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5章 すれちがい、そして
5-01
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次の日の朝。
学校に行こうとするわたしは、明が丘駅の出入り口で誰かに呼び止められた。
「莉子!」
ユーリだ。
「昨日は行けなくてごめん……」
最近、朝は結構寒くなってきたのに、これを言うためだけに、ずっと待っててくれたんだ、わたしのこと……。
でも、わたしだって、昨日ずっと待ってた。
「いいよ、別に……。わたしが無理に誘ったんだし」
素っ気なく答えると、わたしはそっぽを向いてしまった。
気まずい沈黙があたりに広がる。
10秒か、20秒か――。どれくらいたったのかは、わからないけれど、この重苦しい空気に耐えられなくなったわたしは、ユーリのほうをのぞきみた。
ユーリは“ねぇ、機嫌なおしてよ……”って、瞳でわたしをみている。
その瞳は、仔犬みたいに純粋で、わたしは胸にかすかな罪悪感を抱いた。
(大人じゃないな、わたし――。最初からユーリは乗り気じゃなかったんだし、『わたしのほうこそ、無理に誘ってごめんね』って言わなくっちゃ……!)
「わたし……」
そう謝りかけたとき――。
「よぉ、清原じゃんか!」
『清原』はユーリの苗字だ。誰かがユーリのことを呼びかけたみたい。
後ろを振り返ると、私服の男の子が1人、ユーリに近づいてきた。この、人なつっこそうな笑顔、前にもみかけたことがある。
ユーリのクラスメイトだ。
「島野……」
ユーリが彼の名と思われる言葉を口ずさむ。
島野という名の男の子は、エリ元の校章を光らせ、こう言った。
「昨日のゲーム大会、白熱したよなー。田村も杉野も本気だしやがるし……」
……“昨日のゲーム大会”?
「なにが大会だよ! いきなり人の家に押しかけてきて……だいたい、あのゲーム機は弟のなんだし――」
「だって、清原の弟ってゲーマーじゃん。だから、おまえの家、ゲームがたくさんあるからさ~」
「……あのねぇ、島野――」
2人のやりとりを聞いているうちに、わたしはイライラした、嫌な気分になっていった。
(ユーリが来なかったのは、家に男の子達が遊びにきたからなの……?)
京花達は、昨日『最近の莉子って、私達とつきあい悪い』と言いたげだった。
……それでも、わたしはユーリに会いたかった。
京花もみほも唯菜も、いつもは憎まれ口ばっかりだけど、やっぱり大事な友達だ。
でも、その3人から嫌われてもいいくらい、ユーリのことが大切だから――。
だけど、ユーリにとってわたしは、――いくら優しくしてもらっても――。
所詮は “後まわし”されちゃう存在だったんだ。
そう思うと、わたしは今ここで楽しそうに笑っている男の子にユーリをとられたみたいな気がした。
ヤキモチを焼いている自分が、すごくみじめだった。
みじめとわかっていても、この気持ちを消し去る方法なんてみつからなくて――。
わたしはただ、この場に立ち尽くすことしかできなかった。
学校に行こうとするわたしは、明が丘駅の出入り口で誰かに呼び止められた。
「莉子!」
ユーリだ。
「昨日は行けなくてごめん……」
最近、朝は結構寒くなってきたのに、これを言うためだけに、ずっと待っててくれたんだ、わたしのこと……。
でも、わたしだって、昨日ずっと待ってた。
「いいよ、別に……。わたしが無理に誘ったんだし」
素っ気なく答えると、わたしはそっぽを向いてしまった。
気まずい沈黙があたりに広がる。
10秒か、20秒か――。どれくらいたったのかは、わからないけれど、この重苦しい空気に耐えられなくなったわたしは、ユーリのほうをのぞきみた。
ユーリは“ねぇ、機嫌なおしてよ……”って、瞳でわたしをみている。
その瞳は、仔犬みたいに純粋で、わたしは胸にかすかな罪悪感を抱いた。
(大人じゃないな、わたし――。最初からユーリは乗り気じゃなかったんだし、『わたしのほうこそ、無理に誘ってごめんね』って言わなくっちゃ……!)
「わたし……」
そう謝りかけたとき――。
「よぉ、清原じゃんか!」
『清原』はユーリの苗字だ。誰かがユーリのことを呼びかけたみたい。
後ろを振り返ると、私服の男の子が1人、ユーリに近づいてきた。この、人なつっこそうな笑顔、前にもみかけたことがある。
ユーリのクラスメイトだ。
「島野……」
ユーリが彼の名と思われる言葉を口ずさむ。
島野という名の男の子は、エリ元の校章を光らせ、こう言った。
「昨日のゲーム大会、白熱したよなー。田村も杉野も本気だしやがるし……」
……“昨日のゲーム大会”?
「なにが大会だよ! いきなり人の家に押しかけてきて……だいたい、あのゲーム機は弟のなんだし――」
「だって、清原の弟ってゲーマーじゃん。だから、おまえの家、ゲームがたくさんあるからさ~」
「……あのねぇ、島野――」
2人のやりとりを聞いているうちに、わたしはイライラした、嫌な気分になっていった。
(ユーリが来なかったのは、家に男の子達が遊びにきたからなの……?)
京花達は、昨日『最近の莉子って、私達とつきあい悪い』と言いたげだった。
……それでも、わたしはユーリに会いたかった。
京花もみほも唯菜も、いつもは憎まれ口ばっかりだけど、やっぱり大事な友達だ。
でも、その3人から嫌われてもいいくらい、ユーリのことが大切だから――。
だけど、ユーリにとってわたしは、――いくら優しくしてもらっても――。
所詮は “後まわし”されちゃう存在だったんだ。
そう思うと、わたしは今ここで楽しそうに笑っている男の子にユーリをとられたみたいな気がした。
ヤキモチを焼いている自分が、すごくみじめだった。
みじめとわかっていても、この気持ちを消し去る方法なんてみつからなくて――。
わたしはただ、この場に立ち尽くすことしかできなかった。
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