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7話(3)【室町和風ファンタジー / あらすじ動画あり】
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■お忙しい方のためのあらすじ動画はこちら↓
https://youtu.be/JhmJvv-Z5jI
■他、作品のあらすじ動画
『【和風ファンタジー小説 あらすじ】帝都浅草探しモノ屋~浅草あきんど、妖怪でもなんでも探します~』
-ショート(1分)
https://youtu.be/AE5HQr2mx94
-完全版(3分)
https://youtu.be/dJ6__uR1REU
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舞うものは、もちろん千歳(ちとせ)。
どうやら自分は前に失敗したのが、相当、悔しかったらしい。今こそ、挽回の機会だとばかりに扇を構える。
〽 絶えずとうたり 絶えずとうたり
左右の腕をふり、顔の前へ。足を二三度強く踏みならす。片袖を腕にからませ、くるりと回りながら四方を巡る。
そうしていると、義満に感じたささいな苛立ちなど、簡単に吹き飛んだ。
やっぱり、舞うのは楽しい。
舞えるならば、自分はどこだって構わない。
たとえ稽古場でも、地獄でも、気まぐれで傲慢な将軍の屋敷でも。
舞い終わり顔を上げると、義満と目がかち合う。その瞳には茶目っ気といってもいいほどの光が宿っていた。
「お前は顔に似合わず、相当な負けず嫌いらしいな。わざわざ失敗した曲を選ぶとは」
「は……?」
相手の顔をまじまじと見つめる。
不思議なことに、義満の顔には色味が戻り、嫌味と思えるほど端正な笑みが浮かんでいた。
だが、今はそんなことよりも──。
「では、まさか……気がついて……?」
「舞台中によそ見していたことか? 当たり前だ。気づかない方がおかしい」
いや、そんなことはない。事実、父以外の団員たちはまったく気がついていなかった。
(やっぱり、この人は本物なんだ……)
痛感せざるをえなかった。
──義満には、嘘も誤魔化しも通用しない。
優美な見た目に惑わされがちだが、義満の鋭い目は獅子のそれだ。
何もかもを見通してしまう。
ぞくりと、何かが身体の奥底が震えた。
(何だ、これ……)
「で、では、あの車の時も……僕が、誰だか知って……?」
鬼夜叉はふつふつと鳴る鼓動をいなしながら、義満に尋ねた。
「もちろんだ。あんな芸当ができるのは、猿の子か芸人だけだ。なんだ、気づかれていないとでも思ったのか?」
クククという笑い声に、一瞬にして身体が火照り、一瞬にして氷点下まで冷えた。
「ほ、本当にっ、すみませんでしたっ……!」
無駄だと思いながらも、頭を下げる。
「大樹様の車にぶつかったのは僕です! 黙っていて、すみませんっ! どんな沙汰でも受けますっ! だから一座だけはっ──」
「は? 何を言っている?」
義満と高橋殿が顔を見合わせた。
「え、だって……僕をここに呼んだのは、それを確かめるためなのでは……?」
義満が大きなため息をついた。
「阿呆か。将軍家がたかが車一つ壊されたくらいで、目くじらをたてる吝嗇(けち)だと思っていたのか? ……いや、ちょっと待てよ。仮に将軍家が壊れた車に乗っていると下々の者に知られれば、ただでさえ南北朝の争乱で失墜した将軍の威厳も地に落ちる。そんなことになれば、そなたにもそれ相応の処罰が──」
「大樹様。鬼夜叉殿をからかうのも、そこらへんにしておいて」
「本当のことだろう? まぁ、いい。高橋殿。今日は下がっていいぞ」
予想していたのか、高橋殿はさっと流れるように立ち上がった。そして、鬼夜叉の側に来て、こっそり囁く。
「いい? 大樹様に何もかも、身を委ねておけば大丈夫だから」
「えっ、行ってしまうんですか!?」
いきなり、義満と二人っきりなんてごめんだ。表情で必死に訴えるが、高橋殿はくすりと笑うだけだった。
「ごめんなさいね。大樹様の命令ですから。それに、私もちょっと気分が優れなくて」
高橋殿は額に手を当てると、ふらりとよろめく真似をした。イタズラっ気たっぷりの視線が義満のと絡む。
「では。ごめん遊ばせ。これ以上ふざけると、大樹様に怒られてしまいますわ」
おほほほ、と笑って、高橋殿は軽やかに出ていってしまった。
しんと、沈黙が流れる。当たり前だが今、部屋には自分と義満しかいないのだ。
(ど、どうしよう!?)
内心、かなり焦る。
そもそも沙汰でなければ、なぜ義満は自分をここに呼んだのだろう?
──いい? 大樹様に何もかも、身を委ねておけば大丈夫だから
高橋殿の言葉を思い出して、身体がカッと熱くなった。
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