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6の扉 シャット
時差とそれぞれの事
しおりを挟むとりあえずその日はゆっくり休ませてもらって、次の日から事情聴取と面会?三昧だった。
何だかデヴァイから偵察だか何かが来てるらしくて、とりあえず私は部屋に軟禁状態だ。
寮の中は自由でいいとは言われているが、基本付き添い付き。でも、それはいつもの事だからまぁいい。
でもみんなは普段通りにするよう、言われているので「授業がない者から順にヨルに会いに行ってもいい」というレシフェの命に従って、順番に部屋に誰かが遊びに来る、という形を取っていた。
私がいなくなって、心配しているみんなに出来るだけ早く会わせてあげようというレシフェなりの配慮だ。
でも部屋だと男子には会えないので、落ち着いたらエローラやリュディア、レナの女子達と一緒にみんなで休憩室でお茶する約束をしている。
今のところ「視察の人が寮まで来るかは分からない」との事で、様子見の為にも始めのうちは女子だけが部屋へ行くよう言われているらしかった。
何だか、厳重警戒中だね…………。
でも、あの人橋の上で会っちゃったけど?あの髪の長い細い人だよね?
私はそう思っていたけど、教師陣からしてみれば心配の種は大人しくしてろ、という事らしい。
とりあえずベオ様が見える所に出ていれば、まあいいだろうとの事で、戻って早々ベオ様は忙しいみたいだ。
でも、本当に私達の腹時計では二日で良かった…………。
私は心底、そう思っていた。
だって、七日もあそこだったら多分、私はお腹が空いてイライラしてベオ様と仲良くなんて出来なかったに違いないから。それに七日も迷路みたいな所に閉じ込められるなんて、想像でも嫌すぎる。
ま、結果オーライになったから良かったけどね…………。
結局川の下?に落ちてみて、落ちる前には思ってもみなかった結果になった。いろんな事が。
それはやっぱり、帰ってきてから私の報告を聞いた誰もが、そう思ったようだ。
特にレナなんかは酷かった(笑)。
「ちょっと!ヨル、騙されてる!何されたの?カンナビー?」
イスファの件でカンナビーについては私達の間では共通認識として知らされる事となった。一応元凶は取り除いたとはいえ、「どこに伏兵が隠れているか分からない」と言うのが作戦本部長の言い分だった。
あ、勿論本部長はウイントフークさんね。
基本的にシャットには不可侵を貫いている筈のデヴァイの干渉が、教師にまで及んだ事で今回の騒動の引き金になった、とウイントフークは考えているようだ。確かにカンナビーをデヴァイから持ち込んで、長老を追い出したのはヘンリエッタだから。
でも私からしてみると、何だか本部長の思惑通りになった様な、気がするのだ。
結局蓋を開けてみたら、ウイントフークの指示でレシフェが先生として赴任して、何だか色々あってベオ様と闇の中に落ちた時もレシフェの言葉を思い出したし、レナとも仲良くなって次の扉、グロッシュラーに行く事は私の中でもう決まっている。
まさか、そこまで本部長が読んでいたとは思いたくないけど、何だか手のひらの上感は否めない。
あの人、私の目的を知ってるんじゃないかと思うくらいだ。
まぁ、いいんだけどね………結果オーライだから…。
自分の中ですんなりと次の扉に行く事が決まったのが何だか不思議な感じがする。
結局、行き着くようになってるの?
どういう、導きなんだろう…?
目の前のレナを見て考えていた。
始めは全然仲良くなると思わなかったな?ツンツンしてて、私なんか相手にしてない感じだったし…。でも女子力については、見習いたいと思ってたけど。いや、今も思ってるけど。
フワフワの髪をかき上げながら、レナは「絶対無理。」とか言ってるけど、…多分ベオ様の話だよね?
途中から思考の海に落ちていた私はあまりレナの話を聞いていなかったので、とりあえずはベオ様の擁護をしてみる事にした。
「でもさ、レナも気付いたでしょ?」
「…………何が?」
いや、この返事気が付いてるよね…。まだ会ってないのかな?
流石に助けた子からこんなに嫌われてたら、可哀想だよね…?私がフォローしてもいいところだよね?これは。でもレナがすんなり受け入れられるかは、別だけど。
何となくだけど、多分ベオグラードの性格以前に「デヴァイの人間」というのがレナの中で駄目なような、気がする。…致命的。
うーん。まあ私がここで悩んでても始まらないから、とりあえず話しておこ。
話すだけ、タダ。
「ベオ様さ、レナの事庇ったでしょう?」
「…。うん。」
「まだ、お礼言ってないよね?」
「…………。」
「多分ね、お礼、言わなくてもベオ様は気にしないと、思うんだ。」
「…………?」
ちょっと気まずそうに下を向いていたレナがそこで顔を上げた。
「なんで?」と顔に書いてある。
その顔が可愛くって、つい笑ってしまった。
「いやね?だって「惚れた女を庇うのは当たり前の事だろう」って堂々と言うんだもん。なんか、聞いてて私が照れたわ!」
ケラケラ笑いながら私がそう言ったので、レナも何だか雰囲気が和らぐ。
「ベオ様もなんか協力したいって言ってたよ?お店の事。心配してた。」
「あとね、………私達「本当のこと」を見つける為に協力する事にしたんだ。」
「………本当のこと?」
「うん。」
私の瞳をじっと見て、不思議そうにレナが訊ねる。
この、始めはベオグラードを毛嫌いしていた私が協力する、と言っている理由。勿論、一緒に「本当のこと」を探す事になるであろう、レナにも話しておきたい。そう思って、私はベオ様と話した事をレナにも聞かせる。
私達の世界の関係を知って、理解して、その上で考えたいという話を。未だ、私達のそれぞれの知識、世界間での認識は予想の域を出ていないものも沢山ある筈だ。これまで連綿と受け継がれてきた悪習もあるだろう。でもきっと物事には理由があって、そうなっている。
その理由を知る必要があるのだ。
何も聞かずに伝聞だけで決めるのも、それで好きだ嫌いだ、駄目だと言うのも違うだろう。きちんと、まず「知る」事から始めよう、と。
「本当のこと」を。
「多分、本人もショックを受けてたよ。私達との意識の違いに。」
「そう…。」
「まあ、店を助けるって言ってたのは正直期待してないけど。気持ちだけ受け取っといたわ。子供一人でどうなる事でもないよね…。」
私のその言葉を聞いた時、レナの中の何かのスイッチが入った。
あれ?
何だかどっかに行っちゃったみたいだね…。
でもそこはお互い様なので、そっとしておいて私はレナが纏めてくれたハーブのノートに目を移す。
可愛いレナっぽい字が踊る、ピンクのノート。
不在の間、畑で色々調べていてくれたようだ。
何々…………ふーん?ほうほう。でもこの辺は実際行って見ないと分かんないな…。
そのままレナは「じゃあまた来るわ…………。」と言って考え事をしながら出て行ったので、私もそのままノートに没頭した。
ちなみにレナは私達の事、心配はしてくれてたみたいなんだけど「ヨルだから大丈夫」という謎の自信により、そこまでは心配してなかったらしい。
ベオ様の話になる前、部屋に入ってきて私の姿を見た開口一番は「やっぱりね。」って言ってたし。
まあ、心配かけていなかったならいいのよ、うん。
でも、エローラは違った。
実は私はエローラも心配はしてくれてるだろうけど、大丈夫だと思ってると思っていた。レナみたいに。ただ、エローラには一つ心に引っかかる点が、あったのだ。
私は全然思っていなかったので気が付かなかった、その理由。
そう、それは「自分がウィールに誘ったから」というものだった。
「ヨル!!良かった!!…ごめ~ん!!」
入ってきてすぐ、そう言って泣き出したエローラ。
私はエローラが泣くのを初めて見たので、ちょっとびっくりして見入っちゃったよ…。
ハッとして、すぐに慰めた。だって、エローラのせいだなんてある訳がないから。シャットに来たのだって、必要があったからだ。
石を探す目的もあったし、何より修復についてここまで導いてくれたのはマデイラとエローラだと、私は思っている。感謝こそすれ…………。
あれこれ、言葉をかけてみる。
でも全然泣き止まない。泣き止んだかと思えば私の顔を見てまた始まっちゃう。
「ねえ、エローラ。」
うーん。全然泣き止まないな…。
何か、いい手は無いものか。
「!」
私はピンと来た。アレだ、アレ。アレをやろう。
エローラにこそ、効果があるであろうあの、色を。
「ビクス?」
「なんですの?」
「アレにしてよ、アレ。」
「いいんですの?怒られません?」
「うん。多分、今は大丈夫。」
誰に怒られたんだろう…。気になるな。
まぁ今はエローラだけだから、大丈夫だろう。
私が青い事は秘密だけど、私がおかしな事はみんなもう、分かっている。
ちょっとピンクになったところで大丈夫。エローラなら。
私はまたビクスにスルッと色を変えてもらって、エローラに呼びかける。
「エローラ?」
やっぱ駄目か。
よし、それなら…ホレホレ。
私はエローラの視界に入るように、俯いている顔の下に赤の髪をチラチラ揺らす。
そう、視界に赤が入ったエローラはやっぱり顔を上げた。
「…………な、なにそれ。凄く、いい!」
「でしょう?」
やっぱり食い付いたエローラに気の済むまで赤の髪を触らせて「やだ!光が当たるとピンク!」と遊んでもらい、瞳もしっかり観察された。
一頻り、梳かしたり編んだり、瞳を動かすよう指示されたりと遊ばれると、気の済んだエローラは一息ついて、言った。
「でも、やっぱり心配した。とにかく元気で戻ってくれて良かった。まだ、服も途中だしね?」
そう、今回ラッキーな事に石は、見つけた。本当にこの広大なシャットの中を宝探ししなきゃいけないと思ってたから、なんか幻の魚をぶん回してくれたベオ様には感謝かもしれない。
アレを捌くとか無理だし…………あ。でも鱗は欲しかったな…。
でも幻の魚の代わりに私が手に入れたものが、ある。そう…………。
アレね、アレ。今は休憩室でみんなに世話されている、アレ。名前、どうしようかな………?
あ、そうそう、服の話だった。
エローラの言う通り、修復も勿論終わらせなくてはいけない。全然、まだ途中だし。あの二人の服も、私のワンピースもまだだし。
早く授業に出たいけど、あの人いつまでいるんだろう?
私がウィールに行けないし早く帰ってくれないかな??
「エローラは服、出来た?」
「うん、自分のはすぐ決まるから一着は出来たよ。今はハサミの代わりに納めるやつ作ってる。ちょっと一般向けにデザイン変えてるけど、どうもしっくりこないんだよね…………。」
うーんと悩んでいるエローラ。自分の好きに作ればいいのに。エローラなら、その方が断然いいに決まっている。
それをそのまま伝えたら「だよねぇ?やっぱり?」って言ってたけど。一応残して行くものなので、気を使ったらしい。
それもまたエローラらしいけど、きっとその人の個性が出るものを置いていった方が喜ばれるはずだ。
その後リュディアも合流して、私のいなかった間の話とかを色々聞いた。
そこで凄く感じたのが、私達地下迷路組と、こっち側のみんなとのギャップだ。
とにかくみんなはとーーーーっても心配していたらしい。もし、川に落ちてたらそれもまずい。でも、落ちたのかどうかも分からない。何か黒いものに襲われそうだった、と報告されたけど結局大丈夫だったのか、とか。
そこから調べるとなんと原因はまじないらしいという事が分かってきたが、レシフェ達は生徒に全てを教えてくれるわけでは無い。
教師達は方々動き回って焦ってはいたらしいが、その様子が見えているにも関わらず中途半端にしか知らされない、生徒達のやるせなさは「もう、シェランとかヤバかった」らしい。
うん、それは何となく、分かる。
でもとりあえずはみんな、各々やる事を与えられたのでそれに打ち込む事でストレスを発散していたようだ。
「まじない道具が色々出来た」とリュディアが嬉しそうに報告してくれたから。しかもウイントフーク教の二人の元に、教祖がやってきたのだ。
え?私いなくても全然楽しんでそう…………それだけは間違い、無い。
とにかくお陰で色々捗ったらしいので、ウイントフークにはいろんな意味でお礼を言わなきゃいけないんだなぁと、思った。
そうしてなんやかんやと物凄く大変だったのに、帰ってきた私達は何だか仲良くなってるし、意外と元気だし呑気さまで感じてみんなちょっとゲンナリしたらしい。
いや、大変だったのよ?一応。多分………。うん。
でもやっぱり、ビクスが核のまじないの中だったので私は居心地が良かったみたい。始めの闇も、全然怖くはなかった。勿論、明るくなってからも。お陰でベオ様の攻略に力を注げた訳だけど。
そんなシェラン曰くの「ちょっと話が分かるようになったベオ様」は、偵察係の相手を一手に担ってくれてるみたいで中々活躍してるらしい。
途中、報告にやってきたレシフェとウイントフークが言っていた。
そう、来ちゃったのよ私の部屋に…ウイントフークさんが。
とにかく怒られそうな案件だけは沢山持ってる私は、「目耳」にウイントフークの姿を見せられた時はちょっとベッドに隠れようかと、思ったわ…。
「朝?朝は??」
私がウイントフークの来訪を知らされて、クッション役の朝を探している時、始めに部屋を訪れたのはレシフェだった。
「諸々報告があるし、お前からも聞きたい事がある。」って、部屋にやって来た。
先生は男でも来れるらしい。
女子達が来れない授業中は暇なのでレシフェを歓迎した私。
みんな、なるべく遊びに来てくれるけど、ずっとはみんなも大変だし、そうすると結局暇な時が多いのだ。
何だか気焔は相変わらず、あんまりいないし?
そう、あの後気焔はだいぶマシにはなったけど元に戻った訳ではなかった。まだちょっと、オカシイ。何なんだろうな…。
「まず、ビリニスの事だ。」
レシフェが話し始めて我に返る。
ビリニス…何だかんだ、実は話には聞いているが結局私自身はきちんと会った事がないのだ。
朝は「会わなくて正解」って言ってたけど、どんな人なのかな?
始めは気楽に報告を聞いていた私。
でも、段々話の内容が進むにつれ私たちがいない間、みんながどんな気持ちだったか解るようになってきた。
ビリニスの話には勿論、ヘンリエッタも絡んできたしイスファがカンナビーを使われて、今はウィールの地下に監禁されている事もどんどん、レシフェは話していく。
大きなまじない機械の事、そして機械人形の事。機械と融合させる為に、人を拐って何らかの方法で機械人形を作っていた事。勿論、その人間は生きてはいない。その人形達が「青」に染められていた事。
そして、既にビリニス本人は死んでいる、という事。
殺されたのか、自ら命を絶ったのか。それも分からないと、いう事も。
一連の話が終わった時、私は鳥肌が立っていた。
ベオグラードが飛んできた黒い物を「ビリニスの烏」とはっきり答えていた事。
あれは、本当に自分を狙った物なのだと初めて実感したのだ。
そして、何だか能天気だった事を心底反省した。
「まあ、仕方ない。お前が無事で良かった。」
多分、私が落ち込んでいるのを分かったレシフェに慰められる。
でも、大事には至らなかったけど結局私を狙ったビリニスがヘンリエッタを唆してイスファにカンナビーを使い、ベオ様とレナも利用して気焔の目を逸らした。企みとしては、成功したのだ。
まんまと幻の魚を見に行って、捕まった私。
確かに…。結果としては誰も、大怪我とかはしなかったけど。
でもイスファは…。
私がぐるぐるしている内容が解るのだろう、レシフェがまた、こう言った。
「だから。お前のせいじゃ無い。これは、俺らの問題だって言ったろう?」
確かに。レシフェはそう言ってくれたけど…………。
背後で扉の開く音が、した。
その時、ウイントフークが入ってきたのが見えて、私のぐるぐるは見事に吹っ飛んでいった。
ある意味、凄い慰め方?違うな…。
ああ、ウイントフークさんだ…………。
ラジオ電話で声だけは聞いていた。けれども実物はやっぱり、違う。
遠くからは見たけど、暫くぶりに近くで見る、生ウイントフークだ。
いつも通りに水色の髪を束ねた、白衣のウイントフークを見て物凄く、安心した自分がいた。これから怒られるのでも、構わない。凄くホームな感じがする。
これ、ハーシェルさんが来たらヤバいかもな?
そんな事を考えている私に、開口一番本部長はこう言った。
「順調だな?」
ええ?!どこら辺が?!??
完全に「???、?」な私を他所に、何故か一緒に入ってきた朝とウイントフーク、レシフェは話始めた。
急に、予言の話を。
乾いたノックの音が聞こえる。
「はぁい?」
珍しくノックの後、すぐに入って来ないので扉を開けに行く。
そこにいたのはエイヴォンだ。
んん?何だかみんな集合し出したな?
そう思っている私を他所に、男達はまた予言の話をし始める。どうやら、古い言葉の意味を照らし合わせて色々な方向から検討しているらしい。
で、それを何で私の部屋でやる訳??
真ん中のテーブルを占領されている私は、壁際の机の椅子も取られているのでベッドに座ってその様子を見ていた。
なんか懐かしいな…ここにシンがいたら、ラピスみたい。
あ、エイヴォンさんはラピスにいないから、ハーシェルさんの代わりかな………?
そんな事を考えたと同時に「パッ」とシンが出た。
うん、「出た」よね。
「あの男、面倒だから帰すぞ?」
私の前、みんなの後ろに急に現れたシンは、突然そう言った。
シンが突然現れるのに慣れているエイヴォン以外の面々は、普通に話し出す。エイヴォンはビクッとして、しばらく黙ってたけど。
「そうか………。情報を掴ませてから、とも思ったがやっぱり邪魔は邪魔だからな。やたらとビリニスの部屋を調べていたし、もしかしたら機械人形と不死を繋げるつもりだったのかもしれん。」
「それは俺も思った。しかしそんな事をできる奴、あそこにはいないだろう?」
「まぁな。…………行くなよ?」
ウイントフークとレシフェが物騒な話をしている。
結局、機械人形とやらは全部気焔が燃やした、と聞いたがウイントフークが不死と繋げられる、と言うくらいの物。危険なのだろう。
しかしこの二人よりも腕の立つまじない道具を作れる人なんて、存在するのだろうか。
それにしてもなんで「あの男」で視察の人だって分かったのかな………?と私が思った時には、シンはまた消えていた。
もう、帰すのかな?まぁ、私的にはここから出れるから有難いけど。
でも男達の話を総括すると、やっぱりあの人の目的がビリニスの研究っぽい、という事だったのでそれならさっさと帰ってもらった方がいい。
余計な事にまで辿り着く前に。
シンがどんな手を使うのかは、分からないけど。
そうして話はまた予言の話に戻った。
「ねえ、なんで私の部屋で予言の話し合いしてる訳?」
至極当然の質問をしたつもりだったのだが、何だかみんなの目が呆れているのが解る。
なんで。
そりゃ、関係あるって言われてるけど…。
「気焔から聞いてないのか?」
レシフェに言われて、頷いた。
え?気焔が悩んでた話って、これ?予言の話なの?
隣で朝がため息を吐いているけど、なに?
私が察しなきゃいけない話?んん?
全然、見えない。
「まあ聞いていないならいい。今聞け。」
いつも通りにそう、ウイントフークに言われてちょっと安心する。なんか教えてくれない案件、多いんだもん!
気焔…秘密は程々にしてよ?
そう思いながら聞いた予言の話は、まあ、なんて言うか、………うん。
もう一度、「私は十津國依る。普通の中2!」って言いたくなる内容だった。
「…………話が大きくなりましたね?」
私の一言に、誰も否定はしない。
でも、やっぱりレシフェは言った。
「まあ、お前がやる事が変わるわけじゃないからな。とりあえず、今まで通りでいいんだよ。だって急に「じゃあ救って下さい」って言われても、無理だろう?普通でいいんだ、普通で。」
「何かもう普通がわかんなくなってきそう………。」
「まぁな…………」
そう、私とレシフェが言っているとウイントフークが入ってきた。
「でもお前、ちゃんと出来てるから大丈夫だ。俺の予想以上。」
「へ?ウイントフークさんの予想?!嫌な予感!」
「まぁそう言うな。助けになればと思ってレシフェをやったが、正解だったみたいだな?中々難しいからな、お前達の相手は。」
「…………。」
その、お前達って私じゃなくて気焔とシンじゃなくて??
その、ウイントフークの考えは間違ってない。
確かに気焔と、シンだけだったらウィールは絶対無理だと思う。頭が良くて、気焔とシンにちゃんとものが言えて、常識を分かってる(この世界のね)人なんて、そうはいない。
私にはウイントフークかレシフェしか思い当たらないし。
本部長が直々に来てもいいんだろうけど、多分ウイントフークが動くと影響が大きすぎるんだろう。
ラピスに残すハーシェルさんも心配になるし…。
多分、デヴァイからきたあの人も知り合いなんだと思う。一緒に歩いてたし、前にデヴァイにいた事があるって言ってたし。なんかみんなウイントフークさんの事知ってるし…………。何なんだろうな、ホントこの人…………?
私のぐるぐるは、再びのノックに止められた。
今度は誰だろう?
「ヨル?………え?失礼しました。」
部屋を訪ねてきたのはエローラだ。
でも、デカい男達を見留めると部屋を出ようとするエローラを、急いで引き止める。
「ちょ、どうしたの?」とベッドから飛び降り、走ろうとして更に転びそうになった私を一番近いレシフェが支えてくれたのを見て、止まった。
まあ、この部屋チラッと見ると怖いよね…。流石に男の人三人増えると、部屋が狭く感じられるし。
ウイントフーク→一応知ってる、デカい
エイヴォン→ちょっと知ってる、デカくてガタイもいい
レシフェ→優男、チャラい
うん、レシフェ緩衝材。
「ごめん、ありがとう。」とレシフェに言ってエローラのところに行く。とりあえず、部屋を出よう。うん。
でも廊下で聞いたエローラの話は、意外なものだった。
「元気がないんだ。色が変わってきたし…。」
「え?」
「あれよ、ヨルが拾ってきた魚。」
「ああ!」
なんて事?!
そして私は「ちょっと行ってくる!勝手に解散してね?」と男達に言い残して、急いで休憩室に向かった。
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