上 下
72 / 72
最終章

◆最終章あらすじ(ネタバレ注意!ラストまで書いてあるあらすじです)

しおりを挟む
 主人公・紗季音は、あやかし(興恒おきつねという名の妖狐とリンという名の燐火)と同居している女子大生。

 興恒とリンには、ないしょで料理の腕をみがいていた紗季音。
 紗季音のつくった料理を食べ、美味しいと絶賛する興恒とリン。
 紗季音は、これで自分は興恒の恋人であるあやかしとは別の存在であることを証明できたと、興恒に宣言する。
(興恒の恋人であるタヌキのあやかしは、いくらがんばってもおいしい料理をつくることができなかったと聞いているので)

 都内のアパートで共同生活をしているうちに、興恒とリンに親しみを抱くようになっていた紗季音ではあるが、
自分は『人間に変身したあやかし』ではなく、単なる一人の人間であることを興恒たちに理解してもらいたかった。

 しかし……。
 興恒が紗季音に言ったのは、『紗季音の実家に行って彼女の両親から事情を説明してもらう』という、紗季音にとっては寝耳に水の発言。

 なぜ、いきなり実家の両親に? と、興恒の目的がまったくわからない紗季音。
『実家にもどる予定はない』と紗季音が答えると興恒は『それならば紗季音の両親にアパートまできてもらおう』と言う。

 両親をまきこむつもりはない紗季音だったが、なんと興恒は紗季音の両親とすでに知りあいだった。
 あやかしである興恒と、電話で会話する紗季音の両親。
 興恒と自分の両親が知りあいであるとわかると、両親に直接会って事情を説明してほしくなる紗季音。

 ――神奈川県にある紗季音の実家。
 自分の家についた紗季音と、興恒とリン。

 そこで紗季音は両親からおどろくべき事実を聞かされる。
 実は、紗季音の両親は昔、子どもを失っていた。
 初めて聞かされる話に紗季音は自分にきょうだいが存在していたことをおどろくが、両親の話はここで終わらなかった。

 我が子をなくし絶望する妻を心配するあまり、紗季音の父(本当は血のつながりはなかった、父親的存在の男性)は、紗季音に人間の子どもに変身して、大人になってこの家を巣立つまで娘として生活してほしいと頼んでいたのだった。

 現在は夫婦ともに、約束を果たしてくれたタヌキのあやかしである紗季音に大変感謝している。でも、もう私たちの子どものかわりをする必要はない、紗季音には自分の道を歩んでほしいと語る。

 そんな話、とても信じられないと言い、紗季音は一人実家をあとにする。
 帰り道。突如現れた謎のあやかしと戦うことになってしまう紗季音。
 紗季音は、じょじょにみずから封印した、自分の本当の過去の記憶をとりもどしていく。

 たしかに紗季音は――人間ではなくあやかしだった。
(それも、タヌキ。タヌキのあやかし……以前はもっときれいな雰囲気のするあやかしに生まれていたら……と思っていたこともあったっけ)

 まだ完全にはあやかしだったころの力をとりもどせていない紗季音のもとへ興恒とリンがかけつける。
 危機を脱することができた紗季音は、興恒に自分の記憶がもどったことを告げる。
 興恒は紗季音を抱きしめる。

 あやかしとしての記憶も力も、すべてとりもどしたわけではない紗季音だが、興恒はたとえ過去を思いだすことができなくても、かわらず紗季音を想っていると告げる。
 いままでも、これからも。

 紗季音と興恒、そしてリンは、自分たちが住むアパート、なつかしの沢樫荘へと帰っていった。

    (終)
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

選ばれたのは美人の親友

杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。

処理中です...