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5章 すれちがい、そして

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「じゃあな、清原。学校でな――」

 そう言って男の子が駅の出入り口から走り去った後、ユーリはわたしに向かって何か言おうと口を開きかけた。
 けれど、わたしは言い訳なんて聞きたくないと言わんばかりに、キッと彼女をにらみつけてしまった。
 そして、一言。

「わたしのこと、やっぱり迷惑だったんだね」

「そんなこと……」

 ユーリは困った顔をしている。だけど、わたしは自分のイライラした気持ちを抑えられなかった。

「だって……! ユーリは女の友達よりも、男の友達のほうが大事みたいなんだもん。ほんとはユーリ、わたしといるよりも、男の子といるほうが楽しいんでしょ……?」

 わたしの言葉に、ユーリは今まで見せたことのない、とても悲しそうな表情をした。
 まるで、この世界に1人だけ生き残ってしまったみたいな――、うまく言えないけど、わたしだったら、そんな時にならなければしないような表情……。

何もなくなってしまったような、うつろな瞳がわたしをみつめた。
 彼女にそんな瞳でみつめられればみつめられるほど、行き場のない恥ずかしさが後悔となって、わたしの心に押し寄せてくる。

(やだ――。わたし、すごくイヤミな言い方しちゃった……)

 自分のみっともない嫉妬が言わせたグチが、ここまで彼女を傷つけるなんて想像もしてなかったわたしは、すっかりあわててしまった。

「ご……」

 “ごめんなさい”って言葉が、わたしのノドから出かかった、その時――ユーリの一言がそれをさえぎった。

「そうかもしれないね」
 
 彼女はきっぱりと言いきり、わたしに背を向けた。
 売り言葉に買い言葉?
 それとも、本音なの?

 どっちなのか、わたしにはわからない……。
 だけど気がついたら、わたしは目に大粒の涙をためていた。
 悲しくって、くやしくって、そんな自分がすごくいやで、

「ユーリのばかっ!」

 そう叫ぶと、自分が通う学校――瑛芯えいしん学園――に向かって全速力で走りだしていた。
 いつもやさしくて、いつも――わたしがどんなことしても――、わたしのことを肯定してくれたユーリに、わたしを……、『友達としてのわたしの位置』を、はっきり否定されたことがショックだった。

 高校に向かって走っているはずなのに、走れば走るほど、わたしは彼女から逃げたんだって感覚しかなくなっていく。
 教室に着くまでのわたしの気分は最低だった。

 でも、教室に到着したからって、この気分からは脱け出せなかった。
 授業なんて、みんなうわの空だったし、休み時間に京花たちと何をしゃべったんだっけ。
 全然思い出せないや……。
 思い出せるのは、わたしはユーリとケンカしたんだってことだけ……。

 ユーリを傷つけた――。
 わたしも傷ついた――。
 わたしはユーリから逃げた――。

 この3つの言葉が、わたしの頭をグルグルまわってた。
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