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第九話 三
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雨が屋根を殴る音と鼻をすする音だけが響く。ぶかぶかの着物に着替えた百位は、女帝二位の自室で椅子に腰かけていた。びちゃびちゃになった着物を干してくれているのは姉さんな女帝十位、部屋の入口を警戒するように刀を抱きかかえたまま壁にもたれるのは赤髪の女帝九位、そして、湯気が立つお茶を注いでいるのは威圧感のある女帝二位だった。
「なにしてんだかな、おれたち」
沈黙を破ったのは、九位の溜息混じりの声だ。
「なにが?」
十位が九位を見やる。
「結婚だ結婚だ言いながらよ、あやかしに襲われるわ、女帝は裏切るわ、おれは、この帝都の治安を維持する仕事を任されてんのに、なんもできねぇ、むしろ、足手まとい。戦場と帝都、なんでこんなに差があるのか、わかんね」
「あら? あなた、結婚なんて口にしたことあったかしら?」
「あ? おれより弱い男と結婚する気が無いだけだ。あやかし頼りじゃなくてよ、自分の手で戦えて、おれより強い男以外、興味ねーよ」
「でも、あやかしに頼る帝位がいたからあなたは助かったのに」
「うるせ」
けっと威嚇した九位を、十位が鼻で笑う。二位は「強がりね」とぼそり呟く。「なんか言ったか」と声を荒げた九位を、百位は見つめていた。
「なに見てんだ」
つり上がった目に、見返される。
「……忌み子って、なに?」
ぴくりと頬を引きつらせた九位は、居心地悪そうに顔を逸らす。
帝位たちは言っていた。九十九位のことを、忌み子と。九位と同じと。
「忌み子はね、幼いころ、あやかしに憑かれて後遺症が残った人のことよ」
問いに答えてくれたのは二位だった。二位は椅子に腰かけて、湿った群青色の髪を布で拭っている。目線は長すぎる髪に置かれたまま、言葉が続く。
「十年前、あやかしが門から漏れた事故があったわ。原因は定かではないけど、人の世に一瞬だけ霊力が満ちたの。そのとき、門をすり抜けた霊のあやかしが、各地に散らばった」
押し黙った九位は、刀と自分の体を抱きしめている。二位はちらりと九位に視線を飛ばすと、少し声量を落とした。
「散らばったあやかしは、人の世で生きるため、霊力を持つ人間を求めた。狙われたのが、幼い子供たち。特に、まだ人格形成途中の子供は、霊にとって乗っ取りやすかった。乗っ取る、と言うよりは、あやかしにとって都合の良い性格に育てるほうが正しいわね。子供の心を惑わし、生き方を操る。本人が異変に気づいても、幼い子供の戯言だと、普通の大人は耳を貸さない。このままあやかしに憑かれた子供が成長すれば、将来、帝都の敵になる。そこで宮殿は、討伐隊を編成し、各地を捜索した」
その討伐隊とは、黒い甲冑で脇差を装備した兵士のことだろうか。
「討伐隊は、憑かれた子供を探した。浸食が浅ければ霊を弾いて終わり。でも、浸食が深ければ、無理やり霊を引き剥がすしかない。ただ、子供の霊力はすごく不安定なの。無理やり繋がったものを引き千切ることになるから、子供に悪影響だった。専門家が対応したけど、それでも運が良ければ無傷、運が悪ければ死ぬ。博打みたいなものだったわ。そして、死ななくても後遺症が残ることがあった」
二位は、茶が注がれた湯呑を啜った。ふう、と一息入る。
「後遺症は、いろいろな形で現れた。記憶喪失、感情の喪失、身体の麻痺、いろいろよ。ただね、稀に、利益になるような後遺症が現れた子供がいたの。特定の分野に突然秀でたり、特殊な能力に目覚めたりする子供がいた。本来、人間には成せない技でも、霊力の補助があれば成すことができる。利益になるような後遺症はね、要は霊力を操れるようになったと言うこと。霊力は、不思議な力がある。それを知覚し、操れるようになる。そんな子を、宮殿は忌み子と名付け、強制的に保護を始めた」
そこまで語られたとき、九位がぎちぎちと歯を食いしばり始めた。堪えているのは、なんとなく、怒りだと察した。
「でもね、忌み子はほとんど生き残れなかった。霊力はね、消耗品なの。使えば無くなって終わり。霊力を持って生まれた人間は、霊力が朽ちれば、死ぬ。あやかしみたいに。ほとんどの子供は、霊力の消費を制御できなくて窒息死した。生き残ったのは、九位だけ。そもそもね、女帝一桁に入れる時点で霊力量は計り知れないの。だから九位は、霊力が尽きる前に制御する術を覚えた。この世に霊力を継ぐ人間は、実は多い。でもほとんどの人間は、女帝の位を与えれば、百万単位の位になるくらいに霊力が少ない。もし、九位が忌み子にならなければ、女帝二位だったのは九位だったかもね。女帝の位は、帝都に来る直前の霊力量で決まる。九位は、いくつか消費していたから」
くだらね、そう吐き捨てた九位に、十位が湯呑を差し出す。九位は唇を尖らしながらも湯呑を受け取り、茶を啜る。尖っていた表情が丸くなった。
「憑かれた子供たちはたくさんいた。すべて探すのに二年かかった。聞いただけの話だけど、一年以上、あやかしに憑かれてしまった子供は、すでにあやかしに乗っ取られている子が多かった。もう救えなかった。討伐隊は、途中から子供の処刑に対応を切り替えた。抵抗する親ごと、内密に、ね」
惨い話を語り終えた二位は、自分の髪を拭う手を止めていた。鋭く細められた目は、髪を眺めているようで、どこか別の世界に向けられている。
生き残った忌み子は九位だけ。九十九位は、どんな人生を歩んできたのだろう。聞けば、教えてくれるだろうか。
「ねえ、あなた」
二位の声に誰も反応しなかった。だから顔を上げてみれば、二位がじっと見つめてきていた。呼びかけたのは、自分みたいだ。
「……なに」
「あなた、五位様のこと、どう思っているの?」
「……なんでよ」
「なんでって、恋話よ」
「……は?」
澄ました顔と、金ピカの神輿が脳裏に浮かぶ。
「五位様と喧嘩でもしたの?」
ついさっきのやり取りを思い出す。
喧嘩、したのか、わからない。
「なにがあったの?」
「……なにをしたらいいのかがわかんない」
勝手に口が動く。二位は静かに頷いてくれた。
「ほんとはね、家に帰りたいの。おばあちゃんが心配だから。でも、帰っても意味が無いと思うの。それで解決することはなにもない。あやかしのことも、ククのことも、いま逃げたら絶対に引き返せなくなる。でも、なにを信じたらいいのかがわかんない。怖い。だから、なにをしたらいいか聞こうと思ったの。でも、そしたら、家に帰れって言われて。それは違うって思った。でも、そうすべきだって言い切ってくれたら、わたしね、わたし……」
道が見えない。霧がかかっている。だから、教えてほしかった。そうしたら――。
「なら、もし、五位様が家に帰れと言い切ったとして、あなたはそれで良いの? もう二度と、五位様には会えなくなるわ」
「会えない……」
「当たり前でしょ? 女帝を退官すれば帝都には入れなくなる。五位様もいずれ妻を見繕う。それでいいの?」
なにかがぐるぐると胸と腹の奥底を行ったり来たりする。胸焼けのようにむかむかする。神輿に腰かける知らない女を想像するだけで、目の奥がうずうずした。
「あなたのこと、よく知らないから無責任なことは言わないわ。だから、一つだけ助言してあげる。なにをすべきかわからない。それは仕方ないことよ。いろんなことが同時に起きたから。だからね、考え方を変えてみたら? すべきことを考えるのではなく、やりたくないことを考える。我儘でもいい。一杯になった頭に、新しい選択肢は思いつかないわ。だから、不要な選択肢を削りなさい。やりたくない理由に、もしかしたら、あなたの気持ちがあるかもね」
やりたくないことってなんだろうと自問自答が駆け巡る。
――このまま、ククと別れたくない。
それは、友達だって、信じているから。
――このまま家に帰って、五位と別れたくない。
それは、それは……、なんでだろう。
破廉恥なことをされた。温かいお粥をくれた。悩みを解決する手助けをしてくれた。あやかしから助けてくれた。いつだって、飛び込んできてくれた。
ずっと、ヒノキの香りに包まれるあの神輿に一緒に乗っていたい。
そう想うのは、どうして?
風邪を引いたかもしれない。ずぶ濡れの髪が乾くほど顔が火照って、ちくちくと棘が刺さったままの胸が高鳴る。この棘を取り除いてくれるのは、あの蒼髪の男しか居ないような気がして――。
会いたいと思ったとき、百位はようやく、恋話と二位が言った訳を理解した。
恥ずかしくて顔が上げられなかった。
「なにしてんだかな、おれたち」
沈黙を破ったのは、九位の溜息混じりの声だ。
「なにが?」
十位が九位を見やる。
「結婚だ結婚だ言いながらよ、あやかしに襲われるわ、女帝は裏切るわ、おれは、この帝都の治安を維持する仕事を任されてんのに、なんもできねぇ、むしろ、足手まとい。戦場と帝都、なんでこんなに差があるのか、わかんね」
「あら? あなた、結婚なんて口にしたことあったかしら?」
「あ? おれより弱い男と結婚する気が無いだけだ。あやかし頼りじゃなくてよ、自分の手で戦えて、おれより強い男以外、興味ねーよ」
「でも、あやかしに頼る帝位がいたからあなたは助かったのに」
「うるせ」
けっと威嚇した九位を、十位が鼻で笑う。二位は「強がりね」とぼそり呟く。「なんか言ったか」と声を荒げた九位を、百位は見つめていた。
「なに見てんだ」
つり上がった目に、見返される。
「……忌み子って、なに?」
ぴくりと頬を引きつらせた九位は、居心地悪そうに顔を逸らす。
帝位たちは言っていた。九十九位のことを、忌み子と。九位と同じと。
「忌み子はね、幼いころ、あやかしに憑かれて後遺症が残った人のことよ」
問いに答えてくれたのは二位だった。二位は椅子に腰かけて、湿った群青色の髪を布で拭っている。目線は長すぎる髪に置かれたまま、言葉が続く。
「十年前、あやかしが門から漏れた事故があったわ。原因は定かではないけど、人の世に一瞬だけ霊力が満ちたの。そのとき、門をすり抜けた霊のあやかしが、各地に散らばった」
押し黙った九位は、刀と自分の体を抱きしめている。二位はちらりと九位に視線を飛ばすと、少し声量を落とした。
「散らばったあやかしは、人の世で生きるため、霊力を持つ人間を求めた。狙われたのが、幼い子供たち。特に、まだ人格形成途中の子供は、霊にとって乗っ取りやすかった。乗っ取る、と言うよりは、あやかしにとって都合の良い性格に育てるほうが正しいわね。子供の心を惑わし、生き方を操る。本人が異変に気づいても、幼い子供の戯言だと、普通の大人は耳を貸さない。このままあやかしに憑かれた子供が成長すれば、将来、帝都の敵になる。そこで宮殿は、討伐隊を編成し、各地を捜索した」
その討伐隊とは、黒い甲冑で脇差を装備した兵士のことだろうか。
「討伐隊は、憑かれた子供を探した。浸食が浅ければ霊を弾いて終わり。でも、浸食が深ければ、無理やり霊を引き剥がすしかない。ただ、子供の霊力はすごく不安定なの。無理やり繋がったものを引き千切ることになるから、子供に悪影響だった。専門家が対応したけど、それでも運が良ければ無傷、運が悪ければ死ぬ。博打みたいなものだったわ。そして、死ななくても後遺症が残ることがあった」
二位は、茶が注がれた湯呑を啜った。ふう、と一息入る。
「後遺症は、いろいろな形で現れた。記憶喪失、感情の喪失、身体の麻痺、いろいろよ。ただね、稀に、利益になるような後遺症が現れた子供がいたの。特定の分野に突然秀でたり、特殊な能力に目覚めたりする子供がいた。本来、人間には成せない技でも、霊力の補助があれば成すことができる。利益になるような後遺症はね、要は霊力を操れるようになったと言うこと。霊力は、不思議な力がある。それを知覚し、操れるようになる。そんな子を、宮殿は忌み子と名付け、強制的に保護を始めた」
そこまで語られたとき、九位がぎちぎちと歯を食いしばり始めた。堪えているのは、なんとなく、怒りだと察した。
「でもね、忌み子はほとんど生き残れなかった。霊力はね、消耗品なの。使えば無くなって終わり。霊力を持って生まれた人間は、霊力が朽ちれば、死ぬ。あやかしみたいに。ほとんどの子供は、霊力の消費を制御できなくて窒息死した。生き残ったのは、九位だけ。そもそもね、女帝一桁に入れる時点で霊力量は計り知れないの。だから九位は、霊力が尽きる前に制御する術を覚えた。この世に霊力を継ぐ人間は、実は多い。でもほとんどの人間は、女帝の位を与えれば、百万単位の位になるくらいに霊力が少ない。もし、九位が忌み子にならなければ、女帝二位だったのは九位だったかもね。女帝の位は、帝都に来る直前の霊力量で決まる。九位は、いくつか消費していたから」
くだらね、そう吐き捨てた九位に、十位が湯呑を差し出す。九位は唇を尖らしながらも湯呑を受け取り、茶を啜る。尖っていた表情が丸くなった。
「憑かれた子供たちはたくさんいた。すべて探すのに二年かかった。聞いただけの話だけど、一年以上、あやかしに憑かれてしまった子供は、すでにあやかしに乗っ取られている子が多かった。もう救えなかった。討伐隊は、途中から子供の処刑に対応を切り替えた。抵抗する親ごと、内密に、ね」
惨い話を語り終えた二位は、自分の髪を拭う手を止めていた。鋭く細められた目は、髪を眺めているようで、どこか別の世界に向けられている。
生き残った忌み子は九位だけ。九十九位は、どんな人生を歩んできたのだろう。聞けば、教えてくれるだろうか。
「ねえ、あなた」
二位の声に誰も反応しなかった。だから顔を上げてみれば、二位がじっと見つめてきていた。呼びかけたのは、自分みたいだ。
「……なに」
「あなた、五位様のこと、どう思っているの?」
「……なんでよ」
「なんでって、恋話よ」
「……は?」
澄ました顔と、金ピカの神輿が脳裏に浮かぶ。
「五位様と喧嘩でもしたの?」
ついさっきのやり取りを思い出す。
喧嘩、したのか、わからない。
「なにがあったの?」
「……なにをしたらいいのかがわかんない」
勝手に口が動く。二位は静かに頷いてくれた。
「ほんとはね、家に帰りたいの。おばあちゃんが心配だから。でも、帰っても意味が無いと思うの。それで解決することはなにもない。あやかしのことも、ククのことも、いま逃げたら絶対に引き返せなくなる。でも、なにを信じたらいいのかがわかんない。怖い。だから、なにをしたらいいか聞こうと思ったの。でも、そしたら、家に帰れって言われて。それは違うって思った。でも、そうすべきだって言い切ってくれたら、わたしね、わたし……」
道が見えない。霧がかかっている。だから、教えてほしかった。そうしたら――。
「なら、もし、五位様が家に帰れと言い切ったとして、あなたはそれで良いの? もう二度と、五位様には会えなくなるわ」
「会えない……」
「当たり前でしょ? 女帝を退官すれば帝都には入れなくなる。五位様もいずれ妻を見繕う。それでいいの?」
なにかがぐるぐると胸と腹の奥底を行ったり来たりする。胸焼けのようにむかむかする。神輿に腰かける知らない女を想像するだけで、目の奥がうずうずした。
「あなたのこと、よく知らないから無責任なことは言わないわ。だから、一つだけ助言してあげる。なにをすべきかわからない。それは仕方ないことよ。いろんなことが同時に起きたから。だからね、考え方を変えてみたら? すべきことを考えるのではなく、やりたくないことを考える。我儘でもいい。一杯になった頭に、新しい選択肢は思いつかないわ。だから、不要な選択肢を削りなさい。やりたくない理由に、もしかしたら、あなたの気持ちがあるかもね」
やりたくないことってなんだろうと自問自答が駆け巡る。
――このまま、ククと別れたくない。
それは、友達だって、信じているから。
――このまま家に帰って、五位と別れたくない。
それは、それは……、なんでだろう。
破廉恥なことをされた。温かいお粥をくれた。悩みを解決する手助けをしてくれた。あやかしから助けてくれた。いつだって、飛び込んできてくれた。
ずっと、ヒノキの香りに包まれるあの神輿に一緒に乗っていたい。
そう想うのは、どうして?
風邪を引いたかもしれない。ずぶ濡れの髪が乾くほど顔が火照って、ちくちくと棘が刺さったままの胸が高鳴る。この棘を取り除いてくれるのは、あの蒼髪の男しか居ないような気がして――。
会いたいと思ったとき、百位はようやく、恋話と二位が言った訳を理解した。
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