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4章 もっといっしょにいたいから!
4-05
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「わたし、ユーリと友達になれてよかった」
最後の曲が終わったとき、わたしはひとりごとのようにつぶやいた。
ユーリは照れくさそうに苦笑する。
「このアルバム聴けたから?」
そんな彼女に、わたしは少しむきになって、
「……たしかにそれも、すごく嬉しいんだけど…、でも、そうじゃなくてね。……こういうこと話すのって、ちょっとテレるけど……、ユーリってやさしくて、きれいで、大人っぽくて……。わたしにないもの、たくさん持ってて――」
「べ……別に、そんなことな……」
「ある! あるってば、ある!」
真っ赤になって否定するユーリの言葉をさえぎって、わたしは続けた。
「だからわたし、ユーリが大好きなの。ユーリと友達でいられるわたしって、とっても幸せだなーって思うんだ」
ユーリはリンゴみたいに赤くなったまま。
いつも、わたしばっかり赤面してる気がするから、こういう光景って妙……。
だけど、こういうユーリも、なんだか可愛い。
そう思いつつ、わたしはふと、日曜日に京花たちと遊ぶ約束をしたことを思い出した。
(そうだ! ユーリも誘ってみようかな。土曜も日曜もユーリと会えないのって、つまらないもんね……)
わたしは早速ある提案をしてみる。
「あさっての日曜、クラスの友達3人と遊ぶんだけどね。ユーリも来ない? アミューズメントパークなんだけど、わたしチケット持ってるの。ユーリもいっしょに行こうよ」
「えっ……、ん――」
ユーリは口ごもった。
「何か予定があるの?」
「そういう訳じゃないけど、知らない子ばっかりだから、なんか、ちょっと……」
「大丈夫、大丈夫! みんな気さくな子だよ」
わたしがこう言っても、ユーリはいまいち乗り気じゃないみたい。どうしたんだろ?
「じゃあさ、気が向いたらでいいから、12時までに明が丘駅の時計台にきて! ね、それなら、いい?」
「ん……うん――」
ユーリは勢いに押されて、つい、うなずいてしまったって感じ。
なんか、こまった顔してる。
(わたし、無理に誘っちゃったみたい……。ユーリはアミューズメントパーク、好きじゃなかったのかも……)
* * *
それから2日後の日曜日――。
駅前広場の時計台は、12時24分という中途半端な時刻を指し示している。
わたし・京花・みほ・唯菜は、12時5分前には、ここに集まってたんだけど、ユーリの姿はまだ見えない。
「ねぇ、莉子~! ユーリさん、用事でも出来たんじゃないの? 行けたら、行くって言ってたんでしょ?」
「そうだけど――。ごめん! みんなは先に行ってて。わたし、もう少し待ってみるから……」
わたしはバッグの中から、“無料ご招待券”の入った封筒を取り出して、京花に手渡した。
「……うん。じゃあ、悪いけどあたし達、先に行くからね」
チケットを受け取ると、3人は急ぎ足でホームに向かっていった。
京花達がいなくなり、1人でユーリを待つこと30分――。
なぜか、ユーリの携帯にもつながらない。
(やっぱり、来ないのかなぁ……)
広場を見まわしてみると、1人で誰かを待っているのは、わたしだけになっていた。
他の人たちはみんな、誰かと一緒に、まだここに現れない人を待っていて、「アイツ、おそーい」とか「もう、あんなヤツ、置いてっちゃおうよぉ。携帯つながらないしぃ~」とか、待ち人の悪口を言って時間をつぶしている。
……こういう状況ってすごく苦手……。
自分は今、本当に1人きりなんだって、ひしひしと感じてしまう。
(ユーリのことを待つのは、いつものことなのに、どうしてこんな不安なんだろう)
時計台を見上げてみると、時刻はもう三時を過ぎていた。
――……ユーリはきっと、来てくれると思ったのにな……。
わたしは、今さら友達と騒ぐ気にもなれなくて、京花の携帯におわびのメールをいれて、家に帰ってしまった。
最後の曲が終わったとき、わたしはひとりごとのようにつぶやいた。
ユーリは照れくさそうに苦笑する。
「このアルバム聴けたから?」
そんな彼女に、わたしは少しむきになって、
「……たしかにそれも、すごく嬉しいんだけど…、でも、そうじゃなくてね。……こういうこと話すのって、ちょっとテレるけど……、ユーリってやさしくて、きれいで、大人っぽくて……。わたしにないもの、たくさん持ってて――」
「べ……別に、そんなことな……」
「ある! あるってば、ある!」
真っ赤になって否定するユーリの言葉をさえぎって、わたしは続けた。
「だからわたし、ユーリが大好きなの。ユーリと友達でいられるわたしって、とっても幸せだなーって思うんだ」
ユーリはリンゴみたいに赤くなったまま。
いつも、わたしばっかり赤面してる気がするから、こういう光景って妙……。
だけど、こういうユーリも、なんだか可愛い。
そう思いつつ、わたしはふと、日曜日に京花たちと遊ぶ約束をしたことを思い出した。
(そうだ! ユーリも誘ってみようかな。土曜も日曜もユーリと会えないのって、つまらないもんね……)
わたしは早速ある提案をしてみる。
「あさっての日曜、クラスの友達3人と遊ぶんだけどね。ユーリも来ない? アミューズメントパークなんだけど、わたしチケット持ってるの。ユーリもいっしょに行こうよ」
「えっ……、ん――」
ユーリは口ごもった。
「何か予定があるの?」
「そういう訳じゃないけど、知らない子ばっかりだから、なんか、ちょっと……」
「大丈夫、大丈夫! みんな気さくな子だよ」
わたしがこう言っても、ユーリはいまいち乗り気じゃないみたい。どうしたんだろ?
「じゃあさ、気が向いたらでいいから、12時までに明が丘駅の時計台にきて! ね、それなら、いい?」
「ん……うん――」
ユーリは勢いに押されて、つい、うなずいてしまったって感じ。
なんか、こまった顔してる。
(わたし、無理に誘っちゃったみたい……。ユーリはアミューズメントパーク、好きじゃなかったのかも……)
* * *
それから2日後の日曜日――。
駅前広場の時計台は、12時24分という中途半端な時刻を指し示している。
わたし・京花・みほ・唯菜は、12時5分前には、ここに集まってたんだけど、ユーリの姿はまだ見えない。
「ねぇ、莉子~! ユーリさん、用事でも出来たんじゃないの? 行けたら、行くって言ってたんでしょ?」
「そうだけど――。ごめん! みんなは先に行ってて。わたし、もう少し待ってみるから……」
わたしはバッグの中から、“無料ご招待券”の入った封筒を取り出して、京花に手渡した。
「……うん。じゃあ、悪いけどあたし達、先に行くからね」
チケットを受け取ると、3人は急ぎ足でホームに向かっていった。
京花達がいなくなり、1人でユーリを待つこと30分――。
なぜか、ユーリの携帯にもつながらない。
(やっぱり、来ないのかなぁ……)
広場を見まわしてみると、1人で誰かを待っているのは、わたしだけになっていた。
他の人たちはみんな、誰かと一緒に、まだここに現れない人を待っていて、「アイツ、おそーい」とか「もう、あんなヤツ、置いてっちゃおうよぉ。携帯つながらないしぃ~」とか、待ち人の悪口を言って時間をつぶしている。
……こういう状況ってすごく苦手……。
自分は今、本当に1人きりなんだって、ひしひしと感じてしまう。
(ユーリのことを待つのは、いつものことなのに、どうしてこんな不安なんだろう)
時計台を見上げてみると、時刻はもう三時を過ぎていた。
――……ユーリはきっと、来てくれると思ったのにな……。
わたしは、今さら友達と騒ぐ気にもなれなくて、京花の携帯におわびのメールをいれて、家に帰ってしまった。
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