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番外編
唯一と彗の物語 6
しおりを挟む「俺って、本気の相手には手が出せなくなるタイプだったみたい……」
「あ?何だって?」
「いや、何でもない」
「おいおい、マジになったの?」
「いや、出せないっつか……押し切れないっつか」
「なになに?何やったの?」
独り言のように漏らしてしまった言葉を副会長を務める西田に聞かれ、追求されてしまう。
「どーせお気に入りのあの子だろ?」
「ゆいちゃん!」
「はいはい。双黒の片割れね」
「まっったく自覚なくてさぁ……まいってんだよ」
「は?マジで……チームの連中でも居るだろ…可愛い可愛いっつってる奴ら」
「……誰だ?どいつだ?……ちょっと締めるか」
「いやいや、マジじゃん。本意気じゃん」
「いやさぁ近くで見てみ!めっちゃ可愛いから!」
「そんなか……」
「いやダメだ、近づいちゃダメ。俺しか知らなくて良いから」
「ひーえー……ついに……お前が……」
「何だよ……悪いかよ」
「大人になったね」
「うるせぇ!!」
「あれだろ?今、下歩いてるあそこの」
「ヤバい……歩いてるだけなのに可愛い……」
「重症だ」
2階の生徒会室から校庭を見下ろして、放課後の帰る姿を見つめる。
「俺、初めて切ないって気持ち知ったよ……追っかけても追っかけてもつれなくて……俺の本気信じてくんねぇの……切ねぇ~」
「因果応報って言葉知ってる?今まで遊び倒してきたから、こんな事になってんじゃないの?」
「だぁ!怖い!神様怖い!!過去の俺に教えたい」
「ブハハっ昔のお前が聞くかよ」
「あ~あ~あの可愛い声で彗って読んでくれないかなぁハートマーク付きで」
「言えば?」
「つれないからさぁゆいちゃん……七海先輩以外は絶対呼んでくんないの……彼氏になったら読んでもらお~」
「すげぇ……付き合えると思ってんだ……」
そんな会話がされているとは、つゆほど知らない唯一は足早に帰っていた。
(早く帰ろう!顔見る前に!)
昨日の今日で、いつものようにお昼に迎えにこられた時は飛び上がってしまった。何とか地獄のような気まずさのお昼を終えた時はちょっとした達成感を味わった。
(あぁ……ヨリに会いたいな……どうしてるんだろ……今日行ってみようかな……)
その日の夜、引き合わせられたかのように再開する2人であった。
昨日の夜は家の前まで送ってもらってしまった。一歩一歩、確実に近ずいて踏み込んでこようとしてる彗が怖くて、唯一の殻にヒビを入れてきているようで困惑する。キスをする感触をを知らなくてよかったのに、キスをする行為を画面で見ていればよかったのに、新しいことをドンドン教えられてしまう。
(あんな……ヌメヌメするの、経験したくなかったのに…抱きしめられるってドキドキするし、ほっこりするんだ…。しかもおちゃらけてるだけじゃないって…時々、真剣な顔とかしてさ…)
毎日、朝やお昼に顔を合わせる度に内心はドキマギしている唯一は緋縁と同様に悩んでいた。
だから里葉や緋縁との話は、短かったけど唯一にとっては重要な意味があった。新しいことに片足を踏み入れてみても良いのかもしれない。自分の心に素直に従ってみようかと、勇気をだしてみよかと、決心し始めていた。
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