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第12章 勇者の王国
第33話 事件の真相
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「犯人はあなたです。ソガス司祭」
チユキは目の前のソガスにそう告げる。
「え、なぜ、どうしてでしょう。拙僧が犯人などと……」
ソガスは首を振る。
だが、チユキにはそれが演技に思えた。
「そうですね。まずは最初に事件が起きた時の事から話しましょうか、ナオさん。出て来て」
チユキがそう言うと突然ナオが部屋に現れる。
ナオが隠密するとチユキは感知できない。
その能力にはいつも驚かされる。
「全く人使いが荒いっす。見つけているっすよ」
そう言ってナオは懐から何かを取り出す。
取り出されたのは小さな虫籠、中には宝石が一つ入ってある。
それは大畑が身に着けていた首飾りの宝石の瓜二つであった。
「宝石虫です。見覚えはありますよね。貴方の部屋から取って来たのだから」
「……」
チユキがそう言うとソガスは目を大きく開く。
「大畑殿が最初に殺された時、首飾りは証拠としてオーディス神殿が預かりました。司祭である貴方ならすり替える事も可能ですよね……。貴方はこの首飾りを大畑殿が手に入るように工作した。オーディス神殿の司祭なら大畑殿に近い貴族とも親交があるので、簡単だったでしょう」
チユキはナオの持つ宝石虫を見てそう言う。
宝石虫は仮死状態になっている。
また、虫籠には毒を外に出さない魔法が掛けられているので宝石虫が毒を放っても部屋に影響はない。
ソガスはこの宝石虫が持ち出された事に驚いているようであった。
「この宝石虫は刺激を与えたりすると毒を発します。それは虫除けの香を感じた時も同じです。弱い虫除けの香ならば宝石虫は毒を発しませんが、ゴシション先生が作った良く効く虫除けの香ならば毒を発します」
大畑が最初に殺された時、虫除けの香が現場の部屋にあった。
あの虫除けの香はゴシションが作ったものだ。
エルドの宮殿にあるものと同じだったので間違いない。
「ゴシション先生は共犯でした。貴方と共謀して大畑殿を殺す計画を立てて、その虫除け香も大畑殿が手に入るようにしました。宝石虫の首飾りと虫除けの香。この2つが揃った時、身に着けた者は死にます。こうして貴方は大畑殿を殺害したのです」
これも簡単な事だ。
ゴシションの作った虫除けの香は良く効く。
当然貴族達も使うだろう。
オズの妹シュイラが殺したというのはある意味正しかった。
もっとも、彼女に非はない。まさか虫除けの香が原因とは誰だって思わないだろう。
「ただ、殺害に成功しましたが大畑殿はサホコさんの魔法で復活しました。これは誤算だったのかどうかはわかりません。どうですかソガス司祭」
チユキは言葉を続けるとソガスを見る。
ソガスは何も答えない。
「何も答えませんかソガス司祭。良いでしょう、続けます。大畑殿が復活したこと以外にも貴方にとって想定外の事がありました。ハムレ殿の事です。ハムレ殿もまた大畑殿の殺害を計画していました。まさか、暗殺計画が同時に2つ進行しているとは思ってもいなかったでしょう。私達もそうでした」
甥のハムレもまた大畑の命を狙っていた。
つまり、暗殺計画は2つあったのだ。
ただ、ハムレはソガスと共謀していない。
ハムレを捕らえた時にそれは確認済だ。
「ハムレ殿は蛇の教団に依頼をしていました。もっとも、その教団は私達によって崩壊しています。その事を知らないハムレ殿は自身の依頼が果たされたと勘違いしていたようです。蛇の教団を調査した事で繋がりが判明して、彼を捕縛しました。その後リノさんに尋問してもらった時、彼は自身が犯人だと自白したのですよ……。だから、最初は蛇の教団が大畑殿を殺したのではと思いました」
チユキは首を振る。
ハムレはリノの魔法により自供した。
だから、最初は蛇の暗殺者が大畑を殺したのではないかと思ったのだ。
「ただハムレ殿はあくまで依頼者であり、実行者がいないのはおかしい。ですが、いくら調べてもどうやって毒を盛ったのかわかりませんでした。そんな時です、宝石虫の情報を得たのは……。コウキ君達から聞いたナルゴルに生息する不思議な虫、私達はもう一度首飾りを調べる事にしました。ですが、結果は普通の宝石。それもそうですよね……。すり替えられていたのですから」
コウキ達からの情報を得てチユキ達は首飾りを調べた。
だが、首飾りの宝石は普通の宝石だった。
だが、その首飾りを預かっていたソガスならばすり替えるのも簡単である。
事件が終わった後で宝石をすり替えていたのだ。
「宝石を見た時に違和感がありました。またナオさんが偶然見た貴方がヴェロスの果実酒を受けとる場面。貴方はその後に何と呟いたか覚えていますか?」
「い、いえ」
ソガスは首を振る。
だが、ナオは聞いていた。
「貴方は思わず呟きました。「ヴェロスの果実酒か。北のヴェロス近くまで行った時は良く飲んだわい」と。そこで貴方がしばらく不在だった時期があったのを思い出したのですよ。大畑殿が首飾りを得た時期を考えると期間が一致します。ナオさんはその点が気にかかり貴方を調べる事にしたのです。そうですねナオさん」
そう言ってチユキはナオを見る。
「いや~。大変だったっすよ。でも調べたらすぐに出て来たっすよ。大変だったっす」
ナオはソガスの事を調べる為にしばらくエルドの外にいたのである。
そして、ソガスが北に向かったのを知ったのだ。
そのためナオは虫の砦に潜入する時にいなかったのだ。
「そして、砦に一緒にいたブイル殿の事も先程ナオさんに聖レナリア共和国に調べに行ってもらいました。どうでしたかナオさん」
「思った通りだったっす。ブイルとかいう司祭はいないし来た記録もないっす。ただ、似顔絵を見せたらソガスさんが保護した身寄りのない者に似ている人がいたっすよ」
ナオはそう言ってソガスを見る。
ブイルという審問官はいなかった。
ソガスは身寄りのない者を改造したのだ。
「直接変身するところを見たわけではないですが……。貴方がブイル殿を改造したのです。そして、ハムレ殿に虫を仕込んだのも貴方です。そして、これほどの事が出来る力。普通の人には不可能です。貴方は北に行き取引しましたね、白銀の魔女のあの子と……」
チユキはそう言ってソガスを見る。
そもそも、宝石虫がソガスの部屋から発見された時点で犯人は確定したようなものである。
「……。やはり、バレましたか。まあ、どこかで気付かれるとは思っていましたがね」
ソガスはそう言って笑う。
その笑みは卑屈な笑みだ。
「自白するのですか、ソガス司祭?」
「ええ、リノ様もいるのでしょう。嘘を吐いても仕方がないでしょう。ハムレに虫を仕込みあの男を殺したのも、裏切ったゴシションを殺したのも私です」
ソガスはそう言って首を振る。
「そう、リノさん出て来てよいわよ。ソガス司祭は本当の事を言っているかしら」
チユキが合図をするとリノが後ろから姿を現す。
リノはずっとチユキの後ろで姿を隠していたのである。
「うん、嘘は言っていないよ。ソガスさん何でこんな事をしたの?」
リノは悲しそうな顔をして聞く。
「何故か……。それはわかりやすい理由ですよ。あの男のせいで崩壊した一族は多いのです。私もその1人ですよ。貴方様にはわからないでしょう。飢えて血を分けた弟喰った私の気持ちなぞ……」
そう言うとソガスは懐から何かを取り出す。
「動かないで、ソガス司祭! 逃げられませんよ!」
「ふふ、逃げはしませんよ……。破滅は覚悟の上です。願わくはあの男の血脈を絶ちたかったですがそれも敵わないでしょうな。さらばですぞ、チユキ様! 偉大なる暗黒の君! 我が身を捧げます! 我が内に眠る魔蟲よ、目覚めよ!」
ソガスがそう言った時、懐から出した何かが光る。
そして、ソガスの身体が膨れ上がる。
「チユキさん!」
「わかっている、ナオさん!」
チユキは魔法を唱えソガスの周囲に結界を張る。
次の瞬間ソガスの身体が爆発する。
ソガスの身体から飛び出した虫達は結界に阻まれそれ以上外に出ない。
結界の中でソガスの身体が完全に消滅するのが見える。
「チユキさん……」
リノが心配そうにチユキを見る。
「大丈夫よ……。リノさん」
チユキは杖を掲げる。
すると結界の中が小さく爆発する。
結界の中なので爆発の影響は外には出ない。
ソガスの身体から出た虫達は爆発によって焼けて消えていく。
後に残ったのは黒い影だけだ。
「ソガス司祭、こうするしかなかったのかしら……」
変わり果てたソガスを見てチユキは呟く。
彼が生きていたら今度はオズを狙っただろう。
例え捕らえても、逃げ出して何度でも狙うかもしれない。
彼の復讐心をリノならば消せる。しかし、それではソガスは死んでいるのと同じだ。
こうするしかなかった。
だけどチユキは別の手段がなかっただろうかと考えてしまう。
「これで事件は終わりなのかな?」
「そのはずっすけどね。大畑さん。恨みを買いすぎているっすから」
リノとナオがソガスの影を見て言う。
大畑にいや、大畑家に恨みを持つ者は多い。
そのため、再び同じような事件が起きる可能性はある。
しかし、そんな事まで考えていたらきりがない。
「事件は終わりよ。そういう事にしましょう。さて、やらなければならない事があるわ、少し忙しくなるわね」
チユキは事件の終わりを宣言する。
事件は終わり、後始末をしなければならないだろう。
さしあたり大畑の葬儀をしなければならない。
問題のある人物であったが、功績も大きい。
彼の葬儀を盛大にしなければならなかった。
(さて、コウキ君達はどうしているかな?)
チユキはコウキ達の事を考える。
彼は今親友のオズのところにいる。
大畑家は当主と次期当主を同時に亡くして混乱している。
そのため親友を心配して側にいる事にしたのだ。
チユキはこれ以上大畑家に不幸が来ない事を祈るのだった。
★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★
さて事件は終わりです。
次回はエピローグ。
ソガスの想定外の出来事は二つ、ハムレも暗殺を計画していた事とコウキが絡んでいた事です。
コウキがいなければオズの身も危なかったでしょう。
大畑が死んだ日に郊外で喋っていたのはハムレです。
ソガスが果実酒を貰った時に見ていたのは実はナオでした。
果実酒はヒントのつもりだったのですが、上手くなかったですね……。
チユキは目の前のソガスにそう告げる。
「え、なぜ、どうしてでしょう。拙僧が犯人などと……」
ソガスは首を振る。
だが、チユキにはそれが演技に思えた。
「そうですね。まずは最初に事件が起きた時の事から話しましょうか、ナオさん。出て来て」
チユキがそう言うと突然ナオが部屋に現れる。
ナオが隠密するとチユキは感知できない。
その能力にはいつも驚かされる。
「全く人使いが荒いっす。見つけているっすよ」
そう言ってナオは懐から何かを取り出す。
取り出されたのは小さな虫籠、中には宝石が一つ入ってある。
それは大畑が身に着けていた首飾りの宝石の瓜二つであった。
「宝石虫です。見覚えはありますよね。貴方の部屋から取って来たのだから」
「……」
チユキがそう言うとソガスは目を大きく開く。
「大畑殿が最初に殺された時、首飾りは証拠としてオーディス神殿が預かりました。司祭である貴方ならすり替える事も可能ですよね……。貴方はこの首飾りを大畑殿が手に入るように工作した。オーディス神殿の司祭なら大畑殿に近い貴族とも親交があるので、簡単だったでしょう」
チユキはナオの持つ宝石虫を見てそう言う。
宝石虫は仮死状態になっている。
また、虫籠には毒を外に出さない魔法が掛けられているので宝石虫が毒を放っても部屋に影響はない。
ソガスはこの宝石虫が持ち出された事に驚いているようであった。
「この宝石虫は刺激を与えたりすると毒を発します。それは虫除けの香を感じた時も同じです。弱い虫除けの香ならば宝石虫は毒を発しませんが、ゴシション先生が作った良く効く虫除けの香ならば毒を発します」
大畑が最初に殺された時、虫除けの香が現場の部屋にあった。
あの虫除けの香はゴシションが作ったものだ。
エルドの宮殿にあるものと同じだったので間違いない。
「ゴシション先生は共犯でした。貴方と共謀して大畑殿を殺す計画を立てて、その虫除け香も大畑殿が手に入るようにしました。宝石虫の首飾りと虫除けの香。この2つが揃った時、身に着けた者は死にます。こうして貴方は大畑殿を殺害したのです」
これも簡単な事だ。
ゴシションの作った虫除けの香は良く効く。
当然貴族達も使うだろう。
オズの妹シュイラが殺したというのはある意味正しかった。
もっとも、彼女に非はない。まさか虫除けの香が原因とは誰だって思わないだろう。
「ただ、殺害に成功しましたが大畑殿はサホコさんの魔法で復活しました。これは誤算だったのかどうかはわかりません。どうですかソガス司祭」
チユキは言葉を続けるとソガスを見る。
ソガスは何も答えない。
「何も答えませんかソガス司祭。良いでしょう、続けます。大畑殿が復活したこと以外にも貴方にとって想定外の事がありました。ハムレ殿の事です。ハムレ殿もまた大畑殿の殺害を計画していました。まさか、暗殺計画が同時に2つ進行しているとは思ってもいなかったでしょう。私達もそうでした」
甥のハムレもまた大畑の命を狙っていた。
つまり、暗殺計画は2つあったのだ。
ただ、ハムレはソガスと共謀していない。
ハムレを捕らえた時にそれは確認済だ。
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チユキは首を振る。
ハムレはリノの魔法により自供した。
だから、最初は蛇の暗殺者が大畑を殺したのではないかと思ったのだ。
「ただハムレ殿はあくまで依頼者であり、実行者がいないのはおかしい。ですが、いくら調べてもどうやって毒を盛ったのかわかりませんでした。そんな時です、宝石虫の情報を得たのは……。コウキ君達から聞いたナルゴルに生息する不思議な虫、私達はもう一度首飾りを調べる事にしました。ですが、結果は普通の宝石。それもそうですよね……。すり替えられていたのですから」
コウキ達からの情報を得てチユキ達は首飾りを調べた。
だが、首飾りの宝石は普通の宝石だった。
だが、その首飾りを預かっていたソガスならばすり替えるのも簡単である。
事件が終わった後で宝石をすり替えていたのだ。
「宝石を見た時に違和感がありました。またナオさんが偶然見た貴方がヴェロスの果実酒を受けとる場面。貴方はその後に何と呟いたか覚えていますか?」
「い、いえ」
ソガスは首を振る。
だが、ナオは聞いていた。
「貴方は思わず呟きました。「ヴェロスの果実酒か。北のヴェロス近くまで行った時は良く飲んだわい」と。そこで貴方がしばらく不在だった時期があったのを思い出したのですよ。大畑殿が首飾りを得た時期を考えると期間が一致します。ナオさんはその点が気にかかり貴方を調べる事にしたのです。そうですねナオさん」
そう言ってチユキはナオを見る。
「いや~。大変だったっすよ。でも調べたらすぐに出て来たっすよ。大変だったっす」
ナオはソガスの事を調べる為にしばらくエルドの外にいたのである。
そして、ソガスが北に向かったのを知ったのだ。
そのためナオは虫の砦に潜入する時にいなかったのだ。
「そして、砦に一緒にいたブイル殿の事も先程ナオさんに聖レナリア共和国に調べに行ってもらいました。どうでしたかナオさん」
「思った通りだったっす。ブイルとかいう司祭はいないし来た記録もないっす。ただ、似顔絵を見せたらソガスさんが保護した身寄りのない者に似ている人がいたっすよ」
ナオはそう言ってソガスを見る。
ブイルという審問官はいなかった。
ソガスは身寄りのない者を改造したのだ。
「直接変身するところを見たわけではないですが……。貴方がブイル殿を改造したのです。そして、ハムレ殿に虫を仕込んだのも貴方です。そして、これほどの事が出来る力。普通の人には不可能です。貴方は北に行き取引しましたね、白銀の魔女のあの子と……」
チユキはそう言ってソガスを見る。
そもそも、宝石虫がソガスの部屋から発見された時点で犯人は確定したようなものである。
「……。やはり、バレましたか。まあ、どこかで気付かれるとは思っていましたがね」
ソガスはそう言って笑う。
その笑みは卑屈な笑みだ。
「自白するのですか、ソガス司祭?」
「ええ、リノ様もいるのでしょう。嘘を吐いても仕方がないでしょう。ハムレに虫を仕込みあの男を殺したのも、裏切ったゴシションを殺したのも私です」
ソガスはそう言って首を振る。
「そう、リノさん出て来てよいわよ。ソガス司祭は本当の事を言っているかしら」
チユキが合図をするとリノが後ろから姿を現す。
リノはずっとチユキの後ろで姿を隠していたのである。
「うん、嘘は言っていないよ。ソガスさん何でこんな事をしたの?」
リノは悲しそうな顔をして聞く。
「何故か……。それはわかりやすい理由ですよ。あの男のせいで崩壊した一族は多いのです。私もその1人ですよ。貴方様にはわからないでしょう。飢えて血を分けた弟喰った私の気持ちなぞ……」
そう言うとソガスは懐から何かを取り出す。
「動かないで、ソガス司祭! 逃げられませんよ!」
「ふふ、逃げはしませんよ……。破滅は覚悟の上です。願わくはあの男の血脈を絶ちたかったですがそれも敵わないでしょうな。さらばですぞ、チユキ様! 偉大なる暗黒の君! 我が身を捧げます! 我が内に眠る魔蟲よ、目覚めよ!」
ソガスがそう言った時、懐から出した何かが光る。
そして、ソガスの身体が膨れ上がる。
「チユキさん!」
「わかっている、ナオさん!」
チユキは魔法を唱えソガスの周囲に結界を張る。
次の瞬間ソガスの身体が爆発する。
ソガスの身体から飛び出した虫達は結界に阻まれそれ以上外に出ない。
結界の中でソガスの身体が完全に消滅するのが見える。
「チユキさん……」
リノが心配そうにチユキを見る。
「大丈夫よ……。リノさん」
チユキは杖を掲げる。
すると結界の中が小さく爆発する。
結界の中なので爆発の影響は外には出ない。
ソガスの身体から出た虫達は爆発によって焼けて消えていく。
後に残ったのは黒い影だけだ。
「ソガス司祭、こうするしかなかったのかしら……」
変わり果てたソガスを見てチユキは呟く。
彼が生きていたら今度はオズを狙っただろう。
例え捕らえても、逃げ出して何度でも狙うかもしれない。
彼の復讐心をリノならば消せる。しかし、それではソガスは死んでいるのと同じだ。
こうするしかなかった。
だけどチユキは別の手段がなかっただろうかと考えてしまう。
「これで事件は終わりなのかな?」
「そのはずっすけどね。大畑さん。恨みを買いすぎているっすから」
リノとナオがソガスの影を見て言う。
大畑にいや、大畑家に恨みを持つ者は多い。
そのため、再び同じような事件が起きる可能性はある。
しかし、そんな事まで考えていたらきりがない。
「事件は終わりよ。そういう事にしましょう。さて、やらなければならない事があるわ、少し忙しくなるわね」
チユキは事件の終わりを宣言する。
事件は終わり、後始末をしなければならないだろう。
さしあたり大畑の葬儀をしなければならない。
問題のある人物であったが、功績も大きい。
彼の葬儀を盛大にしなければならなかった。
(さて、コウキ君達はどうしているかな?)
チユキはコウキ達の事を考える。
彼は今親友のオズのところにいる。
大畑家は当主と次期当主を同時に亡くして混乱している。
そのため親友を心配して側にいる事にしたのだ。
チユキはこれ以上大畑家に不幸が来ない事を祈るのだった。
★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★
さて事件は終わりです。
次回はエピローグ。
ソガスの想定外の出来事は二つ、ハムレも暗殺を計画していた事とコウキが絡んでいた事です。
コウキがいなければオズの身も危なかったでしょう。
大畑が死んだ日に郊外で喋っていたのはハムレです。
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