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第14章 草原の風
第23話 ケンタウロス達の立場
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「あれはちょっと卑怯じゃないのかな……」
遠くからコウキの様子を見ていたクロキは言う。
コウキはケンタウロス達に取り囲まれている。
1対多数。
数だけ見ればコウキは不利である。
「まあ、あの者達から見たらかの少年を先に行かせれば負けが確定しますからね。必死なのでしょう」
サジュタリスは笑いながらいう。
「まあ卑怯かもしれないが、当然の反応だと思うぞ。まあ、あの程度で止められるとは思えんがな」
クーナは冷めた表情で言う。
サジュタリスはともかくクーナもコウキの心配はしていない。
コウキなら大丈夫だと思っているようであった。
「さすがは暗黒騎士殿の奥方。私も同じ考えです。あの少年はまだまだ実力を出し切っていない。おそらく全員でかかっても敵わないでしょうね」
そう言ってサジュタリスは笑う。
クロキはサジュタリスを見る。
楽しそうである。
「ふん、当たり前だ。だが、奴らも一枚岩ではなさそうだぞ。全員がバサーシとか言う奴に味方するとは限らないぞ」
サジュタリスに対してクーナはどうでも良さそうに言う。
クーナとしてはこのレースに興味がないのだろう。
「でしょうね。これであの少年が勝利するのは確実です。この先彼を止める者は……。おや、遠くで彼らを見ている者がいますね。気付いていますか? 暗黒騎士殿」
サジュタリスはコウキが進む方向を見て言う。
クロキもその先を見る。
「はい確かに……。色々といますね。怪しいのも含めて……」
クロキはコウキの周りにいる者達を見る。
その中には明らかに危険な者もいる。
空を見上げると先ほどまで晴れていたが、今は雲に覆われている。
瘴気を含んだ風が黒い雲から吹いている。
クロキはどうしようか迷うのだった。
◆
コウキは先に行くのをケンタウロス達に阻まれる。
ケンタウロス達はコウキの腕に巻かれたフウイヌムの鬣を見ている。
コウキが一番先に折り返し地点に行ったのに気付いたようだ
「草原の兄弟達よ!! そいつを先に行かせてはならない!! 我ら以外の者が一番となる事を許してはならない!!」
バサーシが後ろから叫ぶ。
それを聞いてケンタウロス達の一部が武器を構える。
その中には少し前に出会ったサークとラナベの兄弟もいる。
「お前らこいつを先に行かせるんじゃねえぞ!」
「そのとおりだぜ!! 俺ら以外が勝つなんてあっちゃなんねえ!」
サークとラナベがケンタウロス達に言う。
ケンタウロス達は顔を見合わせる。
コウキは剣を握りケンタウロス達を見る。
顔を見ると迷っている者もいるようだ。
後ろからバサーシが迫ってきているのをコウキは感じる。
有利な状況になったのか笑っているようだ。
「待て!! それはおかしいぞ! バサーシ!!」
突然ケンタウロス達の中から1匹のケンタウロスが出てくる。
巨大な薙刀を持ち、大きな体躯をしている。
顔つきからかなり高齢のようだ、その筋肉についた傷跡から歴戦の戦士であることがうかがえた。
「お前はボルツ!! 何がおかしいのだ!!」
バサーシは前に出て来たケンタウロスを睨む。
「何もかもだ! この少年を勝たせたくないのなら、最初から祭りに参加させなければ良い! 参加させた後で負けそうだから邪魔をせよだと! それは道理にあわぬ!!」
ボルツと呼ばれたケンタウロスはそう言ってバサーシとコウキの間に立つ。
その行動はコウキを守るかのようであった。
「ボルツ! 貴様……。俺に逆らうのか? 良い度胸だな! ふん、大方自身の妻と娘を奪われた事に対する意趣返しか? 見損なったぞ!」
バサーシはボルツを睨む。
「何とでも言え。バサーシ。もう私には失うものは何もない……。名誉も何もな。だが、バサーシよ。お前がこれまで暴虐でいられたのは勝者であったからだ! この少年が勝てば! お前はもはや勝者ではなくなる! 神々に対しての誓約があるからこそ皆我慢していたのだ! そこを忘れるな!!」
ボルツも負けじと言い返す。
部族間の激しい争いを緩和するために祭りがあった。そして、その勝者には恩恵が受けられる。
バサーシは一番になれなければその恩恵をすべて失うのだ。
「ぐぬぬぬ! だとすればどうするつもりだ! ボルツ!」
「知れた事よ! ここで貴様の邪魔をする! バサーシ!! 偉大なるサジュタリス様! 感謝するぞ!! この私にこのような機会を与えてくれて!!」
ボルツが吠える。
コウキの後ろで争いが始まろうとしていた。
前をみるとバサーシに味方するケンタウロス達とそうでないケンタウロス達が睨みあいを始めている。
どうやらバサーシに賛同しない者の方が多いようだ。
バサーシは人望ならぬ、馬望がないようだった。
「考えてみればそうだな……。なぜバサーシのいう事を聞かねばならない」
「その通りだ。バサーシが最終的な勝者になるのなら後が怖いが。今回はそうじゃない」
「その通りだな……。そもそも、バサーシが言っている事はおかしい。勝たせたくないのなら、参加させなければ良かったのだ」
「愚かな奴だ。バサーシ、自らの判断で足を取られおった」
「俺は先に行く。勝手に争ってろ」
賛同しないケンタウロス達は武器をしまう。
無視して先に進む者もいるようだ。
バサーシは自身の判断でコウキをさせておきながら負けそうになったら妨害するように言う。
それは道理に外れている。
(ええと……、全員を相手にしないで良さそうだ)
コウキはサークとラナベ達を見る。
かなり減った。
おそらくバサーシの部族と関係ある者達だろう。
参加しているケンタウロスの10分の1に満たない数だ。
さらにバサーシはボルツと戦っている。
これなら楽に進めそうであった。
「くっ、お前は俺達が止める! 行くぞ、兄弟!」
「おう!!」
サークとラナベがこちらに来る。
バサーシに比べると圧倒的に遅い。
サークが槍と弓を持ち、ラナベが剣と盾を持っている。
ラナベがコウキの正面に立ち、サークは少し離れた所で攻撃の機会をうかがっている。
役割を分けて、連携を取ろうとしているのがわかる。
「我が盾よ! 我が敵から我を守れ!」
ラナベが叫ぶと持っている盾が魔力を帯びる。
木に羊の皮を張り、少しの鉄で補強したよくある盾だ。
しかし、魔力を帯びた事で盾全体が鉄と同等の強度になっているはずであった。
「我が槍よ! 雷を帯び我が敵を貫け!」
サークもまた魔法を唱える。
雷刃の魔法であり、刃が光ると電気を発する。
ラナベが受け止め、サークが脇から攻撃する。
(相手にするのは面倒だよね……)
コウキは突然加速してラナベに向かう。
ラナベは盾を構える。
それはコウキの狙い通りであった。
コウキは直前で飛ぶとラナベの盾を踏み台にしてさらに飛び、ラナベの後ろに降りる。
「悪いけど先に行かせてもらうよ!!」
コウキはそう言うとそのまま先へと進む。
前方にはバサーシの仲間がいるが、ラナベを飛び越えて来るとは思っていなかったみたいで、対応が遅れる。
コウキはその隙に脇をすり抜けバサーシの仲間達を通りすぎる。
その様子に阻もうとしたバサーシの仲間はあっけにとられる。
「何やってんだ!? 追えよ! お前ら! バサーシの兄貴に酷い目にあわされるぞ!!」
「そうだ! 早く行け! 追いにくいじゃないか!」
サークとラナベが叫ぶとバサーシの仲間達に動揺が走る。
彼らはバサーシが怖いから従っているだけなのかもしれない。
動きがぎこちなく、やむなく追っている感じだ。
彼らは動きが鈍いためやる気があるサークとラナベが追う壁になってしまっていた。
(これならいけるかな……)
後ろの様子を背中で感じながらコウキの独走が始まるのだった。
遠くからコウキの様子を見ていたクロキは言う。
コウキはケンタウロス達に取り囲まれている。
1対多数。
数だけ見ればコウキは不利である。
「まあ、あの者達から見たらかの少年を先に行かせれば負けが確定しますからね。必死なのでしょう」
サジュタリスは笑いながらいう。
「まあ卑怯かもしれないが、当然の反応だと思うぞ。まあ、あの程度で止められるとは思えんがな」
クーナは冷めた表情で言う。
サジュタリスはともかくクーナもコウキの心配はしていない。
コウキなら大丈夫だと思っているようであった。
「さすがは暗黒騎士殿の奥方。私も同じ考えです。あの少年はまだまだ実力を出し切っていない。おそらく全員でかかっても敵わないでしょうね」
そう言ってサジュタリスは笑う。
クロキはサジュタリスを見る。
楽しそうである。
「ふん、当たり前だ。だが、奴らも一枚岩ではなさそうだぞ。全員がバサーシとか言う奴に味方するとは限らないぞ」
サジュタリスに対してクーナはどうでも良さそうに言う。
クーナとしてはこのレースに興味がないのだろう。
「でしょうね。これであの少年が勝利するのは確実です。この先彼を止める者は……。おや、遠くで彼らを見ている者がいますね。気付いていますか? 暗黒騎士殿」
サジュタリスはコウキが進む方向を見て言う。
クロキもその先を見る。
「はい確かに……。色々といますね。怪しいのも含めて……」
クロキはコウキの周りにいる者達を見る。
その中には明らかに危険な者もいる。
空を見上げると先ほどまで晴れていたが、今は雲に覆われている。
瘴気を含んだ風が黒い雲から吹いている。
クロキはどうしようか迷うのだった。
◆
コウキは先に行くのをケンタウロス達に阻まれる。
ケンタウロス達はコウキの腕に巻かれたフウイヌムの鬣を見ている。
コウキが一番先に折り返し地点に行ったのに気付いたようだ
「草原の兄弟達よ!! そいつを先に行かせてはならない!! 我ら以外の者が一番となる事を許してはならない!!」
バサーシが後ろから叫ぶ。
それを聞いてケンタウロス達の一部が武器を構える。
その中には少し前に出会ったサークとラナベの兄弟もいる。
「お前らこいつを先に行かせるんじゃねえぞ!」
「そのとおりだぜ!! 俺ら以外が勝つなんてあっちゃなんねえ!」
サークとラナベがケンタウロス達に言う。
ケンタウロス達は顔を見合わせる。
コウキは剣を握りケンタウロス達を見る。
顔を見ると迷っている者もいるようだ。
後ろからバサーシが迫ってきているのをコウキは感じる。
有利な状況になったのか笑っているようだ。
「待て!! それはおかしいぞ! バサーシ!!」
突然ケンタウロス達の中から1匹のケンタウロスが出てくる。
巨大な薙刀を持ち、大きな体躯をしている。
顔つきからかなり高齢のようだ、その筋肉についた傷跡から歴戦の戦士であることがうかがえた。
「お前はボルツ!! 何がおかしいのだ!!」
バサーシは前に出て来たケンタウロスを睨む。
「何もかもだ! この少年を勝たせたくないのなら、最初から祭りに参加させなければ良い! 参加させた後で負けそうだから邪魔をせよだと! それは道理にあわぬ!!」
ボルツと呼ばれたケンタウロスはそう言ってバサーシとコウキの間に立つ。
その行動はコウキを守るかのようであった。
「ボルツ! 貴様……。俺に逆らうのか? 良い度胸だな! ふん、大方自身の妻と娘を奪われた事に対する意趣返しか? 見損なったぞ!」
バサーシはボルツを睨む。
「何とでも言え。バサーシ。もう私には失うものは何もない……。名誉も何もな。だが、バサーシよ。お前がこれまで暴虐でいられたのは勝者であったからだ! この少年が勝てば! お前はもはや勝者ではなくなる! 神々に対しての誓約があるからこそ皆我慢していたのだ! そこを忘れるな!!」
ボルツも負けじと言い返す。
部族間の激しい争いを緩和するために祭りがあった。そして、その勝者には恩恵が受けられる。
バサーシは一番になれなければその恩恵をすべて失うのだ。
「ぐぬぬぬ! だとすればどうするつもりだ! ボルツ!」
「知れた事よ! ここで貴様の邪魔をする! バサーシ!! 偉大なるサジュタリス様! 感謝するぞ!! この私にこのような機会を与えてくれて!!」
ボルツが吠える。
コウキの後ろで争いが始まろうとしていた。
前をみるとバサーシに味方するケンタウロス達とそうでないケンタウロス達が睨みあいを始めている。
どうやらバサーシに賛同しない者の方が多いようだ。
バサーシは人望ならぬ、馬望がないようだった。
「考えてみればそうだな……。なぜバサーシのいう事を聞かねばならない」
「その通りだ。バサーシが最終的な勝者になるのなら後が怖いが。今回はそうじゃない」
「その通りだな……。そもそも、バサーシが言っている事はおかしい。勝たせたくないのなら、参加させなければ良かったのだ」
「愚かな奴だ。バサーシ、自らの判断で足を取られおった」
「俺は先に行く。勝手に争ってろ」
賛同しないケンタウロス達は武器をしまう。
無視して先に進む者もいるようだ。
バサーシは自身の判断でコウキをさせておきながら負けそうになったら妨害するように言う。
それは道理に外れている。
(ええと……、全員を相手にしないで良さそうだ)
コウキはサークとラナベ達を見る。
かなり減った。
おそらくバサーシの部族と関係ある者達だろう。
参加しているケンタウロスの10分の1に満たない数だ。
さらにバサーシはボルツと戦っている。
これなら楽に進めそうであった。
「くっ、お前は俺達が止める! 行くぞ、兄弟!」
「おう!!」
サークとラナベがこちらに来る。
バサーシに比べると圧倒的に遅い。
サークが槍と弓を持ち、ラナベが剣と盾を持っている。
ラナベがコウキの正面に立ち、サークは少し離れた所で攻撃の機会をうかがっている。
役割を分けて、連携を取ろうとしているのがわかる。
「我が盾よ! 我が敵から我を守れ!」
ラナベが叫ぶと持っている盾が魔力を帯びる。
木に羊の皮を張り、少しの鉄で補強したよくある盾だ。
しかし、魔力を帯びた事で盾全体が鉄と同等の強度になっているはずであった。
「我が槍よ! 雷を帯び我が敵を貫け!」
サークもまた魔法を唱える。
雷刃の魔法であり、刃が光ると電気を発する。
ラナベが受け止め、サークが脇から攻撃する。
(相手にするのは面倒だよね……)
コウキは突然加速してラナベに向かう。
ラナベは盾を構える。
それはコウキの狙い通りであった。
コウキは直前で飛ぶとラナベの盾を踏み台にしてさらに飛び、ラナベの後ろに降りる。
「悪いけど先に行かせてもらうよ!!」
コウキはそう言うとそのまま先へと進む。
前方にはバサーシの仲間がいるが、ラナベを飛び越えて来るとは思っていなかったみたいで、対応が遅れる。
コウキはその隙に脇をすり抜けバサーシの仲間達を通りすぎる。
その様子に阻もうとしたバサーシの仲間はあっけにとられる。
「何やってんだ!? 追えよ! お前ら! バサーシの兄貴に酷い目にあわされるぞ!!」
「そうだ! 早く行け! 追いにくいじゃないか!」
サークとラナベが叫ぶとバサーシの仲間達に動揺が走る。
彼らはバサーシが怖いから従っているだけなのかもしれない。
動きがぎこちなく、やむなく追っている感じだ。
彼らは動きが鈍いためやる気があるサークとラナベが追う壁になってしまっていた。
(これならいけるかな……)
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