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3章 オトモダチからはじめよう!

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 放課後の建礼学院。校門でユーリさんを待つこと20分。
 ようやく校舎のほうから、彼女とおぼしき人物が現われた。

(ユーリさんだ! 待っててよかった!)

 彼女がわたしに近づいてくる。(わたしに会うためじゃなくて、校門を通るためだけど……)
 今日はユーリさん1人みたいだから、昨日よりも話しかけやすそう。
 ユーリさんはシャツの上からオリーブグリーンのジャンパーをはおって、昨日と違うデニムのパンツをはいていた。
 少年のような風貌は、彼女のショートヘアをより中性的にみせている。

「ユーリさーんっ!」

 わたしは大急ぎで、彼女のほうに駆けていった。 

「……どーしたの? 今日は……」

 ユーリさんは少しびっくりした様子で、目をパチパチと、しばたかせた。
(まぁ、当然かも……。昨日といい、おとといといい、わたしがしでかした数々の失礼を考えれば――)

「あのっ……。その――あなたのこと、男の子と間違えちゃって、ごめんなさい!」

 わたしは深々と頭を下げた。失礼なヤツって印象されてる可能性大だものね。哀しいことに……。

「頭なんか下げなくていいって……。私、間違えられるのには慣れてるし」

 彼女は友達と話すみたいに親しげに言ってくれた。 
 わたしが顔を上げると、

「べつに怒ってないよ」

 そう言って、ニコっとほほえんだ。
(この人、やっぱり人間ができてる!某3人とはエライ違いだわ……)

「……本当?」

「ホント!」

「……それじゃあ――」

「“それじゃあ”……?」

 ユーリさんは、「いったい何なんだろう?」って顔をして、わたしの言葉を繰り返した。
 わたしはスーっと深呼吸してから、本題を切りだしてみる。

「わたしと友達になってくれる? ……わたし、あなたとお友達になりたいの!」

(うーん……。いきなり『友達になって!』じゃ、ちょっと強引だったかなぁ?)

 ユーリさんのほうを見てみると、やっぱり、というべきなのか……、大きな目をさらに見開き、驚きを隠せないといったような顔をしている。

(やばっ……)

 でも、ユーリさんがそんな顔をみせたのは一瞬のこと。
 すぐに彼女は、ふわりとほほえみ、

「いいよ」

 と答えてくれた。
 その微笑はわたしに、「『花が咲いたみたい』って、こういう笑顔のことをいうんだろうな」と実感させるほど、きれいなものだった。

(なんかわたし、この3日で、おもいっきりポエマーになってる……)

「よかったぁー! わたし、沢木莉子! 瑛芯えいしん学園高等部の一年生。よろしくね!」

「私は、この学校の1年生の清原由利きよはら ゆうり。……よろしく――」

「それじゃあ、ユーリさん。わたしはこれで!」

 ペコっと頭をさげてから、その場を走り去った。
 ――またしても、“変なヤツ”って印象づけちゃったかも……。
 でも友達になるOKはもらえたんだから、とりあえずラッキー!

(だからって、なにも走り去ることなかったのよね。ユーリさんも電車通学なら駅まで一緒に帰れたんだし……。あ、明日、そのこと聞いてみようかな?)

 わたしって、つくづく懲りない性格なのかもしれない。
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