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5の扉 ラピスグラウンド
眠れない夜は(紺の時間)
しおりを挟む夕食を終えて部屋へ入り、お風呂は午前中入ったのでそのまま着替えた。
ティラナが洗っておいてくれた自分のワンピースを寝巻き代わりにして、ベッドに入る。
やっと一息ついた気がして、ふうっと息を吐いた。
やはり緊張していたのだなぁと思う。
何もかも新鮮で、楽しいけれど同時に不安もあるから。
ぼんやりと木の天井を眺め、また息を吐いた。
「ねぇ気焔。ここで探し物をするのに、タイムリミットってあるの?」
寝転びながら、そう訊いてみる。
「いや、外の時間とは時間軸が違うからいつ何時まで、というのは無いはずだ。だがいつまででもいい、という事でも無い。」
静かに話し始めた気焔が言うには、探している物の素材自体が劣化するので、早いに越したことはないそうだ。
「んー。靴はあるから、服と指輪、石は気焔なんだよね?」
きちんと確認する。
ここは5の扉だから、石は黄色の気焔の筈だ。
「そうだ。」と気焔は答える。
昼間に見た、神様の人形は(ハーシェルに聞いたら皆、この人形に祈るらしい)何となく姫様じゃないような気がする。
違う気がする、と言うよりは靴を見た時のような「これだ!」感が無いのだ。
それよりも、被っていたベールが気になったくらいだ。
めっちゃいいレースと刺繍だったもんね………。
焦ってもしょうがないしな。
自分に言い聞かせて、目を閉じるが眠れそうにない。
もう一つ、心配事が居候の事だ。
「いつまででも居ていいよ。」と2人は言ってくれるけど、いつまでもタダメシを食ってるわけにもいかないだろう。
しかし自分ができるような仕事があるのかどうかも、分からない。
まだ外にも行ってないし。
出かけてみたら、求人とかあるかな?
考えていたら目が冴えてきて、諦めて起き上がった。
窓際にある小さな机に座り、月を眺める。
「同じだなぁ。」
そう呟きながら、置いてある本を静かに開いた。
実は昼間に、教会を探検していた時の事。
祭壇の奥に物置のような部屋があって、そこには教会で使う本や資料が並べられていた。
「好きに見ていいよ」とハーシェルは対応に出てしまったので、お言葉に甘えて色々見てみる事にしたのだ。
うはーっ。大好きこういう空間!宝探し!
小さな明かり取りの窓から差し込む光で、ちょっと埃っぽい小さな部屋の、全体が見える。
本棚は入ってすぐ横にあり、奥の方には何に使うのか分からない道具や大きな絵、白い布がかけられた棚のような大きな物もある。
あまり使われていないのか、奥は埃っぽいが本棚は綺麗だった。
文字が読めるのか気になっていたので、手に取ってみる。
開くと、やはり読めない。
「これなんて書いてあるの?」とティラナに聞いてみると、「………何かの3巻みたい。わたしまだ字は読めないの。」と言う。
数字は分かるみたいだ。
「私も一緒に字を習いたいな。」
そうティラナにアピールしつつ、他の本もめくってみた。
そうして何冊か戻した後、見覚えのある文字が、あった。
「呪」
え。不吉。
でも漢字だ………。
不安も感じるけど、味方を見つけたような気もして「とりあえず見るだけなら大丈夫でしょ。」と手に取った、私。
表紙は何もない。模様はあるけど。
本というよりは日記帳っぽい。
1ページ開いて、そう思う。
パラパラ見てみると、それは覚書ノートのような物だった。
読めない漢字や謎の記号はあるけれど、基本的には日本語。
「なんで………?」
「そろそろご飯の支度をするから、手伝って!」
楽しそうなティラナに、借りていっていいか許可を取り、とりあえず部屋に持って行った。
そんなこんなで眠れない夜に、日記の様なものを読んでみることにする。
「謎の指示とか書いてあったら、どうしよう…。」
ファンタジー読みすぎの私は思ったけれど、書いてあったのは本当に覚書やメモだけだった。
でも、内容的には「森で採ってきたハーブでのハーブティーの作り方」とか「動物の名前」とか「石鹸の作り方」だ。
後は何やらよく分からない、メモ。
え。めっちゃ役立つじゃん。
どうやら推理するに、この世界に来た日本人?が生活しやすくする為のメモだろう、その他色々役立ちそうな事、役に立たなそうな事、色んなジャンルのメモだった。
他に気になるメモといえば、大部分を占めていた「おまじない」のメモだった。
「まじない」は「呪い」とも書くので、背表紙の字の意味が解る。
しかし、なんだか怖いので一文字で書いておくのは止めて欲しいと思う。
面白いのは意中の人を射止めるおまじないとか、見たい夢を見る方法とか、願いを叶える、金運が上がるなどのおまじないだ。
知らない単語もいくつか出てくるので、この世界に合わせたおまじないだと思う。
しかし、願い事は万国共通だね………。
とりあえず、石鹸とハーブティー、食べれる物とかはすぐ試してみよ。
めくりながら「アレもこれも」とピックアップしていると、最後の方に刺繍の図案があった。形や布の大きさからして、あの人形のベールだとピンとくる。
きっと同じところから来た人が作ったから、気になったのかな………。
そんな事を考えて細かい図案を見ていたら、とうとう眠くなってきたのでやっと、眠りにつくことにした。
ベッドでは既に、朝が高イビキをかいていたけど。
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