3 / 27
1章 出会いは突然に!
1-03
しおりを挟む
「あ……あのっ、ごめんなさいっ! 今の言葉は、なんでもなくて……」
わたしの謝罪の言葉に、男の子はキョトンとしている。
どうやら怒っては、いないみたい。
わたしは少しだけホッとして、言葉を続けた。
「というか……、3秒だけ目をとじて、最初に目に入った人が『男だったらアルバムを買わない』『女だったらアルバムを買う』って決めていて……。マイ・ジンクスって、やつで……。だけど、いざ買わないって決めたら、急に買いたくなっちゃって……」
あはははは……と、力なく笑ってみせる。
(『笑ってごまかすのは日本人の悪い癖よね』なーんて、いつもは思ってるクセに、いざ、自分がヤバくなると、こうして楽しくもないのに笑ってるんだから、わたしって生粋の日本人よね……)
そんなことを思いながら、その男の子(すっごい美形!)のほうに顔を向けると――。
彼は体を震わせて、懸命に笑いをこらえようとしていた。
ゆるくウェーブのかかったショートカットの黒髪が小刻みに揺れている。
……と、その時、彼のシャツのエリ元で何かが“キラッ”と、光った。
よくみると、銀色の三角形の中に「K」と刻まれていて、学校の校章みたい。
(そういえば、この近くに私服の高校があるって聞いたことがある――。この子、そこの生徒なのかな?)
そう思った瞬間、男の子はこれ以上我慢できないといった感じで吹き出してしまった。
彼の楽しそうな笑い声が周囲に響く。
(怒られるのもイヤだけど、おもしろがられても困るー!)
わたしはどうしたらいいのか、わからなくなってしまいオロオロしてしまった。
そんなわたしに気がついた彼は、ぴたりと笑いを止めた。
「ごめん……。笑いすぎた――」
彼の口からこぼれ落ちたのは、きれいなボーイソプラノだった。
澄んだ水みたいに透明で、でも、心に響いてくる独特の声――。
(うっ……。この男の子――声まで、すっごくキレイ……)
「きみって、おもしろいね……」
彼はそう言い残すと、わたしに背を向け、別のコーナーにむかうために歩き始めてしまった。
――この子とは、もう二度と会えないのかもしれない……。
そう思うと、わたしは目には見えない“何か”にひっぱられるみたいに、彼の姿を求めていた。
男の子は軽やかに店内を歩いている。身にまとう淡いブルーのデニムシャツが、彼の繊細な雰囲気にとてもよく似合っていた。
(あ! 今、髪をかきあげた! ……なにげない手の動きも、とっても優雅――)
CDを買おうか迷っていたことはすっかり頭の片隅に追いやり、めいっぱいうっとりしていると、京花のカン高い声が響いてきた。
「莉子~! CD買わないんなら、もう行こうよ」
「……うん。わかった――」
あーあ……。もう少しだけ、あの子のこと見ていたかったのになぁ。
あんなにキレイな男の子に会ったのは、はじめて。
また会えたらいいな――。
わたしの謝罪の言葉に、男の子はキョトンとしている。
どうやら怒っては、いないみたい。
わたしは少しだけホッとして、言葉を続けた。
「というか……、3秒だけ目をとじて、最初に目に入った人が『男だったらアルバムを買わない』『女だったらアルバムを買う』って決めていて……。マイ・ジンクスって、やつで……。だけど、いざ買わないって決めたら、急に買いたくなっちゃって……」
あはははは……と、力なく笑ってみせる。
(『笑ってごまかすのは日本人の悪い癖よね』なーんて、いつもは思ってるクセに、いざ、自分がヤバくなると、こうして楽しくもないのに笑ってるんだから、わたしって生粋の日本人よね……)
そんなことを思いながら、その男の子(すっごい美形!)のほうに顔を向けると――。
彼は体を震わせて、懸命に笑いをこらえようとしていた。
ゆるくウェーブのかかったショートカットの黒髪が小刻みに揺れている。
……と、その時、彼のシャツのエリ元で何かが“キラッ”と、光った。
よくみると、銀色の三角形の中に「K」と刻まれていて、学校の校章みたい。
(そういえば、この近くに私服の高校があるって聞いたことがある――。この子、そこの生徒なのかな?)
そう思った瞬間、男の子はこれ以上我慢できないといった感じで吹き出してしまった。
彼の楽しそうな笑い声が周囲に響く。
(怒られるのもイヤだけど、おもしろがられても困るー!)
わたしはどうしたらいいのか、わからなくなってしまいオロオロしてしまった。
そんなわたしに気がついた彼は、ぴたりと笑いを止めた。
「ごめん……。笑いすぎた――」
彼の口からこぼれ落ちたのは、きれいなボーイソプラノだった。
澄んだ水みたいに透明で、でも、心に響いてくる独特の声――。
(うっ……。この男の子――声まで、すっごくキレイ……)
「きみって、おもしろいね……」
彼はそう言い残すと、わたしに背を向け、別のコーナーにむかうために歩き始めてしまった。
――この子とは、もう二度と会えないのかもしれない……。
そう思うと、わたしは目には見えない“何か”にひっぱられるみたいに、彼の姿を求めていた。
男の子は軽やかに店内を歩いている。身にまとう淡いブルーのデニムシャツが、彼の繊細な雰囲気にとてもよく似合っていた。
(あ! 今、髪をかきあげた! ……なにげない手の動きも、とっても優雅――)
CDを買おうか迷っていたことはすっかり頭の片隅に追いやり、めいっぱいうっとりしていると、京花のカン高い声が響いてきた。
「莉子~! CD買わないんなら、もう行こうよ」
「……うん。わかった――」
あーあ……。もう少しだけ、あの子のこと見ていたかったのになぁ。
あんなにキレイな男の子に会ったのは、はじめて。
また会えたらいいな――。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる