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5の扉 ラピスグラウンド
逃亡
しおりを挟む一瞬にして、目が眩む様な金色の、炎。
叫んだ瞬間、腕輪から鞭の様な炎が飛ぶ。
その大きな炎はまるで生きている様に、男に向かって襲いかかった。
「うわっ!アチッ、なんだ?!」
男が倒れて服に火が着いた、瞬間。
朝が後ろから肩に飛び乗り、私達を急かす。
「急いで!」
夢中でティラナを抱き起こし、肩で支えて出来るだけ早く小屋から走り出た。
後ろを振り返ろうとすると「火が消える前に早く!!」と朝に怒られ、必死で走る。
ティラナが「大丈夫」と言うので、支えを外し手を繋いで、とにかく、走った。
「一旦、この辺で休みましょう。」
息切れがする。
暗闇の中、ひたすら走ってそろそろティラナが限界だ。
周囲の様子も何も、全く分からない夜の森の中。
兎に角、グレーの毛並みを見失わないように走ってきた。
朝も野生の勘(飼い猫だけど)で逃げてたみたいだけど。
いい具合の茂みがあって、隠れる様にみんなで座る。
「大丈夫?痛い所は?」
ティラナを蹴ったであろう音が耳にこびり付いていて、身体の様子を確かめながらもブルリと震える。
座り込んでいるティラナの身体をそっと触りながら、その温もりを確かめていた。
確認すると、どうやら怪我はない様だ。
もう1度、辺りを確認する。
耳を澄ましても、物音は風と木の葉の揺れる、音だけ。
茂みから頭を少し出し、ぐるりと見渡すが多分追手は来ていない様だ。
かなり走って逃げた気ではいるけれど。
女の子の足だ。
そう遠くには来ていないだろう。
とりあえずの安全を確認すると、力の抜けた息を吐いて草の上に寝転んだ。
一瞬のうちに色々ありすぎだけど………。
「気焔。」
その声に反応して、キラリと光る黄色の石。
多分ドヤ顔中だ。わかんないけど。
「とにかくありがとう。助かった…。」
色々訊きたい事はあるが、まだ完全に安心とは言いきれない。
色々と話を聞くなら、もう少し遠くへ逃げたいのが本音だ。
しかし夜の森を、闇雲に歩くのも危険。
私が1人でウンウン悩んでいると、何処からかボソボソと低い話声が聞こえてきた。
え?どこからだろう…?
「………ルの娘じゃないか。」
「…のようじゃな。」
……………!?
さっきの男が追ってきたのかと飛び上がりそうになったが、それよりもっとお爺さんの様な嗄れ声だ。
サワサワと木の葉が擦れる様な音が、上の方からする。
「?」
ふと上を見ると、大きな木達が葉を揺らしながら会話していた。
ポカンとして見上げていると、「口が開いてるわよ」と朝に言われてポンと閉じる。
どつやらお爺さん大木が、私達にどうやって道を教えるか話し合っているっぽい。
葉っぱを落としていくとか(某童話か)、進む方向の枝を順に鳴らしていくとか(森全体で協力?すごくない?)とか、何やら色々言っているのが聞こえる。
そういえば言葉が分かるんだった…と思い出して、立ち上がる。
そうして優しく、木の幹をノックした。
「もしもし、もしかして助けてくれるつもりですか?」
瞬間、お爺さんたちがブワッと枝葉を揺らし、それが周りの木々ににザーッと広がっていく。
まるで、ウェーブみたいに。
どうやら驚かせてしまったらしい。
「もしかして、この辺にも木とお話しできる人はいないんですか?」
………………?黙っちゃった。
失敗??
少しの沈黙の後、お爺さん達は言った。
「我らの言葉が分かるものは久しぶりじゃ。」
「そうだの。」
ここの基準が分からないけど、やはり木や花と話せる人はいない様だ。
それにしても、すり合わせを早いとこしないと変人確定しそうでまずいかもしれない。
とりあえずは小声で、お爺さん達とやりとりだ。
いや、バレてるとは思うけど。
「ティラナの事を知ってるんですか?」
それらしい事を言っていたので、訊いてみる。
「ハーシェルの娘じゃろう。よく森で見かける。」
お爺さん達から聞き出したところ、ここは森の丁度中程らしい。
いつも手前の方でしか採取しないティラナを見付けて、不思議がっている様だ。
でもこっちまで来ないのに、知ってるって森の木ネットワーク?
こりゃ私、森の中の探し物には困らないかも。
なんて考えていると「依る。」と呆れた朝のしっぽに叩かれた。
「私達、安全な所に行きたいんだけど。分かるかな?」
本題を思い出して聞くと、森の外に出た方がいいと木たちは言う。
しかしやはり、夜はやはりあまり移動しない方がいい。
相談の結果、お爺さん達が教えてくれた安全な場所まで移動して、朝になったら森を出る事にした。
そうしてパタパタと木の葉を払い、立ち上がるとティラナの手を引いて歩き出したのである。
お爺さん達が森の木達に伝言ゲームをしている。
下で見ていると、中々これが面白いのだ。
サワサワと葉を揺らす枝に案内されながら、大きな木の下に窪みがある場所に辿り着く。
そうして私達は、そこで休む事にした。
えーん、ビニールシートと寝袋~!!
森の夜は冷える。
心の中でシクシクと泣きながら、ティラナと肩を寄せ合って休んだ。
ううっ、さぶっ。
うっ、さむ~い。
何となく、目が覚めた。
とは言っても完全に寝れた訳でもなく、私は半分起きていたがティラナはぐっすりだった。
かなり疲れたのだろう。
朝が、いい湯たんぽになっている。
ティラナを起こさない様に、そっと立ち上がりぐるりと辺りを見渡した。
朝靄っていうか、霧かな。
森の中の朝靄って、幻想的…。
そんな事を考えていたら、遠くにぼんやりと人影が見える気がする。
…?人だよね?
気の所為かな?
こんな朝っぱらから追っ手は勘弁………と目を凝らしていると、上から「ハーシェルだ。」と木が教えてくれた。
確かお父さんだよね?ハーシェルって。
その人影が段々近づいて来ると、どうやら30代くらいの男の人だと分かる。
お父さんっていうとうちのお父さん想像しちゃったけど、若いね…。
グレーの長い髪を後ろで1つに縛っているその男性は、言われなかったらお父さんには見えない。すらっとした細身で、雰囲気としては先生とかお医者さんという感じだ。
髪がグレーだから、遠目で見るとお爺さんかと思ったが、顔が若い。
近くまでくると、彼もこちらに気付いた様だ。
立ち止まりじっと目を凝らしてこちらを見ると、木の下の人影を認めた様で「ティラナ!!」と叫んで走ってくる。
良かった、やっぱりお父さんだった。
ティラナの肩を揺らし、耳元で呼び掛ける。
「お父さんだよ。」
ティラナはちょっとボーッとした後「お父さん…?」と寝ぼけていた様だが、ハーシェルが目に入ると、勢いよく立ち上がり駆けて行った。
「お父さん!」
うんうん、感動の再会……………!
私が腕組みしてウンウンしていると、しばらく抱擁をしていたハーシェルがティラナの肩を抱きながらこちらにやって来た。
「君は………」
「お父さん、お姉ちゃんが助けてくれたの!猫ちゃんとね、火がね、ブワッって………」
ちょ、それ内緒のところじゃない??
私がアワアワしていると、それに構わずハーシェルが深々と頭を下げる。
「娘を助けてくださって、本当にありがとうございます。是非、お礼をさせて下さい。」
はい、正直、非常にありがたいです。
扉に入ってから即、人攫い小屋だったので少し参っていた私は、すぐにその提案に飛びつく事にしたのだった。
ハーシェルとティラナの後をついて、森を抜ける。
木々たちにこっそりバイバイをして、森を抜けると広い場所に出た。
途中から草原の様になっているが、森から出た所は伐採された枯れ土地のようになっている。
森の中の豊かさとの違いに驚きつつ、二人の背中を見ながら向こう側に見える街へ向かった。
「青い………。」
ぐるりと塀に囲まれている街の門をくぐると、道すがらハーシェルが説明してくれる。
この青は、ラピスというこの地特有の石の色らしい。
あまりにも目に入る景色が青く美しくて、私は街中の建物を見渡しながら、ひっきりなしに独り言を漏らしていた。
ラピスは砕いて染料にして塗ったり、石のまま床や壁に使われたりもしているそうだ。
ある程度高価な材料なので、石のまま沢山使われている家はお金持ちの家らしい。
元々、魔除の意味があるので基本的にはどの家にも使われているそうだ。
かなり、壮観な「青い街」。
この街の第一印象はそれだった。
街自体はぐるりと白い塀に囲まれているので、外側から見ると普通の街に見えたのだが、塀の内側は青の石でできている。
守りの壁はやはり魔除の石で作るという事だろうか。
しっかし壮観だね………!
思ったより綺麗な街並みと、トルコっぽいブルーな家々にちょっとウキウキしてくる。
この世界に来て、始まりがアレだったから。
全体的に野蛮な感じじゃなくて良かった………と心底思う。
もうあんなの勘弁。
ブルブルと頭を振り、気を取り直して石畳の街並みを抜けていく。
見るもの全てが、楽しいし、とても美しい。
そうこうしているうちに、ハーシェル達の家に着いた。
「教会………?」
その案内された建物は私が見知ったものの中では、教会に1番近い。
尖った屋根に細長い入り口。
後ろに続く建物も窓が細長くて、ステンドグラスの様な窓だ。
その奥に二階建てくらいの建物がくっついている。
多分、後ろが住居部分なのだろう。
2人はその建物の横の細い路地を通り、奥の二階建ての建物の入り口から中に入った。
玄関、というようなものは無いのか、勝手口の様な感じである。
入るとすぐ台所だろう、水場や竈のようなものがある。
続き部屋に食事どころのようなダイニングテーブルがあり、そのまた奥の居間のような部屋に案内された。
ティラナがお茶を入れてくれる。
しっかりしてるなぁ……そう思いつつ、ハーシェルが向かい側に座っているので、めちゃくちゃキョロキョロしたい衝動を抑えていた。
まだ自己紹介も終えてないのに、残念な子だと思われると困る。
よく分からない小さな色とりどりの石、物凄く私好みの茶器………とにかく興味深いものが多くて、じっくり部屋の中を観察したくて仕方がないのを必死に我慢だ。
勧められたお茶を飲み、ついでにカップをまじまじと観察していると「茶器に興味があるのかな?」と、とうとう質問されてしまった。
「そうですね………。」
だってこれ、めっちゃいいカップ!
台所を見た感じ、文化レベルは竃でそれもかなり簡易的な感じだと思っていたけれど。
私が今、持っているカップはかなりの品だと思う。
磁器の肌も綺麗だし、模様も細かい。
飲み口も程よく薄く、お茶が美味しく感じられる。
ちなみにティラナが入れてくれたのは味的にはハーブティーだ。
何の葉か後で聞いてみよう。
なんでも細かい職人技が好きな私に、このカップは堪らない逸品だ。
しかしここで熱く磁器について語り始めるのは、まだ早い。
自己紹介をしなくては。
「あの、私は十津國 依ると申します。旅をしていたんですが、気がついたらティラナと一緒に人攫いに捕まっていて…。」
うん、なんて言おうかと思ったけどとりあえず旅人なのは間違いない。
「こちらこそ本当にありがとう。私の不注意でティラナが拐われて、生きた心地がしませんでした。さすがに夜の森は自殺行為なので、焚火をして待ち、明るくなり始めたのでティラナの方向へ探しに出た所でした…。」
やっぱりお父さん、心配だよね。
あの見えない朝靄の中、探しに来るなんて。
迷ったらどうするつもりだったんだろ?
ん?ティラナの方向??
私がハテナ顔をしていると「ティラナの石の方向が私には分かるのですよ。」とハーシェルは言う。
それでも「?」な私は、「旅人だからよく分からない」という言い訳をしてハーシェルに色々、尋ねる事にした。
この街はラピスグラウンドという場所で、身分の差は多少あれど領主や王様のような統治者はいないらしい。
みんながこのラピスグラウンドの慣習に従って生活しているようで、特に大きな問題には教会や自治会など内容によって話し合いが行われ裁定されるそうだ。
塀の外には森と鉱山があるらしい。
他の国や街があるのか尋ねると、「この辺りにはない。」とハーシェルは言ったが何だか歯切れが悪かった。
言いにくい事が、あるのだろうか。
私が話を聞く様子を見て、本当に何も知らないのが判ったのだろう。
ハーシェルは注意すべき事なども、色々教えてくれた。
まず、街の外は危険なので基本的には大人と一緒じゃないと行けない事。
ティラナも言っていたが、数年前から物騒になり私達が遭ったような人攫いや盗賊が出るらしい。
私が1人旅をしているのはかなり危険な様で、驚かれた。
そしてここ、ラピスグラウンドは身分社会というよりは力社会で「まじない力」が強い方が尊ばれるらしい。
「?まじない力?」
「そうです。例えば、君の髪の色はブルーグレーだけど、基準で言えば真ん中くらいのまじない力の強さだ。それより髪の色が薄くなる、白っぽくなるともっと強い。逆に濃い青やグレーなど、暗くなれば暗くなるほど、力は弱くなる。」
そもそもまじない力がなんなのか分からず質問すると、ハーシェルはさっき通ってきた台所に案内してくれた。
何をするのかと見ていると、竃の前に立ち止まり手をかざす。
ハーシェルが小さい声で何やら呟くと、竃にボッと火が付いた。
「すご~い!」
わーい!魔法の国だ!
折角冒険するなら、こうじゃなきゃね!
私が「魔法だ魔法だ!」と言っていると、「これはまじないの力なんだ。」と言って竃に埋め込まれている綺麗な赤い石を指す。
どうやらこの石が持つ力を利用するのが、まじない力らしい。
なんにせよ、すごいけど。
喜んでいる私にハーシェルが言う。
「ヨルが住んでいた所では、まじないは無いのかい?」
「うーん。まじないじゃなくて、かがく、っていう力なんです。」
あとは笑って誤魔化しておいた。
どこまで話していいのか、まだ判断出来なかったから。
そのままハーシェルは家の中を案内してくれて、まじないで動くものを見せてくれた。
竃の火、水が出る流しや水場、お風呂(よかった、お風呂!シャワーは勿論無いけど、湯船はある、)そしてトイレ。
良かった!流せる!
地味に大事な部分だ。女子的に。
そうして居間に戻ると、ティラナがお茶を入れ直してくれてハーシェルの隣に座る。
「お姉ちゃん、本当にありがとう。」
そう言ってニコニコ笑うティラナは本当に、可愛い。
少し濃い目の赤茶の髪に、薄い茶色の瞳がキラキラしている。
ハーシェルが薄めのグレーの髪でグリーンの瞳なので、言われなければあまり親子だと分からないかもしれない。
さっき街を歩いてきた時も、大体が皆グレー、茶、紺系統の髪色だったので自分があまり浮かずにホッとする。
家に帰ったらかなりビックリされるけどね………。
ここでは逆に馴染んでいる様で、これから街に紛れやすいだろう。
それにしても、これからどうしよう…。
「お父さん……………。」
ティラナがハーシェルの袖をツンツン引っ張っている。
ハーシェルは頷いて、もし行く所が決まってなければ滞在しないか、と誘ってくれた。
「え、でも悪いです……………ん?あ!」
そういや、一文無しだった!!
急に落ち込んだ私を見て察したのか、「娘を助けてくれたのだから、遠慮はいらない」とハーシェルに押し切られた。
…………でも、正直助かった。
右も左も分からない街に、文無しはキツい。
そうしてお礼を言った私の上下の瞼が、大分仲良くしたそうだったからか。
ティラナが2階の部屋を、案内してくれたのだった。
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