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6章 このままじゃ、終われない!
6-02
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駅のそばにある公園で話をすることにしたわたしとユーリは――。ブランコの近くにあるベンチに腰を下ろしていた。
夕焼けのせいで、公園に植えられた楓がいつもより赤黒くみえる。
その色は魔法でも使ったみたいにきれいだけど、なんだかそのぶん怖くみえた。
ユーリをみつめながら、わたしはゆっくりと話しはじめる。
「わたしね、いままで普通の友達はいても、『親友』って、いたことなかったんだ……。だから、ユーリがわたしの親友だったら素敵だろうなって思ってたの」
ユーリは複雑な顔をして、わたしをみつめている。
彼女にそんな表情でみつめられるのは心が痛むけど、わたしはユーリに、きちんと謝るって決めたんだ。
だから、しっかりしなくっちゃ……。
「無理言って友達になってもらったのに、わたしはユーリの優しさに甘えすぎて、どんどんワガママになっちゃってた。ユーリにはユーリの友達がいるのに、それがおもしろくなかったなんて、こんなヤツ、迷惑だと思って当然だよ。なのに、それを怒るなんて、わたしってばずうずうしいもいいとこだよね。ユーリ、本当にごめんね……」
ホントのことを言っているだけなのに、わたしは――。
声が震えてしまった。
泣きたくなった。
そんなわたしの肩に、ユーリはそっと手を置いた。
「迷惑なんかじゃ、なかったよ――」
彼女の口ぶりは真剣だった。
(……ユーリ――)
「莉子が私と友達になりたいって言った日のこと、いまでもよく憶えてる……。びっくりしたけど、うれしかった。私はね、莉子と友達になれて本当にうれしかったんだ――。莉子と一緒にいれて本当に楽しかった。でも……――」
ユーリはわたしの肩から手をはなし、一瞬、困惑の表情をみせた。
何かをしゃべろうか、しゃべるまいか、迷っているみたい……。
「でも……。でもね、私は――」
ひとりごとのようにささやいてから、意を決したような面持でユーリは口を開いた。
「アレ――本当なんだ」
“アレ”……?
話を理解できずにポカーンとしているわたしに向かって、彼女は呪文のようにつぶやいた。
「私、本当に女性恐怖症なんだ……」
ユーリのその言葉を聞いても、わたしにはまだ、なんのことなのか理解できない。
……たしかにユーリは前、『女の子はすきじゃない』って言ったけど、その後すぐに冗談って――。
それにユーリ、いつもわたしと一緒に帰ってたじゃない……。
二人で美術館や喫茶店に行ったときも、周りにたくさん女の子がいたけど、そんな素振り一度だって。
第一、 ユーリは女の子なんだよ。
なのに、なんで、そんなことになっちゃうの……?
「ユーリ……?」
「変だよね。女なのに――」
ユーリはわたしの疑問をあらかた予想していたかのように、自嘲めいた微笑を浮かべた。
「きっかけは、中2のときのことなんだ。その頃までの私は、髪も肩にかかるくらいはあったし、制服のスカートの長さが気になったりする、普通の女子生徒だったんだ……」
ユーリは、わたしに自分の過去を語り始めた。
夕焼けのせいで、公園に植えられた楓がいつもより赤黒くみえる。
その色は魔法でも使ったみたいにきれいだけど、なんだかそのぶん怖くみえた。
ユーリをみつめながら、わたしはゆっくりと話しはじめる。
「わたしね、いままで普通の友達はいても、『親友』って、いたことなかったんだ……。だから、ユーリがわたしの親友だったら素敵だろうなって思ってたの」
ユーリは複雑な顔をして、わたしをみつめている。
彼女にそんな表情でみつめられるのは心が痛むけど、わたしはユーリに、きちんと謝るって決めたんだ。
だから、しっかりしなくっちゃ……。
「無理言って友達になってもらったのに、わたしはユーリの優しさに甘えすぎて、どんどんワガママになっちゃってた。ユーリにはユーリの友達がいるのに、それがおもしろくなかったなんて、こんなヤツ、迷惑だと思って当然だよ。なのに、それを怒るなんて、わたしってばずうずうしいもいいとこだよね。ユーリ、本当にごめんね……」
ホントのことを言っているだけなのに、わたしは――。
声が震えてしまった。
泣きたくなった。
そんなわたしの肩に、ユーリはそっと手を置いた。
「迷惑なんかじゃ、なかったよ――」
彼女の口ぶりは真剣だった。
(……ユーリ――)
「莉子が私と友達になりたいって言った日のこと、いまでもよく憶えてる……。びっくりしたけど、うれしかった。私はね、莉子と友達になれて本当にうれしかったんだ――。莉子と一緒にいれて本当に楽しかった。でも……――」
ユーリはわたしの肩から手をはなし、一瞬、困惑の表情をみせた。
何かをしゃべろうか、しゃべるまいか、迷っているみたい……。
「でも……。でもね、私は――」
ひとりごとのようにささやいてから、意を決したような面持でユーリは口を開いた。
「アレ――本当なんだ」
“アレ”……?
話を理解できずにポカーンとしているわたしに向かって、彼女は呪文のようにつぶやいた。
「私、本当に女性恐怖症なんだ……」
ユーリのその言葉を聞いても、わたしにはまだ、なんのことなのか理解できない。
……たしかにユーリは前、『女の子はすきじゃない』って言ったけど、その後すぐに冗談って――。
それにユーリ、いつもわたしと一緒に帰ってたじゃない……。
二人で美術館や喫茶店に行ったときも、周りにたくさん女の子がいたけど、そんな素振り一度だって。
第一、 ユーリは女の子なんだよ。
なのに、なんで、そんなことになっちゃうの……?
「ユーリ……?」
「変だよね。女なのに――」
ユーリはわたしの疑問をあらかた予想していたかのように、自嘲めいた微笑を浮かべた。
「きっかけは、中2のときのことなんだ。その頃までの私は、髪も肩にかかるくらいはあったし、制服のスカートの長さが気になったりする、普通の女子生徒だったんだ……」
ユーリは、わたしに自分の過去を語り始めた。
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