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1章
第24話 いっしょに暮らすって!(1/2)
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「『これから、ともに暮らす』――って、オキツネサマはわたしといっしょにこのアパートに住むつもりでいるの!?」
和服を着た青年、オキツネサマは、彼の隣にすわっているわたしの質問に「当然だ」といわんばかりにうなずいた。
「ええぇー!」
アパート沢樫荘の管理人室に、わたしの動揺しまくってる声が響く。
そう、わたしが今いる場所は管理人室。だけど、わたしは管理人さんでもなんでもない、ただの入居者。
管理人室はあるものの、そもそも現在このアパートに常駐の管理人さんはいない。
さらにオキツネサマにいたっては、大家さんと賃貸契約を交わしていない、はず……。
だってオキツネサマと呼ばれるこの美青年は、キツネの「あやかし」……だそうだから。
わたしは自分の隣にいるオキツネサマにチラリと視線を走らせる。
今は、人間の成人男性の姿に、キツネの耳としっぽがついている見た目だけど、獣型になったり人型になったりと、姿を変身することができたり、不思議な力――神通力――を使えたりする。
オキツネサマの力を実際にこの目で見てしまった以上、わたしは彼が超自然的な存在であること「は」認めなきゃいけない。
でも、いっしょに暮らすなんて認められないからね。
そもそも、オキツネサマはわたし、谷沼《たにぬま》 紗季音《さきね》のことが気に入ったから、いっしょにいたがってるわけじゃない。
(わたしは間違えられているだけなのに。オキツネサマの恋人に……)
オキツネサマは見目麗《みめうるわ》しい あやかし。
「あやかしに恋人と間違えられた人間の娘」とだけ聞くと、なんだかロマンティックな和風ファンタジーのような雰囲気がある。
……だけど、だけど。
わたしが間違われてる、オキツネサマの恋人って――「キツネのあやかし」ではなくて「タヌキのあやかし」なんだよね。
タヌキ……かぁ。
ぽんぽこしてて可愛い生物とは思うけど、自分が間違われるとなると、なんかちょっと複雑というか。
おまけに、いくらこっちが「わたしはただの人間でタヌキが人間に変身しているわけじゃない」って声を大にして主張しても――。
オキツネサマは、全然信じてくれやしない。
彼の近くに寄り添うように浮かんでいる、人間の言葉を話す青い炎、「りんか」のリンちゃんも、わたしの主張を信じてくれてない感じ。(リンちゃん自体は、情に厚い、いい子だと思うんだけど……)
そんなこんなで。
オキツネサマとリンちゃんは、わたしを「自分があやかしであることも、恋人のことも、忘れてしまった」のだと考え、でも「オキツネサマといっしょに暮らしていくうちに過去の記憶をだんだんと思いだしていく」はずだと予想してるらしい。
……なんで、そういう思考になったのかは、いまいち、よくわかんないけど。
とにかく!
彼氏ができたこともないうちから、あやかしと同居(同棲?)生活を始めることになるとは……って展開は避けたいところ。
わたしは頭の中で必死に、オキツネサマたちにこのアパートからお引き取り願うにはどうしたらいいのか、ああでもないこうでもないと考えた――ものの、いい案がまるっきり思いつかない。
(こんな風に無言でいては、時間だけがすぎていっちゃう。このままじゃ、対した反論もできず、ズルズルとオキツネサマといっしょに住むことになってしまうかも。そうならないためにも、何か言わなきゃ……)
あせった結果わたしは――。
和服を着た青年、オキツネサマは、彼の隣にすわっているわたしの質問に「当然だ」といわんばかりにうなずいた。
「ええぇー!」
アパート沢樫荘の管理人室に、わたしの動揺しまくってる声が響く。
そう、わたしが今いる場所は管理人室。だけど、わたしは管理人さんでもなんでもない、ただの入居者。
管理人室はあるものの、そもそも現在このアパートに常駐の管理人さんはいない。
さらにオキツネサマにいたっては、大家さんと賃貸契約を交わしていない、はず……。
だってオキツネサマと呼ばれるこの美青年は、キツネの「あやかし」……だそうだから。
わたしは自分の隣にいるオキツネサマにチラリと視線を走らせる。
今は、人間の成人男性の姿に、キツネの耳としっぽがついている見た目だけど、獣型になったり人型になったりと、姿を変身することができたり、不思議な力――神通力――を使えたりする。
オキツネサマの力を実際にこの目で見てしまった以上、わたしは彼が超自然的な存在であること「は」認めなきゃいけない。
でも、いっしょに暮らすなんて認められないからね。
そもそも、オキツネサマはわたし、谷沼《たにぬま》 紗季音《さきね》のことが気に入ったから、いっしょにいたがってるわけじゃない。
(わたしは間違えられているだけなのに。オキツネサマの恋人に……)
オキツネサマは見目麗《みめうるわ》しい あやかし。
「あやかしに恋人と間違えられた人間の娘」とだけ聞くと、なんだかロマンティックな和風ファンタジーのような雰囲気がある。
……だけど、だけど。
わたしが間違われてる、オキツネサマの恋人って――「キツネのあやかし」ではなくて「タヌキのあやかし」なんだよね。
タヌキ……かぁ。
ぽんぽこしてて可愛い生物とは思うけど、自分が間違われるとなると、なんかちょっと複雑というか。
おまけに、いくらこっちが「わたしはただの人間でタヌキが人間に変身しているわけじゃない」って声を大にして主張しても――。
オキツネサマは、全然信じてくれやしない。
彼の近くに寄り添うように浮かんでいる、人間の言葉を話す青い炎、「りんか」のリンちゃんも、わたしの主張を信じてくれてない感じ。(リンちゃん自体は、情に厚い、いい子だと思うんだけど……)
そんなこんなで。
オキツネサマとリンちゃんは、わたしを「自分があやかしであることも、恋人のことも、忘れてしまった」のだと考え、でも「オキツネサマといっしょに暮らしていくうちに過去の記憶をだんだんと思いだしていく」はずだと予想してるらしい。
……なんで、そういう思考になったのかは、いまいち、よくわかんないけど。
とにかく!
彼氏ができたこともないうちから、あやかしと同居(同棲?)生活を始めることになるとは……って展開は避けたいところ。
わたしは頭の中で必死に、オキツネサマたちにこのアパートからお引き取り願うにはどうしたらいいのか、ああでもないこうでもないと考えた――ものの、いい案がまるっきり思いつかない。
(こんな風に無言でいては、時間だけがすぎていっちゃう。このままじゃ、対した反論もできず、ズルズルとオキツネサマといっしょに住むことになってしまうかも。そうならないためにも、何か言わなきゃ……)
あせった結果わたしは――。
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