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3章 オトモダチからはじめよう!
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わたしとユーリは、おたがいの学校が休みの日に美術館(これはユーリの趣味!)に行った。
なんで、そういうことになったのか、というと……。
ある日の帰り道、ユーリが美術館のチケットを差し出してきた。
彼女の担任が希望者に配ったものだそうだ。
チケットの表には、『T現代美術館~二十世紀の巨匠たち~』と、印刷してある。
「莉子は、こういうのに興味ある? あったら一緒に行こっか?」
「うん。行きたいっ!」
わたしはふたつ返事でOKした。芸術に興味があるわけじゃないけど、(どっちかというとこういうのは美術部に入っている妹の鈴が好きなのよね……)ユーリが学校のない日にも会ってくれる。
そのことに心がはずんでしまう。
T現代美術館は、学校のわりと近く、Mという町にあった。
学校行事以外で美術館に行くのは初体験。飾ってある絵(全部で何点くらいあったんだろ?とにかくすごい数だった)とか、オブジェ(って、いうんだっけ……、あの、いかにもアートしてますってカタマリは、とってもキレイで、ちっとも退屈なんかじゃなかった。
……退屈では、なかったんだけど――。
わたしは――。こんなこと言うの、少し恥ずかしいけど……。
展示されていた絵画をみていた時間よりも、ユーリをみていた時間のほうが、ずっとずっと長かった。
真剣な表情で絵をみている、ユーリのきれいな横顔をのぞいているほうがドキドキして楽しかった。
館内には他にもお客さんが結構いたのに、ユーリの周りだけは、見えない壁で仕切られたみたいに、静寂で守られている気がした。
そして、できることなら、このままずっと彼女の横にいたい。そう願っていた。
こんな風に美術品そっちのけで友人をみていたわたしは、美術鑑賞には向かない人の部類に入るのかもしれない。
でも、これもわたしにとっては、とっても楽しい思い出のひとつ。
ユーリがそばにいてくれたら、なんだって素敵なことに変わってくれる。そんな気がする。
* * *
ユーリといっしょに帰ることが恒例となった、ある日の放課後。
2人で並んで歩いている駅へと続く並木道。
木々は、すっかり秋の色に染まっていた。
紅葉した葉がパラパラ落ちていく姿は、かなり叙情的。
だけど、秋といったら、やっぱり『食欲の秋』を忘れてしまったらダメだと思う。
「ねぇ、ユーリ。今日、これから時間ある?」
「あるけど、なんで?」
ユーリに訊き返されたわたしは、待ってましたとばかりに、
「駅のはずれに“マリィエ”ってカフェができたの知ってる? わたしはまだ行ったことないんだけど、そこ、ケーキがすっごく美味しいらしいの! でね、オープンしたばっかりなのに、大人気なんだって! ね、今から行かない?」
「うん。別にいいけど……」
なんだかユーリは、ぐっと笑いをこらえているみたい。
(カフェひとつに、はしゃぎすぎちゃったかも?)
我に返ったわたしは急に恥ずかしくなり、もじもじと質問する。
「……もしかしてユーリ。わたしのこと、ちょっと子どもっぽいなって思ってる……?」
「うん。少し……」
うう……。ユーリにあきれられちゃったみたい。
落ち込むわたしにユーリは、そっとつぶやいた。
「――でも、なんか可愛いなって……」
甘やかな目でわたしをみつめているユーリ。
「え……。わ……わたし……?」
彼女の視線と言葉が、わたしの心をドキリとさせ、思わず足が止まる。
(……今のわたし、きっと耳まで赤い。一体どうしちゃったんだろ……)
「莉子……。耳、赤いよ――」
ホラ……。
「大丈夫?」
そう言って、ユーリはわたしの耳たぶをそっとつまんだ――。
なんで、そういうことになったのか、というと……。
ある日の帰り道、ユーリが美術館のチケットを差し出してきた。
彼女の担任が希望者に配ったものだそうだ。
チケットの表には、『T現代美術館~二十世紀の巨匠たち~』と、印刷してある。
「莉子は、こういうのに興味ある? あったら一緒に行こっか?」
「うん。行きたいっ!」
わたしはふたつ返事でOKした。芸術に興味があるわけじゃないけど、(どっちかというとこういうのは美術部に入っている妹の鈴が好きなのよね……)ユーリが学校のない日にも会ってくれる。
そのことに心がはずんでしまう。
T現代美術館は、学校のわりと近く、Mという町にあった。
学校行事以外で美術館に行くのは初体験。飾ってある絵(全部で何点くらいあったんだろ?とにかくすごい数だった)とか、オブジェ(って、いうんだっけ……、あの、いかにもアートしてますってカタマリは、とってもキレイで、ちっとも退屈なんかじゃなかった。
……退屈では、なかったんだけど――。
わたしは――。こんなこと言うの、少し恥ずかしいけど……。
展示されていた絵画をみていた時間よりも、ユーリをみていた時間のほうが、ずっとずっと長かった。
真剣な表情で絵をみている、ユーリのきれいな横顔をのぞいているほうがドキドキして楽しかった。
館内には他にもお客さんが結構いたのに、ユーリの周りだけは、見えない壁で仕切られたみたいに、静寂で守られている気がした。
そして、できることなら、このままずっと彼女の横にいたい。そう願っていた。
こんな風に美術品そっちのけで友人をみていたわたしは、美術鑑賞には向かない人の部類に入るのかもしれない。
でも、これもわたしにとっては、とっても楽しい思い出のひとつ。
ユーリがそばにいてくれたら、なんだって素敵なことに変わってくれる。そんな気がする。
* * *
ユーリといっしょに帰ることが恒例となった、ある日の放課後。
2人で並んで歩いている駅へと続く並木道。
木々は、すっかり秋の色に染まっていた。
紅葉した葉がパラパラ落ちていく姿は、かなり叙情的。
だけど、秋といったら、やっぱり『食欲の秋』を忘れてしまったらダメだと思う。
「ねぇ、ユーリ。今日、これから時間ある?」
「あるけど、なんで?」
ユーリに訊き返されたわたしは、待ってましたとばかりに、
「駅のはずれに“マリィエ”ってカフェができたの知ってる? わたしはまだ行ったことないんだけど、そこ、ケーキがすっごく美味しいらしいの! でね、オープンしたばっかりなのに、大人気なんだって! ね、今から行かない?」
「うん。別にいいけど……」
なんだかユーリは、ぐっと笑いをこらえているみたい。
(カフェひとつに、はしゃぎすぎちゃったかも?)
我に返ったわたしは急に恥ずかしくなり、もじもじと質問する。
「……もしかしてユーリ。わたしのこと、ちょっと子どもっぽいなって思ってる……?」
「うん。少し……」
うう……。ユーリにあきれられちゃったみたい。
落ち込むわたしにユーリは、そっとつぶやいた。
「――でも、なんか可愛いなって……」
甘やかな目でわたしをみつめているユーリ。
「え……。わ……わたし……?」
彼女の視線と言葉が、わたしの心をドキリとさせ、思わず足が止まる。
(……今のわたし、きっと耳まで赤い。一体どうしちゃったんだろ……)
「莉子……。耳、赤いよ――」
ホラ……。
「大丈夫?」
そう言って、ユーリはわたしの耳たぶをそっとつまんだ――。
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