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2部
第17話 ロエルが話す、その人って
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「きみは信用できる人間だと直感したからだ。それに、きみはこことは違う世界からやってきた。このふたつだけでもオレにとっては充分な理由だ」
ロエルは私に、はっきりとした口調で告げた。
たった今、告げられたこの言葉。
これが彼に向かって『私に助手にならないかって言った理由を教えて』と聞いた、私への返答だった。
ここはロエルの自室。今この部屋には私とロエルのふたりしかいない。
「ロエル……」
私はおもわず彼の名をつぶやいた。
ロエルから、信用できる人間だと直感したと言われて、悪い気はしない。
でも、やっぱりロエルは私が『こことは違う世界からやってきた』ことを、助手に指名した理由にあげてきた。
……それって。
今回は(今回こそ)私の予想もいい線いってるってこと?
私は昨日、この国――ノイーレ王国――に異世界トリップしてしまったわけだけど……。
ロエルは以前にも、私がやってきた世界とおなじ世界の人間と会ったことがあると言っていた。
その地球人が『トレジャーハンター』もしくは『トレジャーハントの心得のある者』だとした場合。
ロエルにとって地球人というものは、『たとえ実践や実務経験がまだでも、皆がトレジャーハントの知識や心得がある種族』――って思いこんでる……とか。
ほら、狩猟民族、農耕民族みたいな言いかたするじゃない? そういう感じで、財宝探索民族だと。
自分の予想がひさびさにあたっているっぽいので、私のテンションは高くなる。
真相をたしかめるべくロエルに話しかける。
「ロエルは、私がやってきた世界と同じ世界の人間に会ったことがある……そう話してくれたよね」
「ああ」
目をふせ、感慨深げにうなずくロエル。その人のことを思いだしているのだろうか。
「ロエルが出会った、その人は――もしかしてトレジャーハンターだったの?」
私の言葉にロエルはふせていたまぶたをひらき、答えた。開いた目は私をじっとみつめている。
「いや、彼女はトレジャーハンターだった……というわけじゃない。――でも宝を探すのは得意だったな」
過去の楽しいできごとを思いだしたように、ロエルはしあわせそうに笑う。
形のいい唇がやわらかくカーブし、ああ、このイケメン青年は笑顔になっても真顔でも、それぞれの顔つきにそれぞれの魅力があって、さぞ女の子にモテるんだろうな……と感じさせる。
そして……ロエルが過去に会ったことがある地球の人間とは――やっぱり 性別=女 だったんだ。
あ、その人が『職業トレジャーハンターというわけじゃないけど、宝探しが得意』だとしたら――早めに言っておかなきゃいけないことがある。
「ロエル、あなたが出会った、私と同じ世界からやってきた人は――プロのトレジャーハンターじゃなくても宝探しが得意だったのかもしれないけど……。私は実践経験がないってだけじゃなくてトレジャーハントに関する知識なんて、本当に何もないよ」
ロエルが地球の人間はトレジャーハントの知識があるから助手に採用しようと考えてるなら、私には無理。
だから、誤解がないように、経験だけでなく知識もないことを正直に打ちあけた。
ロエルは私に、はっきりとした口調で告げた。
たった今、告げられたこの言葉。
これが彼に向かって『私に助手にならないかって言った理由を教えて』と聞いた、私への返答だった。
ここはロエルの自室。今この部屋には私とロエルのふたりしかいない。
「ロエル……」
私はおもわず彼の名をつぶやいた。
ロエルから、信用できる人間だと直感したと言われて、悪い気はしない。
でも、やっぱりロエルは私が『こことは違う世界からやってきた』ことを、助手に指名した理由にあげてきた。
……それって。
今回は(今回こそ)私の予想もいい線いってるってこと?
私は昨日、この国――ノイーレ王国――に異世界トリップしてしまったわけだけど……。
ロエルは以前にも、私がやってきた世界とおなじ世界の人間と会ったことがあると言っていた。
その地球人が『トレジャーハンター』もしくは『トレジャーハントの心得のある者』だとした場合。
ロエルにとって地球人というものは、『たとえ実践や実務経験がまだでも、皆がトレジャーハントの知識や心得がある種族』――って思いこんでる……とか。
ほら、狩猟民族、農耕民族みたいな言いかたするじゃない? そういう感じで、財宝探索民族だと。
自分の予想がひさびさにあたっているっぽいので、私のテンションは高くなる。
真相をたしかめるべくロエルに話しかける。
「ロエルは、私がやってきた世界と同じ世界の人間に会ったことがある……そう話してくれたよね」
「ああ」
目をふせ、感慨深げにうなずくロエル。その人のことを思いだしているのだろうか。
「ロエルが出会った、その人は――もしかしてトレジャーハンターだったの?」
私の言葉にロエルはふせていたまぶたをひらき、答えた。開いた目は私をじっとみつめている。
「いや、彼女はトレジャーハンターだった……というわけじゃない。――でも宝を探すのは得意だったな」
過去の楽しいできごとを思いだしたように、ロエルはしあわせそうに笑う。
形のいい唇がやわらかくカーブし、ああ、このイケメン青年は笑顔になっても真顔でも、それぞれの顔つきにそれぞれの魅力があって、さぞ女の子にモテるんだろうな……と感じさせる。
そして……ロエルが過去に会ったことがある地球の人間とは――やっぱり 性別=女 だったんだ。
あ、その人が『職業トレジャーハンターというわけじゃないけど、宝探しが得意』だとしたら――早めに言っておかなきゃいけないことがある。
「ロエル、あなたが出会った、私と同じ世界からやってきた人は――プロのトレジャーハンターじゃなくても宝探しが得意だったのかもしれないけど……。私は実践経験がないってだけじゃなくてトレジャーハントに関する知識なんて、本当に何もないよ」
ロエルが地球の人間はトレジャーハントの知識があるから助手に採用しようと考えてるなら、私には無理。
だから、誤解がないように、経験だけでなく知識もないことを正直に打ちあけた。
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