上 下
23 / 27
6章 このままじゃ、終われない!

6-02

しおりを挟む
 駅のそばにある公園で話をすることにしたわたしとユーリは――。ブランコの近くにあるベンチに腰を下ろしていた。

 夕焼けのせいで、公園に植えられたかえでがいつもより赤黒くみえる。
 その色は魔法でも使ったみたいにきれいだけど、なんだかそのぶん怖くみえた。
 ユーリをみつめながら、わたしはゆっくりと話しはじめる。

「わたしね、いままで普通の友達はいても、『親友』って、いたことなかったんだ……。だから、ユーリがわたしの親友だったら素敵だろうなって思ってたの」

 ユーリは複雑な顔をして、わたしをみつめている。
 彼女にそんな表情でみつめられるのは心が痛むけど、わたしはユーリに、きちんと謝るって決めたんだ。
 だから、しっかりしなくっちゃ……。

「無理言って友達になってもらったのに、わたしはユーリの優しさに甘えすぎて、どんどんワガママになっちゃってた。ユーリにはユーリの友達がいるのに、それがおもしろくなかったなんて、こんなヤツ、迷惑だと思って当然だよ。なのに、それを怒るなんて、わたしってばずうずうしいもいいとこだよね。ユーリ、本当にごめんね……」

 ホントのことを言っているだけなのに、わたしは――。
 声が震えてしまった。
 泣きたくなった。
 そんなわたしの肩に、ユーリはそっと手を置いた。

「迷惑なんかじゃ、なかったよ――」

 彼女の口ぶりは真剣だった。

(……ユーリ――)

「莉子が私と友達になりたいって言った日のこと、いまでもよく憶えてる……。びっくりしたけど、うれしかった。私はね、莉子と友達になれて本当にうれしかったんだ――。莉子と一緒にいれて本当に楽しかった。でも……――」

 ユーリはわたしの肩から手をはなし、一瞬、困惑の表情をみせた。
 何かをしゃべろうか、しゃべるまいか、迷っているみたい……。

「でも……。でもね、私は――」 

 ひとりごとのようにささやいてから、意を決したような面持おももちでユーリは口を開いた。

「アレ――本当なんだ」

 “アレ”……?
 話を理解できずにポカーンとしているわたしに向かって、彼女は呪文のようにつぶやいた。

「私、本当に女性恐怖症なんだ……」

 ユーリのその言葉を聞いても、わたしにはまだ、なんのことなのか理解できない。
 ……たしかにユーリは前、『女の子はすきじゃない』って言ったけど、その後すぐに冗談って――。
 それにユーリ、いつもわたしと一緒に帰ってたじゃない……。

 二人で美術館や喫茶店に行ったときも、周りにたくさん女の子がいたけど、そんな素振り一度だって。
 第一、 ユーリは女の子なんだよ。
 なのに、なんで、そんなことになっちゃうの……?

「ユーリ……?」

「変だよね。女なのに――」

 ユーリはわたしの疑問をあらかた予想していたかのように、自嘲めいた微笑を浮かべた。

「きっかけは、中2のときのことなんだ。その頃までの私は、髪も肩にかかるくらいはあったし、制服のスカートの長さが気になったりする、普通の女子生徒だったんだ……」

 ユーリは、わたしに自分の過去を語り始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

雌犬、女子高生になる

フルーツパフェ
大衆娯楽
最近は犬が人間になるアニメが流行りの様子。 流行に乗って元は犬だった女子高生美少女達の日常を描く

処理中です...