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2部
第14話 思いだすのはキスばかり……って訳ではなく
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ロエルの館。
……といっても、ついさきほど私とロエルが到着したこの館は、私が昨日、異世界トリップして、不思議なうさぎティコティスと出会った庭がある、あの館――とは別の館だ。
昨日、私が泊まった館は……ロエルが普段生活している住居とは違うことは、すでに説明を受けていた。
(……ここが、ロエルが暮らしている館……)
この館も、外観、室内ともに17世紀から18世紀ぐらいのヨーロッパの豪邸のような見た目をしている。
『ような』としかいえないのは、私が西洋建築にくわしくないことと、あと、この世界は、建物や服に17世紀~18世紀っぽいヨーロピアンテイストがただよいつつも、過去の地球とは、まったく別の世界だから。
この世界では魔術が人類の進化に大きく貢献したという。
なんと、この世界では人間が魔力で翼のある鳥に変身しても、『普通の人間』と認識されている。
人間が鳥に変身するのが普通? そんなバカなっ! って昨日の私はにわかに信じられなかったんだけど――。
結局私は、この目でしかと見てしまったのだ、人間が鳥に変身する現場を。
そして、鳥に姿を変えた人間が、ふたたび人の姿にもどる瞬間を!
私は、ロエルに『自分がいた世界では、人間は鳥に変身なんてできない。私も鳥にはなれない』と正直に打ちあけた。
それでもロエルは「オレは今、仕事の助手を探しているところだから、よかったら助手にならないか」と、異世界からきた私を自分の仕事の助手にスカウトした。
(……それって、ロエルの助手をするにあたって、その業務内容の中に、鳥になって空を飛ぶ行為は含まれていない……ってことだよね?)
そんなことを考えながら、私は自分の正面にいるロエルをみつめた。
ここは、ロエルの自室。
壁にはたくさんの本がぎっちり並んでいる。館には書斎もあるのに、そこだけでは本をおさめきれなかったらしい。
本を背にして、ロエルは私に告げた。
「ではユイカ、オレはどんな仕事をしているのか。まずはそこから説明しよう」
いよいよ、ついに……!
仕事内容が気になり、思わず私はノドをゴクンとならしてしまう。
いったいどんな仕事?
と思いながら、ロエルをじっとみつめる。
今のロエルは、声のトーンといい、青く光る切れ長の目といい、形のいい唇といい、実に聡明そうな青年にみえる。(あ、『聡明そう』というか、実際昨日のロエルは私にこの世界に関するいろいろなことを、わかりやすく教えてくれた)
そうだ、決してロエルは出会ったばかりの私にキスしてばっかりだったわけじゃない。
第一、あれは私を助けるためにとった行動であって、ロエルだって私にキスしたくてしたわけじゃないし……。
そもそも、今の話題はキスではなく仕事、仕事。私は心の中で、自分を注意する。
(ロエルは真剣に業務内容を説明しようとしているのに、私が彼とのキスを思いだしているなんて、だめじゃない! ロエルは部屋にこんなにたくさん本があるんだし、きっと真面目な性格なんだよ。私、ロエルに出会ってまだ2日だから彼をくわしく知ってるわけじゃないけど――。ほら、キスはあくまで人助けの一環であって。……ん!? 『こんなにたくさんの本』……――)
私の頭の中に、突如、ひとつのひらめきが舞いおりた。
(あっ! もしかすると……ロエルは書籍に関わる仕事をしている、とか……?)
……といっても、ついさきほど私とロエルが到着したこの館は、私が昨日、異世界トリップして、不思議なうさぎティコティスと出会った庭がある、あの館――とは別の館だ。
昨日、私が泊まった館は……ロエルが普段生活している住居とは違うことは、すでに説明を受けていた。
(……ここが、ロエルが暮らしている館……)
この館も、外観、室内ともに17世紀から18世紀ぐらいのヨーロッパの豪邸のような見た目をしている。
『ような』としかいえないのは、私が西洋建築にくわしくないことと、あと、この世界は、建物や服に17世紀~18世紀っぽいヨーロピアンテイストがただよいつつも、過去の地球とは、まったく別の世界だから。
この世界では魔術が人類の進化に大きく貢献したという。
なんと、この世界では人間が魔力で翼のある鳥に変身しても、『普通の人間』と認識されている。
人間が鳥に変身するのが普通? そんなバカなっ! って昨日の私はにわかに信じられなかったんだけど――。
結局私は、この目でしかと見てしまったのだ、人間が鳥に変身する現場を。
そして、鳥に姿を変えた人間が、ふたたび人の姿にもどる瞬間を!
私は、ロエルに『自分がいた世界では、人間は鳥に変身なんてできない。私も鳥にはなれない』と正直に打ちあけた。
それでもロエルは「オレは今、仕事の助手を探しているところだから、よかったら助手にならないか」と、異世界からきた私を自分の仕事の助手にスカウトした。
(……それって、ロエルの助手をするにあたって、その業務内容の中に、鳥になって空を飛ぶ行為は含まれていない……ってことだよね?)
そんなことを考えながら、私は自分の正面にいるロエルをみつめた。
ここは、ロエルの自室。
壁にはたくさんの本がぎっちり並んでいる。館には書斎もあるのに、そこだけでは本をおさめきれなかったらしい。
本を背にして、ロエルは私に告げた。
「ではユイカ、オレはどんな仕事をしているのか。まずはそこから説明しよう」
いよいよ、ついに……!
仕事内容が気になり、思わず私はノドをゴクンとならしてしまう。
いったいどんな仕事?
と思いながら、ロエルをじっとみつめる。
今のロエルは、声のトーンといい、青く光る切れ長の目といい、形のいい唇といい、実に聡明そうな青年にみえる。(あ、『聡明そう』というか、実際昨日のロエルは私にこの世界に関するいろいろなことを、わかりやすく教えてくれた)
そうだ、決してロエルは出会ったばかりの私にキスしてばっかりだったわけじゃない。
第一、あれは私を助けるためにとった行動であって、ロエルだって私にキスしたくてしたわけじゃないし……。
そもそも、今の話題はキスではなく仕事、仕事。私は心の中で、自分を注意する。
(ロエルは真剣に業務内容を説明しようとしているのに、私が彼とのキスを思いだしているなんて、だめじゃない! ロエルは部屋にこんなにたくさん本があるんだし、きっと真面目な性格なんだよ。私、ロエルに出会ってまだ2日だから彼をくわしく知ってるわけじゃないけど――。ほら、キスはあくまで人助けの一環であって。……ん!? 『こんなにたくさんの本』……――)
私の頭の中に、突如、ひとつのひらめきが舞いおりた。
(あっ! もしかすると……ロエルは書籍に関わる仕事をしている、とか……?)
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