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3話(1)【室町和風ファンタジー / あらすじ動画あり】
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一時的に週4回の更新にさせていただきます。
■お忙しい方のためのあらすじ動画はこちら↓
https://youtu.be/JhmJvv-Z5jI
■他、作品のあらすじ動画
『【和風ファンタジー小説 あらすじ】帝都浅草探しモノ屋~浅草あきんど、妖怪でもなんでも探します~』
-ショート(1分)
https://youtu.be/AE5HQr2mx94
-完全版(3分)
https://youtu.be/dJ6__uR1REU
ーーーーーーーーーーー
「鬼夜叉! 鬼夜叉! ちょっと聞いてる!?」
ハッと顔を上げると、セイが木の枝から逆さにぶらさがって、顔を覗き込んできていた。
「まったく、何、ぼんやりしてるのよ。今日は、こっちの宴に来るかって聞いているの!」
「え……あぁ。もちろん、行くよ」
知り合ってから、数年。今やセイは、結城座の一員(誰も見えないが)として、一緒に旅をしていた。
そして、ここら紀州の森一帯はセイの地元(?)に近いらしく、彼女は毎晩、なじみ者たちと宴を開いていた。参加者はもちろん、妖怪や鬼など、異形のモノたちだ。
最近になって鬼夜叉は、セイについて毎晩そこに通っていた。
「珍しいわね。人間の宴にも参加しないあなたが。もしかして、あたしたちに興味を持ったとか? 昔は『美しくない』とか言って、見ようともしなかったのに」
「そんなんじゃない。今も興味はないよ。僕が興味あるのは申楽と物語だけだから」
鬼夜叉は、神妙な顔でひとさし指をたてた。
「ただ最近、気がついたんだ。大和申楽の基本は、物真似。男女、老若、貴賤、全てを演じられなければいけない。中にはもちろん神や精霊、天人など人外の役もある。その点、宴に来る妖たちは本物だから、こっちが酒の肴に舞って、ちょっと外れたことをすると、『ダメだ。それじゃおおげさすぎる』とか、『妖怪は絶対に、そんな動きはしない』とか、指摘してくれるから助かっちゃって」
「つまり、申楽の稽古のために通っているってこと? 中には人間を喰らう奴もいるのに?」
「だからセイと一緒に来てるんだろう? まさか見殺しにはするまい?」
「はぁ……ほんと、申楽のことになると恐ろしいくらい図太いんだから。まぁ、あたしはあなたのそんなところが気に入ってるんだけどね。気がおかしくなるくらい、何かに情熱的になるのって……はぁ、ステキ。ぞくぞくしちゃう」
セイは、うっとりと頬に手をかけた。無垢な少女の顔には、不釣り合いの言葉だ。
「僕も、セイのそうゆうところが気に入ってるよ。物狂いの女性を研究するにはぴったりだ」
「まったく、あなたにとっては人も妖も、等しく研究対象なのね」
「何言ってるの。セイは特別だよ。研究対象ってだけじゃない」
「はいはい、そうゆうことにしておいてあげるわ」
セイは大げさに肩を竦めた。
一時的に週4回の更新にさせていただきます。
■お忙しい方のためのあらすじ動画はこちら↓
https://youtu.be/JhmJvv-Z5jI
■他、作品のあらすじ動画
『【和風ファンタジー小説 あらすじ】帝都浅草探しモノ屋~浅草あきんど、妖怪でもなんでも探します~』
-ショート(1分)
https://youtu.be/AE5HQr2mx94
-完全版(3分)
https://youtu.be/dJ6__uR1REU
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「鬼夜叉! 鬼夜叉! ちょっと聞いてる!?」
ハッと顔を上げると、セイが木の枝から逆さにぶらさがって、顔を覗き込んできていた。
「まったく、何、ぼんやりしてるのよ。今日は、こっちの宴に来るかって聞いているの!」
「え……あぁ。もちろん、行くよ」
知り合ってから、数年。今やセイは、結城座の一員(誰も見えないが)として、一緒に旅をしていた。
そして、ここら紀州の森一帯はセイの地元(?)に近いらしく、彼女は毎晩、なじみ者たちと宴を開いていた。参加者はもちろん、妖怪や鬼など、異形のモノたちだ。
最近になって鬼夜叉は、セイについて毎晩そこに通っていた。
「珍しいわね。人間の宴にも参加しないあなたが。もしかして、あたしたちに興味を持ったとか? 昔は『美しくない』とか言って、見ようともしなかったのに」
「そんなんじゃない。今も興味はないよ。僕が興味あるのは申楽と物語だけだから」
鬼夜叉は、神妙な顔でひとさし指をたてた。
「ただ最近、気がついたんだ。大和申楽の基本は、物真似。男女、老若、貴賤、全てを演じられなければいけない。中にはもちろん神や精霊、天人など人外の役もある。その点、宴に来る妖たちは本物だから、こっちが酒の肴に舞って、ちょっと外れたことをすると、『ダメだ。それじゃおおげさすぎる』とか、『妖怪は絶対に、そんな動きはしない』とか、指摘してくれるから助かっちゃって」
「つまり、申楽の稽古のために通っているってこと? 中には人間を喰らう奴もいるのに?」
「だからセイと一緒に来てるんだろう? まさか見殺しにはするまい?」
「はぁ……ほんと、申楽のことになると恐ろしいくらい図太いんだから。まぁ、あたしはあなたのそんなところが気に入ってるんだけどね。気がおかしくなるくらい、何かに情熱的になるのって……はぁ、ステキ。ぞくぞくしちゃう」
セイは、うっとりと頬に手をかけた。無垢な少女の顔には、不釣り合いの言葉だ。
「僕も、セイのそうゆうところが気に入ってるよ。物狂いの女性を研究するにはぴったりだ」
「まったく、あなたにとっては人も妖も、等しく研究対象なのね」
「何言ってるの。セイは特別だよ。研究対象ってだけじゃない」
「はいはい、そうゆうことにしておいてあげるわ」
セイは大げさに肩を竦めた。
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