24 / 27
6章 このままじゃ、終われない!
6-03
しおりを挟む
「きっかけは、中2のときのことなんだ。その頃までの私は、髪も肩にかかるくらいはあったし、制服のスカートの長さが気になったりする、普通の女子生徒だったんだ……」
ユーリは、わたしに自分の過去を語り始めた。
「その時期、私には“新田君”っていう仲のいい友達がいてね。その子は女子の間ですごく人気があってさ……。私はよく、『新田君につきまとってる奴』って陰口をたたかれてたんだ。でも、私は新田君といるのが楽しかったから、そういう声は聞こえないフリをしていた」
ユーリが自分の中学時代のことを話すのは、これが初めてだった。
今までユーリは、中学の頃のことが話題にのぼっても、聞き手にしかまわらなかった。
そのときは、それに何か意味があるなんて思わなかったけど、ユーリは今、重大な「何か」を話そうとしてるみたい――。
高校の同級生の男の子たちのことは呼び捨てにしているユーリが新田“君”と君づけにしてるのも、なんだか気になってしまう。
「だけど、ある日――。新田君に憧れてる女の子4、5人に呼び出されて、『新田君にベタベタしないで!』
って、言われたんだ。カチンときた私が、『どうして、あなた達にそんなこと言われなきゃいけないの?』
って言い返すと、その子たちはシンと静まり返って、何も言い返してはこなかった。だから、話はこれで終わったんだとばかり思ってた。だけど――」
「だけど……?」
わたしは鸚鵡のように彼女の言葉を繰り返していた。
少し間を置いてからユーリは続けた。
「次の日、学校に来てみると、私はクラスの女の子全員に無視されるようになってたんだ。……友達だと思ってた女の子達も私とは話さなくなってた」
ユーリは人から聞いたことを話すみたいに落ち着いていた。
だけど、ユーリにそんな過去があったなんて考えた事もなくて冷静に言葉をつむぐことないわたしは――。
「ユーリ……。それって、ユーリが悪いことした訳じゃ……ないのに……」
途切れ途切れ、語ったあとに、
「……ひどいよ」
吐き出すようにつぶやいた。
――ユーリのことを無視しようって言った女の子たちに対して。
――それに逆らえなかった女の子たちに対して。
だけどユーリは首を横に振った。
「ううん……。いま考えてみると、その頃の私、結構イヤミなヤツだった気がする。本当は私、新田君が私にだけ、とっても優しいのに気がついてたんだ。だから、『自分は他の子とは違うんだ。特別なんだ』って、自慢に思ってた――。そういう雰囲気って、口に出さなくてもなんとなく伝わっちゃうはずだしね……」
ユーリの口調はわたしをなだめるような、そんな口調だった。
ユーリは、わたしに自分の過去を語り始めた。
「その時期、私には“新田君”っていう仲のいい友達がいてね。その子は女子の間ですごく人気があってさ……。私はよく、『新田君につきまとってる奴』って陰口をたたかれてたんだ。でも、私は新田君といるのが楽しかったから、そういう声は聞こえないフリをしていた」
ユーリが自分の中学時代のことを話すのは、これが初めてだった。
今までユーリは、中学の頃のことが話題にのぼっても、聞き手にしかまわらなかった。
そのときは、それに何か意味があるなんて思わなかったけど、ユーリは今、重大な「何か」を話そうとしてるみたい――。
高校の同級生の男の子たちのことは呼び捨てにしているユーリが新田“君”と君づけにしてるのも、なんだか気になってしまう。
「だけど、ある日――。新田君に憧れてる女の子4、5人に呼び出されて、『新田君にベタベタしないで!』
って、言われたんだ。カチンときた私が、『どうして、あなた達にそんなこと言われなきゃいけないの?』
って言い返すと、その子たちはシンと静まり返って、何も言い返してはこなかった。だから、話はこれで終わったんだとばかり思ってた。だけど――」
「だけど……?」
わたしは鸚鵡のように彼女の言葉を繰り返していた。
少し間を置いてからユーリは続けた。
「次の日、学校に来てみると、私はクラスの女の子全員に無視されるようになってたんだ。……友達だと思ってた女の子達も私とは話さなくなってた」
ユーリは人から聞いたことを話すみたいに落ち着いていた。
だけど、ユーリにそんな過去があったなんて考えた事もなくて冷静に言葉をつむぐことないわたしは――。
「ユーリ……。それって、ユーリが悪いことした訳じゃ……ないのに……」
途切れ途切れ、語ったあとに、
「……ひどいよ」
吐き出すようにつぶやいた。
――ユーリのことを無視しようって言った女の子たちに対して。
――それに逆らえなかった女の子たちに対して。
だけどユーリは首を横に振った。
「ううん……。いま考えてみると、その頃の私、結構イヤミなヤツだった気がする。本当は私、新田君が私にだけ、とっても優しいのに気がついてたんだ。だから、『自分は他の子とは違うんだ。特別なんだ』って、自慢に思ってた――。そういう雰囲気って、口に出さなくてもなんとなく伝わっちゃうはずだしね……」
ユーリの口調はわたしをなだめるような、そんな口調だった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


金字塔の夏
阿波野治
ライト文芸
中学一年生のナツキは、一学期の終業式があった日の放課後、駅ビルの屋上から眺めた景色の中に一基のピラミッドを発見する。親友のチグサとともにピラミッドを見に行くことにしたが、様々な困難が二人の前に立ちはだかる。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ボッチによるクラスの姫討伐作戦
イカタコ
ライト文芸
本田拓人は、転校した学校へ登校した初日に謎のクラスメイト・五十鈴明日香に呼び出される。
「私がクラスの頂点に立つための協力をしてほしい」
明日香が敵視していた豊田姫乃は、クラス内カーストトップの女子で、誰も彼女に逆らうことができない状況となっていた。
転校してきたばかりの拓人にとって、そんな提案を呑めるわけもなく断ろうとするものの、明日香による主人公の知られたくない秘密を暴露すると脅され、仕方なく協力することとなる。
明日香と行動を共にすることになった拓人を見た姫乃は、自分側に取り込もうとするも拓人に断られ、敵視するようになる。
2人の間で板挟みになる拓人は、果たして平穏な学校生活を送ることができるのだろうか?
そして、明日香の目的は遂げられるのだろうか。
ボッチによるクラスの姫討伐作戦が始まる。
演じる家族
ことは
ライト文芸
永野未来(ながのみらい)、14歳。
大好きだったおばあちゃんが突然、いや、徐々に消えていった。
だが、彼女は甦った。
未来の双子の姉、春子として。
未来には、おばあちゃんがいない。
それが永野家の、ルールだ。
【表紙イラスト】ノーコピーライトガール様からお借りしました。
https://fromtheasia.com/illustration/nocopyrightgirl
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる