暗黒騎士物語

根崎タケル

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第12章 勇者の王国

第15話 虫の襲撃

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 朝になりコウキ達は集合すると城壁外へと向かい、昨日と同じように集落に入る。
 既に日が昇っているので、人は少ない。
 農民に限らず、日の出前の薄暗い時に起き。日の出と共に働き、日没と共に家に帰るのがこの世界では普通だ。
 日が昇ってから行動すれば、付いた時に人が少ないのも当然であった。

「さて、許可をもらったらしいけど、どうするんだ? コウ?」
「えっと、それは……」

 オズから問われコウキは言葉が出なくなる。 
 許可をもらったが別に許可証等はもらっていない。
 基本的にここに住んでいる者は文字が読めないので許可証があっても意味がなかったりする。

「あれ、じゃあ、どうやって入るの? 勝手に入って良いの?」

 ボームが首を傾げる。

「そりゃ、入って良いに決まっているじゃない。許可を貰っているんだからさ」
「!?」

 突然声がしてオズとボームは辺りをきょろきょろと見る。
 エルフ達は姿を隠しているのだから当然だろう。
 そして、声の主は姿を見せる。
 12歳ぐらいの女の子が空中から姿を突然見せる。
 風エルフのピアラである。
 オズとボームは突然現れた女の子に見惚れる。
 無理もないとコウキは思う。
 エルフは美形揃いであり、ピアラはオズやボームと同世代に見えるのだから。
 だけど、コウキは知っていた。
 ピアラは12歳ぐらいの女の子に見えるが、実はこのエルドで誰よりも長く生きているのだという事を。
 そして、孫はもちろん、曾孫までもいるのだ。
 しかし、そんな事を知らないオズとボームが見惚れてしまう。
 しかも、空を飛び、丈の短い服を着ているので太ももは丸見えで、下着もチラリと見えてしまう。
 ピアラの性格からしてわざと見せているのだろう。
 オズとボームの反応を見て楽しんでいるようだ。

「ピアラ殿。それぐらいにして行きましょう。はあ、命令でなければ付いて来たくなかったです……」

 コウキと共に来た山エルフのオレオラが姿を見せる。
 オズとボームは再び驚く。
 いつものオレオラはコウキと一緒にいる事は少ない。
 おそらくルウシエンの命令があったよう。

「オレオラ。これは正式な調査です。仕方がないでしょう」

 最後のエルフ、ルウシエンが姿を見せる。
 先に姿を見せたピアラやオレオラよりも美しいエルフが現れたのでオズとボームはさらに驚く。

「ええと、コウ。これはどういう事なの……」

 ボームがコウキに聞く。
 エルフが3名も付いて来たので、驚くのも無理はない。
 
「ええと、チユキ様がその……」
「あまり期待するな、人間ヤーフの子よ。我々はただの手伝いだ。何か事件が起こっているらしいが、はっきりいって興味はない」

 オレオラが説明する。
 実際そうなのだが、突き放したような言い方にボームは呆けたような表情になっている。

「あっ、うん。そうなんだ、手伝いなんだよ。チユキ様が一緒なら心配ないって……」
「なるほど、確かにそうだな。危険だと思うのが当たり前か」

 オズはうんうんと頷く。
 子どもだけでは危険だから、エルフを付けたのだろう。
 いわば子どもの保護者なのである。
 基本的には子どもの自主性に任せるが、危険な事からは守ってくれる。
 ルウシエン達はそんな存在なのだ。
 オズとボームは納得する。

「それじゃあ。行こうかね。姿を消せばすぐだよ。付いて来なさい」

 ピアラはそう言うと魔法を唱える。
 するとコウキ達にルウシエンの姿が透明になっていく。
 透明化インヴィジブルの魔法だ。

「さて、はぐれないように手をつないで行こう。耕作地を探索するのだったな」

 オレオラはそう言ってボームの手を取る。
 ボームは見えない相手から突然手を引かれたので戸惑っている。
 自分の体も見えないから、歩くのも大変かもしれない。

「さあ、私達も行くよ! 将来有望君!」

 ピアラはオレオラの後を追うようにオズの手を取る。
 オズも同じように戸惑っている。

「さて、私達も行きましょうか。うふふふ」

 ルウシエンが体を寄せてくる。

「あの、ルウ姉さん。自分はある程度見えるのだけど」

 コウキはある程度なら見る事が出来る。
 そのため、はぐれる事がないのだ。
 手を引いてもらう必要はない。

「いえいえ、はぐれるかもしれませんから」

 ルウシエンは無理やり体を寄せて歩き始める。
 こうして、コウキ達は耕作地へと入っていく。
 全員が姿を消しているので止められる事なかった。
 牛を引き何かの作業をしている。
 コウキは農業の知識がないので何をしているのかわからない。
 通り過ぎる時に気付かれるかもしれないから、人が少なめの作業用の小道を歩く。
 
(あれ? あれは?)

 そんな時だった。歩いているとコウキはあるものに気付く。
 それは倒れた小さなゲナの像だ。
 倒れてからかなり時間が経過しているのか土がかなりついている。
 女神ゲナは大地と豊穣を司り、農業に携わる者の多くが信仰している。
 当然ここの農夫達も信仰しているだろう。
 小さいとはいえゲナの像が倒れたままにしているのはおかしい。

「どうしたのです? コウキさん?」

 ルウシエンが小声で耳元で囁く。
 そんなに顔を近づけなくても聞こえるのだけどと思うが、言っても無駄なのでそのまま聞く。

「うん、ゲナ様の像が落ちていて……。おかしいな、農作業をしていたら気が付きそうなのに」
 
 コウキは首を傾げる。
 小道だが、誰も通らないわけではない。
 先に進んでいるオズとボームは手を引かれ歩くのに必死で気付かなかったが、ここで作業をする者なら気付くはずだ。
 
「ゲナ様の像ですか? 似てないですね」

 ルウシエンは像を見て正直な感想を言う。
 確かに似ていないのだろう。
 ルウシエンは過去にエリオスの天宮に行った事がある。
 その時に女神ゲナに会う機会があったはずだ。
 しかし、似ているのかどうかは今は問題ではない。
 こういった小さい像は抽象的に作られている事が多い。
 女神レーナの小さな像も神殿に飾られているものと民間で飾られている像では造りが違う

「ええと、こういうのはそういうものなんだよ、ルウ姉さん。それより女神様の像がこんな風に捨てられているのはおかしいと思うんだ」

 コウキは周囲を見ると小さな祠があっただろう場所を発見する。
 像はそこに祀られていたはずだ。
 しかし、祠は壊れ像は捨てられている。
 信仰している対象の女神像がこうなっているのに農夫達が気にしないのは変であった。
 コウキは女神像を懐に入れるとオズとボームを追いかける。
 耕作地では相変わらず農夫達が作業をしている。
 一見おかしい所は感じない。
 コウキ達は相談するために一旦集まる。
 農夫達がいる場所から少し離れているから声は聞こえないだろう。

「ねえ、どうする? 特に怪しく感じないけど……。オズはどう? 前に入った事があるんだよね?」
「よくわからないな? 前より案山子が多くなった気がするけど、それぐらいかな」

 オズは周囲を見て言う。
 確かにそんなに変な所はないように見える。
 だけど、果たしてどうだろうかと思う。

「確かにそうだね。でももう少し先に行ってみない? そういえばあそこに小屋があるけど、何の小屋かな?」

 コウキは先の方に小屋を見つける。

「多分、作業用の道具を置くための小屋だと思う。もしくは急に雨が降った時ようの避難用かな」

 オズは小屋を見てそう言う。
 基本的に安全を考えて住居は城壁近くに作られる。しかし、作業の道具の全てを持ち運ぶのは面倒である。
 そのため、耕作地の真ん中に道具を置く場所を作るのだ。
 また、急に雨が降って来た時の避難場所になっていたりするみたいである。

「なるほどね。それならあの小屋まで行ってみて、少し休もうよ」

 ボームが提案するとコウキとオズは賛同する。

「なるほど、それじゃあ、あの小屋まで行こう。ルウ姉さん、案内お願いするね」
「はい」

 コウキ達は再び手を引かれて歩き出す。
 そして、小屋まで近づいた時だった。
 
「止まって! ピアラ殿!」
「わかってる! 風の精霊シルフ! 守りの風を作って!」

 オレオラが警告するとピアラは風の下位精霊シルフに呼びかける。
 その次の瞬間、コウキ達に向かって何かが飛んでくる。
 しかし、その飛んできた何かはコウキ達に到達する前に何かに弾かれる。

「何!? 何があったの!?」
「どうしたんだ!?」

 オズとボームが慌てた声を出す。
 
「これは虫? 虫が飛んできた!?」

 コウキは飛んできた何かを見て呟く。
 飛んできたのは虫だ。
 それも複数である。それが石弾のように飛んできたのである。
 姿を消していたはずなのに明らかにコウキ達を狙っていた。
 つまり、虫達は何らかの方法でコウキ達に気付いたのだ。
 虫は風の作った壁に阻まれコウキ達に近づけないでいる。 

「ピアラ。何なのこの虫は?」
「わからないよ姫様。 あたいも初めて見る」

 ピアラは首を振って答える。
 初めて見る虫のようだ。
 風エルフナパイアの中には虫を操る者もいて、虫に詳しい。
 そのピアラも知らないとは思わなかった。

「ピアラまで知らないなんて……。追い払えそう?」

 ルウシエンは困ったような声を出す。
 
「風の魔法で吹っ飛ばす事もできるけど……。でもそれだと……」

 そう言ってピアラは少し離れたところで農作業をしている人を見る。
 虫は広範囲で飛んでいる。
 ここで風魔法を使えば側にいる人にも被害が出るだろう。

「変だな。なぜ我々だけだ。ここにいる人間ヤーフには何もしないのだ」
 
 オレオラは周囲を見て言う。
 確かに不思議であった。
 側で農作業をしている人に虫達は襲い掛からない。
 襲われているのはコウキ達だけだ。
 

「ルウ姉さん。とりあえず避難できるところに行こうよ。あの小屋の中だったら……。オズ、ボーム。あの小屋まで行こう」

 そう言ってコウキはオズとボームを見る。
 2人とも何が起こっているのかわからず、戸惑っている。

「一体何が起こっているんだ。コウ?」
「そうだよ、一体何が?」
「話は小屋の中でしよう。行くよ」

 コウキはそう言って歩き出す。
 オズとボームはそれぞれピアラとオレオラに手を引かれ付いて来る。
 たどり着いた小屋は簡単な造りになっていて入口は厚い布切れが垂れ下がっているだけで誰でも入れそうであった。
 コウキ達は小屋の中へと入る。
 これで一息つけそうであった。

「ここなら、誰もいないみたいね。魔法を解くよ」

 ピアラは魔法を解く。
 すると全員が姿を現す。
 
「この中まで虫は入ってこないようだな。隙間があるのにどういう事だ?」
 
 オレオラは疑問の声を出す。
 確かにおかしい。
 小屋には沢山の隙間がある。
 しかし、中に入ってくる様子はない。
 
(どうして、入って来ないんだろう? うん? 何か気配を感じる)

 コウキは小屋の中を見る。
 何かの気配を感じたのだ。

「誰です! 姿を見せなさい! 隠れても無駄です!」

 コウキと同じように気配に気付いたルウシエンが魔法を発動させようとする。

「ま、待ってくれ! 攻撃をせんでくれ!」

 危険を察知したのか小さい影が小屋の隅から姿を見せる。
 それは1名のピュグマイオイである。

「ピュグマイオイ? どうしてここに?」

 急に姿を見せたピュグマイオイにオズは驚きの声を出す。

「それはこっちの台詞だ。エルフに人間ヤーフの子ども。変な組み合わせだな、まあ良い。外の虫を操っている者ではなさそうで安心したぞ……」

 ピュグマイオイは髭を触りながら言う。

「あの? どうしてここに? 何をしているのですか?」

 コウキはピュグマイオイに聞く。
 ピュグマイオイは農業をしない。ここにいるのは変であった。

「それもこちらの台詞だ。うむ、どうじゃ互いの事を話そうじゃないか。まずはそうじゃな互いの自己紹介をしよう。儂は見ての通りピュグマイオイ、名をファブルという」

 ピュグマイオイはファブルと名乗る。
 ファブルと言う名前には聞き覚えがあった。
 コウキとオズとボームは顔を見合わせる。
 全員がまさかここで会えるとは思わなかったという表情をしている。 

「さあ、名乗ったのじゃ。お主達は何者じゃ。どうしてここにいる?」

 そう言ってピュグマイオイはコウキ達を興味深そうに見るのであった。

 

 


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