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体のこと
しおりを挟む二人きりになって、美しい金茶の視線が私に刺さる。
しかし、じっと見られてはいるがその視線は嫌では、ない。
私もラエティアの綺麗な髪や色気のある服装を観察したかったけど。
とりあえずそこまでの余裕は無くて、残ったお茶を静かに啜っていた。
「でも。とりあえずヨル、相手の体の事はどうあれ、自分の体の事は知ってるわよね?」
「 はい?」
間抜けな声が出て、慌てて口を塞ぐ。
ラエティアの声は真剣で、私を心配してのものだ。
しかし、予想外の質問に私の反応がついていけなかったのだ。
「からだ………?のこと?」
「そうよ。どこを、どうされれば気持ちいいかとか。どうすれば「達する」のか、とかね。」
「 」
「あなた、そろそろその「恥じらい」をゴミ箱に捨てて来なさい。」
「はい…………。」
至極尤もな意見に、目を瞑り自分の「なかみ」の「恥じらい」をぐいぐいと外へ押しやる。
私の「恥じらい」は壁の様に大きな白い球で、しっかりと自分の「なか」に居座っているそれをゴロゴロと転がしグロッシュラーの縁から捨てる事にした。
「ドン」と押して、音も無く消えて行ったそれを確認すると目を開ける。
「………?大丈夫みたいね。とりあえず、それだけど。」
「はい」
「多分、ヨルの言う「二つが一つ」みたいな事は。初めてでは、起こらないと思うの。きっと体には相性があって、それに「慣れ」もある。初めはどんな人とやっても、慣れないから達しないし、二人が「馴染みあって」それからだと思うのよね。それは、なんとなく分かる?」
「まあ、流石に初対面だとリラックスしてないと解れないからね。それもあるし。その点は貴女の場合、大丈夫だと思うんだけど。」
「 はい」
「で。その、「達する」方法なんだけど。それは人によって違うから、正直私は「自分で自分の気持ちいい方法」を探しておくのが、いいとは思う。私達はある意味「効率」を取ってるから、それが分からないと自分も困るしね。それとも、彼と一緒に探求するのも、アリだと思うけど。」
「 ぃ」
「それには、「どこが」「どうされれば気持ちいい」って。伝えられないと、難しいわよね?…………だから。えっ、まだ恥じらい残ってるみたいだけど?」
「ああ、ヨルのは筋金入りよ。」
新しいティーポットを持って戻ってきたレナが、話を聞いていなかったのにそう言った。
何故だ。
「あら、困ったわね。でも、その「恥じらい」をすっかり全部捨てないと。多分「その状態」?には、ならないわよ。それも、解るわよね?」
「 はい」
「ならいいんだけど。とりあえず、やる事と言えば貴女の穴の中に彼のモノを入れるだけだからね。何も知らない男だったとしても、雄ならばあとは本能で動くでしょ。まあ、なんて事ないわ。一回してしまえば、そこからは好き合った男女、なんとでもなるでしょう。」
ぐふっ
だけ
「入れるだけ」 「本能的に 動く」
「なんてこと ないわ」
ウワンウワンと、ラエティアの透声が頭に回る。
すっきりと他意の無い、その声で放たれた内容でも。
私の「なか」にはまだ壁があって、その中をウワンウワンと木霊しているのだ。
それが解って、もう一度壁を取り外す為に目を閉じ自分の「なか」に、入る。
しかし私が目を閉じ「なか」にいる間の、外の二人の話もきちんと聴こえては、いる。
二人はなんだか「ヨルの恥じらいを捨てる方法」を模索し始めてしまったけれど。
いや? 私 だって?
「知らない」わけ じゃ ない のよ
うん ディーの夢でも まあ 見たし?
しのぶが 際どいシーンを アレして うん
だけど。
「実際」「直接」「実物」
「 ふぐっ」
「中々壁は厚い様ね。」
「荒療治した方がいかな?」
「でもトラウマになっても困るし?これから解すんでしょ?」
「まぁね…………。でも、「相手」になんとかしてもらうしか、ないかぁ。」
うん? 相手 ??
怪しげな言葉に目を開けた私を、じっと見つめていたのは茶の瞳だ。
その美しい輝きは、暫く私を見つめた後真剣な顔でこう言った。
「ねえ。ヨルは、「理想の初めて」とか、ないの?こうして欲しい、こんな状況でこうだったら、とか。」
「成る程、それはあるかもね?まあ本人の希望が一番では、あるわ。なにしろリラックスしないと駄目だし。」
「そうだよね?」
再びなにやらヤイヤイ言い出した二人を尻目に、少し横を向いて真剣に考えてみる。
理想。 理想の 「H」ふぐっ
「セックス」 ぁぁぁ
「性交」 っっ 「交わり」 ふぅ
うん、「交わり」で 行こうか
「何やってんのかしら」という 呆れたレナの声が聴こえるが
私はまだ目を開けるつもりはない。
とりあえず 「理想の交わり」を 想像、するのだ。
ふむ?
確かに。 「実際」どう なる する のか
わかんない けど。
「こうしたい」とか「こうされたい」とか
無いと。 困る こまる? のか?
いやいや 話が 逸れる わ 駄目よ
恥じらいは 捨て 棄てるの よ
あの 断崖絶壁から 放り投げるのよ
そう 「ぜんぶ」ね。
でもでも しかし 実際問題。
ポンと 頭を神域に移して
「想像」してみる 私たち ふたりの こと
「あの人」が いて
「私」が いて。
他には だれも なにも いなくて なくて
二人きり
真ん中に 大きな 木が。
あるだけ の。
ほんと の 本当の 「二人きり」で。
私達 が。
「今」 「見つめ合って」 「目が 合った ら」。
「 そう なる な ?」
彼がどういう状態で帰って来るのか
それは分からない
どんな「変化」「変容」「進化」をして
どんな 「姿」なのか
何色を 含むのかも わからない けれど。
多分 「変容」「進化」は してる
それは 「知っている」。
「わかる」のだ。
本能的に。
だから。
多分。
「ことば」は 要らなくて。
「わたしたち」は お互いの「いろ」を
「感じ合える」「わかる」から。
見て 目が 合って
触れて 触れられて 少し 解けて
多分 恥ずかしいけど 徐々に 融かされて
いって?
きっと あの人は 私の「気持ちいい」が わかる から。
「そう」してくれる だろうし
私も 「そう」「反応」してしまうだろう。
「自分の なか に 侵られる」
その 「感覚」は まだ 分からないけれど。
何ものをも 侵したくない
侵されたくない 私
だが 私の神域に 唯一入れる あの色ならば。
「違和感」なく 「馴染む」「融け込む」
それは わかるんだ。
「その後」どう なる のかは
わからない けど。
この時
後で聞いた話によると、私はフワフワとピンクの雲に包まれていたらしい。
「なんか。放っといても…………大丈夫じゃ、ない?」
「まあ、そうね。とりあえずあれこれ手技
の事を言うのは、後でもいいのかもね。」
「えー、ヨルに手技は無理じゃない?」
「あら、でも「そうなる」一助にはなると思うけど?」
「まあ確かに知っておいて損は無いかもね。」
そうしてスッポリと私が自分の「なか」に入り込んでいる間にも。
二人の怪しげな話は、進んでいたのである。
うむ。
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