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3話(4)【室町和風ファンタジー / あらすじ動画あり】
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一時的に週4回の更新にさせていただきます。
■お忙しい方のためのあらすじ動画はこちら↓
https://youtu.be/JhmJvv-Z5jI
■他、作品のあらすじ動画
『【和風ファンタジー小説 あらすじ】帝都浅草探しモノ屋~浅草あきんど、妖怪でもなんでも探します~』
-ショート(1分)
https://youtu.be/AE5HQr2mx94
-完全版(3分)
https://youtu.be/dJ6__uR1REU
ーーーーーーーーーーー
「〝気〟……? 何、その〝気〟って」
てっきり自分の妄想と思っていたが、そうではないらしい。実際に義満の身体からは、はっきりと金色の焔のようなものがあがっていた。
「珍しいわよ。あそこまで大きな〝気〟を持っているのは」
「だから何、その〝気〟っていうのは?」
「う~ん。簡単に言うと、生き物が本来もって生まれてくる生命力や運、覇気や雰囲気などをひっくるめて言ったものね。それがあんなに強いなんて、ただ者じゃないわよ、あの将軍。昔からああいう〝気〟を持った者は、歴史的にも大きなことをするって言われているし。でも、残念。姿のいい男って、信用ならないのよね。あたしだったら、あっちの方が――」
セイが、桟敷で義満の後ろ隣に控えている武将を指さした。
管領(かんれい)・細川武州頼之(ほそかわぶしゅうよりゆき)。
管領とは鎌倉時代の執事と同等の役職で、将軍を補佐し、政務を統轄する者をさす。
中でも細川頼之は、義満が十一才で将軍職を継ぎ、十五才で執務に携わるまでの間、全ての政務を代行していた幕府の重鎮だ。
浅黒い顔。大柄な体格。見た目は武士そのものだが、幕内においては公正明大な知性派として有名らしい。
さらに、もう一人。義満の反対隣には、先ほどの女性が座っていた。あまたの麗しい女房たちを従え、一番手前で義満と話しているところを見ると、相当親しい間柄らしい。
鬼夜叉は思わずため息をついた。
見目麗しい女房と稚児。有能な武士。そして、光輝く若き将軍。これが物語でなくて、何になろう?
「はぁはぁ、たまらん。僕は絵物語の世界に入ってしまったに違いない……」
「ちょっと落ち着きなさいよ。あたしみたいになっているわよ」
「あれ、自覚あったんだ。……ん?」
ふと、あるものに気づいた。
今まで義満の〝気〟の眩しさで気づかなかったが、彼の身体の周りには〝気〟の他に、どす黒い靄(もや)みたいなものが漂っていた。靄は義満に近づいたり遠ざかったりしながらも、決して離れようとしない。
「……セイ、あれは――」
気になって聞こうとした時、
「鬼夜叉っ! またこんなところでぼおっとして! 早く準備しないとっ!」
狂言方の子方、大蔵が来て、楽屋へ引っ張って行かれた。
舞台裏にある楽屋では、多くの座員たちが準備に追われていた。衣装に着替えたり、楽器の確認をしたり……。
ムッとする熱気とともに、ピリピリとした緊張感が伝わってくる。
小さい頃からこの空気に慣れている鬼夜叉でも、今日ばかりは落ち着かなかった。
(そうか。いよいよ、なんだ)
結城座の命運をかけた舞台が、今始まる。
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