この気持ちに気づくまで

猫谷 一禾

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番外編

修次の困惑……の後の緋縁の受難 1 ♡

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 あやつり人形のように気持ちとは裏腹に緋縁の足は寮に向かって歩いていた。暑苦しいほどに皇輝の腕が体に巻き付いている。

「そんなに…もぅ……ちょっと力、強すぎ…」
「黙って歩け、緋縁は信用ならない時があるからな…さっさっと部屋に行くぞ」
「なんで部屋に連れ込もうとするの?俺、理由言ったじゃんかぁ」
「まったく……」
「行くよ……部屋行けばいいんでしょ…だから離してって、近すぎだからぁ」
「その口今すぐ塞ぐぞ、黙れ」
「うぅ…………」

(なんだよ、なんだよ、なんなんだよ!)

緋縁はすっかり不貞腐れてしまった。大体の事は許してきたつもりの緋縁、しかし今回ばかりは自分の意志を通したかった理由がある。

(結局いつもこうだよ……俺の意見は通らない)

8階、当然のごとく皇輝の部屋に着いた。靴を脱ぐのもそこそこに寝室へと引っ張られていく。

「ちょっと、話するんじゃないの!?やだよ俺、このままするの、やだよ」
「ちっ…あんな顔して誘っといてうるせぇ!」
「誘ってない!聞いてよ俺の話!こんなんだからやだって言うの!逃げたくなるの!!」
「緋縁、俺が逃げられて穏やかにいられるとでも思ってんのか?ブチ切れるぞっ!」

(既にキレてるじゃん!!)

「何が気に食わない!この俺と付き合ってて…付き合ってんならやるのなんて当たり前だろ」
「っ!や、やるのが……ヤダって言ってんじゃなくて、今この状態でやるのがヤなの!」
「ゴタゴタ煩い」

ベッドに放り投げられ、すぐさま上からのしかかられる。緋縁もヒートアップしていたので悔し紛れに皇輝の首に腕を巻き付け、キツく抱きつく。予想だにしていない緋縁の行動に動きを止める皇輝。そして緋縁は初めて皇輝の耳に唇を寄せて、頭に直接語りかけるように言った。

「待ってよ……勢いでなんて……ヤダよ……」
「………………」
「怒んないで……逃げたの…………謝るから」

皇輝が逃げられることを嫌っているのは分かっていた。しかし緋縁も流されるだけでは気持ちの持っていきようがなかった。

「緋縁……逃げるな…」

キツく抱きしめ返される。

「だからなおさら、傍に置きたくなる」
「コウ……ごめん……ね…」
「恥ずかしがっても良い、その顔…心ごと俺に見せろよ……どんなでも受け止めるっつってんだろ」

(それだけじゃなくて……)

急に緋縁の腕の力が弱まる、皇輝は空間を空けて顔を見る。緋縁の顔は泣きそうになっていた。

「なんで泣くんだ?」
「だって……」
「言えって、同じこと繰り返すのか?」
「だってさ……コウ……コウはさ……2年じゃん……俺は……1年じゃん……」
「だから?」
「だから……先に……居なくなるじゃん……」
「緋縁……」
「一緒の部屋はそこまで……あんまり……ちょっとは……やじゃないけどさ……」
「言い方癪に障るわ」
「けど……」
「なに?俺が卒業した後寂しいって?」
「うぐっ…………」
「未来を悲観して今一緒にいられる時間も削るのか?緋縁は……」
「一緒に居るの……慣れちゃったら……後がキツくなるから…」
「ふっ殺し文句だな、それは」
「そんな……俺は……真剣に悩んで……」

頭をグリグリと撫でられる。

「かーわいい」
「茶化さないでよっもぅやだ、こんなに女々しく無かったのに…俺……弱っちくなった……」
「緋縁、俺たちは大丈夫だ」
「コウ……どうしよ……俺……」
「もぅ喋るな…」

そっと重なり合う唇。戯れるように重なり擦れ合う乾いたキス。一度じっと瞳を見つめ合いしっとりとしたキスに変わる。

「緋縁、可愛い……」
「こう……こうき……」
「離れたくないに決まってる…」
「こうきも?そう思う?」
「あぁ、だがな……これから何十年も一緒にいる内のほんの少しだけ、一年だけだ…」
「んっ……んっ……ん?」
「緋縁……ちゅっ……くちゅっ……」
「ん?んん……んっ…ぷはっ……ま、待って」
「っんだよ」

ちゅっ……

「何十年って……」
「あ?いるだろ一緒に、この先ずっと」
「へぁ?……あっ……んぅ……あ、手、手……」
「肌……今日もスベスベ……手に吸い付くな…」

キスに夢中になっていた隙に素肌が露になって胸や腹を撫でられていた。

「やっ……んっ……そこ……触んないでよ……」
「ふっ…そこって?どこ?……ここ?」
「あっん……やっ……む、胸……だ、よ…」
「じゃあここは良いのか…」

皇輝が楽しそうに緋縁の胸の突起を唇と指で甘く摘む。

「んんっ!……やぁ……そこだってぇ……」
「ここは胸っていうより…違う言い方があるだろ?緋縁…言わなきゃ分からない」
「う、うぅ~~……はっ……あぅ……」

突起をいじられる度に、ピクリピクリと身体が反応してしまう。

「やっいじわる……そこ……うぅ……ち、乳首!」
「恥ずかしいのか?自分の身体の場所を言うだけなのに…」
「う、うるさいよ!ひぃやぁっん……あっ吸ったらダメ……だよぉ……」

甘く噛まれていた突起が皇輝の唇によって強く吸われる。ビリビリっと淫猥な電流が身体を流れた感覚だ。

「こっち、下の方は?こっちも泣き虫?」
「エロおやじぃ……うぅん……あっ……」

ズボンと下着、一緒に脱がされて膝の下に添えられた手で胸に着くまで持ち上げられてしまう。

「うそっやだ!」

下半身を曝す格好は何とも心許なく不安と羞恥心が襲ってくる。

「いい眺め……美味そう」
「ばかぁ……嘘だっ……やっだ……見ないでよ~」
「元気だな……ここ…」

クチュリ

緋縁の中心を握り込み既に濡れているそこを上下に扱かれる。全てを晒しての与えられる快感は想像を超えたものだった。時折さらにその奥の蕾にも指先が触れる。

「うっうっ……はぁん……あっ……ふっ……んん」

緋縁は片手の甲を唇に当てて、声を抑えるがそれでと漏れ出てしまう。もう片手は皇輝の腕を掴んでいる。胸の突起を舐められ噛まれ、時々吸われる。下半身への刺激も身体をより一層熱くさせる。

「はあはあ……あぁ……んっ……あっ指ぃ……」
「ちゅくっ……あ?入っちゃった……これ」
「ああっ!……やっ……強いよぉ…………待って…」

緋縁の身体の中、皇輝の指が快感のポイントである前立腺を擦って押してくる。

くちゅ……くちゅ……

(やだ……やだ……音……)

「足……下ろさせて……んっ……もぅ…恥ずかしいからっ!……あ!あっあっ……あぁ……はっ」
「お仕置……逃げただろ?」
「え……う…そ……」
「恥ずかしがる顔も、ここも、可愛い声も」

緋縁の口元にある手に指先を絡め取られ顔の横で恋人繋ぎで手を繋ぐ。皇輝の吐息が唇に掛かりながら

「全部……俺に見せろよ…」
「んっ…………」
「可愛い声…………聞かせろ…」

唇を舐めながら、そう命じてくる。

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