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第1
15話
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今回の騒動、真相はこうだった。国に不満のある犯罪組織が、恐れ多くも王家転覆を狙ったことが始まりだ。王家の中でも特に愛される存在を酷い有様にし、交渉材料として使う。それと同時に魔物を放ち王都に混乱をもたらす。王都中の人々を人質にし、愛される存在の第6王子への暴行で実質的にも精神的にも追い込んで王家を引きずり下ろしたい目論見があった。
シュシュル曰く、よくもまぁそんな大それたことを穴だらけの計画で実行したもんだ。大きく狙った事だけは評価してやる。と、捕縛した犯人から聞き取りの最中言った。
しかし、今回の件は安心できない。逃げた者がいた。小物であれば問題ないが…魔物を操作していた人物が捕まっていない。今回の大それた計画、発案者はその魔物を操作していた者だろう。
攫われた人物は何も王子だけでは無かった。奴隷、と呼ばれていた彼らは貴族や金持ちだった。魔物出現と同時進行で誘拐事件も多発していた王都は表向き、一気に解決となった。
「副団長…今日も行くんですか?」
「当たり前だろ、見つかるまで行く。それか何か有益な情報も集める」
あの古城の事件から数日後、事件の後処理として副団長シュシュル・フレイザーは半壊した古城とナノニスの屋敷へ通っていた。
爆発の後、傷付いた隊員は動けるものに頼み、援護に来た騎士団に捕縛者を押し付け、シュシュルはナノニスを探した。崩れると言う隊員の言葉を背に古城の中に入り探した。又は瓦礫を退かして探し回った。
しかし、ナノニスは一向に見つからなかった。犯人や奴隷だった者たちにも聞き込みをしたが、ナノニスを見た者がいない。確かに屋敷では連れて行かれたと証言が取れたのに、見つからなかったのだ。
最後に王子達に今回の経緯を確認しに行ったところ、信じられないことになってしまった。
「第5王子は、自ら志願して犯人組織の撲滅に一役買ったのだ。エイリカが攫われた?そんな事実は無い。聞き間違いだろう…第5王子の勇気を讃えよう。葬儀は王都中に知らせ彼の勇気を讃えようではないか…それで良いだろう?」
「………………ナノニス王子は…ご一緒では…無かったのですか?」
「私達と?場所の情報を提供したまでだ…私達は、王都の憂いを払っただけだが?」
悔しくて何も言い返せなかった。否、言い返せはしない、王子に向かって。真実はねじ曲げられ、ナノニスの捜索はそこそこに、もう亡くなったものとされた。
ナノニスは本当に亡くなってしまったのか。シュシュルは信じたくなかった。幼いナノニスを知るシュシュルは彼のあどけない、素直な笑顔が忘れられない。もしも亡くなってしまったとしたら、せめて亡骸だけは…何としても…あの古城の下にナノニスが居続けることは我慢ならない。
シュシュルはどうあっても、古城を捜索すると心に決めていた。
一方、フドー食堂の女将シュガーレに助けられたナノニスは2日間、目を覚まさなかった。運び込まれて直ぐに医者に診てもらい、手当をしてもらったが正直厳しいかもしれないと言われていた。シュガーレ達食堂の者は祈る思いだった。まだ年端の行かない少年が、ボロボロの姿で横たわるベッド横には誰かがついていて、一日中見守られていた。
「例え……この子がどんな酷いことしてようと…ここまでするなんて…外道のすることだよ。あんた、見てみなよ…この子の手は綺麗だよ。指先が綺麗なんだよ…良いとこの子じゃないかね……古城の近くで倒れてたんだ…例の事件と関係が…」
「シュガーレ。今はまだこの子が目覚めてからに」
普段は寡黙なシュガーレの旦那ストム。彼が眉間に皺を寄せボソリと言う。彼の言葉は重みがある、余計な詮索はするなと伝えてきている。彼も怒っていた、人を痛めつけられる人間が信じられなかった。しかも目の前の子は少年だ。実は子供好きのストムはこの子を守ると静かに決めていた。
「そうだね…良くなって欲しいよ…。家は裕福じゃないから…魔法士様に頼めない……ごめんよ」
魔法士、貴族や金持ちしか相手をしない高度な魔法を行使する存在。数少ないこの者たちは、大体ミリー城の近くに住んでいる。護衛やまじない、治癒などを生業としている。依頼料は法外である。
ナノニスは3日目の昼に目を覚ました。恐ろしいほどの全身の痛み、蘇る古城での出来事。叫びたかったが、目の前にラシューが現れる。とても心配していた様子で仕切りに色んなところを撫でてくる。その度にほわっと一瞬痛みが消える。ナノニスは涙が出てきた。
「ラシュー……ありがと……」
この小さな存在は、本当にナノニスの心の支えになってくれる。そしてフと知らない部屋だと視線だけ動かし部屋の仲を見回す。
「どこ……?」
そんな時、丁度部屋のドアが開いた。入ってきたのは少しばかりふくよかな女性、腕まくりをして手には水の入った桶とタオル。ドアを閉めてナノニスに視線を持ってくると持っていた桶を落としてしまった。当然、床は水浸しだ。
「あ、あ、目が…目が……」
ワナワナと震える彼女は勢いよくドアを開けて大きな声で外に向かって叫んだ。
「あんたーー!目覚めたよ!!目が覚めたっ!」
びっくりしたナノニスは目を見開いてその女性を凝視してしまう。
「良かった、本当に良かった……目が覚めて……あぁ体が痛いだろ?可哀想に……安心しな、大丈夫だよ。道で倒れていたあんたを私がここまで運んだんだよ…あ!ここは私の家だからね。あぁ……良かった……」
バタバタバタバタ
足音が次から次へと聞こえ部屋に勢いよく人が入ってくる。
「目覚めたかっ!?」
またしても大きな声に驚くナノニスだった。
シュシュル曰く、よくもまぁそんな大それたことを穴だらけの計画で実行したもんだ。大きく狙った事だけは評価してやる。と、捕縛した犯人から聞き取りの最中言った。
しかし、今回の件は安心できない。逃げた者がいた。小物であれば問題ないが…魔物を操作していた人物が捕まっていない。今回の大それた計画、発案者はその魔物を操作していた者だろう。
攫われた人物は何も王子だけでは無かった。奴隷、と呼ばれていた彼らは貴族や金持ちだった。魔物出現と同時進行で誘拐事件も多発していた王都は表向き、一気に解決となった。
「副団長…今日も行くんですか?」
「当たり前だろ、見つかるまで行く。それか何か有益な情報も集める」
あの古城の事件から数日後、事件の後処理として副団長シュシュル・フレイザーは半壊した古城とナノニスの屋敷へ通っていた。
爆発の後、傷付いた隊員は動けるものに頼み、援護に来た騎士団に捕縛者を押し付け、シュシュルはナノニスを探した。崩れると言う隊員の言葉を背に古城の中に入り探した。又は瓦礫を退かして探し回った。
しかし、ナノニスは一向に見つからなかった。犯人や奴隷だった者たちにも聞き込みをしたが、ナノニスを見た者がいない。確かに屋敷では連れて行かれたと証言が取れたのに、見つからなかったのだ。
最後に王子達に今回の経緯を確認しに行ったところ、信じられないことになってしまった。
「第5王子は、自ら志願して犯人組織の撲滅に一役買ったのだ。エイリカが攫われた?そんな事実は無い。聞き間違いだろう…第5王子の勇気を讃えよう。葬儀は王都中に知らせ彼の勇気を讃えようではないか…それで良いだろう?」
「………………ナノニス王子は…ご一緒では…無かったのですか?」
「私達と?場所の情報を提供したまでだ…私達は、王都の憂いを払っただけだが?」
悔しくて何も言い返せなかった。否、言い返せはしない、王子に向かって。真実はねじ曲げられ、ナノニスの捜索はそこそこに、もう亡くなったものとされた。
ナノニスは本当に亡くなってしまったのか。シュシュルは信じたくなかった。幼いナノニスを知るシュシュルは彼のあどけない、素直な笑顔が忘れられない。もしも亡くなってしまったとしたら、せめて亡骸だけは…何としても…あの古城の下にナノニスが居続けることは我慢ならない。
シュシュルはどうあっても、古城を捜索すると心に決めていた。
一方、フドー食堂の女将シュガーレに助けられたナノニスは2日間、目を覚まさなかった。運び込まれて直ぐに医者に診てもらい、手当をしてもらったが正直厳しいかもしれないと言われていた。シュガーレ達食堂の者は祈る思いだった。まだ年端の行かない少年が、ボロボロの姿で横たわるベッド横には誰かがついていて、一日中見守られていた。
「例え……この子がどんな酷いことしてようと…ここまでするなんて…外道のすることだよ。あんた、見てみなよ…この子の手は綺麗だよ。指先が綺麗なんだよ…良いとこの子じゃないかね……古城の近くで倒れてたんだ…例の事件と関係が…」
「シュガーレ。今はまだこの子が目覚めてからに」
普段は寡黙なシュガーレの旦那ストム。彼が眉間に皺を寄せボソリと言う。彼の言葉は重みがある、余計な詮索はするなと伝えてきている。彼も怒っていた、人を痛めつけられる人間が信じられなかった。しかも目の前の子は少年だ。実は子供好きのストムはこの子を守ると静かに決めていた。
「そうだね…良くなって欲しいよ…。家は裕福じゃないから…魔法士様に頼めない……ごめんよ」
魔法士、貴族や金持ちしか相手をしない高度な魔法を行使する存在。数少ないこの者たちは、大体ミリー城の近くに住んでいる。護衛やまじない、治癒などを生業としている。依頼料は法外である。
ナノニスは3日目の昼に目を覚ました。恐ろしいほどの全身の痛み、蘇る古城での出来事。叫びたかったが、目の前にラシューが現れる。とても心配していた様子で仕切りに色んなところを撫でてくる。その度にほわっと一瞬痛みが消える。ナノニスは涙が出てきた。
「ラシュー……ありがと……」
この小さな存在は、本当にナノニスの心の支えになってくれる。そしてフと知らない部屋だと視線だけ動かし部屋の仲を見回す。
「どこ……?」
そんな時、丁度部屋のドアが開いた。入ってきたのは少しばかりふくよかな女性、腕まくりをして手には水の入った桶とタオル。ドアを閉めてナノニスに視線を持ってくると持っていた桶を落としてしまった。当然、床は水浸しだ。
「あ、あ、目が…目が……」
ワナワナと震える彼女は勢いよくドアを開けて大きな声で外に向かって叫んだ。
「あんたーー!目覚めたよ!!目が覚めたっ!」
びっくりしたナノニスは目を見開いてその女性を凝視してしまう。
「良かった、本当に良かった……目が覚めて……あぁ体が痛いだろ?可哀想に……安心しな、大丈夫だよ。道で倒れていたあんたを私がここまで運んだんだよ…あ!ここは私の家だからね。あぁ……良かった……」
バタバタバタバタ
足音が次から次へと聞こえ部屋に勢いよく人が入ってくる。
「目覚めたかっ!?」
またしても大きな声に驚くナノニスだった。
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