17 / 1,740
5の扉 ラピスグラウンド
眠れない夜は(紺の時間)
しおりを挟む夕食を終えて部屋へ入り、お風呂は午前中入ったのでそのまま着替えた。
ティラナが洗っておいてくれた自分のワンピースを寝巻き代わりにして、ベッドに入る。
やっと一息ついた気がして、ふうっと息を吐いた。
やはり緊張していたのだなぁと思う。
何もかも新鮮で、楽しいけれど同時に不安もあるから。
ぼんやりと木の天井を眺め、また息を吐いた。
「ねぇ気焔。ここで探し物をするのに、タイムリミットってあるの?」
寝転びながら、そう訊いてみる。
「いや、外の時間とは時間軸が違うからいつ何時まで、というのは無いはずだ。だがいつまででもいい、という事でも無い。」
静かに話し始めた気焔が言うには、探している物の素材自体が劣化するので、早いに越したことはないそうだ。
「んー。靴はあるから、服と指輪、石は気焔なんだよね?」
きちんと確認する。
ここは5の扉だから、石は黄色の気焔の筈だ。
「そうだ。」と気焔は答える。
昼間に見た、神様の人形は(ハーシェルに聞いたら皆、この人形に祈るらしい)何となく姫様じゃないような気がする。
違う気がする、と言うよりは靴を見た時のような「これだ!」感が無いのだ。
それよりも、被っていたベールが気になったくらいだ。
めっちゃいいレースと刺繍だったもんね………。
焦ってもしょうがないしな。
自分に言い聞かせて、目を閉じるが眠れそうにない。
もう一つ、心配事が居候の事だ。
「いつまででも居ていいよ。」と2人は言ってくれるけど、いつまでもタダメシを食ってるわけにもいかないだろう。
しかし自分ができるような仕事があるのかどうかも、分からない。
まだ外にも行ってないし。
出かけてみたら、求人とかあるかな?
考えていたら目が冴えてきて、諦めて起き上がった。
窓際にある小さな机に座り、月を眺める。
「同じだなぁ。」
そう呟きながら、置いてある本を静かに開いた。
実は昼間に、教会を探検していた時の事。
祭壇の奥に物置のような部屋があって、そこには教会で使う本や資料が並べられていた。
「好きに見ていいよ」とハーシェルは対応に出てしまったので、お言葉に甘えて色々見てみる事にしたのだ。
うはーっ。大好きこういう空間!宝探し!
小さな明かり取りの窓から差し込む光で、ちょっと埃っぽい小さな部屋の、全体が見える。
本棚は入ってすぐ横にあり、奥の方には何に使うのか分からない道具や大きな絵、白い布がかけられた棚のような大きな物もある。
あまり使われていないのか、奥は埃っぽいが本棚は綺麗だった。
文字が読めるのか気になっていたので、手に取ってみる。
開くと、やはり読めない。
「これなんて書いてあるの?」とティラナに聞いてみると、「………何かの3巻みたい。わたしまだ字は読めないの。」と言う。
数字は分かるみたいだ。
「私も一緒に字を習いたいな。」
そうティラナにアピールしつつ、他の本もめくってみた。
そうして何冊か戻した後、見覚えのある文字が、あった。
「呪」
え。不吉。
でも漢字だ………。
不安も感じるけど、味方を見つけたような気もして「とりあえず見るだけなら大丈夫でしょ。」と手に取った、私。
表紙は何もない。模様はあるけど。
本というよりは日記帳っぽい。
1ページ開いて、そう思う。
パラパラ見てみると、それは覚書ノートのような物だった。
読めない漢字や謎の記号はあるけれど、基本的には日本語。
「なんで………?」
「そろそろご飯の支度をするから、手伝って!」
楽しそうなティラナに、借りていっていいか許可を取り、とりあえず部屋に持って行った。
そんなこんなで眠れない夜に、日記の様なものを読んでみることにする。
「謎の指示とか書いてあったら、どうしよう…。」
ファンタジー読みすぎの私は思ったけれど、書いてあったのは本当に覚書やメモだけだった。
でも、内容的には「森で採ってきたハーブでのハーブティーの作り方」とか「動物の名前」とか「石鹸の作り方」だ。
後は何やらよく分からない、メモ。
え。めっちゃ役立つじゃん。
どうやら推理するに、この世界に来た日本人?が生活しやすくする為のメモだろう、その他色々役立ちそうな事、役に立たなそうな事、色んなジャンルのメモだった。
他に気になるメモといえば、大部分を占めていた「おまじない」のメモだった。
「まじない」は「呪い」とも書くので、背表紙の字の意味が解る。
しかし、なんだか怖いので一文字で書いておくのは止めて欲しいと思う。
面白いのは意中の人を射止めるおまじないとか、見たい夢を見る方法とか、願いを叶える、金運が上がるなどのおまじないだ。
知らない単語もいくつか出てくるので、この世界に合わせたおまじないだと思う。
しかし、願い事は万国共通だね………。
とりあえず、石鹸とハーブティー、食べれる物とかはすぐ試してみよ。
めくりながら「アレもこれも」とピックアップしていると、最後の方に刺繍の図案があった。形や布の大きさからして、あの人形のベールだとピンとくる。
きっと同じところから来た人が作ったから、気になったのかな………。
そんな事を考えて細かい図案を見ていたら、とうとう眠くなってきたのでやっと、眠りにつくことにした。
ベッドでは既に、朝が高イビキをかいていたけど。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


『 ゆりかご 』 ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。
設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。
最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで
くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。
古い作品ですが、有難いことです。😇
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作


王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる