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10話(1)【室町和風ファンタジー / あらすじ動画あり】
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■お忙しい方のためのあらすじ動画はこちら↓
https://youtu.be/JhmJvv-Z5jI
■他、作品のあらすじ動画
『【和風ファンタジー小説 あらすじ】帝都浅草探しモノ屋~浅草あきんど、妖怪でもなんでも探します~』
-ショート(1分)
https://youtu.be/AE5HQr2mx94
-完全版(3分)
https://youtu.be/dJ6__uR1REU
ーーーーーーーーーーー
「鬼夜叉っ! お待たせ! あら、変な顔してどうしたの?」
御所を出たところで、セイが後ろから突進してきた。二人で、家路を辿る。
「何でもないよ。何度も言うけど、こうゆう顔なの。そんなことより、セイはいつも御所で何をやってるの?」
「もちろん、調査よ。調査」
セイは、誇らしそうに腰に手を当てた。
「調査って、何の?」
「あの女面のことに決まってるでしょ! あなたが前に奥御所で見たっていう!」
セイが人さし指をたてて、ズズイと身を寄せてくる。
「調べてみるとね、色々目撃談も多くて。何でも奉公人の何人かが、奥御殿で女面とおぼしき妙な人物を目撃してるの。そのせいで辞める人も多いらしいわ」
「え? ってことは、あの勧進能(かんじんのう)で見た鬼とは、違うってこと? あれは誰の目にも見えてなかったみたいだけど」
「さあ、まだよくわからないわ。もっと調べてみないことには」
「ふうん。大樹(たいき)様や管領(かんりょう)様は、南朝がこっち側を攪乱(かくらん)させるために放った間者(かんじゃ)だって疑っているらしいけど……」
鬼夜叉は降参と、両手を上げた。
「政治の話は、僕には関係ないや。軍記物語とかは好きなんだけどね。あーぁ、なんか最近ずっと御所仕えだから、物語読めてないなあ。そろそろ引きこもりたい」
「どうしたの、随分投げやりね? 前は女面を捕まえるために、自分から動いてたのに」
「……別に、女面が何であろうと、僕はただ清めの舞いだけ舞ってればいいわけだし」
「ふうん」
と、セイが意味深に笑った。
「もしかして、鬼夜叉。あの将軍と何かあった訳?」
「な、何にもないよ。――それより、セイは何で女面のこと調べてるのさ? セイの方が関係ないでしょ?」
「う~ん」
セイは、柔らかな顎に指を当てた。
「何でかしらね。どうも、あの女面、気になるっていうか……普通の鬼とも人間とも違う、独特な雰囲気を感じるのよ。あれはまるで……」
セイはしばらく宙を見やったあと、肩をすくめた。
「わからない。私は瘴気に弱い質(たち)だから、あの女面の瘴気が残っているところにはあんまり近づけなくて。正確なことは何も言えないわ」
「え? セイって瘴気に弱いの?」
初めて聞いた。
思えば、自分はセイについては何も知らない。
どこで生まれ、育ったのか。そして、なぜここにいるのか。
いくら自分が申楽にしか興味がないとはいえ、唯一の友達について、ここまで無知だったとは。
(……セイって一体、何なのだろうな)
本人に言わせれば鬼らしいが、どうもしっくり来ない。
セイは、鬼夜叉が出会ってきたどの鬼とも違う。
普通、鬼は赤や青の肌をしていたり、目が一つしかなかったり、いかめしい巨大な体格を持っていたり――とにかく一目で人間じゃないとわかるものだ。
だがセイはそうじゃない。髪や目の色以外を除けば、ただの少女――しかも、かなり可愛らしい少女だ。
申楽以外はどうでもいい自分が、セイと友達となったのは、その容貌に引きつけられたところが大きい。
美しいと、異形のモノを見て初めて思ったのだ。
これが一体、どこからくる気持ちなのか、わからなかった。
(もしかしたら、物語になら書いてあるのだろうか……)
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