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ラエティアとの話 ☆☆
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イストリア 曰く
まじないが強い者は 「許容範囲が広い」のだそうだ。
その「意味」は 解らなかったけど。
だから「ラエティアなら いいんじゃないか」
そう、言われてやってきたレナの店
特別室的な 二階の奥。
そこで私達は。
何故だか顔を突き合わせて、白く心地の良い部屋の、真ん中で。
ちんまりと、固まっていた。
別に誰が聞いてる、訳じゃないんだけど。
「恥ずかしさ」が隠し切れない私の様子に、どうしてもコソコソ話風に始まった「その話」は、段々と姿勢を崩し始めたラエティアの色によって。
次第に私達の「いろ」も、漏れ出す事となったのである。
「ふぅん、成る程?で、この子は。「普通に」話して、大丈夫なの?まあ、身体があるから同じなのかもしれないけど、イストリアの言ってた意味が分かったわ。確かにこれは、………「普通じゃない」かも知れない。」
え
「まあ、でも私は普通の話しかできないから。とりあえず知ってる事は教えるけど?ところでレナはまあ、いいとして貴女は何をどこまで、どう知ってるの?教育は受けてるのよね?」
あの それは その 「性教育」的な 意味で?
いいんです よね??
私のその顔色を読んで、レナが注釈を入れてくれる。
「ヨルは違う所から来てるからね。女の子の体の事は、教わるでしょう?お母さんから。」
「うん。…………生理が来るとか、妊娠の仕組み?卵子が運ばれてうんにゃら………」
「えっ?卵子?ああ、女の方の事ね。まあ、言葉は違うんでしょうけど、その「交わり」の事については何も教わらないの?」
「ふぐっ」
「ちょっとあんた、やる気あるの?」
「ごめんなさい 」
「まあ、いいわ。なんとなく分かった。」
えっ 流石 ですね? 姉さん
そんな私を脇に置き、二人はあれこれ「その事」について話し始める。
私はとりあえず、この場に慣れる為ともう一度自分の覚悟を決める為に。
頬を揉みほぐしながら、二人の話を聞いていた。
「一通り教育は受けてるものね?」
「うん、それに姉さん達のお茶会に出入りしてれば。………まあ、嫌でも耳に入るわよね…。」
「まあ。あれはまだの子に聞かせるには夢の無い話だからね。」
「夢、か………。」
「そうね。そういう意味でも。貴女は、「ちゃんと」した方がいいのかもね。」
そう言って金色に見える茶の瞳を瞬かせている、ラエティアに。
暗い色は見えないが、流石に私もこれが「重い話」なのは、わかる。
そう、貴石の女達は。
「夢を見る」 ことなど。
許されていないだろうし、自分に「夢」を許してしまったならば。
ディーの様に 「消えて」しまうことだって
あるのだろう。
「いなくなった」という、エルバの言葉が胸に響く。
私の胸の奥に、いつだってあるその「想い」は。
もう、重くはないのだけど「厚み」を知らせるには充分な存在感を放っているからだ。
そんな私の雰囲気を察してか、くるりと瞳を回し色を切り替えた、その様子を見て。
「範囲が広い」とは こういうことか。
そう理解して、その珍しい髪色と艶めくストレートの髪を眺めていた。
「なにしろ私達は、「男を悦ばせる」方法を教えられるけど。貴女…えっと、ヨル?には必要ないかもね。とりあえず初めてならば、相手に任せておけばいいと思うけど?」
「あ、でもラエティア。ヨルが「する」のは、なんか…………なんだっけ?ちょっと違うんだよね??」
「ふぐっ」
「ちょっとアンタ、いい加減観念しなさい。」
「はい…………。」
「違うって、何?私も興味あるわ、それ。」
そう言ってサラリと光を受け、銀灰に光る彼女の髪は灰色がかった緑のアッシュ、アルルよりも髪色が薄いそれはまじないの強さを示している。
美しい艶と久しぶりの直毛を眺めながら、頬を揉みほぐし「自分に説明できるだろうか」と首を捻る。
しかし、レナが説明しても上手く伝わらないだろう。
それは、わかる。
大丈夫 だれも いない し?
「恥ずかしい」は どっかに 置いてくるのよ
「………なん、か。どう、説明していいのか、分かんないんですけど。」
「うん。」
二人とも、目が真剣だ。
これは真面目に。「恥ずかしい」を取っ払って
話さなければ、私が「駄目」だろう。
「あの。………貴石を、否定する訳じゃないんですけど。なんとなくは、分かるし、関係無い訳でもない。でも、「楽しむ」とは、少し違って。」
「「心と心」が、繋がると言うか、「体だけの繋がりじゃない」と、言うか………なんだろうな?多分。「目的」が、「楽しむ」でも「子供を作る」でも「愛を確かめ合う」でも、なくて。ただ、お互いの全部を受け入れ合って、与え合って。チカラを、交換して高め合って、「ひとつになる」みたいな。「運命の人」なんて言うと、馬鹿みたいかも知れないけど、きっと「その二人」が出会ったら、「そうなるだろう」みたいな、元々一つだったものが「元に戻る」みたいな。…………何言ってるんだろ…………???」
でも。
そう言って首を傾げ、ぐっと傾いている私に。
気付かず二人はそれぞれに考え込んで、いる。
えっ
なんだろう これ
なんか 間違えた ???
しかし、顔を上げた金茶の瞳に疑問の色は、見えない。
きっと「意図」は、伝わったのだろう。
そうしてそのまま、ラエティアは美しく塗られた唇を開いた。
「言いたい事は、解る。私も、「そうなった」事はないけど「そうだといいな」と、思う事はあるわ。」
「えっ、あの人は?」
「まあ…………色々あるのよ。」
レナはラエティアのいい人について、何か知っているのか。
そんな事を言っているがどうやら本人的には少し違うらしい。
「まあ、「ただ好き」な、程度じゃ。そうはならないでしょうからね。ここで「その相手」が見つかるのは「奇跡」に近いわ。」
その時 チラリと私を見た、その瞳の色で。
「ああ この人は なにか 知ってるんだな」
そう、解った。
どこまでどう、知っているのかは分からないけど。
きっと私が「あの屋根裏」の関係者だという事は、知っているのだろう。
エルバを見て、いれば。
勘のいい人なら気付くのかもしれない。
しかし、逆にそう判った所為で私は話がし易くなると感じていた。
どうしたって「未経験」で、「箱入り」だと思われていたならば。
やはり話してくれる内容は、違うと思ったからだ。
「で?一応、全く知らない訳じゃないんだろうけど、何が聞きたいの?」
「確かに。やり方、知らない訳じゃないのよね??てか、気焔は知ってるのかしら?」
「ある程度の年齢の男なんでしょう?知らないなんて事、あるの?」
「それがね…………なんて言えばいいんだろう?」
少し困った様な、しかし面白がっているレナの瞳、私は「そこ」に思い当たって頭がぐるぐるとしていた。
え てか? 確かに???
あの人 いや 「人」じゃ ない
あれれ ???
「まあ、きっと今「いない理由」も、それ絡みなんだろうけど。」
「へっ??」
私のぐるぐるを前に、当然の様にそうぶっ込んで来る、レナ。
「だって、ヨルが成長してるのよ??あいつが「本当」は何だか、私は正確な所は知らないけど。「普通じゃない」のは、分かる。だからそれを、普通に?調整?しに、行ったのかな、なんて思ってたんだけど。…………違うの?」
「…………いや。わかんない。」
「まあ、いちいちわざわざ。ヨルに、言ってかないとは思うけどね。実際「男としての機能」がどうなのか、その辺りは気になる所だけど。」
「………ふぅん?なんか、特別な男な訳?」
口を挟んできた、ラエティアの目が輝いている。
完全に、面白がっている目だ。
「まあ………そうね?とりあえず、力は強いわよ。」
「あら。大丈夫?初めてなんでしょう?まあ、でも?だから??そういうことなのかしら。」
「えっ」
えっ
なに が どういうこと なんですか ね?
「エルバがやたら心配してて。いや、「心配無いんだけど心配だ」とか言って、ここ暫く突然ブツブツ言ってるから。レナ、何か言ったでしょう?」
「いや、私は。そろそろかなぁって食堂で言ってただけよ。」
「えっ、レナ、さん???」
何故。
私の「そっちの話」が、筒抜けになって いるのだろうか。
「いや、エルバは心配なのよ。まあ、あんたも普通じゃないから大丈夫なんだろうけど、とりあえず「初めて」の後は。見せに来なさいって、言ってたわよ。」
「ああ。それはその方がいいわ。」
「ふえぁっ?!」
「なんて声出してんのよ。一応ね、みんな初めての後は大丈夫か見てもらうのよ。場合によっては薬が必要な時も、あるわ。まああんたの場合、死ぬ程優しくされるんでしょうけど、一応見せた方が無難だわね。」
「ふぐっ」
「なんか。………大丈夫なの、この子は。」
「まあ。多分。」
そうしてレナは、私を少し休憩させるつもりなのだろう。
お茶のお代わりを入れに、席を立ったのだ。
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