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第13章 白鳥の騎士団
第21話 獣神子との再戦
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(コウキは力を封印されている状態……。勝てるかしら?)
レーナは不安そうにコウキを見る。
目の前でコウキはテリオンと戦おうとしている。
テリオンにギルフォスでは勝てなかった。
かなりテリオンは強い。
そんなテリオンにコウキは戦いを挑まれた。
レーナはコウキの正体を隠すためにその力の大部分を封じたのである。
その状態でコウキは戦わなくてはいけないのだ。
封印は簡単に解く事ができない。
だからレーナは不安に思う。
通常のレーナなら相手の力量を見定める事もできる。
だが、コウキに関してはその目が鈍ってしまうのだ。
コウキは背負っている剣を抜く。
かなり長い剣だ。
成長すれば丁度良いかもしれないが、今はまだ体に合っていない。
そのためさらに不安になる。
またコウキは魔法が使えない。これも封じた結果であり、それも不安になる原因であった。
(クロキはどう思っているのかしら?)
レーナはクロキの意識を探る。
レーナはクーナ程ではないがクロキとも精神と肉体に強い繋がりを持っている。
だから、クロキの動向をある程度しる事が出来る。
そのクロキは何かを警戒しているようだ。
おそらくそれは蛇の王子ではない。
(……どうしたのかしら? 何を警戒しているの?)
レーナはクロキの様子に戸惑う。
しかし、レーナの不安をよそにコウキとテリオンは対峙するのだった。
◆
コウキは剣を抜く。
この剣は暗黒騎士にもらったものだ。
何の素材で出来ているのかわからない。剣には魔力が感じられ、かなりの業物だとわかる。
なぜ暗黒騎士がこれほどの剣をくれたのかわからない。
だが、剣はまるでコウキの為に作られたかのように手に馴染んだ。
剣は背丈に比べて若干長いが、扱うのに問題はない。
互いの仲間達は後ろに下がり両者を見守っている。
「さて、行くぜ!」
テリオンは大剣を向けるとコウキに迫る。
そして、コウキもまた動く。
テリオンの動きは速い。
それに対してコウキの動きはゆっくりだ。
両者の距離が縮まり互いにぶつかる。
「何!?」
飛びのいたテリオンが驚きの声を発する。
テリオンの腕から血が出ている。
それを見ていた周囲がどよめく。
白鳥の騎士達はギルフォスですら傷つける事が出来ずにいたのにそれをなしたコウキに驚き。
狼人達は自身の若が傷つけられた事に驚く。
(少し浅かった……。怖れてしまった……)
コウキは唇を噛む。
テリオンの方が早く、力が強い。
正面からぶつかれば負ける。
だから受け流して反撃した。
だけど、その一撃を外してしまった。
テリオンの勢いに少し怖気づいてしまったのだ。
そのため、攻撃が浅くなった。
次からはテリオンも警戒するだろう。
これで反撃はしにくくなった。
「やるじゃねえか。やっぱりおめえの方が強いな」
斬られたのにテリオンは嬉しそうに笑う。
戦うのが楽しいようであった。
どちらかと言えば怖がりであるコウキとしては理解できない感情だ。
「もっと行くぜ!」
テリオンは再びコウキに向かう。
コウキも動き迎え撃つ。
互いに剣を繰り出し、斬撃が交差する。
テリオンから繰り出され斬撃が床を抉り、突風となって部屋に吹く。
(くっ、強い! でも、やれる事をやるしかない!)
コウキは必死で剣を繰り出しテリオンの攻撃を何とか受け流す。
力はテリオンの方が強い。
だから、受け流し、正面から剣をぶつけない。
足を滑らせるように、重心を微妙にずらし動く。
隙をついて攻撃しようとするが、テリオンの斬撃はすさまじく受け流すのが精一杯で反撃はどうしても浅くなってしまう。
また、テリオンの剣もコウキには届かない。
両者は互いに決め手を欠いたまま剣を繰り出すのであった。
◆
「何だ!? あれは!?」
ヒュロスは驚きの声を出す。
あのギルフォスですら敵わなかった相手にコウキは対等に戦っている。
ギルフォスの強さを知るヒュロスとしては信じられない光景であった。
「あれ程の強さとは……。それに剣技……。剣の乙女様の所で修行していたのかもしれません」
横にいるホプロンもまた驚いた顔をしている。
従騎士コウキ。
彼は勇者レイジ達の紹介で入団した。
騎士達が崇める女神の寵愛を受けている勇者の紹介であり、特別扱いされていた。
そして、その実力には懐疑的であった。
彼の血筋はわからず、勇者達に育てられたとしか聞いていないからだ。
いくら勇者の元で育ったといえど強いとはかぎらない。
だから、特別に注目されてはいなかった。
しかし、実際に戦ってみれば凄まじい剣技である。
ホプロンの言う通り、剣の乙女と名高いシロネから剣を教わり、その実力から騎士団に紹介したのかもしれない。
ヒュロスはコウキの評価を改める。
両者は激しく剣を交えている。
ヒュロスにはどちらが優勢かわからない。
(巫女様の目ならどうだろうか?)
ヒュロスは巫女メリニアを見る。
メリニアは目を開き両者の戦いを見ている。
その顔はどこか嬉しそうである。
ヒュロスはまるで成長を喜ぶ母のようだなと思うのだった。
◆
(かなり練り上げているね、コウキ……)
クロキは魔法の映像でコウキの動きを見る。
かなり剣の修練を積んだ事がわかる動きであった。
コウキとテリオンは剣を激しく交えている。
テリオンの方が早く力もある。
テリオンが剣を振るうたびに石造りの床が削れている所からみてもかなりの力だ。
だが、その動きはただ力任せであり、無駄な動きが多い。
だから、コウキはテリオンの剣を何とか受け流す事が出来ている。
だが、あくまで何とかだ。
受け流すのが精一杯で反撃までは出来ていない。
結果として今の所、互角の戦いになっている。
(だけど、不味いな。テリオンの動きが少しずつ鋭くなってきている。このままだと追い込まれる)
映像で見るテリオンはコウキの動きを見て、剣の動きを変えている。
過去にフェリオンと戦った時と同じだ。
フェリオンは戦いながら成長していた。
それと同じことをテリオンはしているように見える。
それにテリオンはギルフォスとの戦いの時に出していた雪狼を出していない。
また、他にも魔法が使えると見て良いだろう。
つまり、互角に見えていてテリオンの方にはまだ余裕があるのだ。
ただテリオンは剣のみで戦う事にこだわっている。
剣のみでコウキに勝つつもりのようであった。
テリオンは笑っている。
ギルフォスと戦っている時よりも楽しそうである。
「面白い戦いですね。暗黒騎士殿はどう見ていますか?」
後ろから声を掛けられる。
振り返るとそこには1の首の侍女がいる。
彼女の顔は仮面で見えない。
だけど、その眼光には覚えがある。
「わからないですよ……。自分は作られたものですから。このような難しい事はわかりません」
クロキはとぼけて言う。
一応クロキは夢で作られた存在という事になっている。
バレているようだが、あえてそれで通す。
「そうですか……。それで通すつもりのようですね。ではこちらの私見を言いましょう。凶獣の子はまだ覚醒してはいないですが、成長には期待できそうです。そして、凶獣の子と戦っている者は何者でしょう? つい先ほど聞いた情報だと光の勇者と関係ありそうですが……。貴方は知っているのではなくて?」
1の首の侍女は探るようにクロキを見る。
視線を向けられクロキは嫌な感じになる。
抑制しているようだが、邪視の力を感じる。
この侍女の前では下手な動きは出来ない。
先程から殺気のようなものも感じるからだ。
「ええと……」
クロキは何と答えようか迷う。
そんな時だった。
映像の中で動きがある。
コウキがテリオンの斬撃を受け流しきれず、少しよろけたのだ。
クロキは何か言うのを辞めて映像を凝視する。
「トドメだ!」
追い打ちをしようとテリオンは1歩前に踏み出し剣を大きく振りかぶる。
そして、1瞬の後コウキとテリオンの影が交差する。
「ぐっ!」
テリオンは右手を左手で押さえる。
大剣が空中を舞い、落ちて床に突き刺さる。
それに対してコウキは無傷で剣を持っている。
コウキの勝利であった。
部屋にどよめく声がする。
(危ないところだった……。ハラハラしたよ……)
クロキはコウキが無事なのを見て胸をなでおろす。
テリオンは詰めを誤ったのだ。
追い打ちをする時に動きに隙が出来て、それをコウキにつかれた。
コウキの判断は見事だったと言える。
あのまま後ろに逃げていたら、テリオンに斬られていただろう。
逃げずに前に出た事で勝つことができたのである。
「何だ! あの戦いは!!!!!」
突然怒声が鳴り響く。
蛇の王子ダハークの声であった。
背中しか見えないがかなり怒っているようであった。
「あのような人間ヤーフごとき負けるとは!! もう良いあのような者!! 我が陣営にはいらん!! あそこにいるやつらと共に俺が殺してやる!!」
ダハークはそう言って槍を取る。
戦いはまだまだ終わらないのであった。
レーナは不安そうにコウキを見る。
目の前でコウキはテリオンと戦おうとしている。
テリオンにギルフォスでは勝てなかった。
かなりテリオンは強い。
そんなテリオンにコウキは戦いを挑まれた。
レーナはコウキの正体を隠すためにその力の大部分を封じたのである。
その状態でコウキは戦わなくてはいけないのだ。
封印は簡単に解く事ができない。
だからレーナは不安に思う。
通常のレーナなら相手の力量を見定める事もできる。
だが、コウキに関してはその目が鈍ってしまうのだ。
コウキは背負っている剣を抜く。
かなり長い剣だ。
成長すれば丁度良いかもしれないが、今はまだ体に合っていない。
そのためさらに不安になる。
またコウキは魔法が使えない。これも封じた結果であり、それも不安になる原因であった。
(クロキはどう思っているのかしら?)
レーナはクロキの意識を探る。
レーナはクーナ程ではないがクロキとも精神と肉体に強い繋がりを持っている。
だから、クロキの動向をある程度しる事が出来る。
そのクロキは何かを警戒しているようだ。
おそらくそれは蛇の王子ではない。
(……どうしたのかしら? 何を警戒しているの?)
レーナはクロキの様子に戸惑う。
しかし、レーナの不安をよそにコウキとテリオンは対峙するのだった。
◆
コウキは剣を抜く。
この剣は暗黒騎士にもらったものだ。
何の素材で出来ているのかわからない。剣には魔力が感じられ、かなりの業物だとわかる。
なぜ暗黒騎士がこれほどの剣をくれたのかわからない。
だが、剣はまるでコウキの為に作られたかのように手に馴染んだ。
剣は背丈に比べて若干長いが、扱うのに問題はない。
互いの仲間達は後ろに下がり両者を見守っている。
「さて、行くぜ!」
テリオンは大剣を向けるとコウキに迫る。
そして、コウキもまた動く。
テリオンの動きは速い。
それに対してコウキの動きはゆっくりだ。
両者の距離が縮まり互いにぶつかる。
「何!?」
飛びのいたテリオンが驚きの声を発する。
テリオンの腕から血が出ている。
それを見ていた周囲がどよめく。
白鳥の騎士達はギルフォスですら傷つける事が出来ずにいたのにそれをなしたコウキに驚き。
狼人達は自身の若が傷つけられた事に驚く。
(少し浅かった……。怖れてしまった……)
コウキは唇を噛む。
テリオンの方が早く、力が強い。
正面からぶつかれば負ける。
だから受け流して反撃した。
だけど、その一撃を外してしまった。
テリオンの勢いに少し怖気づいてしまったのだ。
そのため、攻撃が浅くなった。
次からはテリオンも警戒するだろう。
これで反撃はしにくくなった。
「やるじゃねえか。やっぱりおめえの方が強いな」
斬られたのにテリオンは嬉しそうに笑う。
戦うのが楽しいようであった。
どちらかと言えば怖がりであるコウキとしては理解できない感情だ。
「もっと行くぜ!」
テリオンは再びコウキに向かう。
コウキも動き迎え撃つ。
互いに剣を繰り出し、斬撃が交差する。
テリオンから繰り出され斬撃が床を抉り、突風となって部屋に吹く。
(くっ、強い! でも、やれる事をやるしかない!)
コウキは必死で剣を繰り出しテリオンの攻撃を何とか受け流す。
力はテリオンの方が強い。
だから、受け流し、正面から剣をぶつけない。
足を滑らせるように、重心を微妙にずらし動く。
隙をついて攻撃しようとするが、テリオンの斬撃はすさまじく受け流すのが精一杯で反撃はどうしても浅くなってしまう。
また、テリオンの剣もコウキには届かない。
両者は互いに決め手を欠いたまま剣を繰り出すのであった。
◆
「何だ!? あれは!?」
ヒュロスは驚きの声を出す。
あのギルフォスですら敵わなかった相手にコウキは対等に戦っている。
ギルフォスの強さを知るヒュロスとしては信じられない光景であった。
「あれ程の強さとは……。それに剣技……。剣の乙女様の所で修行していたのかもしれません」
横にいるホプロンもまた驚いた顔をしている。
従騎士コウキ。
彼は勇者レイジ達の紹介で入団した。
騎士達が崇める女神の寵愛を受けている勇者の紹介であり、特別扱いされていた。
そして、その実力には懐疑的であった。
彼の血筋はわからず、勇者達に育てられたとしか聞いていないからだ。
いくら勇者の元で育ったといえど強いとはかぎらない。
だから、特別に注目されてはいなかった。
しかし、実際に戦ってみれば凄まじい剣技である。
ホプロンの言う通り、剣の乙女と名高いシロネから剣を教わり、その実力から騎士団に紹介したのかもしれない。
ヒュロスはコウキの評価を改める。
両者は激しく剣を交えている。
ヒュロスにはどちらが優勢かわからない。
(巫女様の目ならどうだろうか?)
ヒュロスは巫女メリニアを見る。
メリニアは目を開き両者の戦いを見ている。
その顔はどこか嬉しそうである。
ヒュロスはまるで成長を喜ぶ母のようだなと思うのだった。
◆
(かなり練り上げているね、コウキ……)
クロキは魔法の映像でコウキの動きを見る。
かなり剣の修練を積んだ事がわかる動きであった。
コウキとテリオンは剣を激しく交えている。
テリオンの方が早く力もある。
テリオンが剣を振るうたびに石造りの床が削れている所からみてもかなりの力だ。
だが、その動きはただ力任せであり、無駄な動きが多い。
だから、コウキはテリオンの剣を何とか受け流す事が出来ている。
だが、あくまで何とかだ。
受け流すのが精一杯で反撃までは出来ていない。
結果として今の所、互角の戦いになっている。
(だけど、不味いな。テリオンの動きが少しずつ鋭くなってきている。このままだと追い込まれる)
映像で見るテリオンはコウキの動きを見て、剣の動きを変えている。
過去にフェリオンと戦った時と同じだ。
フェリオンは戦いながら成長していた。
それと同じことをテリオンはしているように見える。
それにテリオンはギルフォスとの戦いの時に出していた雪狼を出していない。
また、他にも魔法が使えると見て良いだろう。
つまり、互角に見えていてテリオンの方にはまだ余裕があるのだ。
ただテリオンは剣のみで戦う事にこだわっている。
剣のみでコウキに勝つつもりのようであった。
テリオンは笑っている。
ギルフォスと戦っている時よりも楽しそうである。
「面白い戦いですね。暗黒騎士殿はどう見ていますか?」
後ろから声を掛けられる。
振り返るとそこには1の首の侍女がいる。
彼女の顔は仮面で見えない。
だけど、その眼光には覚えがある。
「わからないですよ……。自分は作られたものですから。このような難しい事はわかりません」
クロキはとぼけて言う。
一応クロキは夢で作られた存在という事になっている。
バレているようだが、あえてそれで通す。
「そうですか……。それで通すつもりのようですね。ではこちらの私見を言いましょう。凶獣の子はまだ覚醒してはいないですが、成長には期待できそうです。そして、凶獣の子と戦っている者は何者でしょう? つい先ほど聞いた情報だと光の勇者と関係ありそうですが……。貴方は知っているのではなくて?」
1の首の侍女は探るようにクロキを見る。
視線を向けられクロキは嫌な感じになる。
抑制しているようだが、邪視の力を感じる。
この侍女の前では下手な動きは出来ない。
先程から殺気のようなものも感じるからだ。
「ええと……」
クロキは何と答えようか迷う。
そんな時だった。
映像の中で動きがある。
コウキがテリオンの斬撃を受け流しきれず、少しよろけたのだ。
クロキは何か言うのを辞めて映像を凝視する。
「トドメだ!」
追い打ちをしようとテリオンは1歩前に踏み出し剣を大きく振りかぶる。
そして、1瞬の後コウキとテリオンの影が交差する。
「ぐっ!」
テリオンは右手を左手で押さえる。
大剣が空中を舞い、落ちて床に突き刺さる。
それに対してコウキは無傷で剣を持っている。
コウキの勝利であった。
部屋にどよめく声がする。
(危ないところだった……。ハラハラしたよ……)
クロキはコウキが無事なのを見て胸をなでおろす。
テリオンは詰めを誤ったのだ。
追い打ちをする時に動きに隙が出来て、それをコウキにつかれた。
コウキの判断は見事だったと言える。
あのまま後ろに逃げていたら、テリオンに斬られていただろう。
逃げずに前に出た事で勝つことができたのである。
「何だ! あの戦いは!!!!!」
突然怒声が鳴り響く。
蛇の王子ダハークの声であった。
背中しか見えないがかなり怒っているようであった。
「あのような人間ヤーフごとき負けるとは!! もう良いあのような者!! 我が陣営にはいらん!! あそこにいるやつらと共に俺が殺してやる!!」
ダハークはそう言って槍を取る。
戦いはまだまだ終わらないのであった。
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