暗黒騎士物語

根崎タケル

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第14章 草原の風

第27話 草原の勝者

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 コウキは出発した場所へと戻る。
 一番最初に戻った事でコウキは祭りの勝者となる。
 ケンタウロス達が祭りの勝者を讃える。
 コウキの元へチユキ達が駆け寄る。 

「おかえりなさい、コウキ君。貴方が勝者よ」
「まあ、勝つと思っていたっすけどね~」
「そうそう、コウキ君なら必ず一番になると思ってたよ」

 シロネにナオとリノがコウキを讃えてくれる。

「コウ。お帰り」
「サーナ。さっき会ったでしょう。この子ったらもう」

 サーナがコウキに抱き着くとサホコが笑う。

「はい、只今です。サーナ様」

 コウキはサーナの頭を撫でる。
 
「さて、コウキ君。優勝おめでとう。さて、この後どうするのかな? 何か色々と貰えるみたいだけど」

 チユキはそう言うとケンタウロス達を見る。
 祭りの勝者になった後、何をするのかはっきりとわからない。
 
「その通りですよ。黒髪の賢者殿」

 そんな時だったサジュタリスがこちらへと来る。

「さて、小さな勇者殿。何を望みますか? 貴方が望むなら草原の王になる事もできるでしょう。どうしますか?」

 サジュタリスがそう言うとケンタウロス達を見る。
 色々な表情が見て取れる。
 期待する者、敵意を向ける者、不安な顔をする者等である。
 しかし、彼らに対してコウキは興味を抱けなかった。

「望むのは一つです。サジュタリス様。自分は自分が乗れる馬を求めています。黄金馬ならそれがかなうのではないかと思いこの地に来ました」

 コウキはサジュタリスを見上げて言う。
 そもそも、コウキ達がこの地に来た理由は黄金馬を手に入れるためである。
 それをコウキは言う。

「えっ?」

 コウキがそう言うとサジュタリスは意外そうな顔をする。

「無理なのですか?」
「無理ですね……。竜を手懐ける程の者を乗せられる程の馬はこの草原にはいません。黄金馬でも無理でしょうね」

 サジュタリスは首を振って言う。

「え、そ、そうなのですか……」

 コウキは落胆する。
 馬の神でもあるサジュタリスが言うのだから間違いはないだろう。

「まあ、黄金馬でなくても、貴方の頭にいる竜の子がその役目をはたしてくれるでしょう。今はまだ幼竜ドラゴンキッズですが、10年もすれば若竜ヤングドラゴンとなり、馬ぐらいの大きさにはなるでしょう。それまで待つべきでしょうね」

 サジュタリスはコウキの頭の上にいるラシャを指して言う。
 コウキも竜の成長については文献で読んだ事があった。
 竜は生まれてから10年の間は幼竜ドラゴンキッズと呼ばれ、その後200年を若竜ヤングドラゴンとしてすごす。
 そこから、さらに成長すると成竜アダルトドラゴンとなる。
 成竜アダルトドラゴンとなり3000年を生きると、やがて頻繁に眠るようになる。
 その頃から財宝の寝床とそれを守るための巣を作るようになり始め、財宝の寝床が出来て、竜の巣が出来ると老竜エルダードラゴンと呼ばれるようになるらしかった。
 ちなみに竜王の次に生まれた第一世代の竜は古竜エンシェントドラゴンと呼ばれ他の老竜エルダードラゴンよりも一目置かれる。
 それが、コウキが知るドラゴンの知識である。

「10年ですか……」

 コウキは頭の上のラシャを見て溜息を吐く。
 神族として長い年月を生きるサジュタリスには短い期間かもしれないが、コウキの感覚でいえば10年はあまりにも長い。

「まあ、10年なんてすぐだよ。その頃にはコウキ君もかなりの美青年騎士になっているかな」

 リノは笑いながらコウキを慰める。
 コウキはリノを見る。
 リノはコウキが初めて会った時から姿が変わっていない。
 彼女達は歳を取らないので、10年なんてあっという間と思うのも無理はないだろう。

「かなりの美青年か……。楽しみのような、残念なような……。複雑な気持ちね」
「何を考えているっすか、チユキさん……」

 チユキか複雑そうな顔をするとナオが呆れた顔で見る。

「他に望みはないですか? 期待している者もいますよ」

 サジュタリスが聞く。

「いえ、馬が手に入らないのなら……。他に欲しいものはないです……」
「なるほど。まあ、小さな勇者。貴方には草原は狭すぎるのかもしれませんね。わかりました、ですが貴方を讃える祭典はお受けなさい。紛れもなく貴方は勝者なのですからね」

 サジュタリスはそう言ってケンタウロス達を見る。
 ケンタウロス達が勝者であるコウキの名を叫ぶ。
 祭りは神聖なものであり、その勝者に納得がいかなくても讃える。
 それが、定められた事であった。
 この日は誰であれコウキを讃えなければならないのだろう。

「さて、私はこれで去ります。待たせている方がいるのでね。また、会いましょう小さな勇者殿。次に会った時、貴方がどれだけ成長をしているか楽しみです」

 そう言うとサジュタリスの姿が一瞬で消える。
 消えた瞬間、周囲に風が吹く。
 まさに風の神であった。

「すさまじい動きね。まるで風みたい。まあ、良いか。とりあえずおめでとうコウキ君」

 シロネはそう言って笑う。

「ありがとうございます。シロネ様。ところでいつ自分は戻れるのでしょうか? いい加減元の姿に戻りたいのですが……」

 コウキは自身の下半身を見て言う。

「ごめんね。コウキ君。この祭りが終わるまでは元に戻しちゃダメみたいなの。もう少し我慢してね」

 チユキは頬を搔きながら謝る。
 周囲を見ると近くまでケンタウロス部族の女性達が来ている。
 何かを期待しているかのようだ。
 コウキはケンタウロス達の勝者であり、しばらく元に戻れなさそうであった。



 コウキ達と別れたサジュタリスが祭りの会場から出てくる

「サジュタリス殿」

 クロキは待ち構えて声をかける。

「やはり待っていましたか、暗黒騎士殿」

 サジュタリスは分かっていたのか笑って答える。

「先ほどの剣技……。前に手合わせした時は使っていませんでしたよね」

 クロキはサジュタリスと前に手合わせした時を思い出す。
 サジュタリスがコウキに見せた技は初めてみるものであった。

「気付きましたか……。貴方と手合わせした後、色々と練習したのですよ。また貴方と手合わせする時のためにね」

 サジュタリスは自身の剣を取り出して言う。

「先程の手合わせも、その練習のためですか?」

 クロキは少し語気を強めて言う。

「いえ、あの小さな勇者は中々の剣士でした。純粋に手合わせしてみたいと思ったのですよ。貴方との手合わせのためではありませんよ」
「そうですか……」

 サジュタリスは首を振って言うとクロキは声を和らげる。

「ふふ、暗黒騎士殿もあの少年が気になるようですね。まあ、成長したら勇者の仲間に強敵が現れるのですから当然ですね」

 サジュタリスは何かを誤解しているのか笑う。

「別にそういうわけではないですが……。まあ、それで良いです。では、どうしましょうか? サジュタリス殿? やりますか?」

 クロキはサジュタリスを見て言う。
 サジュタリスは再びクロキと手合わせする事を望んでいる。
 コウキとの戦いを見て、クロキももう一度やっても良いと思う。

「いえ、今回はやめておきましょう。暗黒騎士殿。貴方は行かねばならないのではないですか? あの死神のところへ」

 サジュタリスはワルキアの方角を見て言う。

「やはり、気付いていましたか……。異変を……。その通りです。先ほどその事で戻って来て欲しいと連絡がありました」

 クロキもまた同じところを見る。
 瘴気を含んだ雲が広がっている。
 ワルキアの地において異変が起きている。
 そのためモデスから一度ナルゴルに戻って欲しいと連絡が来たのである。
 
「そうですか……。まあ貴方なら大丈夫でしょうが、お気を付けてと言っておきましょう」
「ありがとうございます。サジュタリス殿。また会いましょう」

 クロキはサジュタリスに背を向けると後ろで待っているクーナとグロリアスの元へと行く。
 草原に嫌な風が吹こうとしていた。
 



 天幕の外ではケンタウロスの楽しそうな声が聞こえる。
 お祭りを楽しんでいるみたいである。
 そんな中でチユキはレイジと会う。
 レイジは先ほどまでレーナの所に行っていた。
 そして、つい先ほど戻って来たのだ。
 いるのはチユキだけだ。
 他の仲間は祭りを楽しんでいる。

「まさか、そんな事が……」

 チユキはレイジの話を聞き、眉を顰める。

「ああ、まさかエリオスの軍勢が敗れるとはな……」
 
 レイジは少し深刻そうな顔をして言う。
 ワルキアの地の上空でエリオスの軍勢が死神の軍勢に敗れたらしいのだ。
 多くの天使達が傷つき、指揮していたエリオスの神も撤退を余儀なくされた。
 瘴気の雲が広がっているのもそれが原因のようであった。

「それで、レーナは何て言っているの?」

 チユキは心配そうに聞く。

「もちろん、救援に来て欲しいそうだ。下手をすると瘴気の雲が世界を覆うだろう。事は急を要する」

 レイジはそう言って溜息を吐く。

「あの雲が世界中に……。確かにこれは放っておけないわね。はあ……」

 チユキは頭が痛くなる。
 厄介な事になりそうであった。
 

 


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感想 4

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みんなの感想(4件)

hazuki
2020.12.02 hazuki

名前とかは、(すごい名前生成器)とかどうでしょうか?
もう知ってるかもしれないけど、、
(・∀・)

解除
サイミ
2020.11.07 サイミ

色々なところに転載するのもいいのですが続きが気になってます
まずは完結目指してお願いします

解除
js60
2020.10.10 js60

アルファ以外も見ていました。 
そちらの最新章も楽しみにしています。

解除

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