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4章 もっといっしょにいたいから!

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「わたし、ユーリと友達になれてよかった」

 最後の曲が終わったとき、わたしはひとりごとのようにつぶやいた。
 ユーリは照れくさそうに苦笑する。

「このアルバム聴けたから?」

 そんな彼女に、わたしは少しむきになって、

「……たしかにそれも、すごく嬉しいんだけど…、でも、そうじゃなくてね。……こういうこと話すのって、ちょっとテレるけど……、ユーリってやさしくて、きれいで、大人っぽくて……。わたしにないもの、たくさん持ってて――」

「べ……別に、そんなことな……」

「ある! あるってば、ある!」

 真っ赤になって否定するユーリの言葉をさえぎって、わたしは続けた。

「だからわたし、ユーリが大好きなの。ユーリと友達でいられるわたしって、とっても幸せだなーって思うんだ」

 ユーリはリンゴみたいに赤くなったまま。
 いつも、わたしばっかり赤面してる気がするから、こういう光景って妙……。
 だけど、こういうユーリも、なんだか可愛い。
 そう思いつつ、わたしはふと、日曜日に京花たちと遊ぶ約束をしたことを思い出した。

(そうだ! ユーリも誘ってみようかな。土曜も日曜もユーリと会えないのって、つまらないもんね……)

 わたしは早速ある提案をしてみる。

「あさっての日曜、クラスの友達3人と遊ぶんだけどね。ユーリも来ない? アミューズメントパークなんだけど、わたしチケット持ってるの。ユーリもいっしょに行こうよ」

「えっ……、ん――」

 ユーリは口ごもった。

「何か予定があるの?」

「そういう訳じゃないけど、知らない子ばっかりだから、なんか、ちょっと……」

「大丈夫、大丈夫! みんな気さくな子だよ」

 わたしがこう言っても、ユーリはいまいち乗り気じゃないみたい。どうしたんだろ?

「じゃあさ、気が向いたらでいいから、12時までに明が丘駅の時計台にきて! ね、それなら、いい?」

「ん……うん――」

 ユーリは勢いに押されて、つい、うなずいてしまったって感じ。
 なんか、こまった顔してる。

(わたし、無理に誘っちゃったみたい……。ユーリはアミューズメントパーク、好きじゃなかったのかも……)

   * * *

 それから2日後の日曜日――。
 駅前広場の時計台は、12時24分という中途半端な時刻を指し示している。
 わたし・京花・みほ・唯菜は、12時5分前には、ここに集まってたんだけど、ユーリの姿はまだ見えない。

「ねぇ、莉子~! ユーリさん、用事でも出来たんじゃないの? 行けたら、行くって言ってたんでしょ?」

「そうだけど――。ごめん! みんなは先に行ってて。わたし、もう少し待ってみるから……」

 わたしはバッグの中から、“無料ご招待券”の入った封筒を取り出して、京花に手渡した。

「……うん。じゃあ、悪いけどあたし達、先に行くからね」

 チケットを受け取ると、3人は急ぎ足でホームに向かっていった。
 京花達がいなくなり、1人でユーリを待つこと30分――。
 なぜか、ユーリの携帯にもつながらない。

(やっぱり、来ないのかなぁ……)

 広場を見まわしてみると、1人で誰かを待っているのは、わたしだけになっていた。
 他の人たちはみんな、誰かと一緒に、まだここに現れない人を待っていて、「アイツ、おそーい」とか「もう、あんなヤツ、置いてっちゃおうよぉ。携帯つながらないしぃ~」とか、待ち人の悪口を言って時間をつぶしている。

 ……こういう状況ってすごく苦手……。
 自分は今、本当に1人きりなんだって、ひしひしと感じてしまう。

(ユーリのことを待つのは、いつものことなのに、どうしてこんな不安なんだろう)

 時計台を見上げてみると、時刻はもう三時を過ぎていた。
 ――……ユーリはきっと、来てくれると思ったのにな……。
 わたしは、今さら友達と騒ぐ気にもなれなくて、京花の携帯におわびのメールをいれて、家に帰ってしまった。
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