縁だって、ある。
なんだろう、不思議なものよね?長く生きていても解らない。何故、この子が沢山の縁を繋いでそして違う世界へ持って行くのか。
そう、一つの世界の中で繋ぐだけじゃないのよね。世界同士も、繋ぐのが依るの凄い所よね?
だからやっぱり、エローラの事だって「運命」って言ったって、いい。正直私から言わせて貰えば、言ったもん勝ちよ、「運命」なんて。
だって、終わってみなけりゃ誰にも、判らないもの。そう、思ってればいいのよ。誰にも否定なんて、出来やしないんだから。
そもそも依るが、光ってて。扉に入る事になって。エローラと偶然友達になって。シャットへ行って。そこで何故かラピスのシャルムと会って。
家は生地屋だし。シャルムは初めから何だかエローラの事が好きみたいだし。
これってもう、「運命」で良くない?
いいわよね…………。うん。
眠くなってきたわよ?…………。
依るはまだ何だか一人で考えてるけど、自分の「運命」についても頭を悩ませて欲しいものだわね………。ちょっと期待しちゃったじゃない。
ちぇっ。
て言うか寝ちゃったわよ、この子。どうしよ?風邪引くわ…………?
あ。
丁度、帰って来た。
「どうした?」
「話してたら寝ちゃったのよ。今日は喋り倒して疲れたんじゃない?後は、よろしく。」
そう言って、気を使って布団の足元に潜っといた。最近、悩みすぎてハゲないか、心配だったからね。まぁ石だから、元々ツルツルだけど?
ピロっと布団を上げて、こっそり、見る。
ああ、迷ってる………フフ。別にいいのに、着替えさせても。気付かないわよ?きっと。でもそれも何だかね…。可哀想ね。ああ、そのまま寝るのね。藍にだけ、頼んで。うん、いいと思う。
なんだか複雑な表情でアキを外して、サイドテーブルに置いた気焔。
うーん。結局、…………。ああ………眠…。
うん、気が付いたら朝だったけどね。
もっとまごまごした気焔が見たかったのに…。
ま、あんまりいじめちゃ駄目よね。励まさないと。私も、頑張ろ。
それから冬の祭りまでは、あっという間だった。
エローラの家に行った次の日は、みんなで冬の祭りの準備だ。また教会も浄めて、飾り付けもする。私が今年もリースを作るのを見て、ティラナが喜んでいた。今度は一緒に作ろうねって、約束したからまた来年?作れるのかな?全く、未来が予測出来ない。
そして、その次の日は火の日なのでイオスのクッキー教室だ。ティラナもやりたいと言ったのでリールも混ぜてうちで、結局みんなでやった。
シュツットガルトとイスファは冬の祭りが終わったらすぐ帰るみたいで、その日は青の像を見に行ったみたいだ。まぁシュツットガルトは責任者だからあまりのんびりもしていられないだろう。
もうすっかりルシアとは夫婦に戻ったような二人を見て、イスファとニヤニヤしてしまった。
シュツットガルトはそんな私達を見て、気まずそうだったけどラピスでは生徒じゃないんだから気にしないでイチャついていいのに、と私達は言っていたのだけど。まあ、大人には大人の事情?があるんだろう、うん。そういう事にしておこ。
とりあえず祭りの支度もなんとか終わり、クッキーもマスターした。
今年は帰る予定じゃなかったから、イオスのお店は手伝わなくていいって。なんだかちょっと寂しいけど、それが普通と言えば普通なのだ。元々、私はいなくなる、人間だ。あ、なんか考えてたら寂しくなってきた…………どうしよ。
でも…………あったかいな?
無意識に温かいものをぐっと引き寄せ、毛布のように包まる。あぁ~、寮の温泉みたい。ぬくぬくで気持ちいいな…………。
段々と、意識が戻ってきた。
今日、もう祭りじゃなかったっけ???
そう、冬の祭りの朝は早いのだ。
「寝坊?!」と思ってガバッと起き上がったら、まだ外は薄暗いのが分かる。
ううっ、寒っ。
そのままベッドから下り、火箱をつけてお風呂の支度も、する。まだ暗いし、もうちょっといいかな?
待っている間寒いのでまた布団に潜り込んだ。
そう、勿論さっき毛布扱いしたのは気焔だ。
きっと、起きてるけどまだ目を瞑っている。今日は……気焔もエローラの所、行くんだよね?
この頃、どこかに行っている事が多い気焔は相変わらずたまに難しい顔をして、いる。多分、私に気付かれないようにしてるのが分かるんだけど、流石にこれだけ一緒にいるとやっぱり、分かるのだ。
なんだろうな。どうしたら、いいのかな?
自分のしたい事なら、分かる。今もやってるし。
こうやって、気焔の側でぬくぬくしてれば安心なのだ。とても、落ち着く。
でも、気焔は?私、何か出来てるかな?して欲しい事が全く、思い付かない。しかも多分、「して欲しい事ない?」とか聞いても言わなそうだしな…………。
その時、フローレスが言っていた「たまには我儘もいいものよ?」という言葉がまたポンと浮かんだ。
でもな?我儘?して欲しい事?そんな、無いな?大体してもらってるしな…………??
「!」
その時、急に気焔がゆっくり目を開けたのが目に入って、何故だか私はビクッとしてしまった。いや、悪い事しようとして無いよ?なんでだろう、なんか…。
そのまま、気焔は金の瞳で私の事をじっと、見つめている。あの瞳じゃなくて、なんだかとても静かな、金の瞳。
まだ誰も起きていない朝早く、二人きりの布団の中で静かに私を見つめる、金色の目。
それを見て何故だか、私は彼が区切りがついたんだな、と思った。今迄あった、迷いが消えているように見えたからだ。
じゃあ、もう大丈夫かな?
我儘、というか今の素直な気持ちを言ってみる。
「もう、ずっとそばにいられる?」
それは、あの夜ここで何も考えずに呟いた事と、やはり同じ事。でも今私が望む、ただ一つの「自分の為の願い」だ。別に守ってくれなくてもいい。
「そばにいてほしい」だけ。
それが聞こえたのか………分からないけど、気焔は多分、初めてニッコリ微笑むとそのまま私を抱きしめた。
わ、笑ったよ?笑ったぁぁぁぁぁーーー!え、え?なんで?ヤバ。ヤバイ。何あれ?!あの満面の笑み!!ヤバ!!!
あったかいとか、安心とか、ドキドキとか色んな感情がぐるぐるしていたけど、私の脳内を占めているのは初めての気焔の心からの笑顔、だった。
意外な事に、見た目はヤンチャで元気な彼だがいつも纏っている雰囲気や元々が石だからだろうか、近づき辛く、少し怖い雰囲気がする。基本的にいつも私は心配されるか、怒られるか、呆れられるか…。こう考えると、どうなの…………。
そんな私が、「ちゃんと」気焔が笑ったのを見たのが初めてだったのだ。そして、その事実にも驚いた。
微笑まれるとか、優しく笑うのはあったけどね…………。
なんなのこれ。めっちゃ、顔熱い。
腕が緩まってきて、気焔が私の顔を見ようとしているのが、分かる。
無理無理。絶対、見せらんない。
そのまましばらく、彼の胸に潜り込んでいたが私は思い出してしまった。今日、早起きしなきゃいけなかった事を。
「あ!!」
そう、大きな声を出して自分で驚く。顔を上げたら気焔と目が合って、なんだか二人で笑ってしまった。
うん、こんな感じが、いい。
なんとなくだけど、以前より気焔が近くなった気がしてルンルンしながらお風呂へ行った。勿論、「覗くなよ?」と言って。
コンコン
「おはよう?いい?」
レナが私の部屋に朝の支度をしにやって来た。
部屋の扉を開け、招き入れる。「今日も寒いわね…。」そう言いながら入ってきた無防備なレナを見て、私は「すっぴんでも充分、可愛いのに。」といつも言うのだがそういう問題ではないらしい。そういう所も、私の世界の女子と似ていると思う。
レナに洗面室を譲り、「じゃ、下で待ってるよ?」といつものように私は階下に降りた。今日はハーシェルも朝早い筈だ。もう、朝食を食べているかもしれない。
「おはようございます。」
ダイニングに行くと、案の定ハーシェルはもう食後のお茶を飲んでいた。彼の食べ終わった食器を下げながら、自分のお茶も用意する。今日は自室でお茶してないからな…。やっぱり朝の一杯は必要だよね。
「おはよう、ヨル。ありがとう。今日は朝からエローラの所なんだろう?」
「そうです。なんだかあの二人が張り切ってて、ちょっと怖いんですけど…。」
「僕もエローラに物凄く細かく聞かれて、どうしようかと思ったよ。まぁ、みんなで楽しめるといいね?気焔から離れてはいけないよ?」
「大丈夫ですよ………今日はシュツットガルトさん達も来るんですよね?」
相変わらず心配性のハーシェル。私だってそんなに危なくない…ん?いや?結局、ラピスで「何か戦えるように」なんて言っててシャットで何か覚えようと思ったのに、ウィールでみんなに止められたんだった………。うん、大人しくしてろって。
ハーシェルはそんな私をちょっと笑いながら見ている。なんでだろう?ウイントフークさんに、何か言われたのかな?
「とりあえず、ヨルは気焔の言う事をよく聞くように。まあ、たまには二人でゆっくり楽しみなよ?」
「は、い………?」
シュツットガルトの話をすっ飛ばして、何故だか祭りの話になった。何故だ。
とりあえずハーシェルはもう出ると言うので、片付けは受け負って見送りをする。丁度ティラナが起きてきたので、「お父さん、行ってらっしゃい!」と二人で見送り、朝食に戻った。
「今日はリールとお兄ちゃんと行くんだ。」
ティラナがパンを千切りながら楽しそうに言うので、私が一緒に行けなくてなんだか申し訳ない気分になる。一緒にいれる時間も、短い。
でも、やっぱり帰ってこなければ良かったとは思えない。なら、楽しまなきゃ損だよね?そう、気持ちを切り替えて、でも思っている事は伝えておいた。
「いいなぁ。私もティラナと行きたかった…。」
「駄目だよ。お姉ちゃんは気焔と行ってあげて。二人は「お付き合い」してるんでしょう?」
ん?誰?ティラナにそんな事を吹き込んだのは?
一瞬そう思ったけど、多分、人から聞かれてティラナは嘘は付けないだろう。そう考えると、正解なのかもしれない。
なんとも言えない気持ちになりながら、サラダを頬張っているとレナがなんだか含み笑いをしながら、降りて来た。犯人、みっけ。
「レナ。」
「でも、正解でしょ?」
「まぁ。そうだね。」
でもなぁ…、とか私がブツブツ言っていると「ティラナはさ、将来どういう服作りたい?」と二人がキャッキャし始めた。
それを見ながら、そういえばレナはどうするんだろう?とふと、この間思った事を思い出す。
目立つよね、レナも。後でエローラに聞いてみなきゃ。でも二人は一緒にいるだろうから、大丈夫かな?
モグモグしながら考えていたら、もう出る時間が迫って来た。何故か、早めに来るよう言われているので水の時間迄に集合だ。本番は夜なのにね?
朝食の片付けをみんなで手分けして済ませると、ティラナの着替えで私が去年着ていたベストとスカートを着せてみた。
やっぱり祭りはおめかししないと?と、レナと二人で言っていたのだ。まだ、おめかし用の服を持っていないティラナ。私の服は少し大きいけどベストなら大丈夫だし、スカートは長くても可愛い。ウエストは紐で調節出来るので、大丈夫だ。
ブラウスだけ自分のものを着て、着替えを済ませたティラナを手直しする。
「うーん。ベストの身頃がやっぱりなぁ…。」
「ここ、何かでつまんだら?」
「………じゃあ縫った方が早いな?ちょっと待ってて。」
一度部屋に戻って宝箱から針と糸を持って戻る。
「時間になるわよ。」というレナの言葉にちょっと焦りながら、背後のウエストにあるリボンの陰をちょちょいとつまめば完了だ。
「よし、オッケー!可愛い!」
「お姉ちゃんありがとう。」
嬉しそうなティラナ。やっぱり女の子だよね…本当に可愛い。なんだか将来心配になるなぁ。
とりあえず、レナにティラナを隣に送ってもらうよう頼んで私は片付けと戸締りをする。
今日は、夜まで誰も帰ってこないもんね?
ティラナも私達が戻るまではルシアに頼んである。オッケー、バッチリ。
よし、行こう。
ん?気焔は??
「一緒に」って言ったのにどこ行ったのかな…。
とりあえず、エローラの家に行く事は伝えてある。
「じゃあ、急いで行きましょ!」と戻ってきたレナに言われ、「ま、大丈夫か…」と、二人でエローラの家に向かったのだった。
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