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5の扉 ラピスグラウンド

おまじないと美しい世界

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その日は夜明けと同時に目が覚めた。

まだ暗い部屋の中でベッドから起き出す。まだ早いのは分かっているが、頭がスッキリしているので起きる事にした。ここに来てから規則正しい生活だ。

いつもの窓辺の机に座り、窓の外を眺める。

森の奥から白い朝日が煌めいていて、幻想的だ。遠くの白く見える森、街のまだ暗い屋根。この、誰も起きていない時間が凄く贅沢な気がする。寝ているのか、セーさんも静かだし、朝も見えないという事はまだ布団の中だろう。
藍に頼んで朝の一杯を入れてもらい、飲む。調子がいいのは、この水のせいもあるかな?と思う。きっと藍が色々なものを浄化してくれているのだろう。

そのまま机に並べられたハーブを見て、そろそろ加工の必要があるな、と認識する。
採って来たハーブの奥にはルシアの店で買った、可愛いパッケージのハーブティーが並んでいる。その隣にはドライハーブの小瓶。

先日、おまじないで使うためのドライハーブを作ろうと、ルシアに付き合ってもらい畑に行ってきた。採ってきたハーブをドライにするために仕分けしているのが、この机の上。
これから束ねて吊るしておく。相談室が好評で、在庫が足りなくなっているのだ。


好きなものを綺麗に並べた空間で、グラスで浄化された水を飲む。贅沢な時間だ。
ゆっくり息を吐いて今日の予定を思い出す。
今日は注文していたものをヨークの工房に取りにいく日だ。今飲んでいるグラスが厚めで透明度も低いので、新しいものを頼んだ。
そう、毎日使うものって大事だよね…。
ヨークに「とにかくキラキラしていて、透き通って綺麗にお水が飲めるグラス」というザックリとした注文をしている。多分、ヨークならいい感じに仕上げてくれるはずだ。
その他にもドライハーブを入れる大きめのガラス瓶とビーカー的なものを注文してある。
完成品を見るのが楽しみだ。

ゆっくりとお気に入りコーナーを堪能すると、身支度を整える。ちょっと早いけど、下に行って朝の支度をしようっと。



時間は早いが空はすっかり明るくなっていた。階段を下る。台所へ入ると、居間の方で声がする。

「……分かった。」

ハーシェルが話している。誰だろう?

そのまま台所で朝の支度を始めると、ハーシェルがやってきた。居間で話していたという事は話石だろうか。初めて見た時は、ちょっと面白かった話石。所謂電話と同じ機能だが、石に向かって話す所も面白いしちょっと移動したい時は持って話す事もできる。
これはケータイになるんじゃない?って思ったけど、家から出ると使えないそうだ。人と、場所で登録してあるので登録場所以外だとまじないが届かなくなるらしい。

ダイニングテーブルのいつもの場所に座るとハーシェルは話石の内容を教えてくれた。

「今日ヨークが都合が悪くなって、ロランが届けてくれるそうだ。」
「え?ヨークさん大丈夫なんですか?」
「ああ。体調が悪いとかではないらしい。外せない用事が入ったらしいよ。君に悪かった、と言っていた。なんだかお詫びの品も入れたって言ってたけど、君には甘いからいいものが入ってそうだな。」

顎に手を当てながら楽しそうに考えている。
私が工房に顔を出すようになってから、ハーシェルにも割とサービスしてくれているらしい。私でも役に立つ事があってよかった。
茶器や食器が好きなハーシェルが得をするという事は、回り回って私も得をするという事だ。結局私も使うからね…!


今日のお出かけの予定が無くなったので、さっきのドライハーブ作りを進めようと頭の中で計画する。今日は作業日にしよう。


朝食後、部屋でハーブを選り分けているとティラナがロランの持って来てくれた注文品を届けてくれた。ロランは私に会いたがっていたようだがハーシェルに帰された、とティラナが言っていた。折角届けてくれたのに、悪い事したな。ハーシェルさん忙しかったのかな??

作業を中断して、包みを開ける。机の上がいっぱいなのでベッドカバーの上に並べていく。

大きめのガラス瓶が4つ。
キラキラのコップ。
注ぎ口が付いたビーカーもどき。
そしてきっとこれがおまけだろう、キラキラのコースターみたいなものが入っていた。

初めて工房に行った時に、ヨークがやっていた接続のまじないを使って繋げた、青いガラスの小さいものだ。きっと商品の残りで作ったものだろう。一つ一つがキラキラした波型加工をされているガラスを繋げているので、置いてあるだけでも凄く綺麗だ。上面が平らになっているので、こちらにものを乗せるのだろう。早速注文のコップを乗せる。

「最高です、ヨークさん。」

直接会ってお礼が言えないのがもどかしい。次に行く時はイオスのお菓子をお土産に持って行こう。

キラキラしたコップを洗面所で洗うと、早速藍にまたお願いした。
コップは薄すぎず、厚すぎず絶妙な薄さで下から青のグラデーションになっている。キラキラ、という私の要望には切子のような模様で応えてくれたようだ。飲み口の透明な部分は綺麗な透明ガラスで、下に行くにつれて気泡がバランス良く入っている。下の色が濃い部分にカットが入っているので、気泡と合わせて更にキラキラが増してコースターと合わせるとセットのように見えた。

これ、合わせて作ってくれたんだろうな。

ヨークの想いにほっこりしつつ、水をキラキラ透かしながら飲む。

「やっぱり美味っ。」

いつまでも眺めていられそうだが、作業を再開しよう。


ハーブの選り分けが終わると、それを束ねて壁に吊るしていく。
今回作っているのは桃月草、月花草、紫月草、柳草の4種のドライだ。これはおまじないの時に、相談者の属性に合わせてハーブを調合する為だ。
それぞれ4種が個人の属性火・水・土・風に対応していて、それに香りのバランスとしてラペワンダーやカッサヒーなどをブレンドする。それぞれの属性に合わせたブレンドの方が効きが良いのは実験済みだ。
実は、あの日記に書かれていたおまじないにハーブとおまじないをする人との相性も載っていた。どれがどのハーブなのかわからない私はルシアに聞いて、メモを作った。絵と、こちらでの名前、あっちでの似たハーブの名前。
実はラペワンダーはラベンダーに似ている。名前も似ているので、助かるのだが全く似てないものなどはメモに残しておかないと香りが分からなくて困るのだ。始めはそんなにおまじないも教えていなかったが、相談室が知られるようになりおまじないとハーブを求めて相談に来る人が増えた。調合にそんなに時間がかけられない為、いくつかの使いやすいラベンダーのようなハーブを揃えてベースとして調合している。香りは個人の好みがあるし、本人がいい香りだと感じないと効果も薄れると私は思っている。
そしてまじない石も見せてもらい、本人の生まれ月、石の属性に合わせてハーブを調合するのだ。

ドライ作りが終わるとハーブのオイル漬けも作る。これは料理に使うやつだ。少しピリッとくるスパイス系とニンニクのような香り付けと味のベースになる物、2種を漬けておく。これは時間がかかるのでこまめに作っておく。

「よし、これでOK。次は石だね。」

ルシアの店でストーンオイルを見てから、作りたいと思っていた石が入っているオイルだ。これはこの前ウイントフークにお願いして、調達したものだ。あの時はかなり粘った。





「どーーーーうしても駄目ですか???」
「お願いしますよ~ウイントフークさーん。」
「ほら、腕輪見せますから!」

私が交渉しているのは、ウイントフークの所の上の棚にある石が欲しいからだ。
とても綺麗なピンクのクンツァイトのような小さな石と、水色のアクアマリンのような石。並んで、上の棚に収められている。
大体、高そうな透明度の高い石は上の棚にある。手に取れないようになっているのだ。とりあえず、見るだけ!とか言って上手いこと下ろしてもらおうとしている。

「あの、ピンクのやつと水色のやつが見たいんです。なんか、実験とか付き合いますから!何でもしますよ?人体実験はまずいけど…………泊まり込みで資料探しとか?そしたらくれませんかね…………?」

最終的に独り言をブツブツ言っていたら、私の目の前に石がフワフワと下りてきて、目の前の棚に乗った。
石が飛んでる???
「え??」と振り向くとニヤニヤ半分、苦い顔半分のウイントフークがいる。

「いいんですか?」

と私が聞くと、後ろの作業台にいるシンを目で指した。あ、そういえばいたね…。
その日は私が来た時からシンがいた。でもほとんど喋らないし、ウイントフークを手伝っているので私も声をかけない。挨拶するくらいだ。そして石に夢中になっていたら、すっかり彼の事は忘れていた。
ウイントフークの様子を見れば、シンが下ろしてくれた事が分かる。なんでかは分からないけど。でも、気がつくと見られている事が多いので多分今も私が騒いでいるのが煩かったのかもしれない。
とりあえずシンに「ありがとう。」と言って、ウイントフークに目で訴える。すると、

「分かった。コイツから取り立てるから、いいよ。」

とシンを目で指す。シンは相変わらず私を見ている。あまりにも見られるので、最近は見られている事に慣れてきた。あまり気にならないのだ。多分、嫌な視線じゃないんだと思う。
また彼に向かって「ありがとう」と言うと、改めて下ろしてもらった石を手に取る。
やっぱり…………。

絶対これがいい、と思っただけあって透明度も文句なし、大きさは小さいけれど瓶に入らないと困るのでこの位でいい。手に取ると確かに良い波動が伝わってきて、間違いないと思う。

「ウイントフークさん、これ凄くいいですね。」
と私が言うと

「当たり前だ。上段のやつはわたしの選りすぐりだ。滅多に手に入らない。」

何だかため息を吐いているけど、返さないよ。ちょっと悪い笑みを浮かべながら、シンを見る。表情は全く変わらないけど、ありがとうの笑みを送っておいた。





そんなやりとりを経て、やってきたピンクと水色の石たち。既に愛着が湧いていて、とても可愛い。私が「ウフフ」と愛でていると、蓮が「浮気よ!浮気!」とか言って笑っている。何を言っているんだ、この石は。

うちに来てからしっかり窓辺で月光浴していたので、そろそろ良いだろう。用意していた小瓶にそっと入れる。
その上からベースとなるオイルを注ぐ。このオイルも、色々探して試して決めた。そもそも化粧用がない為とりあえず食用ならいいかな?と試したが、そこそこ敏感肌の私はニキビが出たり、ヒリヒリしたりとなかなか合うものがなくて大変だった。ある程度使ってみなければ良し悪しが分からないので、オイル選びが1番時間がかかったかもしれない。
合う合わないは、人によって違うからね…。ルシアのオススメでも合わないものがあったし、ホント顔に付けるやつは難しいよ。

そんな選別を潜り抜け選ばれたオイルはソイルという木から採れるらしい。どうやって作ってるのか迄は知らないが、こちらでは薬を作る時に使ったりするそうだ。もしかして肌にいいかも?と思ったらドンピシャだった。

そのソイルのオイルを注ぎ、そこにエッセンシャルオイルを入れる。ピンクの石は少し甘い香りにする。可愛いからね。可愛さを増すためにね…。
可憐さやお淑やかさ、儚さみたいなものに憧れる気持ちが無いわけではない。ちょっと乙女になりたい時にはこっちを使おう。

水色の石は、癒しだ。爽やかさもある。スッキリ系がいいね。
あまりスースーするのは好みじゃないので、少しだけミント系を効かせて、基本葉っぱ系統で作る。花を入れると甘いからね。スッとした、爽やかな森の香りってとこかな。

オイルを2つ作ったら、小瓶の蓋を閉める。ルシアの店で追加で購入した、蓋が可愛い瓶だ。あの、昔の香水の容器のような感じの。そこまで細工は細かくないが、ガラスの細工もできるかどうかヨークに聞いてみよう。
これは売れるな…………。

ちょっと悪い顔になっているのを自分でも感じて、両手でほっぺをムニムニする。
ふぅーー。あとは。

ポプリはドライにならないと作れないので、とりあえずの製作は一旦終了にしよう。
注文が入っているものだけ、作っておかなくてはならない。



そもそも私がおまじないハーブの注文を受けるようになったのは、例によってキティラの噂からだった。

実は、おまじないによって恋を叶え(勿論本人の努力と相性などもあるが、恋する乙女は往々にしてそういう解釈をするものである)、そして既に婚約者のような付き合いをしており、且つ彼の夢を応援して叶えているキティラはかなりの有名人らしい。
全く宣伝してるわけでもないのに、そのような噂の回る事の早い事早い事。ベイルートしかり、あまり外に出ないウイントフークも知っていた。ちょっと恥ずかしいものである。

そこから火がつき、「恋が叶うおまじない」として教会の相談室が密かに有名になってしまった。そう、密かに。
おまじないがあまりにも大っぴらに有名になると、まずい女子が沢山いたのだ。だから一応水面下で広がっているらしい。でも知ってる人は知ってるんだけどね‥。

そんな訳もあり、始めはキティラの友達から始まったおまじないの紹介も鼠算式に増えて今では順番待ちである。このまま成功し続けたら、街中カップルだらけになるんじゃないかと思うがそんな事はないんだろうか?
ま、幸せになるに越した事はないので私はハーブを調合するんだけどね。

しかし、うまくいかない時も勿論ある。
ついこの前、キティラの友人のビルカが占って欲しいとやってきた。
占いは簡単な相性占いで、こちらの生まれ月での星座のようなものがある(これも日記に書いてある)。私も星占いは好きで、一時期ハマったのでこちらの星座とあちらの星座を照らし合わせると、名前は違うがやはり生まれ月での相性はほとんど同じだった。不思議なものだなぁと思ったけど、空、もしくは宇宙は共通しているのかもしれない、なんて思う。

私は白い部屋から扉の中に来たけれど、どの扉にも空と宇宙は同じものであって世界だけが違うのかもしれない、と思ったのだ。
夜中や、夜が明ける前のふと起きた時に無性に寂しくなる時があるが空が繋がっていると思うと、ここで頑張ってから帰るのもいいと思える。


そう、占いの話だった。
私は日記に書いてあるこちらの星座と、あちらの星座を照らし合わせ、当てはめた。そして、あちらの相性占いを応用している。
その相性占いを聞きに来たのがビルカだ。相性占いと言っても、私の記憶にある分なのでそんなに詳しくはないし、基本性格と属性での合う、合わないになる。
その時ビルカは8月生まれと12月生まれの火と火の属性の相性を尋ねてきた。基本、同じ属性は合うとされるが、私的に火同士は合わない人もいると思っている。今回ビルカのお相手はなかなか行動的な性格なようで、激しく燃える火のタイプだった。
ビルカも積極的タイプなので、2人でボーボー燃えていたらやっぱり合わないというか疲れるのだ。一応おまじないのハーブも渡しておいたが、やはり途中で上手くいかなくなって諦めたのだそうだ。
やはりどうにもならない事も、ある。
でも相性占いは知る事によって、相手の事をより考え行動出来るので参考にするのはとてもいい事だと思う。


そんなある日、すごい相談事を持ってきた人がいた。

若いお母さんなのだが、内容がなんと「息子の運が悪い」というものだった。
いつのまにか私、運頼みの神様みたくなってるけど???

まさか、この相談だけ「あなたの気持ちは受けとりました。良き方になりますように。」で済ませるわけにもいかない。
何はともあれ話を聞いてみる事にした。

若いお母さんの名前はマリアナと言って、子供の名前はライン。ラインはまだ1歳だ。1歳で運が悪いってどういう事??と思っていたが、聞くと確かに運が悪いとしか言いようがないものも多かった。
まず始めは出産時から始まる。
その日、産気づいたマリアナは話石で産婆さんへ連絡を取ろうとした。しかし、話石は繋がらない。仕方が無いので家族が方々へ連絡して近所の奥さん達でなんとか赤ん坊を取り上げた。
後で聞いたら、産婆さんはちょうどその直前にぎっくり腰になって動けなかったらしい。話石が光っているのは分かっていたが、そこまで辿り着けなかったようだ。
連絡が取れた頃には生まれていて、申し訳なかった、と後から家族から連絡が来たそうだ。

それ以外にも、外を歩いている時丁度ラインに鳥の糞が落ちてきたり、ラインが好きなパンがゆを作ろうとパン屋に行くと休みだったり、休みの確率が高いらしい。家ではまさかそこに?という小さな隙間に指を挟んでしまったなどの、地味な不運も多い。本当に、運が悪かったね、という程度のもの。しかしそれならまだ良かった。


ラインはスフォラの月の生まれで、属性で言えば風の相性が良い。マリアナは出産の予定日から計算して、きちんと黄色の石を用意していたそうだ。それも、鉱山やウイントフークの所ではなく実家から持ってきた石。元々はマリアナのおばあさんの石だったらしい。

石は基本、持ち主が亡くなった時に一緒に埋葬される。しかし、本人の希望があれば残すこともできるそうだ。マリアナはおばあさんにとても可愛がられていて、子供が生まれたら使うようにと遺品として譲られていた。やはり譲られるくらいなので透明度も中々のいい石だった。
しかし、それが紛失した。いや、正確に言うとすり替えられていたらしい。ぱっと見は分からないくらい似ているが、マリアナは石の様子が全然違う、と主張した。

マリアナは婚家に一緒に住んでいて、基本家の人なら誰でも部屋には出入りできる。子供が小さいうちは、守り石も身につけていない事が多いそうだ。間違えて食べてしまったり、無くしてしまうのを防ぐ為だ。いつもは石を引き出しにしまっていた。
ある日、用があって出かける支度をしていた。ちょっと遠くの予定だったので、長時間石から離れる事がないように持って行こうと引き出しを開けると、何かがおかしい。よく見ると、石がすり替えられているのに気が付いた。だが、家の人を表立って疑う事はできない。何も証拠がないのに、「訊ねるだけでも疑っていると思われる」とマリアナは言う。
その言葉から、彼女の婚家での扱いが知れた。
夫には相談したそうだが、何か知っているのか知らないのか、事を荒立てたくないようで「代わりの石があるなら、いいのではないか」という対応だった。
ぱっと見分からないくらいだから、石の品質も同じ様なものだろうと主張したらしい。
マリアナ曰く、全然違うみたいだけど。


「今思えば、以前も「何かと運が悪い」、みたいな相談をしたら石を取り替えたらいいと家族に言われた事があって。石との相性が悪いから、運が悪いんじゃないかと。でも、おばあちゃんの形見だっていうのは夫も知っているんです。」

そう言ってマリアナは涙を拭う。抱かれているラインは心配するようにお母さんをじっと見ていた。

え。なにこの案件。私も泣きそう。

「夫も頼れなくて、今は実家に帰っています。実家も、あまり長く居て出戻りの噂になっても家族が困るので…………。でもどうしていいか、全く分からないんです。」

うん。私もだ。
でも力になりたいのは、確か。
さてどうするか。

気になる事は沢山ある。

とりあえず情報が足りなすぎるので、色々調べてみないといけない。石の事なので、とりあえずはウイントフークに聞こうと思いついてマリアナを見る。1人で帰すのはちょっと…………。心配すぎる。


送って行こうか思案していると、表の扉が開いた音がした。足音がする。
「すいません」と誰かが教会に入ってきた。とりあえず私は相談室を出て対応に行く。多分ハーシェルは母屋にいるはずだ。

「あれ?テレクさん?」
「ん?ヨル?眼鏡かけてたっけ?」
「あ、ちょっと目が悪くて実は‥アハハ。どうしたんですか?」

入ってきた男は、前に畑を案内してくれたテレクだった。あの、私がやらかした時ね。
知っている顔だったので、少しは安心する。どうやら私も少し神経過敏になっているようだ。マリアナの、不安な気持ちがよく分かった。

「うちの姉さんが来てると思うんだけど。教会に行くって言っていたから。」
「姉さん??」

もしかして?

すると相談室からマリアナが出てきた。良かった、とりあえずは泣き止んでいる。
そしてやっぱりマリアナはテレクの姉だった。意外と世間って狭いね…。あ、この街が狭いのか。


「私には何もできないかもしれませんが、少し調べてみますね。あまり、考え過ぎないようにして過ごして下さい。ラインも心配しますよ。」
「ありがとうございます。」

とりあえず、何か分かったら知らせる事を約束する。あとは、苦しくなったら相談に来る事も。

よく眠れるポプリを渡して、見送る。テレクにも様子を見ておいてくれるよう、頼んだ。彼女の不安が伝染した事で、かなり不安定になっている事が分かった。1人で家から出ない方がいいだろう。やはりテレクも、かなり心配していたようで「僕の方でも調べてみる」と言って帰って行った。


うーーーーん。犯人探しね…………。


相談室から探偵になる事は予想外だが、放っておく事ができない自分の性格も分かっている。

聞いちゃったからね…………。

何からやればいいのか全く検討もつかないので、とりあえずはウイントフークにアポを取ってもらう事にしよう。まず、石の探し方だ。
ハーシェルの所に向かおうとして、「あ、これまたお小言案件。」と少ししょんぼりする。

いやいや、仕方がない。


探偵だって、やってやろうじゃないの!


とりあえずはお父さんの説得に向かった。
頑張れ、私。
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