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5の扉 ラピスグラウンド
迷探偵 ヨル
しおりを挟む「これまた大変そうな問題を持ってきたね。」
少し疲れが見える緑の瞳を細めながら言われた。ハーシェルにそう言われるのも仕方が無いと思える程、今回の相談内容は難しいと思う。
居間の長椅子に膝を抱えて座りながら、頷いた。
予想外の相談に、私だって頭を抱えているのだ。
「だから、とりあえずウイントフークさんの所に行くしかないと思って。正直、手がかりゼロで途方に暮れてます。」
「君がそこまでしなくちゃいけない事でもないんだけどね。」
そうは言いながらも私が無視できないのを知っているハーシェルは、なんだかんだで話石を手に取った。すぐに聞いてくれるのだろう。
基本、いつも自宅で作業しているウイントフークは、こちらの都合を伝えて時間指定した方がいい。善は急げ。
モヤモヤする時間が長くなるので、早い方がいい。明日行きます、と伝えてもらった。
その夜、私は会議を開いた。すっかり私の部屋になった客間のいつもの場所に座り、ホッと息を吐いた。
いつもの、セーさんと石たちの会議。またの名を雑談とも言う。話す事で、結構落ち着いたりするからだ。考えを整理するにもいいしね。
マリアナから話を聞いてから自分でも影響を受けている事を感じていたので、セージを焚いて心を落ち着かせる。
息をゆっくりと吸い込みながらゆらゆらと登る煙を見て、ヨークのグラスで水を飲んだ。美しいものはやっぱりリラックスするのに最高だね。
しばらくグラスを楽しんだ後、少し気分も落ち着いたので、私は目的の気焔に話しかけた。
「で、気焔。ちょっと出てきて欲しいんだけど、できる?」
「出て行くとは?姿をとれという事かな?」
「うん。なんかパワーが足りないとか何とか言ってなかった、あの時?パワーが足りたら、全部が出てくるっていう事?」
「まぁそうだ。もう少し、日常的にまじないを使う必要がある。そうすれば私もかなりの…」
かなりの??なに?
なんだか急にモゴモゴし出した気焔に呆れながら、放っておいて手元の日記を開く。確かまじない石についても少し記述があった気がしたのだ。
分厚い表紙の古びた日記帳を開く。紙を破らないよう丁寧にめくる。意外と痛んでいるページが多いから気を付けないと破りそうだ。
私がまじない石の事が書かれているページを探し当て開くと、文字がキラキラと光っている言葉があった。
え?今までは光ってなかったよね?
以前、相談室で光った時と同じように、文字がきらりきらりと点滅するように光っている。
「気焔万丈?」
キラッ
その言葉を呟くと、腕輪が鋭く光る。しかし腕輪だと思ったが光ったのは気焔だった。そして、石が眩く光るとみるみるうちにまた気焔から腕が出てくる。
「うぇ???」
びっくりしていると、燃えているような気焔の腕はそのまま日記をめくる。
それが指したページには数字と、それに対応するように言葉が載っていた。
え?え?読めっていう事?
気焔の腕はまだそのページを指している。その指が指しているのは、少し滲んだ5の数字。そして5の数字に書かれている言葉はさっき私が言った言葉だ。
他の数字はもう少し長い言葉が書かれているけど、5番だけ短い。一言、「気焔万丈」とだけ。
指はまだその言葉を指しているので、とりあえずもう1度読んでみる。
「気焔万丈?」
「なんだその腑抜けた呪文は。もうちっと心を込めい。」
え?呪文?
その時、少しの変化に気が付いた。気焔は文句を言っているが、石から出ている腕に少しずつ色が付いてきている。この前出た腕も、さっき出たばかりの腕も炎を纏った深い黄色の透けた腕だった。それに色が付いて不透明になったのだ。少し、本物の腕っぽくなる。
なにこれ。言えば、濃くなるのかな??
試してみようと、少し真剣に言ってみる。
私はちょっと姿勢をピッと正した。
「気焔万丈」
すると、腕がしっかりしてきた。少し黄色の炎を纏っているが割と普通の腕に見える。
え?いい感じじゃない??
調子に乗った私はもうちょっと気合いを入れてみることにする。更に声を張る。
「気焔万丈!」
ちょっとかっこよく言った。
すると、左手も出てきた。ちょっと透けてるけど。
こうなったらどんどん出しちゃえ!
調子に乗った私はどんどん唱える。
「気焔万丈!」
よし、胴体出てきた!
「気焔万丈!」
はい、片足!
「気焔万丈!!」
よっしゃ、もう一本!
「気焔万丈!」
「気焔万丈!!」
「気焔…………」
ハァハァハァ…………
無理、もう限界…………。
しばらくやって最終的に私が出せたのは、なんと首無しの気焔だった。いや、シュールでしょ、コレ。
出さない方が、良かったかも。
身体から力が抜けてドッとベッドに倒れ込む。
滅茶苦茶疲れるのだ。唱えるだけで。そして気焔はまだ腕と胴体以外は結構透けている。これが透けない程度って、どんだけの体力…………。
天井を見てボーッとしていると、気焔が言う。
「とりあえず戻るぞ?」
そう言って気焔が石の中に戻る。すると、少し楽になった。良かった…もう寝るだけとは言え、しんどすぎる。
「まぁ何となく出してる割には上出来ではないか?」
「え?ハァ、何となく??」
かなり気合を入れて出したつもりの私だが、気焔になんとなくと言われて憮然とする。どういう事だ。
「しかし、依るは今吾輩を必要としていないだろう?必要としていない時に実体化するにはかなり依るの力が必要になるはずだ。」
それ先に言ってよ…………。
必要じゃない訳でもなかったのだが、必要かと言われると軽い気持ちで出そうとした事はそうとも言えるかもしれない。とりあえず突っ込む気力がない私はため息で応える。なんにせよ、疲れた。
少し休んで、セージの香りを感じれるようになるとやっと頭もスッキリしてきた。
「ねぇ。じゃあ私が必要な時に唱えれば、全部出てくるかな?」
「ちゃんと力を込めれば、あるいはな。依るならできるかもしれん。本来ならもう少し修行が必要だ。」
「え。修行はキツいな…………。」
唱えるだけでだいぶ疲れた私は弱気だ。でも気焔出せないと、困るんだよな…………。
私がこんな事を試しているのには、わけがある。
私は今のところ殆ど1人で外出できない。近くなら、ティラナと行く事ができるが、例えばウイントフークの所だとハーシェルがいないとダメだし、ベイルートの所はイオスと一緒だ。とにかく誰かの手を煩わせることになる。用があって一緒に行く分には構わないが、明日のようにちょっと聞きに行きたい時にハーシェルを休ませる訳にはいかない。
できれば、1人で行きたいのだ。
もし、気焔が夢に出てきた宙みたいに人になれるなら、それが1番いい。結局いつもくっついてるんだから、ちょっと役に立ってくれればいいのだ。そんな、気焔を番犬扱いしようとしている私を知ってか知らずか、セーさんが口を開いた。
「ヨル、あなたまやかしのハーブを使いなさいよ。そうすれば万事解決じゃない?」
「まやかしのハーブ?」
とはなんぞや?
「確かまだあったかなかったか…………ああ、でも明日なのよね?それじゃ間に合わないかも…?いや、そう言えばあそこにあるわね。ちょっと入り口の扉に行ってみて。」
セーさんが言う入り口の扉とは、玄関でいいのだろうか。とりあえず、植木鉢を持って下に降りる。「扉の前にハーブが吊るされてないかしら?」とセーさんが言うので確かめに行く。階段は思いの外暗い。気を付けなければ落ちそうだ。
「こら、ヨル。寝てなかったのか?」
「ヒッ!」
誰もいないと思っていたので飛び上がってしまった。そこにいたのは丁度灯りを消して、2階に上がろうとしていたハーシェルだ。
こんな時間に植木鉢を持って降りて来た私を、不審な目で見ている。ええ、確かに怪しいですよね。私も流石にそう思います…。
ハーシェルは台所の灯りをつけて腕組みをした。どうやら説明が必要なようだ。
「えーと。入り口の扉に、なにかハーブがぶら下がってませんか?」
「ん?ハーブ?ラギシーの事か?」
あるみたい。気付かなかった。
セーさんの言う通り、何かぶら下がってるらしい。「それって何なんですか?」と逆に私に質問されたハーシェルはしかめっ面をしながらも教えてくれる。
「あれは魔除けも兼ねて家の入り口に下げるハーブだ。悪いものから見えなくする、と言われている。で、こんな時間に何故それが気になる?」
あ、お父さん夜更かししてるから怒ってるね…。
しまった…と思いながらも、説明しないと寝させてもらえなそうだ。観念して、セーさんをテーブルに置くといつもの席に座る。それを見てハーシェルがホットミルクを作りだした。
作っているハーシェルを見ながら、私は説明を始めた。
「…………という訳で、いつまでもハーシェルさんに迷惑をかけるわけにも行かないので、何とかしようとしたらセーさんが入り口のハーブが使えるって言うんで…。」
「明日は私が付き添うつもりだったが。しかしラギシーを持って行った所で、ただの魔除けだぞ。どうやって使うんだ?」
「セーさん、どうするの??」
テーブルに置かれたセーさんは黙って私達の話を聞いていた。そして徐ろに話し出す。私が相槌を打っていると「ヨル、植物とも話せるのか?!」ってハーシェルが驚いているけど、言ってなかったっけ?
「力のあるまじない石と一緒に使うの。まじない石が頼めば、その間は姿を隠してくれるはずよ。ヨルの石なら、なんて事ないと思うわ。」
「そうだな。葉を持って行くといい。あの距離ならそれで間に合うと思うぞ。」
気焔が了承してくれた。あとは、ハーシェルだけ…。
くるりとハーシェルに向き直ると、説明して欲しそうな顔をして、こちらを見ていた。あれ?どこから説明必要?
「ハーシェルさん、セーさんが言ってる事分かります?」
「いや。セーさんとは、このモクローの事だね?」
モクローとはホワイトセージのこちらの世界の名だ。
「そうです。えーと、気焔が力を貸してくれれば姿を隠してくれるそうです。どのレベルで見えないのかはちょっと試してみないと分からないんですけど……………、そうですよね。やります。」
はい。確かにお父さんの前での確認は必要ですよね。
確認しないと1人では出してもらえないのは分かっている。私はセーさんに確認して、鍵を開け、外にかかっているラギシーの葉を1つ取ってきた。ラギシーは柊のような葉の植物だった。ヒイラギ→ラギシー。はい、覚えた。
それで?これを?どうするの、気焔?
葉を持ったまま、裏返したり観察していると私の考えが分かったのか、気焔が少し光る。ポワッとした黄色い炎が出てラギシーを包むと私も一緒にその中に包まれた。側から見たら、大きな黄色い火の玉だ。
「え。これめっちゃ目立ちそう。」
そう言った私に、ハーシェルの驚いたような返事が来た。
「ヨル、どこだ?」
「え?いますよ、ここに。さっきと同じです。入り口の扉の前に。」
「本当か。段々消えて行くから焦ったぞ。だが確かにこれなら大丈夫だな。」
そう言ってハーシェルは私のいる方に目を凝らしている。やはり、見えないっぽい。
凄くない?これ。
しばらくあっちに行ったり、こっちに行ったりハーシェルの視線が動くかどうか確かめたりして遊ぶ。
なんか悪い事出来そうだな?としばらく試していたら「もう遅いから寝なさい」と呆れ顔のハーシェルに言われ、ホットミルクを持たされて部屋に戻る。月明かりの階段を溢さないように気を付けて上っていく。
ハーシェルとぶつかると危ないので、階段を上がる前に気焔に言って力は解除してもらっていた。
解除も気焔の思う通り、自由自在のようだ。
セーさんは葉っぱでウイントフークの家まで行けるって言ってたけど、行きと帰り、2枚必要かしら?
そんな事を考えながら、とりあえずの問題は解決したので安堵しホットミルクを飲んでベッドに入る。
行動範囲が広がる事を想像すると楽しくなってきてしまい、私が眠りに落ちたのはそれからだいぶ経ってからだった。
「こーんにちはー!」
?案の定、返事は無いね。
ハーシェルから聞いた通り、私はウイントフークの所に着くと扉を開けて呼んでみる。試してみて反応が無ければ入っていいと言われているので、入るけど普通逆だよね?
「反応が無ければ入っていい」って、ププッ。
私もだいぶ慣れたもので、いつもの怪しげな通路をぶつからない様にスイスイ進んでゆく。しかしここはいつ見ても凄いな。今日も朝と一緒だ。私よりも慣れた様子で先に行き、もう姿が見えない。
幸いウイントフークは仕事場に出ていた。しかしきっと昨日からいるのだろう、若干乱れた髪と白衣でソファーに座り何か読んでいる。
毎日白衣を変えないと気が済まないこの人がこの様子という事は、ずっと本を読んでいたはずだ。
流石に自室まで入って呼びに行くのは気まずいな、と思っていたのでホッとしてお土産のお菓子をカゴから出す。テーブルに置くと、さすがにお茶の支度まで出来ないのでウイントフークに声を掛けた。
「おはようございます!ウイントフークさん?もう朝ですよ?というかもうすぐ昼ですけど。」
私が来る事は分かっているので、何ということもなく顔を上げ、時計を見た。ちょっと眉毛が上がってるから、予定よりだいぶ過ぎてるんだろうな。
彼はウイントフークブレンドを入れてくれた後、身支度の為に1度自室へ入って行った。
相変わらず見た目が悪いけどコレ美味しいんだよね…………。
ウイントフークブレンドは見た目が動物の糞に見える。前に尋ねた時は「色々混ぜて固めた方がうまい」とか言って鼻で笑われたが、この世界では動物の糞はこんな形じゃないんだろうか。
こんな見た目のくせに、爽やかなダージリンの様な味がする。私はあまり茶殻を見ないようにして、お土産のクッキーを自ら食べる。勿論、自分の食べる分も余計に買ってきたのだ。
危なくウイントフークの分まで手を出しそうになった所で、スッキリした彼が戻ってくる。何事も無かったように、出した手を引っ込めた。
「で、何の話だ?」
特に用件を伝えていないので、私は始めから説明を始めなくてはならない。とりあえず、マリアナが来た所から、どうやってここまで来たのかを説明した。
「なに、ラギシーでそんな事ができるのか?ちょっと待て。確か在庫があったはず…」
「ちょ、本題はそこじゃないですよ!」
私の言葉を無視してあの小さな作業場へ入って行ってしまった。まだ相談すらしてないのに!
報告と言うか事実を述べた所までしか行ってないのに、予想通りウイントフークはラギシーと気焔の事に気を取られてしまった。
失敗。これは最後に話せばよかった…………。
ため息を吐きつつ、独り言のように朝に話しかける。
「ねぇ。朝はどう思う?石が取り替えられているのは多分事実。まぁ見てないから何とも言えないけど、そこを疑っちゃうと進まないからね。盗られたものを探す事ってできるかなぁ??」
「そうねぇ。石に関しては私は分からないけど、噂を集めるくらいなら手伝えるわよ。ここ、意外と猫が多いしね。」
あら。その手もあったか。
ポンと手を鳴らして朝に向き直り、具体的に聞いてみる。どの程度の情報が集まるのか、猫たちは普段何を見ているんだろう?
私が色々質問すると、朝も考えながら答えてくれる。
「意外と猫は人の事見てるわよ。コソコソしている人がいると目立つだろうし、もし石を盗んだ人が隠したとすれば知っているかもしれないわね。見ていなければ場所は分からないけど、怪しい人がいた、とかなら調べたら分かるかもね。」
「それは是非お願いします。なんせ何から調べていいのか、さっぱりだからね。ウイントフークさん、石探知機みたいなやつ持ってないかなぁ?」
「それならヨル、お前が持ってるだろう。」
「え??」
小部屋から戻ってきたウイントフークは当然のように言った。何故分からない?と言うような顔をして、私の腕を指差す。
「最高に向いている石を持ってるじゃないか。」
「?これですか。」
私も腕輪を見る。みんながキラリと光った気がした。
ウイントフークの話を聞くに、石というのは1度所有すると持ち主の気配が付く。守り石になった時点で、個人の判別ができるのだそうだ。
ただ、長く離れると薄れるらしいので早めの捜索が必要になる。詳しくいつからすり替えられたのか聞いていないが、マリアナの様子からするにそう時間が経っているわけではないだろう。
そして石の気配は、ウイントフークの持論では石同士では判るはずだと言う。しかし、普通の人や石は意志の疎通ができないのでもし気配が分かったとしても知る方法がない。
「だが、お前は石の言葉が分かる。これ以上のものはないだろう。」
当然のように述べたウイントフークは、なんだか羨ましそうに腕輪を見ている。彼の視界に入らないようテーブルの下に腕輪をさり気なく持って行きながら、私は気になっていた事を訊ねた。
「ウイントフークさんはどうして石たちは石の事が分かると思ったんですか?何かそんな事が?」
あったんですか?と訊く。
すると、「ちょっと」と言ってまた小部屋に消えた後、何かの器具を持ってきた。
秤?
テーブルの上に置かれたそれは、秤に似ている。銀色の2つのお皿のようなものが、ユラユラと台の上で揺れている形だ。ただ、傾くわけではないらしく、付かず離れずでくるくる回っている。
何だか不思議な道具だ。
どうなってるんだろう?
あまりにフワフワ揺れるので、気になって下から覗く。銀の皿を支えている部分も鉄のように見えるが、やっぱりユラユラしている。柔らかいのかな…………??
私が道具を色んな角度から眺めている間に、ウイントフークは石をいくつか持ってきた。角の箱にあるクズ石と、棚に並べられている綺麗な石、色々取り揃えている。何が始まるのか、じっとウイントフークの動きを見る。
まず1つ、片方の皿に乗せた。クズ石だ。
そして空いている皿にもう1つのクズ石を乗せた。
すると2つのお皿がくるくる回り始める。始めはすこし早く、段々ゆっくりと。最後に2つのお皿が少しの隙間を空けて、並んだ。
「この状態をよく覚えておけよ。」
そう言って、2つの石を下ろす。
次はキラキラした石だ。片方に1つ、乗せる。
そしてもう1つはさっき下ろしたクズ石だ。
2つ乗せるとまたくるくる回り出す。しかし、今度は上下に揺れながら回っている。あの、遊園地にある飛行機の乗り物で上下しながら回転するやつに似ている。
そのままちょっと待つと、2つの皿は止まった。キラキラの石が上で、クズ石が下。そして2つのお皿も10cm位離れている。これは、キラキラとクズ石だから…………?
「わぁ…………。じゃあこのキラキラ2個でやれば、また同じように並ぶって事ですか??」
「正解。だが相性もあるから、皿の距離や高さなど若干の違いはある。このクズ石同士は相性がいいな。なにか…」
使えそうだ、とブツブツ自分の世界に入っている。ウイントフークがその調子の為、私は「これで遊んでいいよね?」と朝に了承を取り、色々な組み合わせで遊んだ。ある程度の法則が導き出せる頃には、ウイントフークが戻ってきた。
この人に相談すると、時間がかかるよね…………。
まぁ聞ける人がウイントフークしかいないので仕方がないが。
そしてウイントフークは何故石の気配や意志があると思っているのか、説明してくれた。
「勿論こうやって石同士の相性もあるが、人間と石の相性も勿論ある。さっきの子供が家族から石が合わないと言われていただろう?それは多分その石を奪うためかもしれないが、石が合わない事は実際よくある。わたしは自分の所の石を売る時と、鉱山からの石を子供に与える時、両方に関わる事があるが属性を合わせても石が合わない事は全体の3割位はあるな。まぁ決める前なら他の石を合わせて、1番合うものにすれば良いだけだが。」
「そうなんですね…………。結構大変なんですね、石を決めるのも。」
「そりゃ一生それで過ごすんだから、きちんと選ばないと自分が損するからな。ヘタな曰くつきなんか引いた日には、石に引きずられて一緒に連れて行かれるぞ。」
「ちょ、怖い事言わないで下さいよ…。」
何だか不穏な空気になってきたので、話を戻す。
そういう事言われると、ここって石がいっぱいあるから怖いんだよ…………!
「大丈夫だ。危険な奴はしまってあるから。」
「……………………。」
やめてってば。
「で、結局それぞれの石にも意思があって持ち主との相性もあるし、1度その人のものになったら判るって事ですよね?」
隣の朝を引き寄せながら話を切り替える。少し鳥肌が立ってきたので、フワフワせねば。
「そうだ。気配というか匂いというか、何かしらのものが移ると思っている。多分探すとすればその母親か子供の持ち物と、ばあさんのものが何かあればいいと思うが。借りてきたらどうだ?」
「そうですね…。お願いしてみます。幸いにもご実家の方が知り合いの家だったので、大丈夫だと思います。」
何となく、糸口が見えてきた。
とりあえずのやる事が決まったので、少しホッとする。ウイントフークがお茶のお代わりを入れてくれて、茶葉の形態について私とやんややんや話した後、ちょっと真剣な顔をして向き直った。
「石が無くなった、という相談は昔から無いわけではないのだ。今まで表立っていないだけでな。わたしの方でも調べてみるが、もしかしたらもしかするかも知れん。絶対に無理はするな。絶対に。何か分かったら必ず教えろ。1人で何か追いかけたり、首を突っ込むのは禁止だからな。」
この人絶対って2回言ったよ。
どうやら私は信用が無いらしい。ウイントフークさんの前でヘマやったっけな?あー、やったねお祭りの時。。
「はーい」
「分かってるのか??」
何だかお小言を言ってるけど、ウイントフークに言われたくないと思うのは何故だろう。
お小言を右から左に聞き流しながら、テレクに連絡を取ってもらおうとあれこれ考えていたのは内緒だ。
まぁ聞いてないのはバレてたと思うけど。
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