おきつね様の溺愛!? 美味ごはん作れば、もふもふ認定撤回かも? ~妖狐(ようこ)そ! あやかしアパートへ~

にけみ柚寿

文字の大きさ
上 下
17 / 72
1章

第15話 光? 炎? 青いのが、ぷかぷかと……

しおりを挟む
 アパートの出入口手前で意識を失ってしまったわたしは、管理人室に運ばれたらしい。(気を失ってたときの記憶がないから、らしいとしかいえない)
 運んだのは、大家さんや管理人さんじゃない。ついさっき会って、わたしを助けてくれた青年だ。

 彼は、わたしがアパートの中からあらわれた黒いもやのようなものに
わたしが つかまえられてしまったのを救ってくれた。
 黒い靄にみえたのは、何かの霊だったみたい。
 ……そう、この沢樫荘は怪奇現象が起こるとのウワサがあるアパート。

 そして、青年はわたしの名前を知っていた。わたしたち初対面のはずなのに。そればかりか、彼はわたしが今日から沢樫荘で1人暮らしを始めることも知っていて――。

(どうしてこの人はわたしの名前も、わたしが今日から沢樫荘に住むってことも知ってるのか、教えてほしい)

 聞く気満々のわたしは、ふとんから上半身を起こし質問しようとした。そのとき。
 わたしと青年のあいだを割って入るように、青く光るものがポンッとあらわれた。

――今度は青い光? 次はいったい何?

 青く光る何かは、よくみると青い色をした火の玉みたい。
 ホンモノの火の玉をわたしはみたことはないから、どこかで見たイラストの火の玉みたいってことなんだけど。
 目の前の青いもの。本当にこれ、なんなんだろう。
 大きさはハムスターくらい。ぷよぷよ、ふわふわ、宙に浮かんでる。

 ふりかかる謎が解けないうちにあらたな謎があらわれて。
 わたしは目を見開き、口をあんぐりさせてしまう。

 青い火の玉みたいなものは、わたしと青年のあいだでピョンピョン飛びはね――言葉を話し始める。

 ……今日一日だけで、すでにキツネに話しかけられたり、黒いもやの言葉を聞いたりしていたわたしは、早くも人間以外のものがしゃべる場面に遭遇しても、そこまで驚かなくなっていた。

 青い炎の玉は、青年に向かって言う。

『オキツネサマー! ただいま もどってきたよ』

 電話ごしのように少しくぐもった声だけど、高音で可愛らしい感じ。そして、すごく早口で、この青い炎は話す。
 青年は青い炎に視線をうつし、
「おかえり」
 と、やさしく言う。

 青年と青い炎、両者の関係は良好なようだ。
 ……ん、『オキツネサマ』がこの人の名前なの? それともニックネーム?
 よくわからず首をかしげていると、青い炎がわたしに近づいてきた。(炎みたいにみえるけど、近くでも全然熱くない)

 青い炎は今度はわたしのそばでピョンピョン飛びはねながら明るい声で言った。

『よかった、よかった! 意識をとりもどしたようだな、本当によかったなっ』

 謎の存在だけど、青い炎はわたしに対して友好的っぽい。
 だから意識をとりもどしたことを「よかったな」と言われれば、わたしの口から、素直にお礼の言葉がでる。
 そして素直にお礼以外の言葉もでる。

「ありがとう。……えっと、あなたは誰? いったい何者か、教えてもらえると、うれしいかも――」

 わたしの言葉でそれまで元気に飛びはねていた、青い炎のようなものの動きがピタリと止まる。
 しばらくして――。
 シュンとした声があたりに響く。

『……え? おぼえていないのか、おれっちのこと……』

 おぼえているもなにも、ぷかぷか浮かぶ青い炎が言葉を話す場面にでくわしたのは、今が初めてであって――。
 ついでにいえば、リアルで一人称「おれっち」の相手と話すのも初だ。

 ん……? あれ、この反応や、やりとり、今日すでに別の場所で別の相手としてなかったっけ、わたし。
 そう、あれは今日、沢樫荘の近所の神社での会話だ。(わたしが10時間以上意識を失っていたら、あれは今日ではなくて昨日の出来事になるけど、たぶん体感的に、わたしはそんなに長い間気を失っていたわけではないと思う。正確にはまだわからないけど)

 たしか今日、近所の神社に行ったとき。
 わたしは
「あのっ、知りあいのどなたかと、人ちがいされてますよ! わたしはあなたと、今、初めてお会いしたので……」
 って言ったんだ。今、わたしの隣にいる青年に対して。
 彼が、わたしを自分の知りあいとカンちがいして話しかけているようだったから。

 すると彼は、シュンとしてしまい……。
「……そなた、おぼえていないのか、この私を」
 と言ったんだ。

 そのあと、この人は……「今の姿ではなく、この姿をみれば、私を思いだすはずだ」みたいなことを言って――。
 突如あらわれた煙から白狐が飛びだしてきたんだ。
 わたしにキツネの知りあいはいないのに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

種族【半神】な俺は異世界でも普通に暮らしたい

穂高稲穂
ファンタジー
旧題:異世界転移して持っていたスマホがチートアイテムだった スマホでラノベを読みながら呟いた何気ない一言が西園寺玲真の人生を一変させた。 そこは夢にまで見た世界。 持っているのはスマホだけ。 そして俺は……デミゴッド!? スマホを中心に俺は異世界を生きていく。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

隣の家に住むイクメンの正体は龍神様でした~社無しの神とちびっ子神使候補たち

鳴澤うた
キャラ文芸
失恋にストーカー。 心身ともにボロボロになった姉崎菜緒は、とうとう道端で倒れるように寝てしまって……。 悪夢にうなされる菜緒を夢の中で救ってくれたのはなんとお隣のイクメン、藤村辰巳だった。 辰巳と辰巳が世話する子供たちとなんだかんだと交流を深めていくけれど、子供たちはどこか不可思議だ。 それもそのはず、人の姿をとっているけれど辰巳も子供たちも人じゃない。 社を持たない龍神様とこれから神使となるため勉強中の動物たちだったのだ! 食に対し、こだわりの強い辰巳に神使候補の子供たちや見守っている神様たちはご不満で、今の現状を打破しようと菜緒を仲間に入れようと画策していて…… 神様と作る二十四節気ごはんを召し上がれ!

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符

washusatomi
キャラ文芸
西域の女商人白蘭は、董王朝の皇太后の護符の行方を追う。皇帝に自分の有能さを認めさせ、後宮出入りの女商人として生きていくために――。 そして奮闘する白蘭は、無骨な禁軍将軍と心を通わせるようになり……。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

処理中です...