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1章

第10話 どうなってるの、この町は!?(2/2)

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(……速く、速く……逃げなくっちゃ……。今日のわたし、本当に逃げてばかりだけど……。ここはひとまず逃げないと――じゃないと、『危険』だ)

 アパートの出入口から出てきた、黒い雲みたいなものは、どんどんわたしに接近してくる。
 そのうちの一部は、出入口の真ん前にいるわたしの足に早くも巻きつきそうな いきおい。

 黒い『何か』に背を向け、わたしは逃亡を決意する。
 駆け足で何歩か進んだとき。足元に黒いもやがからみつく。
 冷たく、不気味な感触にゾクリと寒気が走る。

「……やっ、なんなの、これ――」

 必死にもがきながら、なんとかこの事態を突破する方法はないか考える。
 今、わたしの肩にかかったバッグの中に、この黒い靄を撃退するものは、入ってないだろうか。

 たとえば――鏡を使って怪物と戦う話を昔、何かで読んだ気がする……。
 鏡なら、バッグの中に入ってるけど。でも――。

(黒い靄のモンスターの弱点は何かなんて……その話には出てこなかったはず)
  
 こうなったら、バッグにあるもので、身を守れそうなものをみつけて、なんとか、この場から逃げなきゃ……!
 わたしはバッグに手をかけ、急いで中にあるものを確認しようとする。

 ――だけど。
 こっちの考えはお見通しといわんばかりに、黒い靄はわたしの右肩と右手と、そしてバッグにもまとわりつき……。 
 あっというまにバッグをわたしから奪ってしまった。

 ゴトン……と、バッグが地面に落ちる音が響く。
 もしかして、もしかしなくても――すごく不利な状況に陥ってしまってるみたい。

(……あ、あきらめるのは、まだ早いはず……。バッグを取り返せば――)

 きき手ではない左手で、地面に転がったバッグを取りもどそうとした瞬間。
 今度は黒い靄がわたしの左手めがけて、まとわりつこうと、うごめきだす。
 それと同時に、ものものしい音が聞こえてきた。

 この音は、声のような――はたまた古い掃除機がゴミを吸引しているときのような、耳が痛くなる音なんだけど……。
 ある言葉を執拗に、くりかえしているようにも聞こえる。

『……ゴハ、ン……ゴハン――ッ』

 えっ、ゴハン? ゴハンって、「ご飯」つまり「食事」のこと!?
 わたしをつかんで放さない、黒い霊みたいなものにとって――人間は食べ物なの?

(……ま、まさか、この、なんだかよくわからない黒いかたまりは、わたしを食べる気、なの……? わたし、食べられちゃうの……?)

 ドクン――と、わたしの心臓が大きな音をたてる。背中も汗でびっしょりだ。

(……逃げなきゃ、かならず逃げなきゃ……)

 自分は絶体絶命の危機なのだとさとった、そのとき。

「散れ」 

 あたりに凛とした声が響いた。
 この声は――。
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