上 下
14 / 27
4章 もっといっしょにいたいから!

4-01

しおりを挟む
 ユーリは、わたしの耳たぶをやさしくつまむ。
 彼女のほそい指先は少しだけ冷えていて、そのひんやりとした感覚がわたしの耳に直接に伝わってくる。

 ……ドキ……。胸の鼓動が自分の耳にも聞こえてきた。

「だ、大丈夫! ……じゃ、行こっか……」

 なんだか無性に恥ずかしい。
 ユーリの手を振りほどいて、駅に続く並木道を歩きはじめた。

(胸がまだドキドキしてる……。それもこれも、ユーリが素敵すぎるせいなんだから)

 軽くため息をついてから、横目でちらりとユーリをみつめた。
 サラサラした黒髪。スッと通った鼻すじ。
 ……肌だって、とってもきれいで……。

つまり、一言でいえば、顔のすべての部分が整っているのだけど……。
なかでも、わたしが一番、心を惹きつけられるのは、彼女の“瞳”――。
 長いまつげに囲まれた、黒く、大きな瞳は、ほんの少しだけ憂いを含んでいて、わたしはときどき、吸い込まれそうになってしまう。

「何? 莉子」
「……な、なんでもない!」

 わたしはあわてて首を振った。

(……やだ。わたしってば、ちらっと見るだけのつもりで、ユーリのこと、ずっとみつめていたんだ。しかも、それがユーリにバレてるし)

 実はこういうこと、1度や2度じゃなかったりする。
 それほどの美貌を持つユーリに対して、わたしといえば、ホントにつまらない『普通の子』。
 あーあ、ちょっと自己嫌悪……。

 * * *

 明が丘駅を通りすぎ、それでもまっすぐ並木道を進んでいく。
 すると、ようやく『マリィエ』という看板のかかった店が姿をあらわしてくれた。

(ここだよね……)

 トールペイントのプレートがかかった可愛らしい扉を開けると、絵本の挿絵に出てきそうな、心休まる空間が広がっていた。
 こういう、どこか懐かしい感じって、すごく好き。来てよかった!

 窓際の席に案内されたわたしたちがメニューをみていると、お店の人が注文を取りにきた。
 わたしは、ここのイチオシは中にラズベリーのたっぷりつまったガトーショコラだって聞いてたから、

「ケーキセットを、飲み物はホットミルクティー、ケーキはラズベリーのガトーショコラで」

 と即答。
 だけど、メニューに載っている他のケーキもすごく美味しそう。

「ユーリは何にする?」

「ん……。コーヒーでいいや。ホットコーヒーひとつ」

「かしこまりました。ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

「え? コーヒーだけでいいの?」

 わたしは、おもわず大声で聞いてしまった。

「うん」

 ユーリは静かに答えた。
 ケーキの美味しいカフェで、ケーキを頼まずにコーヒーだけ頼む。
 そんな女の子が自分と同い年だなんて、ちょっとした衝撃だった。

(でも、ケーキ頼まないんなら、なんか悪い事しちゃったかな……)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

最近の女子高生は思想が強い ~雇用・利子および女子高生の一般りろん~

輪島ライ
大衆娯楽
 東京都千代田区にある私立ケインズ女子高校は本来の意味でリベラルな学校で、在学生には寛容の精神と資本主義思想が教え込まれている。  社会派ドタバタポリティカルコメディ、ここでも開幕!! ※この作品は「小説家になろう」「アルファポリス」「カクヨム」「エブリスタ」に投稿しています。 ※これは架空の物語です。過去、あるいは現在において、たまたま実在する人物、出来事と類似していても、それは偶然に過ぎません。 ※姉妹作「天然女子高生のためのそーかつ」を並行連載中です。(内容に一部重複があります)

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

キャバ嬢とホスト

廣瀬純一
ライト文芸
キャバ嬢とホストがお互いの仕事を交換する話

坂の上の本屋

ihcikuYoK
ライト文芸
カクヨムのお題企画参加用に書いたものです。 短話連作ぽくなったのでまとめました。 ♯KAC20231 タグ、お題「本屋」  坂の上の本屋には父がいる ⇒ 本屋になった父親と娘の話です。 ♯KAC20232 タグ、お題「ぬいぐるみ」  坂の上の本屋にはバイトがいる ⇒ 本屋のバイトが知人親子とクリスマスに関わる話です。 ♯KAC20233 タグ、お題「ぐちゃぐちゃ」  坂の上の本屋には常連客がいる ⇒ 本屋の常連客が、クラスメイトとその友人たちと本屋に行く話です。 ♯KAC20234 タグ、お題「深夜の散歩で起きた出来事」  坂の上の本屋のバイトには友人がいる ⇒ 本屋のバイトとその友人が、サークル仲間とブラブラする話です。 ♯KAC20235 タグ、お題「筋肉」  坂の上の本屋の常連客には友人がいる ⇒ 本屋の常連客とその友人があれこれ話している話です。 ♯KAC20236 タグ、お題「アンラッキー7」  坂の上の本屋の娘は三軒隣にいる ⇒ 本屋の娘とその家族の話です。 ♯KAC20237 タグ、お題「いいわけ」  坂の上の本屋の元妻は三軒隣にいる ⇒ 本屋の主人と元妻の話です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...