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第37話 館に宿りし魔力とは?
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「――というわけで、僕はあなたをお客様として丁重におもてなしいたしますよ。覚悟してくださいね」
そう言うと、ペピートは退室していった。
この館の客間にいるのは私ひとりになる。
(うーん、物腰のやわらかそうなペピートに『覚悟してくださいね』とまで言われるとは思わなかった)
それにしても、今日は本当にいろんなことがたてつづけにあった。
私は、ラウレアーノ先生に「お風呂に入ってぐっすり眠る」ことをすすめられているんだった。
いまからさっそくお風呂に入ろう! そして、入浴後は、もう寝ちゃおーっと。
(でも、そのまえに……)
私はお風呂に入るまえに、もう一度この部屋をみまわしてみる。
カーテンもテーブルもベッドも、やっぱり可愛い。
聖兎愛好家集団の巫女と呼ばれる女性たちがこの部屋のお風呂を使うということは――。
ひょっとして、巫女装束 (この国の正式な巫女装束とも違うらしいけど) とやらが飾ってあるのかも? と思ったけど、それらしきものはなかった。
どんなデザインの巫女装束なのかは、謎のままだけれど、もうお風呂に入ろう。
(浴室はこの部屋のカーテンの先にあるってペピートが言っていたよね)
部屋の扉からは遠い位置にカーテンはある。
(さっき初めてこの部屋のカーテンをみたときは、カーテンをあけると窓があるのかと思っていたけど、お風呂だったとは……)
室内をお風呂めざして移動していると、なぜだか、ふと、ついさっきペピートから告げられた言葉を思いだした。
『ラウレアーノ先生もよろこばれていましたよ。先生はロエル様が子どものころからの主治医ですからね』
今日私を診てくれたラウレアーノ先生は、ロエルの子どものころからの主治医の先生だった。
ラウレアーノ先生とロエル――。
(子ども時代のロエルかぁ)
きっと、それはそれは可愛いお子様だったんだろうな。
童話にでてきそうな、ちいさな王子様っぽい雰囲気の顔だちやムードだったのかも。
(そういえば――)
ロエルの子どものときの姿を、なんとなく想像していると、なぜだか『そういえば』という言葉が思いうかぶ。そして……。
ツキーンと、私の頭に、痛みの感覚が走った。
(何だったの、いまの感じ……)
奇妙に思ったけど、幸い頭痛はすぐに やんでくれた。
(なんだか不可解だけど、気にせず入浴することにしよう)
カーテンの前まできた私は、のれんをくぐるようにして浴室に入っていく。
カーテンを開けるとそこにはバスタブ。そして、脱衣所と洗面所と思わしきスペースもあった。
(ミルク色のバスタブ……可愛いなぁ)
バスタブのとなりの脱衣所スペースには、ちゃんとタオルらしきものもかけてある。
これは体を洗うためものというよりか、浴槽からでたら体をふくためのものっぽい。
だってタテヨコの長さが、大きなバスタオルくらいある。
これがバスタオルだとしたら、私がいた世界のバスタオルよりかなり薄いけど……。
厚いタオルじゃないのは、きっとこの布も、魔力を秘めた布、魔布《まふ》なんだ。
吸水力、すごそう。
さっそくお風呂に入ろうと服を脱ぎ、バスタブに近づく。
館に宿った魔力が準備してくれたそうだけど、お風呂の温度の『熱い、ぬるい』は、だいぶ個人差がある。
まして私は、この世界とは別の世界からやってきた人間。
まずは湯加減をたしかめてみるため、バスタブに手を入れようとした、そのとき――。
そう言うと、ペピートは退室していった。
この館の客間にいるのは私ひとりになる。
(うーん、物腰のやわらかそうなペピートに『覚悟してくださいね』とまで言われるとは思わなかった)
それにしても、今日は本当にいろんなことがたてつづけにあった。
私は、ラウレアーノ先生に「お風呂に入ってぐっすり眠る」ことをすすめられているんだった。
いまからさっそくお風呂に入ろう! そして、入浴後は、もう寝ちゃおーっと。
(でも、そのまえに……)
私はお風呂に入るまえに、もう一度この部屋をみまわしてみる。
カーテンもテーブルもベッドも、やっぱり可愛い。
聖兎愛好家集団の巫女と呼ばれる女性たちがこの部屋のお風呂を使うということは――。
ひょっとして、巫女装束 (この国の正式な巫女装束とも違うらしいけど) とやらが飾ってあるのかも? と思ったけど、それらしきものはなかった。
どんなデザインの巫女装束なのかは、謎のままだけれど、もうお風呂に入ろう。
(浴室はこの部屋のカーテンの先にあるってペピートが言っていたよね)
部屋の扉からは遠い位置にカーテンはある。
(さっき初めてこの部屋のカーテンをみたときは、カーテンをあけると窓があるのかと思っていたけど、お風呂だったとは……)
室内をお風呂めざして移動していると、なぜだか、ふと、ついさっきペピートから告げられた言葉を思いだした。
『ラウレアーノ先生もよろこばれていましたよ。先生はロエル様が子どものころからの主治医ですからね』
今日私を診てくれたラウレアーノ先生は、ロエルの子どものころからの主治医の先生だった。
ラウレアーノ先生とロエル――。
(子ども時代のロエルかぁ)
きっと、それはそれは可愛いお子様だったんだろうな。
童話にでてきそうな、ちいさな王子様っぽい雰囲気の顔だちやムードだったのかも。
(そういえば――)
ロエルの子どものときの姿を、なんとなく想像していると、なぜだか『そういえば』という言葉が思いうかぶ。そして……。
ツキーンと、私の頭に、痛みの感覚が走った。
(何だったの、いまの感じ……)
奇妙に思ったけど、幸い頭痛はすぐに やんでくれた。
(なんだか不可解だけど、気にせず入浴することにしよう)
カーテンの前まできた私は、のれんをくぐるようにして浴室に入っていく。
カーテンを開けるとそこにはバスタブ。そして、脱衣所と洗面所と思わしきスペースもあった。
(ミルク色のバスタブ……可愛いなぁ)
バスタブのとなりの脱衣所スペースには、ちゃんとタオルらしきものもかけてある。
これは体を洗うためものというよりか、浴槽からでたら体をふくためのものっぽい。
だってタテヨコの長さが、大きなバスタオルくらいある。
これがバスタオルだとしたら、私がいた世界のバスタオルよりかなり薄いけど……。
厚いタオルじゃないのは、きっとこの布も、魔力を秘めた布、魔布《まふ》なんだ。
吸水力、すごそう。
さっそくお風呂に入ろうと服を脱ぎ、バスタブに近づく。
館に宿った魔力が準備してくれたそうだけど、お風呂の温度の『熱い、ぬるい』は、だいぶ個人差がある。
まして私は、この世界とは別の世界からやってきた人間。
まずは湯加減をたしかめてみるため、バスタブに手を入れようとした、そのとき――。
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