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第2
32話
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「ちっ…ここでも名前が出るのかよスオ……」
フワームの言い方に反応するキャス。
「同期だっけ?スオ魔法士の…何かあったのか?」
「迷惑しか掛けられてない」
フワームは鼻にシワを寄せて嫌な顔をキャスにしてやる。それでもキャスは嬉しそうにそのフワームの顔を見る。人の心情にお構い無しのモンジのらしい言葉が聞こえた。
「だが、腕は良い。俺はそれだけでいいさ」
「あいつは気に入った案件しかやらないだろう…この込み入った事情を汲み取ってくれないさ。それに…」
「シュシュルはスオをナノニス王子に近付けたくないんだってさ」
言葉を濁したシュシュルの後を引き継いで、このさい全部をバラしていくフワーム。隠し事はもうしないんだろう?という顔をして。
「くだらね」
一言で終わった。
「隊長、そりゃ無いですよ。俺は分かります副団長の気持ちが。俺だって愛するフワームがもしそんな目に遭ってたら、この国を滅ぼしてやりますよ。そんでフワームにはずっと俺の家に居てもらいます。外は危ないですからね」
「お前が一番危ないわっ」
両手を差し出していたキャスの手を叩いて後ろに下がるフワーム。
「うちの番犬は役に立つぞ、第2隊隊長のお嬢さん」
へらっと笑いながらからかってくる。
「お、おま、お前!俺の事お嬢さんだってぇ!?く、屈辱だ、許せん!」
モンジに飛びかかりそうなフワームを嬉しそうに後ろから羽交い締めにするキャスはフワームの後頭部に頬を擦り寄せる。
「カリカリすんなよ。可愛いだけだぞ」
「だから嫌いだ!第4隊なんてっ俺の事馬鹿にしてんだろ!このやろ……スオ以外には魔法士はいないのかよ!」
「なぁフワーム。さっきの唇を突き出してた顔もう一回してくんねぇか?ちょっと今日の夜のおか…ガフッ!」
フワームは最後まで言わせるかとキャスの顔に頭突きをおみまいしてやる。
「スオになら打診してみてもいいぞ。それとなく聞いてやるよ。そんで?副団長さん、肝心の愛しの王子様はどこに隠してんのさ?」
「そこまでは言わない」
にべも無く言い放つシュシュル。
「……分かったよ、さて…それじゃそろそろいい時間だな行くか」
「……あぁ…俺たちは帰るよ」
「は?違ぇよ、お前らと行くっつってんの」
「え、どこに?」
フワームが後頭部を擦りながら聞く。
「ナノニス様の所には行かないぞ」
態度を改めることなく言うシュシュル。
「飲みに行くに決まってんだろ?こんだけペラペラ喋ったんだよ。奢れよ、行きつけに案内しろ」
「隊長、俺聞いたこと有りますよ。この副団長の隊、エーの奴らが良く打ち上げしてる店。料理が美味いらしいですよ」
かるく鼻血を啜りながらキャスが提案する。
(待て、最悪だろ。寄りによってフドー食堂だと?確かにあそこの料理は美味い、それは大賛成だ。しかしあそこの店にはナノニス王子が居らっしゃる……シュシュル、分かってんな?酷く否定した日にゃあ……コイツら食いついてくるぞ…分かってるよな?)
固まった笑顔でシュシュルを見るフワームは穏便に、穏便に、と願っていた。
「………………あそこは駄目だ……今日は休みだ」
何かと葛藤した沈黙の後、静かに断る。
(良し、良し、及第点だ!よく我慢した)
フワームは心の中でシュシュルに拍手を送った。
「キャス、当たりだ」
その言葉でシュシュルとフワームは固まる。
「くくく……余程、混乱してるらしいな。我が騎士団の副団長様は……俺たちと文句も無く呑みに行くってさ。今のお前らは防御ゼロだ。生身で俺とやり合ってんだよ、勝てるわけねぇだろ?」
「流石、隊長だ。なるほどなぁ行きつけの店に匿ってんのか……何かヤラシイな」
「下卑た想像するなっ!俺は肯定も否定もしてないぞっ」
例え想像だとしてもナノを汚されるのは耐え難い。シュシュルの中では最早、ナノのことを神聖なものとして捉えているところがあった。
「そう、いちいち憤慨すんなって……まぁ会わせろよ王子様に、傷跡を見てやるよ。俺たちは実際に隊員の傷跡を見てんだよ。どうする?」
「ちょ……っと待て、俺たち四人が一緒に行くなんておかしくないか?変な行動をとると怪しまれるんじゃないか?特にシュシュルとモンジは目立つし…」
「……めんどくせぇな……副団長と第2のお嬢ちゃんがいつものように行ってて、キャスがお嬢ちゃんのケツ追っかけて、俺がキャスに連れられて行く。これで文句ねぇだろ」
フワームはパクパクと口を開け閉めし、言葉を繋げなくなってしまった。
「よし、それで行こう」
「そうだな」
しかもシュシュルとキャスも同意し、駐屯地を出ようとしている。フワームは色々と言いたい事がありすぎて、一歩が出ないでいた。認めたくないが良い案だった。一番有り得る状況だけに文句が直ぐに出てこない。しかし、これだけはきちんと否定なければいけない。
「俺は……お嬢ちゃんじゃねぇ!!」
既に駐屯地を出て行ってしまった三人に向かって吠える。その声を背中に聞き、可笑しそうに笑うキャス。
「お前、本当にあれが良いのか?」
「隊長…分かってないですね。あの感じが可愛いんですよ。第2隊の隊長のくせに、つつくとキャンキャン鳴いて…ちょっと虐めたくなるでしょ?顔も可愛いし」
「俺には立派な男にしか見えん」
「そこは、ほら俺のこの体と俺の好みですから」
悔しそうに後ろで吠えるフワームを置いてフドー食堂へと向かう為、サッサっと馬に跨る。シュシュルは、はやる気持ちを抑えきれず手綱を強く握る。今日はまだナノに会っていない。傷跡の状況はどうか、熱は出していないか、また誰かに絡まれていないか、心配は尽きない。
フワームの言い方に反応するキャス。
「同期だっけ?スオ魔法士の…何かあったのか?」
「迷惑しか掛けられてない」
フワームは鼻にシワを寄せて嫌な顔をキャスにしてやる。それでもキャスは嬉しそうにそのフワームの顔を見る。人の心情にお構い無しのモンジのらしい言葉が聞こえた。
「だが、腕は良い。俺はそれだけでいいさ」
「あいつは気に入った案件しかやらないだろう…この込み入った事情を汲み取ってくれないさ。それに…」
「シュシュルはスオをナノニス王子に近付けたくないんだってさ」
言葉を濁したシュシュルの後を引き継いで、このさい全部をバラしていくフワーム。隠し事はもうしないんだろう?という顔をして。
「くだらね」
一言で終わった。
「隊長、そりゃ無いですよ。俺は分かります副団長の気持ちが。俺だって愛するフワームがもしそんな目に遭ってたら、この国を滅ぼしてやりますよ。そんでフワームにはずっと俺の家に居てもらいます。外は危ないですからね」
「お前が一番危ないわっ」
両手を差し出していたキャスの手を叩いて後ろに下がるフワーム。
「うちの番犬は役に立つぞ、第2隊隊長のお嬢さん」
へらっと笑いながらからかってくる。
「お、おま、お前!俺の事お嬢さんだってぇ!?く、屈辱だ、許せん!」
モンジに飛びかかりそうなフワームを嬉しそうに後ろから羽交い締めにするキャスはフワームの後頭部に頬を擦り寄せる。
「カリカリすんなよ。可愛いだけだぞ」
「だから嫌いだ!第4隊なんてっ俺の事馬鹿にしてんだろ!このやろ……スオ以外には魔法士はいないのかよ!」
「なぁフワーム。さっきの唇を突き出してた顔もう一回してくんねぇか?ちょっと今日の夜のおか…ガフッ!」
フワームは最後まで言わせるかとキャスの顔に頭突きをおみまいしてやる。
「スオになら打診してみてもいいぞ。それとなく聞いてやるよ。そんで?副団長さん、肝心の愛しの王子様はどこに隠してんのさ?」
「そこまでは言わない」
にべも無く言い放つシュシュル。
「……分かったよ、さて…それじゃそろそろいい時間だな行くか」
「……あぁ…俺たちは帰るよ」
「は?違ぇよ、お前らと行くっつってんの」
「え、どこに?」
フワームが後頭部を擦りながら聞く。
「ナノニス様の所には行かないぞ」
態度を改めることなく言うシュシュル。
「飲みに行くに決まってんだろ?こんだけペラペラ喋ったんだよ。奢れよ、行きつけに案内しろ」
「隊長、俺聞いたこと有りますよ。この副団長の隊、エーの奴らが良く打ち上げしてる店。料理が美味いらしいですよ」
かるく鼻血を啜りながらキャスが提案する。
(待て、最悪だろ。寄りによってフドー食堂だと?確かにあそこの料理は美味い、それは大賛成だ。しかしあそこの店にはナノニス王子が居らっしゃる……シュシュル、分かってんな?酷く否定した日にゃあ……コイツら食いついてくるぞ…分かってるよな?)
固まった笑顔でシュシュルを見るフワームは穏便に、穏便に、と願っていた。
「………………あそこは駄目だ……今日は休みだ」
何かと葛藤した沈黙の後、静かに断る。
(良し、良し、及第点だ!よく我慢した)
フワームは心の中でシュシュルに拍手を送った。
「キャス、当たりだ」
その言葉でシュシュルとフワームは固まる。
「くくく……余程、混乱してるらしいな。我が騎士団の副団長様は……俺たちと文句も無く呑みに行くってさ。今のお前らは防御ゼロだ。生身で俺とやり合ってんだよ、勝てるわけねぇだろ?」
「流石、隊長だ。なるほどなぁ行きつけの店に匿ってんのか……何かヤラシイな」
「下卑た想像するなっ!俺は肯定も否定もしてないぞっ」
例え想像だとしてもナノを汚されるのは耐え難い。シュシュルの中では最早、ナノのことを神聖なものとして捉えているところがあった。
「そう、いちいち憤慨すんなって……まぁ会わせろよ王子様に、傷跡を見てやるよ。俺たちは実際に隊員の傷跡を見てんだよ。どうする?」
「ちょ……っと待て、俺たち四人が一緒に行くなんておかしくないか?変な行動をとると怪しまれるんじゃないか?特にシュシュルとモンジは目立つし…」
「……めんどくせぇな……副団長と第2のお嬢ちゃんがいつものように行ってて、キャスがお嬢ちゃんのケツ追っかけて、俺がキャスに連れられて行く。これで文句ねぇだろ」
フワームはパクパクと口を開け閉めし、言葉を繋げなくなってしまった。
「よし、それで行こう」
「そうだな」
しかもシュシュルとキャスも同意し、駐屯地を出ようとしている。フワームは色々と言いたい事がありすぎて、一歩が出ないでいた。認めたくないが良い案だった。一番有り得る状況だけに文句が直ぐに出てこない。しかし、これだけはきちんと否定なければいけない。
「俺は……お嬢ちゃんじゃねぇ!!」
既に駐屯地を出て行ってしまった三人に向かって吠える。その声を背中に聞き、可笑しそうに笑うキャス。
「お前、本当にあれが良いのか?」
「隊長…分かってないですね。あの感じが可愛いんですよ。第2隊の隊長のくせに、つつくとキャンキャン鳴いて…ちょっと虐めたくなるでしょ?顔も可愛いし」
「俺には立派な男にしか見えん」
「そこは、ほら俺のこの体と俺の好みですから」
悔しそうに後ろで吠えるフワームを置いてフドー食堂へと向かう為、サッサっと馬に跨る。シュシュルは、はやる気持ちを抑えきれず手綱を強く握る。今日はまだナノに会っていない。傷跡の状況はどうか、熱は出していないか、また誰かに絡まれていないか、心配は尽きない。
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