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少年のころ
《3》
しおりを挟むあれよあれよという間に里葉は武藤家に住むことになった。色々な希望を聞かれたが、正直よく分からない。急激な変化は良くないと判断され、今までと変わらず公立小学校に通うことになった。
武藤家の家族は全員で4人。父の一(はじめ)息子2人、4つ年上の現在高校1年生、道雄(みちお)同い年の進(すすむ)、その母の香(かおり)がいた。そしてなんと、里葉には信じられないお手伝いさんが2人もいた。人の良さそうな中年女性だ。
「こんにちは、良く来たわね。あなたのご両親は私も知っているのよ……本当に、良い人たちだった」
武藤の妻、香が寂しそうに言う。そして息子2人を順に紹介し始める。
「こっちが長男の道雄。里葉くんの4つ年上で高校1年生よ、そしてこの子が次男の進。里葉くんと同じ小学校6年生。後はこっちの女性2人ね、マキさんとエミさん」
「里葉くん、よろしくね。俺は道雄、好きに呼んでくれて構わないよ。弟が可愛げないからお兄ちゃんって呼んでくれると嬉しいな」
にこやかに言われた。
「俺は進……兄貴、プレッシャーかけんなよ…」
「ほらぁ……絶賛反抗期真っ只中!」
「ちっ……」
「あらあら、坊っちゃま、私はマキです。何でも仰ってください」
「エミです。よろしくお願いします」
マキはふくよかな、おばさんといった印象でエミはキビキビとした女性だった。
「……森 里葉です……お世話になります」
ぺこりと頭を下げる。自分の立っている場所が違和感がして堪らなかった。大きな家も初めて見る武藤家の人達もお手伝いさんも、違和感しかない。それでも、里葉はここで生活するしか選択肢はない。この歳になればわかる、後は施設に入る道しか残っていない。引き取ってくれる親戚などいない、自分は充分過ぎるほど恵まれているのだ。
それでも、それでも慣れ親しんだ両親はいない。この現実が、目の前の温かな人たちには申し訳ないがどうしたって孤独を感じる。
「お部屋に案内してあげてちょうだい。主人も今日は早く帰って来ると言っていたわ」
里葉はキョロキョロとマキの後に着いて階段を登った。ギュッとランドセルの肩紐を握って。
「ここが、里葉さんのお部屋です。どうぞご自由に使って下さい、との事です」
パタンとドアを閉められ里葉1人になる。部屋を見回すと今までの里葉の常識から大きく外れた部屋だった。まず広い、そしてベッドも大きい、机との距離がある。ソファーとテレビまである。まるでテレビで見た事のあるホテルのスイートルームのようだった。
「なんだ……この部屋……」
(可哀想な子だから…特別に、とかなのかな……)
全体的に大きな屋敷だった、一部屋一部屋が想像以上に大きいのだろう。
(勘違いしちゃダメだ……僕はお荷物だ。ちゃんと自覚していなきゃ)
里葉は体が小さいこともあって、人が好意だけでなく悪意や揶揄したり侮辱したりすると知っていた。体が小さいという事は下に見られる経験が多々あった。
(それにしても……ここの人達は恵まれている人達なんだな…僕と大違い。別の世界に住んでいるみたいだ…)
武藤家の大黒柱、一は柔らかな目元をしていたが大柄な背格好で男前と言われる部類だろう。妻の香はしっとりとした美人で黙っていると冷たく見えるほどだ。長男の道雄は顔は母親に似てるがどこか男らしく、背も高かった。同い年の進は父親譲りの背格好で小学生にしては大きく、これからますます大きくなりそうだった。顔もどちらかと言うと父親似だ。
(背も高くて、顔も男らしくて…お金も持ってて…それで……家族全員そろってる…)
里葉は武藤家族の何もかもが羨ましく、自分がちっぽけで劣等感を覚えるには充分だった。
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