暗黒騎士物語

根崎タケル

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第13章 白鳥の騎士団

第24話 暗黒騎士の介入

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「糞が!! なぜ、倒せない!! いい加減に倒れろが!!」



 蛇の王子ダハークは怒声を発し、槍を振るう。

 もちろん、コウキとしては倒れる訳にはいかない。

 剣を振るって、槍を受け流す。

 共に戦うテリオンもまた簡単にやられるような者ではない。



「ふん、簡単にやられるかよ!! 行くぞ! コウキ!」

「ああ!! 行こう!! テリオン!!」



 コウキとテリオンは共にダハークに向かう。

 テリオンが正面から向かい。

 コウキが側面から、攻める。

 対するダハークは槍と両肩の蛇で攻撃する。

 優勢なのはダハークだ。

 だが、倒す事まではできず、苛立っている。



(落ち着くんだ! 相手は焦っている! 隙が出来るまで待つんだ!)



 コウキはダハークの槍と肩の蛇の攻撃を防ぎながら機会を伺う。

 ダハークは強いが我慢強い性格ではなく、徐々に攻撃が雑になっている。

 だから、機会を待つしかなかった。



「なぜだ!! 何故苦戦している!!」



 ダハークは槍を振るう。

 苦戦しているのが、信じられないようだ。

 その表情を見た時だったコウキは相手の状況が変な事に気付く。



「そこだ! 行くぜ!!」



 コウキがそう思った時だった。

 一瞬の隙を突いてテリオンがダハークに飛び掛かろうとする。



「させないわよ!」



 その声と共に赤い光がコウキの目の前を凄い速さで横切る。



「ぐはっ!!」

「若!!」



 テリオンが呻き声を上げて吹き飛ぶ。

 コウキは赤い光が飛んで来た方を見る。

 ザファラーダと呼ばれた女が片手を突き出した状態でテリオンを見ている。



「あら、頭を狙ったのに外れちゃったわ。失敗ね。ごめんね、ダハ君」



 ザファラーダはそう言って笑う。

 赤い光は途中でねじ曲がり、テリオンの足を撃ち抜いた。

 頭に当たらなかったが、それでもテリオンの戦闘力を削いだ事は間違いない。



「おい、ザファラーダ! 手を出すなと言ったはずだ!」



 ダハークはそう言ってザファラーダを睨む。



「良いじゃない。中々決まりそうになかったのだもの。それよりトドメを刺すべきじゃなくて。凶獣の子なんて生かしておく必要はないわ」



 ザファラーダがそう言うとテリオンの配下の狼人達が前に出る。

 全員が武器を取りテリオンを守ろうとしている。



「お前ら! 若を連れて逃げろ! 俺が食い止める!」



 一番大きな狼人が部下達に命令を出すと前に出る。



「イカヅチ! 下がっていろ! 俺は負けていねえ」



 テリオンは上半身を起こし唸る。

 まだまだ、戦う気のようだ。



「若……。それはいけやせん……。ここは……。ぐはっ!!」



 イカヅチは何かを言おうとしたが、横から現れた黒い影によって吹き飛ばされる。



「いけませんねえ。邪魔をしては」



 答えたのは蝙蝠の羽を生やした仮面を付けた男だ。

 剣を抜き、大きな狼人を威嚇している。

 さらに剣を持った者達が狼人を取り囲む。

 剣を持っている者達は全員が嫌な匂いを漂わせている。

 コウキは知らないが瘴気を全員が発しているのだ。



「糞が!」



 イカヅチは剣を振るい、影を払いのける。



「おっと! 簡単にはやられませんよ! さあ王子。獣の子にトドメを!!」



 仮面の男はそう言ってダハークを見る。

 

「ふん、納得いかねえが、逃がすわけにはいかねえ! ここで死んでもらうぞ、凶獣の血を引く者」



 仮面の男の言葉でダハークは槍を構える。



「待て!!」



 コウキはたまらず後ろからダハークを襲う。

 しかし、ダハークは振り返る事なく、槍を振るいコウキの攻撃を槍で防ぎ、肩の蛇で反撃する。

 コウキは体を捻り、ヘビの顎を躱し、床を転がりテリオンとダハークの間に立つ。



「ハヤ! 回復魔法が使えるんだろ! 急いでテリオンを癒すんだ! それまで自分が守る!」

「は、はいですう!」



 コウキはハヤがテリオンの側に行くのを確認すると剣を構える。

 

「コウキ……。お前だけじゃ無理だ……」



 背中からテリオンの声がする。

 テリオンの言いたい事はわかる。

 2人がかりでも倒せなかった相手だ。

 勝てるはずがない。



「わかってる。でも、やるよ……」



 コウキにはわかる。

 白鳥の騎士達はもちろん狼達もほぼ戦える状態にない。

 唯一戦えそうなイカヅチも仮面の男に抑えられている。

 だから、コウキが戦うしかない。



「気に入らねえ状況だ。獣の子も気に食わねえ。それにお前は何者だ! 気に入らねえ! まあ良い! 殺してやる!」



 ダハークは全身から殺気を発する。

 そのダハークの殺気を感じ取り、コウキは全身を震わせる。



(怖い……。たった1人で向き合うのがこんなに怖いなんて……)



 コウキは震えそうになる手を何とか抑えようとする。

 先程まではテリオンが一緒だった。

 だが、今は1人でダハークに立ち向かわなくてはいけない。

 それはとても無謀な事であった。

 ダハークが槍を振るう。

 コウキはそれを剣で受け止める。



「ぐっ!」



 コウキは受け止めきれず倒れる。

 後ろにテリオン達がいるため、正面から受けるしかなく、受け流しきれなかったのだ。

 倒れた場所にはテリオンとハヤ。



「行くぞ!! まとめて突き殺してやる!!」



 ダハークは槍を掲げコウキを狙う。

 全身の力を込めてコウキごとテリオンを突き殺すつもりのようだ。

 

(ダメだ……。防げる気がしない……)



 コウキはダハークの構えを見て絶望しそうになる。

 だけど、守ると言った以上は逃げる事は出来ない。



「死ね!」



 ダハークが槍を突き出す。

 間違いなく必殺の一撃。

 

(母様……。クロキ先生……)



 死を覚悟したコウキは母親とクロキの名を心の中で叫ぶ。

 だが、槍が来る事はなかった。



「えっ、どうして……」



 コウキも驚く。

 ダハークの後ろにいつの間にか漆黒の鎧を着た者が立っていたのだ。

 漆黒の鎧を着た者は槍の柄を掴んでいる。

 そのためダハークは槍を繰り出す事が出来なかったのだ。



「あ、暗黒騎士!? 貴様! どういうつもりだ!?」



 ダハークは後ろの漆黒の鎧を着た者に怒りの声を出す。



(暗黒騎士……。どうして?)



 コウキは訳がわからなくなる。

 突然暗黒騎士が現れダハークの動きを止めたのだ。

 訳がわからなくなるのも当然であった。



「王子。凶獣の子は殺すなと言われているのではなかったのですか?」



 暗黒騎士はそう言って蛇の王子を抑え込もうとする。

 

「貴様! 夢じゃないな! 本物か!」



 ダハークは振りほどくと暗黒騎士に槍を振るう。

 しかし、暗黒騎士はその槍を手でつかみ取るとダハークを裏拳で殴り飛ばす。



「ダハ君!!」



 ダハークがやられるのを後ろから見たザファラーダが赤い光を放つ。



「ふん!!」



 暗黒騎士は漆黒の剣を空中から取り出すとその赤い光を跳ね返す。



「きゃあ!!」



 ザファラーダは避けきれず、赤い光を肩に受けて倒れる。



(す、すごい。あの両者を相手に圧倒している……)



 コウキは驚く。

 暗黒騎士はコウキとテリオンが共に戦っても勝てないダハークを圧倒している。

 さらにザファラーダが加勢しても全く動じていない。

 突然現れた暗黒騎士の介入により場の状況が劇的に変わるのを感じる。



「糞が……。 どうりで、おかしいと思ったぜ! 貴様……。後ろから何かしていたな。いつもより体が重く感じたぜ」



 ダハークは起き上がり怒りの視線を向ける。



「まさか本物とはね。まあ、おかしいと思ってたのだけどね。私の紅閃を捻じ曲げたのは貴方ね? 暗黒騎士」



 ザファラーダも怒りの表情を向ける。

 先程までの美しい顔が変わっている。

 目が八つ、口が耳まで裂け鋭い牙が飛び出している。

 正体を現したようだ。



「ザファラーダ! 手を貸せ! 俺だけじゃ勝てる気がしねえ!」

「ええ、わかったわ」



 ダハークとザファラーダは左右に挟み込むように動く。

 対する、暗黒騎士は平然とした態度を取っている。

 2対1だが、特に問題にはしていないようだ。



「戦う気はないのだけどね……。まあ仕方がないか。相手をするよ」



 暗黒騎士はそう言うと全身から黒い炎を出す。

 暗黒騎士が黒い炎を出した時、コウキは周囲の空気が重くなるのを感じる。

 暗黒騎士と蛇の王子、そして鮮血の姫との戦いが始まるのだった。





 

 
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