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3章 オトモダチからはじめよう!
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学校の最寄駅である明ヶ丘駅まで2人で帰ることになったわたしは、緊張でときたま声を裏返しながら、彼女にいろいろ話しかけていた。
――きいて、きいて。ユーリさん! 今日、授業中に現国の先生が……
――この前、うちの妹がね……
――ユーリさんの学校って今、何が流行してるの?
……全部とりとめのない話だけど、それでも、わたしは精いっぱい話していた。
ユーリさんはわたしの目をみながら、楽しそうに聞いてくれる。相槌も打ってくれる。けど――。
(なんだか、わたしばっかり話してるなぁ……。やっぱり、無理してつきあってくれてるだけなのかも……)
そんな不安な考えに、最後まで反論できないまま――、わたしたちは明ヶ丘駅に着いてしまった。
さっき聞いたら、ユーリさんは下り線だそうだから、上り線で帰るわたしはここで別れなきゃいけない。
「今日はありがとう」
これはユーリさんのセリフ。
「また……一緒に帰ってくれる?」
これも、ユーリさんのセリフ!
「それ、ほんと? ユーリさんっ!!」
「『さん』付けしなくていいよ。タメなんだし……」
彼女は少し照れくさそうに告げた。その様子は『さん』付けされるのが恥ずかしいというよりも、さっき、「一緒に帰ってくれる?」って言ったことに照れてるみたいだった。
「うんっ! じゃーね、ユーリ」
わたしはぶんぶん手を振って、その場を走り去っていった。
『また、一緒に帰ってくれる?』そう言ったときの彼女は、ほんの少しだけど、はにかんでいた。
(建礼学院って、女の子がほとんどいないから、帰りくらい女の友達と帰ってもいいって思ってくれたのかも……。うん、きっとそうだ。なんにしても、よかったー!)
――『CDショップで出会った男の子』・『ユーリくん』・『ユーリさん』・『ユーリ』――
この4日間、毎日呼びかたが変わっていったけど、わたしたち、きっといい友達になれるよね――。
そんな期待を胸に抱きながら、わたしは駅の階段を駆け昇っていった。
* * *
わたしは彼女の「一緒に帰ってくれる?」という一言に気を良くして、それからも毎日、建礼学院に出没した。
そうしているうちに、建礼の校門で待ち合わせて一緒に帰るのが、わたしたち2人の習慣になっていった。
別に、どちらかが言い出したからとか、そういうんじゃないんだけど、いつのまにか、そうなっていた。
それだけじゃなくて、学校が休みの日には美術館(これはユーリの趣味!)に行ったり――。
なんで、そういうことになったのか、というと……。
――きいて、きいて。ユーリさん! 今日、授業中に現国の先生が……
――この前、うちの妹がね……
――ユーリさんの学校って今、何が流行してるの?
……全部とりとめのない話だけど、それでも、わたしは精いっぱい話していた。
ユーリさんはわたしの目をみながら、楽しそうに聞いてくれる。相槌も打ってくれる。けど――。
(なんだか、わたしばっかり話してるなぁ……。やっぱり、無理してつきあってくれてるだけなのかも……)
そんな不安な考えに、最後まで反論できないまま――、わたしたちは明ヶ丘駅に着いてしまった。
さっき聞いたら、ユーリさんは下り線だそうだから、上り線で帰るわたしはここで別れなきゃいけない。
「今日はありがとう」
これはユーリさんのセリフ。
「また……一緒に帰ってくれる?」
これも、ユーリさんのセリフ!
「それ、ほんと? ユーリさんっ!!」
「『さん』付けしなくていいよ。タメなんだし……」
彼女は少し照れくさそうに告げた。その様子は『さん』付けされるのが恥ずかしいというよりも、さっき、「一緒に帰ってくれる?」って言ったことに照れてるみたいだった。
「うんっ! じゃーね、ユーリ」
わたしはぶんぶん手を振って、その場を走り去っていった。
『また、一緒に帰ってくれる?』そう言ったときの彼女は、ほんの少しだけど、はにかんでいた。
(建礼学院って、女の子がほとんどいないから、帰りくらい女の友達と帰ってもいいって思ってくれたのかも……。うん、きっとそうだ。なんにしても、よかったー!)
――『CDショップで出会った男の子』・『ユーリくん』・『ユーリさん』・『ユーリ』――
この4日間、毎日呼びかたが変わっていったけど、わたしたち、きっといい友達になれるよね――。
そんな期待を胸に抱きながら、わたしは駅の階段を駆け昇っていった。
* * *
わたしは彼女の「一緒に帰ってくれる?」という一言に気を良くして、それからも毎日、建礼学院に出没した。
そうしているうちに、建礼の校門で待ち合わせて一緒に帰るのが、わたしたち2人の習慣になっていった。
別に、どちらかが言い出したからとか、そういうんじゃないんだけど、いつのまにか、そうなっていた。
それだけじゃなくて、学校が休みの日には美術館(これはユーリの趣味!)に行ったり――。
なんで、そういうことになったのか、というと……。
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