おきつね様の溺愛!? 美味ごはん作れば、もふもふ認定撤回かも? ~妖狐(ようこ)そ! あやかしアパートへ~

にけみ柚寿

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2章

第17話 当初の約3倍となります

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 週が明けた月曜日。
 午前中の講義を受け終わったわたしは、めぐみといっしょに学生食堂をめざした。
 わたしの隣を歩く恵が明るく言う。

「今日は、週のはじめの景気づけに、いつもよりたくさんお昼、食べちゃおうかなぁ~。値段は他より高めだけど、ボリュームたっぷりの定食とか……。紗季音はどうする?」

 恵の質問にわたしは微妙な声で答える。きっと顔も、微妙な表情をうかべているはず。

「うーん、……わたしはお値段が手ごろなメニューでいいかな。まだ何にするかは決めてないけど」

 わたしの返事に恵は『おやっ?』という顔つきになった。

「意外……。紗季音も週の初めは多少ほかより高くても、たっぷりお昼を食べることが多いのに。……あ、もしかしていままでずっとあたしにあわせてたくさん食べてたとか?」

 わたしは恵の予想をあわてて否定する。

「違うよっ、無理にあわせてたわけじゃ全然ないよ。わたしも、学生食堂のボリュームたっぷりの定食すきだから! ただ……」

「ただ?」

 わたしは、ふっと自分のお財布さいふ事情にため息をついてから、恵に説明する。

「……わたしが実家をはなれ、沢樫荘で1人暮らしするようになって、もうすぐ1ヶ月だけど――。思った以上に『食費』がかかるんだよね。かと言って、もっと食費が必要だって仕送りを増やしてもらうのは家族に悪いし。……というわけで、昼食代は節約したほうがいいなって」

 食費が当初の予定をオーバーしているのはある意味当然だ。
 わたしは、仲のいい恵にも『アパート、沢樫荘で1人暮らし』しているって通しているけど……。本当はわたしをふくめ、3名で沢樫荘201号室に同居中の身のうえ。

 わたし以外の201号室の住人は――。
 妖狐と呼ばれるキツネのあやかし、興恒おきつねさん。
 そして、燐火と呼ばれる青い火の玉、リンちゃん。

 このおふたかたは、人間とおなじ内容の食事をおなじくらいの量、めしあがるので、食費はわたし1人分ではすまない。

(でもっ、食費は予定の倍以上かかってしまうけど、興恒さんは、料理がとても上手! それでもって、わたしが沢樫荘にいるときは、いつも食事をつくってくれるし)

 わたしは、平日で講義があるときのお昼は、学生食堂で食べるけど(今日もそのパターン)、同居しはじめのころ興恒さんはお弁当をつくって持たせてくれようとした。

 でも『重箱はどこにある?』って聞かれて、なんとなく興恒さんは普段のお昼にも、豪華で手のこんだものをお重につめて、お弁当として持たせてくれようとしてそうな雰囲気をビシビシ感じて、ことわってしまった。
 普段からお花見のときの豪勢なお弁当のような昼食になったら、恵をはじめ、周囲からおどろかれること必至だろうし。

 わたしも今月から料理研究部に入ったし、ゆくゆくはちゃんと自炊できるようになるとは思うけど、……いまのわたしの料理の腕は未熟すぎ。
 良心的な金額とはいえ、料理研究部も部費をはじめ、当然費用がかかるし。
 だからって、実家の家族にこれ以上経済的負担をふやすことは避けたい。
 となると……。

(ここはやっぱり、わたしがアルバイトをみつけて、お金をかせごう!)
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