17 / 64
6話(2)【室町和風ファンタジー / あらすじ動画あり】
しおりを挟むーーーーーーーーーーー
■お忙しい方のためのあらすじ動画はこちら↓
https://youtu.be/JhmJvv-Z5jI
■他、作品のあらすじ動画
『【和風ファンタジー小説 あらすじ】帝都浅草探しモノ屋~浅草あきんど、妖怪でもなんでも探します~』
-ショート(1分)
https://youtu.be/AE5HQr2mx94
-完全版(3分)
https://youtu.be/dJ6__uR1REU
ーーーーーーーーーーー
義満は、一段高くなった御座所の前に立っていた。
左右の襟の色が違う赤黒の着物に、金襴の大紋があしらわれた袴。上からは女芸人でさえも着ないような派手な打ち掛けをゆるくはおり、ざんばら切りの髪は後頭部でゆるくまとめてある。もちろん、烏帽子はかぶっていない。
「大樹様! 何ていう恰好を! いくら公式の謁見ではないとはいえ……!」
控えていた頼之(よりゆき)が悲鳴に近い声を上げた。
「別にいいだろう。たかが芸人の前なんだ。衣冠は堅苦しくてかなわん」
義満はポキリポキリと首の骨を鳴らすと、結城座に目を向けた。
「そうゆうお前たちは地味だな。獅子のかぶりものはどうした? 唐織りの着物は? 蝶の羽のつくりものは?」
「大樹様……あれは舞台の衣装でして……それに、うちのような貧乏座には唐織りの着物など……」
清次は冷や汗をかきながら、頭を下げた。
「ふっ、そうだったな」
義満はドカリと座ると、行儀悪く立てた膝に腕をおいた。
「では、今回の褒美として、唐の反物(たんもの)を贈ろう。好きなものを持って帰るといい」
横手の襖が開き、山型に並べられた豪華な反物の数々が現れる。
「笛や大太鼓、小太鼓も一流のものを作らせよう。余は申楽が気に入った。金は惜しまぬ。何でも、欲しいものを言うといい」
──まるで、バサラだ。
その場にいた一同が、思った。
すべてを打ち砕く金剛石を語源にしたバサラは、南北朝時代特有の風潮を指す言葉だ。特にバサラ大名などというと、派手で華美な格好を好み、従来の形式や秩序を無視して奔放に振る舞う者たちとして知られている。
(やっぱり……現実なんてこんなものか……光源氏は本の中にしか存在しないんだ……)
鬼夜叉の中で、「光る君」のイメージがガラガラと音をたてて崩れていった。
優美としか見えていなかった義満の容貌の方も、よくよく見ると目元や眉などに武士ならではの峻厳さと鋭さが垣間見えた。
さすがはかつて『智覚普明国師語録』に、
容貌端麗ニシテ威アリ慈アリ 恰モ鳳凰児ノマサニ羽儀ヲ整ウルゴトク 獅子児ノ咆哮セント欲スルガゴトシ
と称されただけはある。
義満はその年にして、既に王者の風格を備えていた。
間近で見る黄金の〝気〟も、眩しいくらいに燃え上がっている。鬼夜叉は今にも、義満の背後から、金色の鳳凰か獅子が飛び出してくるんじゃないかと錯覚した。
「どうした、そんなマヌケな顔をして? 何か足りないものがあったか? あるなら遠慮せずに言え」
義満は、ポカンとした顔をしている一同を不思議そうに眺める。
「失礼ですが、大樹様」
その時、清次が沈黙をやぶり、前にいざり出た。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ナマズの器
螢宮よう
キャラ文芸
時は、多種多様な文化が溶け合いはじめた時代の赤い髪の少女の物語。
不遇な赤い髪の女の子が過去、神様、因縁に巻き込まれながらも前向きに頑張り大好きな人たちを守ろうと奔走する和風ファンタジー。
我が家の家庭内順位は姫、犬、おっさんの順の様だがおかしい俺は家主だぞそんなの絶対に認めないからそんな目で俺を見るな
ミドリ
キャラ文芸
【奨励賞受賞作品です】
少し昔の下北沢を舞台に繰り広げられるおっさんが妖の闘争に巻き込まれる現代ファンタジー。
次々と増える居候におっさんの財布はいつまで耐えられるのか。
姫様に喋る犬、白蛇にイケメンまで来てしまって部屋はもうぎゅうぎゅう。
笑いあり涙ありのほのぼの時折ドキドキ溺愛ストーリー。ただのおっさん、三種の神器を手にバトルだって体に鞭打って頑張ります。
なろう・ノベプラ・カクヨムにて掲載中
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
式鬼のはくは格下を蹴散らす
森羅秋
キャラ文芸
陰陽師と式鬼がタッグを組んだバトル対決。レベルの差がありすぎて大丈夫じゃないよね挑戦者。バトルを通して絆を深めるタイプのおはなしですが、カテゴリタイプとちょっとズレてるかな!っていう事に気づいたのは投稿後でした。それでも宜しければぜひに。
時は現代日本。生活の中に妖怪やあやかしや妖魔が蔓延り人々を影から脅かしていた。
陰陽師の末裔『鷹尾』は、鬼の末裔『魄』を従え、妖魔を倒す生業をしている。
とある日、鷹尾は分家であり従妹の雪絵から決闘を申し込まれた。
勝者が本家となり式鬼を得るための決闘、すなわち下剋上である。
この度は陰陽師ではなく式鬼の決闘にしようと提案され、鷹尾は承諾した。
分家の下剋上を阻止するため、魄は決闘に挑むことになる。
裏吉原あやかし語り
石田空
キャラ文芸
「堀の向こうには裏吉原があり、そこでは苦界の苦しみはないよ」
吉原に売られ、顔の火傷が原因で年季が明けるまで下働きとしてこき使われている音羽は、火事の日、遊女たちの噂になっている裏吉原に行けると信じて、堀に飛び込んだ。
そこで待っていたのは、人間のいない裏吉原。ここを出るためにはどのみち徳を積まないと出られないというあやかしだけの街だった。
「極楽浄土にそんな簡単に行けたら苦労はしないさね。あたしたちができるのは、ひとの苦しみを分かつことだけさ」
自称魔女の柊野に拾われた音羽は、裏吉原のひとびとの悩みを分かつ手伝いをはじめることになる。
*カクヨム、エブリスタ、pixivにも掲載しております。
仲町通りのアトリエ書房 -水彩絵師と白うさぎ付き-
橘花やよい
キャラ文芸
スランプ中の絵描き・絵莉が引っ越してきたのは、喋る白うさぎのいる長野の書店「兎ノ書房」。
心を癒し、夢と向き合い、人と繋がる、じんわりする物語。
pixivで連載していた小説を改稿して更新しています。
「第7回ほっこり・じんわり大賞」大賞をいただきました。
パーフェクトアンドロイド
ことは
キャラ文芸
アンドロイドが通うレアリティ学園。この学園の生徒たちは、インフィニティブレイン社の実験的試みによって開発されたアンドロイドだ。
だが俺、伏木真人(ふしぎまひと)は、この学園のアンドロイドたちとは決定的に違う。
俺はインフィニティブレイン社との契約で、モニターとしてこの学園に入学した。他の生徒たちを観察し、定期的に校長に報告することになっている。
レアリティ学園の新入生は100名。
そのうちアンドロイドは99名。
つまり俺は、生身の人間だ。
▶︎credit
表紙イラスト おーい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる